
サド侯爵夫人
遊戯空間
銕仙会能楽研修所(東京都)
2022/11/05 (土) ~ 2022/11/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
4月の劇団あはひ「光環(コロナ)」に続く能仕立てだったが、あの時いろいろ仕入れた知識が役に立った
観世榮夫に師事した役者が中心だけにキャストは違和感なく演じたのだろう
サド公爵夫人ルネは主宰・演出の篠本賢一が能面を被って演じる、つまりシテ
最初はワキ(誰がワキツレなのかアイなのかは分からないが・・・ワキは母のモントルイユ夫人なのかな)であるサン・フォン伯爵夫人とシミアーヌ男爵夫人の掛け合いから始まるが、いずれも橋掛かりから登場し、シミアーヌは基本的に笛柱、サン・フォンは角柱中心の四辺と対角線での動き
これは全員最後までといった具合に完全に能の動き
発声その他はさすがと思わせ、凄いものを観たという印象は残ったが、ずっと緊張を強いられるし正直疲れた
ここでやることに意義があったのだろうが、逆にこうした形でやらなければならないのかという疑問は残った
各幕の最初と最後に入る二十五弦筝は場面に合っていて良かった

短編劇集「新江古田のワケマエ」
劇団二畳
FOYER ekoda(ホワイエ江古田)(東京都)
2022/10/29 (土) ~ 2022/11/03 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
古民家のスペースをうまく使っていて、どれも役者の表情が素晴らしかった
特に「そう言われると」では丸山さんのヨッパライ振りが秀逸
ちえ象さんのおとぼけ振りもニヤリとさせる
このふたりは4月に観た「機種変更」でもいい味出していた
「ピクルス」は3年前に観た「半ライスのタテマエ」の一遍
「咲良」はなんかほのぼの
家族みんなの醸し出す雰囲気が良かったが、特にお兄ちゃん(吉岡)の表情が良かった
そしてなんといっても「娘にコクりに来た」竜也(長谷川)のおどおどした様子は最高
最後に「アレクサンドライト」で爆笑
お母さん(ちえ象)大爆発!!!
「そう言われると」以外は日常の中に入り込む非日常
四方田さんの視点はいつも温かいね

「Post Tenebras Lux. (ポスト・テネブラース・ルークス)」
Antikame?
雑遊(東京都)
2022/10/18 (火) ~ 2022/10/25 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
吉田康一氏の「見かえしたかっただけ」という二人芝居を観る
静謐
開演前の注意で「静かな舞台なので、必ず電源はお切りください」と言われれたが場内物音ひとつしない、いや出来ない
コロナ禍で家にいるようになったことからズレ始める二人
会話劇というか、交代の独白と言った感じ
表情と台詞の勝負
二人の役者(日野と高橋壮志)が微妙な変化の照明と音楽と相まって、いくつかのメタファーとともに精緻に紡ぐ危うい世界

シャイヨの狂女
劇団つばめ組
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2022/10/06 (木) ~ 2022/10/09 (日)公演終了
実演鑑賞
ジャン・ジロドゥの作品は8月に「トロイ戦争は起こらない」を観たが、立て続けというのは珍しい
元々ちょっと分かりにくいが、演出がひねりすぎた感があって、趣旨がストレートに伝わってこなかった
また、初日にしてもセリフ噛みすぎで、男優陣の多くが口跡がはっきりしないところがあって興ざめだった
ガブリエル(丸山小百合)とジョセフィヌ(岩村水咲)は演技、演出、衣装とも狂女らしかった

きっとこれもリハーサル
エイベックス・エンタテインメント
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2022/09/29 (木) ~ 2022/10/13 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白かった
笑い通し
からのホロリ
お父さんの「俺の言うことが聞けないなら出てけー❗️」
お母さんの「お父さんには子供たちのこと相談なんてできないでしょ」
には身をつまされる
自分の死期悟ってお父さん実験台に葬式のリハーサルして、子供たちにお父さんに隠してたことを語らせ、自分のお父さんへの思いを伝え、ついには自分の保険金を充てるつもりでそれぞれの夢への出資約束したお母さん凄い‼️
お母さんの本当の葬式の後での、最後のお父さんの「これもリハーサルだと言ってくれ」には泣いてる人多かったな
福くん大きくなったなぁ
昔のアイドルのイメージ払拭の石野真子はすっかり貫禄
羽場裕一いい味出てた、アフタートークの福くんたちの話では舞台裏でもめちゃくちゃ面白く、本番でも袖でみんなを笑わしているらしい
しゅはまはるみはあれこれ忙しい舞台回し
川島海荷は歳よりずっと若く見えて可愛かった
僧侶役やらされたのには爆笑
アットホームないい座組のようだった

