満足度★★
鑑賞日2017/04/20 (木)
価格2,800円
「町興し」とは、また難しい題材を持ってきたな、というのが第一印象。
何故なら現在非常に緊喫の課題であり、政府が頭を抱えている案件だからだ。
「地方創生」だの「ローカル・アベノミクス」だのと本邦トップの頭脳が知恵を絞って取り組んでいる課題をテーマにどのように描くのか、期待半分、不安半分。
ネタバレBOX
最終的な落としどころとしては悪くないところに落ち着いた、のかな。
ただ目的が「町興し」なのか「合併阻止」なのか、どうにも混乱がみられるように思う。
セリフ上は「町興し」を目的に動いているようで、しかしストーリー上は「合併阻止」を目的に動いている。
合併してしまったら町興しは頓挫するの? 無意味になるの? そんなことは無いだろう。
町の名称は変わるし、行政的な立ち位置は変わるだろうけど、それでもそこが過疎化していることには違いなく、盛り上げることは必要になってくる。
宣伝にノスタルジックコメディとあったが、個人的にあまり笑えなかった。
そもそも登場人物に応援したい、頑張ってほしいと思う人物がいない。むしろ不愉快な人物が大半。
不愉快な人物の行動はただでさえ眉をひそめてしまうのに、ボケ方が中途半端なものだから「え? お前それマジでやってんの?」とイラッとしてしまった。
一例を挙げると、走り込んだら芸術的能力が向上する(してない)と解説するシーン。
これ、どういう受け取り方していいのか戸惑う。
「ツッコミの時の手が早くなったぜ!」と喜ばれても「……お、おう」としか感想がない。
(それで何か面白くなるの? まぁ、キレが良いとメリハリが付いて面白さが増すかもしれないけど、お前はそれ以前の問題だろ)
「そんなわけないじゃん!!!」とツッコミ不在のボケなのか、それとも「この人達の能力がどうしようもないレベルで低いこと」を描きたいのか戸惑う。
そういった違和感があるところとかコメディなのに「あんまり笑えない」といったことを除けば、ストーリー上に大きな破綻はなく、ちゃんとまとまっていたのでそこは評価したい。
登場人物に関しては、全体的に共通するなと感じたのが、キャラクターに一貫性がなく、どういう人物なのかが分からないこと。
前半と後半、また時にはその時々でがらりと変わるので違和感が凄い。
心情変化も急すぎて「え? そうなの?」ってなる。あれ役者さんちゃんと処理できているのかな。
以下、それぞれに対して思ったことを書いておきます。
◆エース:
序盤、乱雑でとっちらかった感のある舞台だったのが、彼の登場により一気に舞台が締まった。声の使い方も相まって空気が一変した。
他にもいくつか彼の仕草により雰囲気が変わったところがあって感心してしまった。いいじゃん。
もっとも性格は悪いけどな。
何なの? あの鼻につく立ち振る舞い。絶対、仲良くはなれそうにないな!
皆あいつを褒めていたんだけど、どうにもそんな風に感じられないので、ライトノベルであるようなどこが魅力が分からないけどモテまくる主人公みたいな違和感。
ところで、こいつ鷹子さんが殺されていたことを知らなかったけど、「現職の町長の娘が、町興しのためにアイドル活動をしていた際に、ファンに滅多刺しにされて、殺される」という非常にセンセーショナルな事件を知らないってどれだけ世情に疎いんだ。
世情に疎くても、そんなアイドルを撮った映像作品「アイドルが拾ったポエム(みたいなタイトル。憶えてない)」を監督し、賞を取った。モザイク目隠しあり(どんだけ隠したいんだ…)の映像作品だが、観る人が観れば分かるレベルということ。
マスコミからの取材は無かったのだろうか。
知らなかったということは無かったのだろう。あの映像作品って「知る人ぞ知る」みたいな? どの辺りの位置づけなんだろうね。
◆こっこ:
本作一番のクズ。勝手に人の職場に退職願い出すとか何なん? 間違いなく何かの法律に引っかかっているよね。
もし退職届を偽造していたとしたら、私文書偽造罪で引っ捕らえたいところ。勤め先視点で業務妨害でもいいかと。
登場人物はちょっと怒るだけで、すぐ許しているんだけど、なんで? 僕があんなことされたら懲戒免職に追い込むよ。
行政の担当者が自身の職務を遂行する上で違法行為に手を染めた。即刻クビにしてほしい人物です。
なぜ搦め手を使うんだ。正面から依頼せえよ。予算が10万円と桁が二つばかり足りないのが理由かもしれないけど、そういう卑怯卑劣な精神がもう無理。
そのくせ依頼を断られると、逆ギレして居丈高になる始末。マジ何なの?
