やまけんの観てきた!クチコミ一覧

21-25件 / 25件中
『あゆみ』『TATAMI』

『あゆみ』『TATAMI』

劇団しようよ

アトリエ劇研(京都府)

2017/05/10 (水) ~ 2017/05/15 (月)公演終了

満足度★★

『あゆみ』や『わが星』といった柴幸男作品の一部は、大きな普遍性を持つ一方、あまりにヘテロノーマティブであり過ぎるという危うさをはらんでいるが、今回の上演ではそのバランスが崩れ、悪い方向に転がってしまっていたように感じた。つまり、オール男性キャスト、父視点の導入などの演出が、作品の全体を男性目線から見た女性像に押し込めてしまっていたのではないか。
特に、作中で唐突に「覚えていますか」「想像してください」とルーマニア日本人女子大生殺害事件の話が挿入される場面は観客の想像を広げるどころか狭めるものであり、かつ、自分たちが加害者である男の側にいることを忘却した押し付けである。
私の記憶によれば全く同じ演出が劇団しようよの別の短編でも採用されており、そうであるならば、それは演出の大原渉平の個人的なこだわりに過ぎないのではないか。

1001100000110101000100101

1001100000110101000100101

しあわせ学級崩壊

ART THEATER 上野小劇場(東京都)

2018/05/30 (水) ~ 2018/06/03 (日)公演終了

満足度

フェティシズムを共有しないものには見ているのが辛い舞台だった。「おとうさま」のもと、ともに暮らす「姉妹たち」。ある種の新興宗教を思わせる設定で、どうやら性的虐待も行なわれていたことが匂わされる。「おとうさま」はすでに殺されていて舞台上には登場しないのだが、その代わりのようにして舞台上には作・演出・演奏の僻みひなたがいる。多くのセリフが音楽に乗せる形で発せられるこの作品において、舞台上で音楽を演奏する僻みの持つ「権力」は通常の演劇作品における作・演出のそれよりもさらに絶対的で、それは「おとうさま」の遺した呪いのようでもある。そこに批評的距離は感じられず、意識してやっているのであれば申し訳ないがただただ気持ち悪い。若い世代がこのような女性の描き方をよしとすることには大きな危機感を覚える。

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

「漢達(おとこたち)の輓曳競馬(ばんえいけいば)」

道産子男闘呼倶楽部

【閉館】SPACE 雑遊(東京都)

2017/04/05 (水) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度

残念ながら、俳優二人の安定感以外は全くいいと思えなかった。
暗闇の中で「シュッ」「ピシッ」「ハアハア」と音が聞こえてきて、競馬の場面がはじまるのかと思いきや中年男性二人が縄跳びをしている、という冒頭は意外性があったが、そこから「どうしてこうなったんだっけ」と回想がはじまるにも関わらず、結局のところ縄跳びにも回想構造にもほとんど意味がないという構成は大きなマイナス。
最終的に男二人がなぜ前向きになったのかもよくわからない。具体的な肉付けのない「ダメな男」は記号的で奥行きを欠く。
タイトルの「輓曳競馬」がテーマを説明するための言葉に過ぎず、しかもそれを作中で自ら説明してしまうのも巧くない。
制作面では、私の席からは(というか角度的にかなりの数の席でそうだったのではないかと思うのだが)位置の低い芝居がほとんど見切れていた点が残念。

デカローグ1~4

デカローグ1~4

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2024/04/13 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

プログラムAを鑑賞。デカローグ1&3はどちらも普遍的な物語だとは思うものの、プログラムAだけを観た現時点では 1980 年代のポーランド・ワルシャワを描いた映画をなぜわざわざ2024年の日本の国立の劇場がしかも演劇でやるのかが全く見えなかった。特に、なぜ演劇でこれをやるのかという点については大いに疑問。プログラムAについては団地の一部を模した舞台美術が全く機能しておらず(機能するように使えておらず)、単に見づらいだけでなく空間の使い方があまりにルーズで(どこまでが部屋でどこに壁があるのかなどが不明瞭)それがいちいち引っかかる。観客の想像力に都合よく甘えるべきではない。

Le Fils 息子

Le Fils 息子

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2024/04/09 (火) ~ 2024/04/30 (火)公演終了

実演鑑賞

家族の不和を描く劇作家フロリアン・ゼレールの筆の巧みさが冴え渡る一作。最悪の結末が容易に予期できるだけに避けがたく終わりが近づく様が観ているこちらの心も削る。

ネタバレBOX

だが、そんな観客の心を弄ぶかのようなラスト——最悪の結末は避けられたのだと思わせておいてそれが父の願望でしかなかったということを明かすその手つき——はその巧みさゆえに邪悪ですらあるように感じてしまった。それは物語や描かれる主題による要請というよりも観客の心をより揺さぶるために選ばれた結末ではなかったか。あのようなかたちで心を揺さぶることを私はよしとはできない。
内容が内容だけにトリガーワーニングも必要だったのではないかと思う。

このページのQRコードです。

拡大