魚雷モグラ’24
ウラダイコク
みらい館大明ブックカフェ特設ステージ(東京都)
2024/08/02 (金) ~ 2024/08/04 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★★
昨年に引き続き、配信で拝見(カステラチーム)
劇場ではなく、決して広いとはいえないスペースで描かれるのは、終戦が目前に迫っていた長崎の町。
当然、そこで発生する悲劇など、まだ知る由もない女学生たちが、薄暗い地下の穴倉で魚雷を作っている。
そしてこんな状況の時であっても女の子たちはおしゃべりに夢中になり、淡い恋心もあれば友達との諍いもあって、普通に青春を過ごしている。
そんな女学生たちを演じる若い役者さんたちが、これまた懸命に演じている姿が、登場人物たちの懸命さとリンクして、思わず感情移入してしまう。
その懸命さに嘘がないのが心地よく、また可愛らしい。
こういう物語はどうしても説明をしないといけないことが多くて、説明台詞が多くなるのだけれど、それを全員のムービングや台詞(声)を使って無理なく見せる演出が、毎年の積み重ねを感じさせる。
たまに他の公演で、小道具だけをマイムにしているところがあるが、これははっきりって手抜きだと思う。
やはりマイムでやるのならこの作品のように、パワーマイムとして成立させないと見る側の想像力が広がらない。
そして、それら状況説明の台詞がとても詩的で美しい。
美しい言葉と、救いようのない事実との、どうしようもないアンバランス。
この作品に込めた作者の思いを受け止めた観客は、そこで切なくてたまらなくなる。
OVER THE CENTURY 〜百年の彼方に〜
丸福ボンバーズ
APOCシアター(東京都)
2023/12/02 (土) ~ 2023/12/17 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白かった!面白かった!本当に面白かった!
この作品は2000年に泪目銀座さんの公演で大感激した作品で、まさか23年後にもう一度観られるとは思わなかったので、観劇日を指折り数えて待っていた。
とはいえ、キャストも違えば劇場も小さな劇場。
もしかしてがっかりするかもと正直心配でもあったのだが、まったくの杞憂だった。
今日観たのは新鮮脚色組という若手中心のチームだったが、役者さんたちが本当に魅力的で、やりすぎず、やらなさすぎず、実に気持ちがいい。
作り込まれたセットも、小道具も衣装も、照明も音響も、失礼ながらAPOCシアターとは思えぬレベルで、作演の福島三郎氏のこの作品への想いの深さを見た気がした。
舞台は1900年。これから20世紀になるという年の瀬。
ある傾きかけた教会を舞台に繰り広げられる・・・といった平凡な解説をしても意味がない。
なんか、もう、本当に、心に響く台詞がたくさんあって、20世紀を夢見る1900年当時の人たちと共に、今の私たちも未来を信じてもいいんじゃないかと思わせてくれる。
だから劇場を出たときの心が暖かい。
そりゃ現実にはいろいろあるけど、たまにはこんな気持ちになったっていいじゃないか!
できることなら、毎年師走に上演してほしい!
無理ですか?丸福ボンバーズさん?
暴発寸前のジャスティス
ぽこぽこクラブ
新宿シアタートップス(東京都)
2021/09/24 (金) ~ 2021/09/25 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
地方の田舎町に駐在している3軍ヒーロー。
ヒーローと言っても3軍ともなると、仕事は害虫駆除やゴミ拾い、老人のお宅訪問、交通整理や警備員。
もう、まさに、私の大好きなシチュエーションではないか!
そんなヒーローたちの日常は実に生活感がにじみ出ていて、話の内容も、やっていることも、何とも言えないリアルさに思わず吹き出してしまう。
そのさりげなさ、間の良さ、テンポの良さに、役者さん達の底力を感じたりもした。
本当に、それぞれが普通でさりげない。なのにやたらとおかしい。
前半はとにかく面白く進み、後半にかけて少しずつ何かが変わっていく。
それも、ここで終わるかな、と思っていると、おお、そうくるかと驚き、これで終わりだろうと思っていると、いやいやまだと肩透かしを食らわされる。
そして最後に見えてくる、彼らの普通の生活とは・・・最後まで、まさに釘付けの状態で観入ってしまった。
観終わってすぐに、もう一回観たいと思った舞台は、いつ以来だろう(そういう公演に限って、たった2日!)