かもめ
ハツビロコウ
小劇場B1(東京都)
2022/09/20 (火) ~ 2022/09/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
国内外の古典作品の再発見に挑戦しているハツビロコウが名作「かもめ」を取り上げた
相変わらずスペースを上手く使い、ミニマムに近いが良く出来たセット
この劇団はL字型のどの席からでも良く鑑賞出来るよう、セットも演技も実によく考えられている
暗めの照明が素晴らしい
演技も表情の良いキャストが多く、特に草薙知史(トリゴーリン)と松本光生(ドールン)が気に入った
新垣亘平(コースチャ)は後半良かった
最後のピストル自殺のシーンの演出、照明は見事
アルカージナ(森郁月)はちょっと若いけど、トリゴーリンに迫っていくシーンはなかなか迫力あった
ニーナ(平子亜未)はちょっと変身ぶりが十分に伝わらなかった
このところ席数絞ってる公演もあるが、満席続きで嬉しい

新訳「あわれ彼女は娼婦」ワークインプログレス
NICE STALKER
スタジオ空洞(東京都)
2022/09/21 (水) ~ 2022/09/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
なかなかこういうものの評価は難しい
今回も東京ドム子が舞台回しで、「ワークインプログレス」という仕掛けでストーリーを分かりやすく解説しながら短い「舞台」をつなげていく
17世紀前半の戯曲の柔らかい新訳(イトウシンタロウ、旧訳は小田島雄志)と相まってストーリーは良く分かるが、コメディの部分も多く、元々の戯曲の雰囲気は失われる
まあ今後の「全編上演」に期待しよう
ソランゾの下僕で最後に残るヴァスケスを演じた玉一祐樹美が良かった
ジョバンニのみずきは役柄のせいもあるがやたらと力んでから回り
イグロヒデアキや森耕作は相変わらず独特の雰囲気を出していた
東京ドム子は相変わらず艶っぽかった

笑顔の砦
庭劇団ペニノ
吉祥寺シアター(東京都)
2022/09/10 (土) ~ 2022/09/19 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
いやー、面白かった
まさに笑いとペーソス
良く作られたセットに絶妙のライティング
昭和を思わせるオンボロ棟割長屋の2つの部屋が左右対称で同時に見える
時に両者の動きがシンクロする
漁師の部屋の暮らしは学生時代の寮生活を思い出させてくれる
その有様がごく自然に演じられる
みな表情が素晴らしかったが、最前列に座ったので、とりわけ縁台に座って思いめぐらせる剛史(緒方晋)の表情の変化にはしびれた
おばあちゃん役の百元夏繪も認知症になりきっていて素晴らしかった

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2022/08/17 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「ガマ」
戦争六篇の大千穐楽観劇(5篇観た、残る「帰還不能点」は昨年観劇)
本作に拍手、そしてこのような厳しい状況下、他の公演が軒並み中止に追い込まれる中、細心の注意を払って8月18日からの長丁場で六篇上演しきったことに大拍手
日本にとって沖縄とは何なのか?
いまだに続くこの重たい問いに正面から取り組みつつ、生きることがいかに困難で貴いものなのかを訴える
照明はランプだけでステージはずっと薄暗い
ガマの暗闇が表現される
キャストはみな表情が凄い
ランプの灯りがそれを増幅する
キャスティングも素晴らしいが、前半は相変わらず先生役の西尾さん上手いなと感じる
苦悶する表情が素晴らしい
後半圧倒されたのは大和田獏
うちなんちゅの老人役だが、うちなーぐち(良くは分からないものの感じとして)が完璧で、老人らしいある意味達観した飄々とした雰囲気を醸し出していた
そしてラストの白旗を掲げた清水さんを先頭に皆で歩き始めるシーン
大和田さんの挙げた両手の先は微妙に震えている!
最後尾の青木さんのまだ意を決しきれない表情も素晴らしい
紅一点の清水さんは皇民教育に染まった少女の決然とした態度を良く表していた
「帝国臣民」「聖戦貫徹」といった言葉が飛び出す
「私たち沖縄県民はどうやったら日本人になれるんですか」
「友達は皆日本人として立派に死んでいった」
などという台詞は心臓をえぐる
そんな彼女を(あるいは兵士たちも)生かそうとする先生と老人
それを後押しする少尉(岡本)
場内2時間余り物音ひとつしない
最後の老人の「命は宝だから」という言葉の重み
いつになったら「沖縄県民かく戦えり」は報われるのだろうか
いつも思うのだが、劇チョコの舞台の転換に用いられる重たい音楽は効果的だ
セットもシンプルだが効果的
トリプルコールになった
当然だろう
最後に退きかけたあとの二人の団員の肩を抱いて連れ戻して挨拶した西尾さんの顔は晴れ晴れとしていた