ところで退職扱いにされた彼らは「ま、いっか」とのほほんとしていたけど、離職した後の各種保険の手続とかは大丈夫なのか? 失業保険を受け取りにハローワーク行かなくて大丈夫?
……まぁ、こっこが上手くやったのだろう。
◆マドンナ:
上記のように皆を退職に追い込んだ実行犯。自慢気に「私がやりました」と宣言していたけど、どゆこと?
政治家って市民の支持がなくなればあっという間に無職。親御さん町長らしいけど、親子共々路頭に迷いたいのかしら。
あんなに心臓が強そうなインパクトある登場をしておきながら、色々言われたら簡単に心折れる。
お姉さんのことを思い出すだけで情緒不安定になっていたのに、お姉さんが生きていたのを知っても驚き度が皆とそんなに変わらない。
などなど、どういうキャラクターなのかが全然分からない。
役者さん的には色々やりたいんだと思う。
小ネタを沢山披露したいんだろうと思う。
でもそれがありすぎてキャラクターがブレすぎている。
それをまとめるのが演出さんのお仕事だと思うんだけどな。あれでいいの? 切腹ネタとか浮いてない?
「ブスネタ」が何回かあったが、かなり不愉快だし、そもそもこれが一番重要なことだが、全くもって面白くない。
登場人物への評価が下がるだけなので(だから、あそこで止めた、たまちゃんの評価が僕の中で高まった)、どういう効果を狙ったものなのかがさっぱり分からなかった。
マドンナじゃなくて「ヤミです」ってギャグ面白いか? なぜ顔を傾けるのかも分からないし、そこまで黒くないし。中途半端だなぁ。
◆たまちゃん:
本作において一番好きなキャラクター。また一番の良識人ではなかろうか。
鷹子さんの「ね、きんたまちゃん」への「ぶっ殺すぞ(だったか)」の勢いのある毒舌ツッコミは笑った。あのシーンは彼女の笑顔での緩急さも相まって白眉のシーン。
それでも本作のキャラクターの一貫性がないことからは逃れられない。
「東京に行きたい」っていうのはどこに行ったのだろう……。
◆つる:
マルチ商法? ネットワークビジネス? 名称は何でも良いけど、連鎖販売取引やってる奴。
これの何が宜しくないって「友達を無くす商法」と言われているように、その強引な販売において自身のコミュニティを崩壊させるところ。現に友達いなくなったみたいだしね。
もちろん連鎖販売取引自体は違法ではない。
違法ではないが、そのコミュニティを崩壊させるため、通常そこの管理者は内部での勧誘を禁止することが多い。
ギャグのように勧誘シーンが繰り返されていたけど、全く笑えないんだよなぁ。エースかこっこ、あいつを止めろ。上手くいく仕事も上手くいかなくなるぞ。
マルチタレントとマルチ商法をかけたギャグな気がするけど、たぶん気のせいだろう。
◆そうちゃん:
農家っぽくない農家の人。
地味。
……いや、ごめん。地味以外に正直感想がない。
頑張るシーンが一つあったけど、それって農家なら普通じゃない?