あの立体的なセットで、どれほど全体の動きがダイナミックになっただろうとは思うが、仕込み日合わせてたった3日の公演、その大変さを想像するとめまいがする。
そんな火事場の馬鹿力を発揮できる団体さんだから、あんなパワーを凝縮したようなお芝居ができるんだろうか。
なお、全く違う話なのだが、シアタートップスの帰りの階段で、踊り場ごとに人が立って流れを誘導している、その中になんと本多さんがおられた。
昔からどんな小さな仕事でも率先してやって下さっていたけど、今やあの本多グループ総支配人。それでも普通に踊り場で誘導しているって・・・普通やらない、絶対に。
本多グループのスタッフさんにいい方が多いのは、こういうトップの姿を見ているからじゃないだろうか、と思った。
虹の人 - アス アサ イヅ 四ジ ジシンアル -
演劇制作体V-NET
TACCS1179(東京都)
2018/11/14 (水) ~ 2018/11/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
Bキャス観劇。
終演後、しばらく席を立てなかった。
構成の緻密さ、繊細さ。何とも言えない味わい。じわりとくるあたたかさ。そしてラストの衝撃。なんだかクラクラした。
これまでの井保作品とはかなり違う、静かな作品だった。
しかし、強い作品だった。
ぜひ多くの人に観てもらいたい。
三編の様々な結末
東京ストーリーテラー
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2017/10/16 (月) ~ 2017/10/17 (火)公演終了
満足度★★★★★
本当に面白かった。
ちょっとないほど、面白かった。
セットも衣裳もメイクもなし。
あるのは、物語に寄り添うように演奏される、エレクトーンのナマ音だけ。
きちんとしたものがあれば、それだけでいいんだよね。
でも、その、きちんとしたものを、つい見失いがちなんだよね。
真夏のカーニバル
制作「山口ちはる」プロデュース
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2017/07/31 (月) ~ 2017/08/03 (木)公演終了
満足度★★★★★
楽しかった。
若手は若手なりに様々なものを抱え、オバサンはオバサンなりに多くのものを背負いながら、なぜか同じ稽古場にいて、同じ舞台に向かって頑張っている。
そのエピソードが、あまりに「あるある」で、芝居と現実の境目がわからなくなってしまうほど。
切ないけど、たまらなく愛おしい彼女たちへの、
カーテンコールの拍手が、すごくあたたかく聞こえたのは私だけだろうか。
ぼくのタネ
TAIYO MAGIC FILM
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2015/11/18 (水) ~ 2015/11/25 (水)公演終了
満足度★★★★★
どうしてみんな、観ないの?
と、声を大にして言いたいほどの、素晴らしい作品でした。
過去と現在を行き来しながら、上下のセットと説明役を使って、無駄を省き、テンポよくまとめる手腕の見事さ。
そして、存在感のある、役者さんたちの魅力。
笑いの担当に、特に巧みな役者さんを配したおかげで、笑いと涙のコントラストがはっきりしました。
もちろん、何よりもホンの素晴らしさあってのことですが、いい役者さんが多いとやはり舞台が締まります。
出演者の関係で観に行きましたが、終演後、こんなに心を込めて拍手したことは何年ぶりだったか。
新しい『素晴らしき哉、人生!』の誕生ですね。
そういう目で見ないで
パセリス
シアターシャイン(東京都)
2015/02/20 (金) ~ 2015/02/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
ロジック!
初パセリスさん、楽しみました。
これまでに出会ったことのないタイプのロジカルな演劇で、達者な役者さんたちが、それをしっかり支えているという感じ。
このテーマ、別の角度から第二弾もできそうな気がします。
ただ今回初めてだったので、一生懸命セリフを聞いているうちに、笑うのを忘れていました(笑)
次回はもうちょっと余裕を持って、笑いながら楽しもうと思います。
対バン公演は、景浦さんの落語。
これを聴きたくてこの回にしたのですが、思わず声をかけたくなるような江戸前の落語に惚れ惚れ。
ずっと昔に志ん朝で聴いた「宮戸川」を思い出しました。
まさか小劇場で「お花半七」が聴けるとは!
開演前のコントといい、お得な公演ですね。
ROOTERS〜応援者たち〜
LIVES(ライヴズ)
テアトルBONBON(東京都)
2015/01/28 (水) ~ 2015/02/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
これぞ!
