この街がなくなる 公演情報 MICOSHI COMPLEX「この街がなくなる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    鑑賞日2017/04/20 (木)

    価格2,800円

    「町興し」とは、また難しい題材を持ってきたな、というのが第一印象。
    何故なら現在非常に緊喫の課題であり、政府が頭を抱えている案件だからだ。
    「地方創生」だの「ローカル・アベノミクス」だのと本邦トップの頭脳が知恵を絞って取り組んでいる課題をテーマにどのように描くのか、期待半分、不安半分。

    ネタバレBOX

    最終的な落としどころとしては悪くないところに落ち着いた、のかな。

    ただ目的が「町興し」なのか「合併阻止」なのか、どうにも混乱がみられるように思う。
    セリフ上は「町興し」を目的に動いているようで、しかしストーリー上は「合併阻止」を目的に動いている。

    合併してしまったら町興しは頓挫するの? 無意味になるの? そんなことは無いだろう。
    町の名称は変わるし、行政的な立ち位置は変わるだろうけど、それでもそこが過疎化していることには違いなく、盛り上げることは必要になってくる。

    宣伝にノスタルジックコメディとあったが、個人的にあまり笑えなかった。
    そもそも登場人物に応援したい、頑張ってほしいと思う人物がいない。むしろ不愉快な人物が大半。
    不愉快な人物の行動はただでさえ眉をひそめてしまうのに、ボケ方が中途半端なものだから「え? お前それマジでやってんの?」とイラッとしてしまった。

    一例を挙げると、走り込んだら芸術的能力が向上する(してない)と解説するシーン。
    これ、どういう受け取り方していいのか戸惑う。
    「ツッコミの時の手が早くなったぜ!」と喜ばれても「……お、おう」としか感想がない。
     (それで何か面白くなるの? まぁ、キレが良いとメリハリが付いて面白さが増すかもしれないけど、お前はそれ以前の問題だろ)
    「そんなわけないじゃん!!!」とツッコミ不在のボケなのか、それとも「この人達の能力がどうしようもないレベルで低いこと」を描きたいのか戸惑う。


    そういった違和感があるところとかコメディなのに「あんまり笑えない」といったことを除けば、ストーリー上に大きな破綻はなく、ちゃんとまとまっていたのでそこは評価したい。

    登場人物に関しては、全体的に共通するなと感じたのが、キャラクターに一貫性がなく、どういう人物なのかが分からないこと。
    前半と後半、また時にはその時々でがらりと変わるので違和感が凄い。
    心情変化も急すぎて「え? そうなの?」ってなる。あれ役者さんちゃんと処理できているのかな。

    以下、それぞれに対して思ったことを書いておきます。

    ◆エース:
    序盤、乱雑でとっちらかった感のある舞台だったのが、彼の登場により一気に舞台が締まった。声の使い方も相まって空気が一変した。
    他にもいくつか彼の仕草により雰囲気が変わったところがあって感心してしまった。いいじゃん。
    もっとも性格は悪いけどな。
    何なの? あの鼻につく立ち振る舞い。絶対、仲良くはなれそうにないな!
    皆あいつを褒めていたんだけど、どうにもそんな風に感じられないので、ライトノベルであるようなどこが魅力が分からないけどモテまくる主人公みたいな違和感。

    ところで、こいつ鷹子さんが殺されていたことを知らなかったけど、「現職の町長の娘が、町興しのためにアイドル活動をしていた際に、ファンに滅多刺しにされて、殺される」という非常にセンセーショナルな事件を知らないってどれだけ世情に疎いんだ。
    世情に疎くても、そんなアイドルを撮った映像作品「アイドルが拾ったポエム(みたいなタイトル。憶えてない)」を監督し、賞を取った。モザイク目隠しあり(どんだけ隠したいんだ…)の映像作品だが、観る人が観れば分かるレベルということ。
    マスコミからの取材は無かったのだろうか。
    知らなかったということは無かったのだろう。あの映像作品って「知る人ぞ知る」みたいな? どの辺りの位置づけなんだろうね。