ちょっと考えてみて。
収穫できなかったら収入ゼロだよ? 経費だけかかって赤字だよ。三年も失敗しているんだよね。お金大丈夫? 破産するよ?
「また来年頑張ればいいや」だって。なんであんな簡単に諦められるんだろう。一年間収入なしってヤバくない?
凄く危機感が足りない。他に収入があって農家は趣味レベルでやっているんじゃないかってぐらい危機感がない。
もちろん結局たまちゃんのおかげで頑張るんだけど、マイナスがゼロになっただけなので、うーんって感じ。
まぁ、たぶん作中で一番のハッピーエンドなんじゃないのかな。お幸せに。
◆ケンちゃん:
少女漫画とホラー漫画は近しいところにあるよ! 少女漫画はホラーが多くてね。松本洋子先生とか犬木加奈子先生とか!(90年代の人間なので…)と語りたい衝動に駆られた。
ところがエースがホラーだと認識したのは「台詞が寒くて鳥肌が立ったから」というもの。
え? ギャグが滑って寒いからホラーってどんな認識なの。お前どんだけ漫画に対する素養がないんじゃ!
特徴的な喋り方と衣装により、売れないマンガ家というよりも売れないデザイナーっぽいなと思いました。
◆野球野郎:
コントのVR(仮想現実)ネタはお年寄りに分からないと言われて反省したので、コントのネタはVRにしましたって、もう意味が分からない。
元々は役者を目指してて~みたいな設定があったが、冒頭に「ゴドーを待ちながら」を引用したシーンがあっただけで、特にその設定が生かされることはなかった。
まぁ、マルチの女といい、色々フラフラしてて定まらない~ということなのだろう。
◆鷹子さん
ファンに滅多刺しにされたアイドル?
「彼女は殺されました」という発言で一気に世界観が重くなり、さらにその詳細が昨年起こった実際の事件に似通いすぎて、僕はその事件のことを思い出してしまい、一気に現実に引き戻された。醒めてしまった。
……この設定、どういう意図なのだろうか。
実際の被害者もあなたと同じようにあっけらかんと心身ともに回復するといいなと思う。
「回想シーンなのか現実のシーンなのかを混同させることで、一種の叙述トリックのような伏線としてある仕掛け」をしたいんだと思う。
やりたいことは分かる。
でもそれはあまり成功していない。
もっとやってエースだけじゃなくてケンちゃんにも見えるようになって「え? ケンちゃん、恋しすぎて狂った?」ってなってから「ちゃんと足もある本物」って出てきたら成功したのかなあ。どうかなあ。
エースの回想シーンで、普通なら止まっている状態であるはずのそうちゃんが介入してきて回想と現実の境界が揺らいだシーンがあったけど、そういう違和感を元アイドルさんのところにもさせれば良かったかなあと思いました。
ところでさらっと「死んだ振りしていました」で流されたところだけど、実際にどうやったんだろう。
やることリスト
1.医療関係者への口止め
2.リハビリは自宅療法で
3.死んだという噂を流す
4.警察や司法関係者には黙認させる
(犯人の罪状が、殺人未遂事件と殺人事件では変わってくる)
5.マスコミに悟らせない。取材させない裁判を傍聴させない等、裏を取らせないようにする。
前述のように事件があまりにセンセーショナルなので、5.が非常に難しい。
「死んだという噂がある」だけでも彼らは動こうとするだろうから、その動向をいち早く察知して止める。
察知するのも困難だが、止める方法も非常に困難だ。口止め料という手を使おうにも親が町長である。政治資金規正法とか公職選挙法とかの法律に引っ掛かりそう。
いっそ開き直って死亡届を偽造するか。(公文書偽造)
秋田ヤバイな。
満足度★★★★
ショートコントを重ねて重ねて、一つの世界を描いていく。
笑えて笑えて、ちょっとしんみりしつつも、やっぱり笑えて。
これぞぬいぐるみハンターさんの真骨頂。
これこれ。こういうのが好きなんだよ。僕は。
小難しい話? とかどうでもいいんで。楽しく笑える話カモン!!