あの、私の大好きなLIVESが帰ってきた、と言いたくなる作品でした。
弱くて、ダメで、カッコ悪くて、でも、たまらなく愛おしい・・・そんな人間たちばかりが登場する、いつものLIVES作品ではあるのですが、今回は特に無理がなく、ラストに至るまでのまとまり方がとても気持ちよく、新しい代表作になる予感がします。
役者さんも素敵でした。一部、テンションを上げるために声が大きくなる人がいて、ちょっと騒がしすぎたときもありましたが。
星の結び目
青☆組
吉祥寺シアター(東京都)
2014/07/04 (金) ~ 2014/07/09 (水)公演終了
満足度★★★★★
光・影・声・歌・・・
たくさんのものが融合して、こんなに素晴らしい世界が広がった。それを観られた自分を幸せだと思います。本当に観てよかった。そして、この戯曲を、より強く際立たせることができたのは、キャストの皆さんの力量に他なりません。すごい、です。言葉が出ませんでした。
昼下がりにみた夢は…
NO-STyLe-GArden
劇場MOMO(東京都)
2014/05/14 (水) ~ 2014/05/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
ほのぼの、しみじみ
面白かった。
きっかけとなる「事件」は、面白くするため、感動的に作るために、よく使われる手法なのだが、それだけに、そこに甘えてしまうと、ただの「よくあるお話」になってしまう。
しかしこの作品は、この、ある意味「甘美な常套手段」を使いながらも、それに甘えることなく、きちんと破綻のないストーリーにまとめ上げられている。
余計なお涙頂戴を狙わなかったのも心地よい。
役者さんたちも、早口の博多弁をきちんとこなして、見事。
私ごとになるが、つい最近まで佐世保弁の芝居に出ていて苦労しただけに、思わず大変だっただろうな、などと思ってしまった。
衣裳やメイクなどからも、当時の空気感がちゃんと伝わってきた。
登場人物もそれぞれ魅力的で、かなり極端なキャラも「あり」と思わせてしまう力技(笑)が面白かった。
ナツヤスミ語辞典
演劇集団キャラメルボックス
ザ・ポケット(東京都)
2013/12/11 (水) ~ 2013/12/15 (日)公演終了
満足度★★★★
完全なキャラメルテイスト
友人の若い役者さんが出演しているので観てきました(Xキャスト)。
プログラムに「日本一厳しい養成所」とありましたが、さもありなん。
修了公演の力みはあるとしても、本公演と変わらないほどの、キャラメルらしさ一杯の舞台を、きちんと作り上げていました。
修了公演にありがちな甘さがないのが、心地よいですね。
ダンスもとてもキレがあって見事。
立ち姿ひとつとっても、完璧なまでにキャラメルスタイルになっていることに、本当に厳しく仕込まれたんだなと、感動的ですらありました。
そして、やっぱり、この作品は名作ですね。
憎いほど、落とし所を心得ている。
それもあって、ちゃんとした公演として充分楽しめました。
成井さんの前説も初めてで、ちょっとお得感がありましたしね。
カリフォルニアドリーミン
劇団鳥獣戯画
ザ・スズナリ(東京都)
2013/10/03 (木) ~ 2013/10/08 (火)公演終了
満足度★★★★★
私は3回目
理屈ではありません。50代以上の人間には、とにかく泣けます。
説明するより観てほしい。
我々の世代に、これほどシンクロするミュージカルってまずないでしょう。
その分、若い人たちにはどう映るのか。若者の感想を聞いてみたい気もします。
本編の前のポップスショーも、ここまでやるかと言うほどの大サービス。
これだけでも十分楽しめました。
なかでも、ユニコさんのダンスには度肝を抜かれました。まさに天才ですね。
また、近頃は中高年の演劇ブームとやらで、素人のような中高年にひどい芝居を見せられることもあるのですが、年を重ねた本物のプロとは、こういうものだ、という舞台を観せてもらえて、溜飲が下がりました。
酔いどれ船
おのまさしあたあ
コレドシアター(東京都)
2013/09/13 (金) ~ 2013/09/15 (日)公演終了
満足度★★★★
面白かったですよ
私は楽しめました。
オープニングの、映像とマイムのコラボも、強風にはためくマントの芸の細かさに吹き出しましたし。
あの限られた空間の中での、ダイナミックな演出も見事だと思いました。
ダンスも素晴らしく、エンターテインメント作品として、十分楽しみました。
キンダースペース版 金色夜叉
劇団キンダースペース
シアターX(東京都)
2012/01/18 (水) ~ 2012/01/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
こんなに深い物語だったのか
タイトルだけで俗っぽさの塊のようなイメージをもっていたのだが、実は何も知らなかったのだと思い知らされた。
キンダースペース版とあるので、もしかすると原作とはかなり違うのかもしれないが、個々の描き方の細やかさ、それに応える役者さんたちの素晴らしい演技に、驚きのような思いをもって舞台を観ていた。
(肝心なところでの台詞のカミは残念!)
時代は明治でも、描いているのは人間の普遍・・・と思ったのだが、もしかすると作家は、現代の我々だからこそ共感できる物語に作り変えたのかもしれない。
登場人物の心の揺れを追いかけていくうちに、これは時代背景を借りた「現代版・金色夜叉」であるという気がしてきた。
いずれにせよ、非常に完成度の高い、楽しめる舞台となっている。
忘却曲線
青☆組
アトリエ春風舎(東京都)
2010/09/06 (月) ~ 2010/09/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
まさに大人のための子守唄
作家が、繊細な散文詩のように物語を紡ぎ、
役者が、きちんと通った演技でそれを体現する。
当たり前のようでいて、なかなか出会えない、希有な舞台。
きっと、作家と役者たちの間に、羨ましいような信頼関係があるのだろう。
観終わったあと「救い」が心に残る。
これからも、いくつもの忘却を重ねていくであろう、この家族へのあたたかい眼差しが、お芝居であっても嬉しい。