空蝉
あやめ十八番
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2022/09/01 (木) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
あやめ十八番は4年ぶりだったけど、相変わらず時空を超えた独特の世界で2時間40分も長くは感じなかった
生と死を自由に行き来できたら・・・楽しいより苦しいかも
良く出来たプロットでセットも上手く使われていた
生演奏も良かったけど、ファゴット入ってたのは不思議
キャストは新八はじめみな熱演だった
死神のスパイスはなかなか面白った
閻魔大王が止め名の噺家というのも
しかし、閻魔大王も選挙で選ばれて、そのために熾烈な選挙運動あるわけね(笑)

評決 The Verdict
劇団昴
俳優座劇場(東京都)
2022/08/31 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
手に汗握る2時間半でまったく集中力途切れず
さすがにベテラン勢、表情が素晴らしい
セットも重厚感あふれる
畳み掛けるように緊迫感が増していく
ラストシーンはホンも照明も音楽もお洒落だった

帰還不能点(8/17~8/21)、短編連続上演(8/25・26)、ガマ(8/29~9/4)
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2022/08/17 (水) ~ 2022/09/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
たて続けに戦争というものについて考えさせられている
と言っても変化があるわけではない
深まっていくだけ
ひとつ再認識させられたのは「空気」
「無畏」にしても「回天」にしても怖いのは「空気」
確か昨年観て今回はパスした「帰還不能点」でも日本の「真空」(意思決定、だれが最終責任者なのか不明)について言及されていたが、方向を決め、推し進めるのは「空気」
世の中の空気、兵の空気・・・
特攻に突き進んでいく狂気は兵の、若者の、国民の空気から生まれる
南京事件も軍の中の空気から・・・
戦争そのものが世の中の空気から・・・
「〇六」では波の音がいつまでも耳に残った
「その頬」では久しぶりに広島弁をたっぷり聴いた
今日の残るセリフは「生きとるだけでなんでこんなに悲しいんね?」
改めて劇チョコの舞台美術はシンプルだが効果的だと感じた(「遺産」は凝っていて印象的だったが)

追憶のアリラン(8/18~8/26)、無畏(8/24~8/27)
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2022/08/18 (木) ~ 2022/08/27 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「無畏」
一昨年観て圧倒された作品だが、再び深く考えさせられた(キャスト同じ)
一昨年と同じく大室弁護士が松井大将の責任を「検証」していくシーンが圧巻だった
松井役の林竜三と上室役の西尾友樹の演技が圧巻
ハコは下北の駅前劇場の方が好きだな(サイズ感)、巣鴨プリズンにも合って、検証シーンでもより緊迫感があった

トロイ戦争は起こらない
人間劇場
シアター風姿花伝(東京都)
2022/08/24 (水) ~ 2022/08/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
2時間45分に及んだが、いろいろな要素が盛りだくさんで飽きることはない
役者もそれなりのベテラン勢がポイントを締めている
しかし何と言っても特徴は驚異的な台詞の多さ、その多くが長ゼリフ
さながら弁論合戦の連続であった
戦争とは何か、だれが戦争へ導くのかという問いかけは十分に伝わってきた