基本的な雰囲気はアルプスの少女ハイジ的な? いや、でも舞台は現代日本? 的な? よく分からんけれど、まぁ、そんな感じ。
一番の見所はヒロイン的なポジションたる満天ちゃんのドヤ顔。ドヤ顔が最高。ドヤ顔だけで笑える。
あとは、ああ、これ以上はネタバレになるので、書きづらいけれど、ヒントはぱくっと食べ(略
ああー、これ以上はネタバレーーーー!!!
ネタバレBOX
色々と不幸なこともあって客観的には不幸であっても、主観的には、その登場人物たる本人は幸せそうなお話というのもぬいぐるみハンターさんらしいと思う。
奈南「どこ中?」から始まる、一連の流れが凄く好き。義務教育を受けていないので、中学という概念を知らない満天とのすれ違い。
ちなみにご存じの通り「義務教育」の義務は教育を受ける義務ではなく、受けさせる義務だからね!
龍三お前ぇだよお前ぇ。お前に対する義務なんだよ!
世界は腐ってるとか汚れているとかどうでもいいけど法律は守ろうな!
基本的に楽しく面白いお芝居
ただ、それでも世界への絶望が重低音のように流れているのを感じる。
面白き こともなき世を 面白く
高杉晋作の辞世の句と呼ばれるものだが、面白くない世を面白く生きようという一見ポジティブなようでいて、しかし「面白くないこの世」というのが前提になっている。
「現実(リアル)なんてクソゲーだ!!」
――神のみぞ知るセカイ 桂木桂馬より
もちろんそう思うことも、ままあるけれど、それだけではないと僕は主張したい。
「時空(とき)の果てまで、この世界は余さず我(オレ)の庭だ。
故に我(オレ)が保証する。世界(ここ)は決して、そなたを飽きさせることはない」
―― Fate/Zero ギルガメッシュより
そう、世界というのはとてもとても面白いものなのだ。不幸なこと理不尽なこと、沢山ホントにたくさんある。
それでも世界の美しさ、数学の綺麗さ、自然科学の複雑さとシンプルさを素晴らしいと思う。
(古典物理学なんてF=maで全ての物体の動作が全部予測できるんだよ? ニュートン凄くない? と感動したもの)
「フィクションは素晴らしい。現実(リアル)なんてクソゲーだ!!」
「自然科学のなんと複雑かつシンプルであることか。フィクションなんて人間が考えたもの。単純で予定調和ばかりでつまらない」
この二つは僕の中で矛盾なく存在している。
フィクションの綺麗さ心地よさに浸りつつも、同時に世界の幅広さに感心してしまう。
その時の自分の心情によってどちらにも傾き得る。
どちらも正しく、どちらも素晴らしい。
だから、お芝居の世界から、こちらの世界に来た満天ちゃん。
貴女にこの世界の祝福があらんことを。
満足度★★
しゅうくりー夢 Vol.60
「天使の心臓」
~爆裂!GR7!アナザー・ワールド~
http://www.o-ren.com/chou/60/index.html
作者がこういうのが好きなんだろうなあというのが凄く伝わってくる。
うん、分かる分かる。
古くはコブラやシティーハンター、近年だとカウボーイビバップとかGetBackersとかビッグオーとか。最近だとスペース☆ダンディに銀魂など。
「何でも屋」「バディもの」「依頼者であるヒロイン」「その些細な切っ掛けが大きな事件に発展する」
いいよね!!