    ◆こっこ:
    本作一番のクズ。勝手に人の職場に退職願い出すとか何なん? 間違いなく何かの法律に引っかかっているよね。
    もし退職届を偽造していたとしたら、私文書偽造罪で引っ捕らえたいところ。勤め先視点で業務妨害でもいいかと。
    登場人物はちょっと怒るだけで、すぐ許しているんだけど、なんで? 僕があんなことされたら懲戒免職に追い込むよ。
    行政の担当者が自身の職務を遂行する上で違法行為に手を染めた。即刻クビにしてほしい人物です。

    なぜ搦め手を使うんだ。正面から依頼せえよ。予算が10万円と桁が二つばかり足りないのが理由かもしれないけど、そういう卑怯卑劣な精神がもう無理。
    そのくせ依頼を断られると、逆ギレして居丈高になる始末。マジ何なの?

    ところで退職扱いにされた彼らは「ま、いっか」とのほほんとしていたけど、離職した後の各種保険の手続とかは大丈夫なのか? 失業保険を受け取りにハローワーク行かなくて大丈夫?
    ……まぁ、こっこが上手くやったのだろう。


    ◆マドンナ:
    上記のように皆を退職に追い込んだ実行犯。自慢気に「私がやりました」と宣言していたけど、どゆこと? 
    政治家って市民の支持がなくなればあっという間に無職。親御さん町長らしいけど、親子共々路頭に迷いたいのかしら。

    あんなに心臓が強そうなインパクトある登場をしておきながら、色々言われたら簡単に心折れる。
    お姉さんのことを思い出すだけで情緒不安定になっていたのに、お姉さんが生きていたのを知っても驚き度が皆とそんなに変わらない。
    などなど、どういうキャラクターなのかが全然分からない。

    役者さん的には色々やりたいんだと思う。
    小ネタを沢山披露したいんだろうと思う。
    でもそれがありすぎてキャラクターがブレすぎている。
    それをまとめるのが演出さんのお仕事だと思うんだけどな。あれでいいの? 切腹ネタとか浮いてない?

    「ブスネタ」が何回かあったが、かなり不愉快だし、そもそもこれが一番重要なことだが、全くもって面白くない。
    登場人物への評価が下がるだけなので(だから、あそこで止めた、たまちゃんの評価が僕の中で高まった)、どういう効果を狙ったものなのかがさっぱり分からなかった。
    マドンナじゃなくて「ヤミです」ってギャグ面白いか? なぜ顔を傾けるのかも分からないし、そこまで黒くないし。中途半端だなぁ。


    ◆たまちゃん:
    本作において一番好きなキャラクター。また一番の良識人ではなかろうか。
    鷹子さんの「ね、きんたまちゃん」への「ぶっ殺すぞ(だったか)」の勢いのある毒舌ツッコミは笑った。あのシーンは彼女の笑顔での緩急さも相まって白眉のシーン。
    それでも本作のキャラクターの一貫性がないことからは逃れられない。
    「東京に行きたい」っていうのはどこに行ったのだろう……。


    ◆つる:
    マルチ商法? ネットワークビジネス? 名称は何でも良いけど、連鎖販売取引やってる奴。
    これの何が宜しくないって「友達を無くす商法」と言われているように、その強引な販売において自身のコミュニティを崩壊させるところ。現に友達いなくなったみたいだしね。
    もちろん連鎖販売取引自体は違法ではない。
    違法ではないが、そのコミュニティを崩壊させるため、通常そこの管理者は内部での勧誘を禁止することが多い。
    ギャグのように勧誘シーンが繰り返されていたけど、全く笑えないんだよなぁ。エースかこっこ、あいつを止めろ。上手くいく仕事も上手くいかなくなるぞ。
    マルチタレントとマルチ商法をかけたギャグな気がするけど、たぶん気のせいだろう。