頭痛肩こり樋口一葉
こまつ座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2022/08/05 (金) ~ 2022/08/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
こまつ座は近年かなり観ているけど、本作は初めて
4月の「貧乏物語」に続き登場人物は女性6人
貫地谷しほりの生舞台を初めて観られた
6年余前の舞台で気に入って以来時々観ている瀬戸さおりも出ていた
世間体、家名・・・、時代の束縛と苦闘する女性たち
幽霊の花蛍(若村)が笑いを誘い、八重(熊谷)の変化は目を見張り、ひとり逆行する多喜(増子)も特徴が良く出ていた
鑛(香寿)は得意の歌を披露
最後の邦子(瀬戸)が後ろ向きにタンスを背負って消えていくシーンはとても印象的だった
ただ、「演劇」というよりは「芝居」の要素が強い舞台だったように思う

追憶のアリラン(8/18~8/26)、無畏(8/24~8/27)
劇団チョコレートケーキ
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2022/08/18 (木) ~ 2022/08/27 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
「追憶のアリラン」
この数年欠かさず観ているけど、劇チョコは裏切らない
観ていなかった7年前の舞台の再演だが、今回も心を鷲掴みにされた
キャスティングも的確で、どのキャストも素晴らしい
最前列ど真ん中のおかげで表情も良く見えた
佐藤誓も検事豊川の実直さを余すところなく表現していたが、大内厚雄演じる理知的、怜悧な人民委員会の幹部金が最後にヴォルテージを上げていくところは迫力あった
元農夫崔役の自分より唯一歳上の辻親八は声優らしいハリのある声で場内を圧倒していた
豊川夫妻(月影瞳)の高知でのやり取りはなんとも微笑ましかった
すべてが含蓄あるものだったが、最後の方の金と抗日ゲリラ出身の李(林明寛)との迫真のやり取りは白眉だった

観るお化け屋敷「カーテン」
下北沢企画
ザ・スズナリ(東京都)
2022/08/18 (木) ~ 2022/08/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
へぇ、スズナリは40年前はアパートだったのか、それを本多さんが買い取って・・・
下北愛が感じられる「観るお化け屋敷」
突然の爆音以外驚きもせず、あんまり怖くはなかったけど、入るまでに劇場のあちらこちら通されるのがバックステージツアーみたいになってて面白かった

天の秤 【13/14日分 公演中止】
風雷紡
小劇場 楽園(東京都)
2022/08/10 (水) ~ 2022/08/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
赤軍三部作が完結
ずっと問われているのは「正義とはなにか」だが、今回は政治の醜さについても切り込んでいた
よど号事件はちょうど小学校5年生になる春休みで、テレビにかじりついていた
もう半世紀以上経つのか
これらの事件を生で知っている(覚えている)のは我々が最後の世代になるんだろうな
相変わらず場面転換も上手く、テンポよく進んだ2時間だった
機内の緊迫感が程よく表現されていたが、それを解きほぐすような運輸大臣橋本登美三郎役の霧島ロックの方言丸出しの泥臭さの演技が秀逸だった

ときじく〜富士山麓鸚鵡鳴〜【大阪公演、8月4日公演中止】
カムカムミニキーナ
座・高円寺1(東京都)
2022/08/04 (木) ~ 2022/08/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
相変わらず独特な世界だ
ホンも奇想天外だが、布などの小道具や鳴り物が一層それを際立たせる
姥捨て伝説は考えさせられる
不老不死って幸せじゃないよね
輪廻転生かぁ

風のサインポール
劇団俳優難民組合
下北沢 スターダスト(東京都)
2022/07/22 (金) ~ 2022/07/24 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
階段を上っていくと2階のカフェを過ぎたところから「立ち入り禁止」の虎テープが
思わず「ここでいいんですか?」と尋ねる
狭いスペースの薄暗い狭いステージにはベンチと床屋のサインポール、手前にはやはり立ち入り禁止のテープ
懐かしいラジオのコマーシャルが流れている
開始はまあ「不条理劇」と言っていい
途中からだんだんと風の床屋と熱海の盗塁王(現窃盗塁王)の素性が明かされて行くにつれ不条理劇的要素は薄れていく
ふたりの声の大きさの変化の幅が半端ない
最後にサインポールに灯りがともって廻り出すところはとても印象的だった
もらった劇団コースターを持って行くと今後の公演は何度でも500円引きというのは初めてだな