ただ、作者の想いが強すぎたのか、色々入れたい要素盛り沢山で尺の余裕がなかったためか。
起承転結の承がなかったからだろう。
僕は物語に入り込めないでいた。展開は目まぐるしく動いているんだけど、それだけ。
どこか他人事に感じてしまっていた。
主人公チームの景虎や猛。そいつらのことを僕はほとんど知らない。劇中でも、じっくり知る機会がなかった。しかも色々な状況をセリフで説明をしてしまう。
だから海外のニュースを見ているようなものだ。ドラマチックなんだろうけど、「可哀相だね」で終わって、明日には完全に忘れてしまうような。
そんな程度に僕は冷めてしまっていた。
ツライ。これがまたツライ。
目の前で役者が迫真の演技で音楽も雰囲気たっぷりのが流れているんだけど、まったく入り込めないでいるの凄くツライ。いたたまれない。帰りたい、おウチ帰りたい。
もう少し描きたいことを整理して絞って、まずは主人公チームにじっくりフォーカスを当てておいて、十二分に共感を得てから、主要な展開に至った方が良かったんじゃないかな。
それなしに敵対チームのことを描かれても、とっ散らかるだけ。
そんなことを思いました。
入り込めれば良かったのにね。「天使の心臓」の設定や伏線などは、ちゃんと練られてて良かったと思う。
とっても残念。
ネタバレBOX
ええーーーーーーーーーーー!!(ドン引き)
からの。
ええーーーーーーーーーーー!!(困惑)
前述の通り、僕は作品に入り込めないでいた。そのため、
「げ、ゲストヒロインが使い捨てヒロインなのは、こ、コブラの時からそうだから」(震え声)でなんとかダメージを最小限に食い止めておりましたよ。
間に合わないんかい!!!!!!!!
そうしておいて、あのラストのオチですよ。
えーと、一応主張したい。主張しておきたい。
僕はご都合主義は嫌いじゃない。
「お話の中でくらい、ハッピーエンドが見たいじゃないですか」(名言) ――というのはホントその通りだと思う。
しかし、いや、しかしだ。
そこに至るまでの経緯が雑すぎ…、というか、あれじゃあ主人公チームの立つ瀬がない!!
「もうダメだ。脈もない」(諦めよう→遺体も持って帰らない。見捨てる)~からのヒロイン復活! ダメじゃん! 主人公チームダメダメじゃん。お前ら何なの!? 役立たずなの?
ハードボイルド=胸くそ展開 って意味じゃないぞ!
一方、あの状態からも助けてくれた、ジョーカーの部下の人、ええと、宣伝チラシを確認したらル・ヴァーレ?さんか。優秀! 超優秀!!
――というか、今回のお話、ほとんど全部あの人の手の平の上だよね。
余談だけど、あの人、絶対自分で切り落とした指は保存していると思うの。
切り口に対して酸素と栄養補給をして、グジュグジュ状態にしておけば、劇中の医療水準を持ってすれば再生することは容易!! やってる。あの優秀っぷりからしたら絶対対策してるって。
いやー、いいよね。虐げられていた部下が実は影の支配者という展開。散々暴れ回ったトップは実は道化。単なる広告塔。シンボル。
僕も被害者と思ってたヒロインが黒幕というパターン好きです。被害者には違いないんだけど、被害者のまま加害者になるという。
宮部みゆきのアレとか京極夏彦のアレとか奈須きのこのアレとアレとかさ!!!
それに引き替え、主人公チームときたら。
・短気を起こして、そのためにターゲットであるお嬢様を見失う
・その際に、ゆうりを巻き込む。
・ゆうりの希望(妹に会いたい)は叶えられず
・ゆうりの復讐実行を止められず
・ゆうりの救出ならず
・ジョーカーとの決着は諦める。
ええと、今回の事件において右往左往してただけで何にも出来てないよね。
酷くない? もうちょっと活躍の場面があっても良くない?
情報屋ジャッカルとおタカさんしか活躍してないように思えましたので、これからは、お二方のご活躍を祈念しております。
追記:ヒロインが助かったのは、妹の「置き土産(亡骸)」のおかげ! そうに決まってる!!