    ◆そうちゃん:
    農家っぽくない農家の人。
    地味。

    ……いや、ごめん。地味以外に正直感想がない。
    頑張るシーンが一つあったけど、それって農家なら普通じゃない?
    ちょっと考えてみて。
    収穫できなかったら収入ゼロだよ? 経費だけかかって赤字だよ。三年も失敗しているんだよね。お金大丈夫? 破産するよ?
    「また来年頑張ればいいや」だって。なんであんな簡単に諦められるんだろう。一年間収入なしってヤバくない?
    凄く危機感が足りない。他に収入があって農家は趣味レベルでやっているんじゃないかってぐらい危機感がない。

    もちろん結局たまちゃんのおかげで頑張るんだけど、マイナスがゼロになっただけなので、うーんって感じ。
    まぁ、たぶん作中で一番のハッピーエンドなんじゃないのかな。お幸せに。


    ◆ケンちゃん:
    少女漫画とホラー漫画は近しいところにあるよ! 少女漫画はホラーが多くてね。松本洋子先生とか犬木加奈子先生とか!(90年代の人間なので…)と語りたい衝動に駆られた。
    ところがエースがホラーだと認識したのは「台詞が寒くて鳥肌が立ったから」というもの。
    え? ギャグが滑って寒いからホラーってどんな認識なの。お前どんだけ漫画に対する素養がないんじゃ!

    特徴的な喋り方と衣装により、売れないマンガ家というよりも売れないデザイナーっぽいなと思いました。


    ◆野球野郎:
    コントのVR(仮想現実)ネタはお年寄りに分からないと言われて反省したので、コントのネタはVRにしましたって、もう意味が分からない。
    元々は役者を目指してて~みたいな設定があったが、冒頭に「ゴドーを待ちながら」を引用したシーンがあっただけで、特にその設定が生かされることはなかった。
    まぁ、マルチの女といい、色々フラフラしてて定まらない~ということなのだろう。


    ◆鷹子さん
    ファンに滅多刺しにされたアイドル?
    「彼女は殺されました」という発言で一気に世界観が重くなり、さらにその詳細が昨年起こった実際の事件に似通いすぎて、僕はその事件のことを思い出してしまい、一気に現実に引き戻された。醒めてしまった。
    ……この設定、どういう意図なのだろうか。
    実際の被害者もあなたと同じようにあっけらかんと心身ともに回復するといいなと思う。

    「回想シーンなのか現実のシーンなのかを混同させることで、一種の叙述トリックのような伏線としてある仕掛け」をしたいんだと思う。
    やりたいことは分かる。
    でもそれはあまり成功していない。
    もっとやってエースだけじゃなくてケンちゃんにも見えるようになって「え? ケンちゃん、恋しすぎて狂った?」ってなってから「ちゃんと足もある本物」って出てきたら成功したのかなあ。どうかなあ。

    エースの回想シーンで、普通なら止まっている状態であるはずのそうちゃんが介入してきて回想と現実の境界が揺らいだシーンがあったけど、そういう違和感を元アイドルさんのところにもさせれば良かったかなあと思いました。

    ところでさらっと「死んだ振りしていました」で流されたところだけど、実際にどうやったんだろう。
    やることリスト
    1.医療関係者への口止め
    2.リハビリは自宅療法で
    3.死んだという噂を流す
    4.警察や司法関係者には黙認させる
     (犯人の罪状が、殺人未遂事件と殺人事件では変わってくる)
    5.マスコミに悟らせない。取材させない裁判を傍聴させない等、裏を取らせないようにする。

    前述のように事件があまりにセンセーショナルなので、5.が非常に難しい。
    「死んだという噂がある」だけでも彼らは動こうとするだろうから、その動向をいち早く察知して止める。
    察知するのも困難だが、止める方法も非常に困難だ。口止め料という手を使おうにも親が町長である。政治資金規正法とか公職選挙法とかの法律に引っ掛かりそう。
    いっそ開き直って死亡届を偽造するか。(公文書偽造)
    秋田ヤバイな。

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    2017/04/22 08:58

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