満足度★★★★
コスパ最高!
コスパいいよーっと聞いていたけど、本当に良かった。
今回は6作品の連続だけど、15分で結構な満足度だったので、一作品これくらいのボリュームだと気軽に観れていいと思う。
映画でも同様だけど、2時間近くを確保するというのは現代社会だと少々辛いからね。(短い動画コンテンツが流行っているのもそういうことだし)
舞台背景と合わさった映像表現、プロジェクションマッピングがとっても素敵。吃驚した!
ネタバレBOX
1.キ上の空論:日々が黒くなるその前に…って
いきなり下ネタをぶっ込んできたな~からの悲しい展開。あの恋人のイヤミすら感じられる丁寧な態度がいいね。
ただちょっとセリフで説明しすぎな感があった。口に出さなくても十分伝わるよ。あとタキシードはちゃんとしたのを用意してほしいと思いました。礼服に見えなかった…。
2.ぬいぐるみハンター:みゆき
笑えない展開をノリと勢いと会話の洒脱さで笑わせてくれるのはさすが池亀作風。高速展開に高速セリフ。豆柴ブン投げたー!「盲点だった」は笑う。
「えい、えい」とドヤ顔で門番の練習するみゆきちゃん可愛い。妄想が現実化して王子様が出てきても、どこか違ってて、それが物悲しい。
3.日本のラジオ:ハーバート
あいつもこいつもセリフの間がなくて棒読みなのが怖い。怪談風ではあるのだけど、語りは怪談テイストではなく感情の乗ってない平坦な語り口。動きがなく退屈ですらある。しかしそれが物語の鍵になっているような。
果たして正常な人間はあの場にいたのだろうか。それが分からないのが怖い。最後のセリフとおじぎがその想像を加速させる。
日本のラジオさんの作品は、僕にとって合う合わないが分かれるけど、残念ながら今回は合わない方だった。
4.かわいいコンビニ店員飯田さん:虹はどしゃぶりの雨で咲く
くるりと流転する立場。立場が変わっての天丼が笑いを誘う。
「合理的説明」とやらをまくし立ててるけど、要はあの彼氏は欲望の赴くままにやることやってるだけだからな! あの男が女だったらと想定すればその詭弁さがよく分かる。「虹はどしゃぶりの雨で咲く」とのタイトルだが、その雨を降らしているのは誰なのか。それが虹自身ならば人はそれを自作自演という。
騙されなかったマナミさん凄い! えと、騙されなかったよね…。
5.キュイ:前世でも来世でも君は僕のことが嫌
仰々しいモノローグと共に展開される暴力描写。直接的ではないのに芝居と演出でこんなにも痛い。理由はあるようで全くない。
正義の象徴たるものが暴力を振るい、弱者たる女子供にも暴力が振るわれて、そしてその弱者も暴力を振るい返す。「嫌いだ」という感情と共に連鎖していく暴力。因果応報とはかけ離れた地獄絵図。
……ごめんなさい。全く分かりませんでした。
たぶんこの辺りで集中力が切れたからです。
あの警官をみて「オーデュボンの祈り」って小説に似たような悪徳警官でてきたけど、こっちの方がまだましかなあ。あいつ、カップルを拉致してボコボコにして、男性のほうに「女を好きにしていいと言え。そしたらお前だけは助けてやる」と言ったりするように「尊厳」を奪おうとするからなあとか、なんかそんなことを考えてました。すみません。
6.Mrs.fictions:上手も下手もないけれど
なんという完成度。本企画最後のお芝居としてこの上なく相応しい。
上手幕外からのライト演出は本当に良かった。まぶしかったけど、それが新しい舞台への旅立ちということが伝わってきた。
他にも描いていないところをも想像させる演出が実に丁寧。
満足度★★★★
すべてはゼロになる ~タナトスへのいざない~
贅沢なお芝居だったなあ。
音響、照明、舞台装置といった装飾を取っ払って、キャストだけで魅せる芝居。それをこんな少人数の観客で独占。
キャストが良いわぁ、凄いわぁ。――というかキャストが良くないと出来ないよ、これ。
お話は、ガソリンスタンドで煙草を吸うが如くの緊張感。
禁煙って書いてあるのにね。ま、ヤクザだからしょうがないね。
パンフレット付きのを買ってみたけど、これは買って正解だった。小ネタ付き、本公演の戯曲付きのパンフ。作りもしっかりしてて素敵。
ネタバレBOX
この物語のトリックスターであるところのアヤちゃん。
キャラクターがいいよね。喋る度にゾクゾクしてたわ。
人には『エロス(生への衝動)』と『タナトス(死への衝動)』があり、通常はその二つのバランスの中で生きているのだそうな。
ところが彼女は性欲が希薄なのだという。
エロスがなければ当然タナトスへと引っ張られる。飲み込まれる。
それでも、飲み込まれそうになってても、なにがしかの希望をみて『賭け』に出たんだ。
僕はそれに勝つことを願った。予感的には負けるのだろうけど、どうか勝つように祈った。
あのミュージシャンでもあの下っ端でもいい、彼女に協力して打ち勝つ未来が来るようにと。
――っていうかさぁ! 親分を殺されてるのにその殺した相手に易々と従うとか兎本お前なんなのマジで!
ホント屑。基本卑怯。一般社会に馴染めず、反社会的勢力に属している奴らは大体そう。任侠道(笑)
「クスリはカタギに迷惑をかけるからやらない」とか言っても二次団体三次団体でやることは黙認。クスリでシノギをあげてても知らん振り。お金儲けの前には無かったことにする。(現実と混同中)
ミュージシャンの帆井もどうよ。
……いや、分かるよ。たぶん僕だったら一番近いのは彼だよ。同じ状況になったら右往左往して何にも出来ないだろうよ。
(混乱しているシーン凄かった)
それでも頑張ってほしかった。あともうちょっと勇気を出してほしかった。そうすれば状況が変わったのかもしれないのに――。
そう思ってたんだけど。
「お前の子宮に潜りたい」
胎内回帰願望かよ! こっちもタナトスじゃねーか!
「クスリの効果を知ってた」のに「使った」のはそういうことか。
なんだよ。
「死に魅了された」奴らばっかじゃねーか!!(解体業の二人は言わずもがな)
兎本の叫びにも納得ですわ。
で、最後に篠原さん。
パンフレット読んでて気付いた。これ「ラクエンノミチ」の後の話か!
観劇中、篠原さん(の中の人)は「ラクエンノミチ」の方が凄みがあったのになあと思ってたけど、なるほど、パワーダウンしていたのは大怪我したからか。
――っていうか生きてたんだ。良かった良かった。しぶとい、さすが篠原さんしぶとい。
あ、いや、今回で死んでんだけど。
https://twitter.com/fragngt/status/724611100981882884
> 部下に慕われたい
篠原さん、あんた……。
満足度★★★
神のゲームか悪魔のゲームか
煌びやかなライトとリズミカルな楽曲、そして派手でハイテンションな司会者とともに始まるクイズ番組。
いまやテレビ番組の定番であり、そう珍しいものではない。
ただし、回答者が椅子に縛られ拘束され、しかもクイズの内容が「回答者自身のプライベートなこと」であることを除いては。
東京ジャンクZvol.5 『HARD LUCK SHOW』
騙されて連れてこられた卒業間近の大学生達。
回答者はこの5人。
誰も知らない、自分しか知らないはずのことがクイズの問題となる。しかも正解も間違いなく存在している。
出題者は全てを見通せる『神の視点』とでも言うべき超常的な力を持っているのだろうか。
さらには全問正解の賞品は「今までのハードラックな人生をチャラに出来る」というにわかには信じがたいもの。メフィスト・フェレスがごとく囁き。
ならば、より正しくは神ではなく悪魔の方か――。
情報化の所為で、Facebookで趣味と人間関係丸分かりで、Twitterはバカ発見機と呼ばれ、LINEでは秘密が暴露され、全てが「視覚化」される時代。
全てを知っているのは神か悪魔か、それとも――システムか。
シリアスで全編緊張感のある舞台。特に回答者の答えが正解か否かが分かる前の緊張感といったら半端ない。
前述の通り、ほとんどの役者陣が椅子に固定され動かない――というか動けない。
全席自由なため「じゃあ、それなら憧れの俳優さんの近い席に~」といったことも可能であり、主催者側もそう意図していると思われるのだが……。
目が合いっぱなしで、いたたまれないよ!!
これは目をそらさずにはいられないですわ。
無理だわー。僕には無理だわー。舞台上の役者をずっとガン見し続ける精神力は僕には無いわー。
役者のほとんどが動かないということは、舞台上の動きも乏しいということになるのだが、舞台上にギミックが多数仕掛けられ、司会者役のハイテンションさもあり飽きさせない工夫はされている。
ただ同じような『クイズ』が続いてしまうところは、やや退屈に感じてしまった。
(なんとかショートカットしようと試みはされていたようだが)
触れ込みは『お客様体感型のアトラクション番組』。
その通り、観客も『舞台の装置』として取り込まれているのが面白い。
10分間の休憩時間でも観客は装置として取り込まれたままである。実にメタ的。
一番、魅力的キャラクターだったのが、平さん。
あの何をするか分からないピーキーさは本当に魅力的!(ホラー的な意味で)
二時間という長丁場であり、ややお尻が痛くなったが、同じような時間だけ椅子に固定された役者の方のことを思うとマシかもしれないね……。
ネタバレBOX
超常的な力を持った「神のゲーム」みたいなものかなーと思わせておいて、実は「ほぼ個人によるゲーム」というひっくり返しが面白いね。
確かに一定の技術さえあれば可能だ。配信するのはニコ生? ツイキャス? 情報化社会の皮肉。
終わりのオチも面白い。
ただ、その面白さはあくまでアイデアとしての面白さで終わっていて、きちんと最後まで物語として落とし込めてなかったのが残念。アイデアは良いだけにとっても残念。
東京ジャンクZさんは「人間賛歌」をキーワードにしているとのこと。
であるならば、さらにあの状態からその先を描いてこそだと思うのだ。Twitterでやらかした彼ら。彼らのその後を是非とも観たいと思う。
そう、前作の『蒼いラフレシアの鼓動』でもそうだったのだが投げっぱなしエンドは良くない。ちゃんと広げた風呂敷は畳んでほしい。
佐々木さん(前作のヒロイン的存在)は助かったんだよな!!! こっちはまだ気になってんだよ!! 『絵本入りこみぐつ』使うぞ! ゴラァ!
……失礼。
閑話休題。
観客も舞台の装置として取り込むというアイデアもそうで、休憩時間までは上手く使っているのに、後半ではほとんどその役割が放棄されていたのが実に勿体無く思ったな。
最後まで上手く活用できず物語として組み込めていなかった。
このように色々と面白いアイデアを巧く練り込むことが出来れば格段に面白くなると思うのです。
あと、東京ジャンクZさんを何回か観劇させてもらって気になったこととして、メンバーの演技がパターンになっているように感じます。
違う舞台の違うキャラクターであっても、「あ、その表現、前にも観たことある」と感じることが多々あるんですね。
つまり怒る時はこの演技、凄む時はこの演技、パニックになるときはこの演技、というように固定されてしまっている。そのためか演技自体が軽く感じられてしまう。
特に、鐵さん、小川さん、佐伯さん。この3名が特にそう感じました。
役を作り込むか、または引き出しの数を増やして頂くことでより良くなるかと思います。
これからの益々のご活躍を楽しみにしています。