
第27班 本公演9つめ『蛍』
オフィス上の空
萬劇場(東京都)
2019/03/20 (水) ~ 2019/03/24 (日)公演終了
満足度★★★★
将棋盤をセットの中心に縦横無尽の群像劇。
気になる人物、気になる関係、気になる秘密があちこちに点在して忙しいほどに目が離せない!
哀しい少年の物語であり、もう一人の男の物語であり、彼等を取り巻く家族や仲間達の物語であり・・・沢山の人生が丁寧に描かれているので相当な見応えがありました。
何らかの志を持った人物が多く、最初のうちは見え隠れする“影”を気にしながらも、真っすぐなエネルギーの波長が心地良いと思って観ていたのですが、まさか後半にこんな繋がりや展開が待ち受けているとは想像もしていませんでした。
先に「哀しい少年」と書きましたが、そんな簡単な括りで人生を表せるものでもなく、全ての登場人物が紡いできた道のり、年月の流れ、清濁合わせもって押し寄せてきます。
その取れ高の余りの多さに、ラストから逆にストーリーをなぞって、ひとつひとつを噛みしめながらの帰り道でした

キャンパーズ シークレット
Oi-SCALE
サイスタジオコモネAスタジオ(東京都)
2019/03/19 (火) ~ 2019/03/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
まるで秘密基地、地下へと降り通路を通り抜けて、目の前に出現した会場は、
舞台スペース、広っ!まさに「キャンプ場」という異空間。
スタッフさん(後に役者さんと判明)の誘導を必要とする手間をもっても、徹底したこだわりを優先させる姿勢が思いっきり楽しい!
キャンプ場に続々と集まってくる慣れ親しんだ仲間達を観客が取り囲んで観る舞台。
一歩踏み出せば自分も参加できそうな空間。
そこは都会の喧騒から遠く離れた「特別な場所」であり、不便とリラックスを楽しむ人達が創り出す空気が程よく流れ込んできます。
最初のうちこそアウトドアの空気感や都会から持ち込まれた会話を参考に登場人物達を傍観する面白味をじっくり楽しんでいたものの時折ピリッとくる緊張感のせい?徐々に作品の奥部へと引きずり込まれていく不思議な感覚に。
冷たい風が吹き抜けていったような錯覚。
本物の炎は当然使用されていないにもかかわらず、まるで闇夜を妖しく照らす炎の魔力に一緒になって惑わされてきた後味が残ります。
パンフレットに掲載された「銭亀の滝キャンプ場」MAPだけを取っても、どれだけ練りに練られた賜物であったか想像に難くない作品であり、その手腕の流れにただただ身を委ねられる幸せ。
キャンプ場を舞台にした人間模様を臨場感たっぷりに鑑賞する作品であったとしても満点な質の高さでしたが、更にその先・・・炎の奥に見えたモノ・・・作者の内面世界にまで引き込まれてしまったかの様な体感を得られるなんて、うなされるにも似た燃え広がっていくミステリアスな時間、まさに身をもってゾクゾクっとしました。

AnOthEr R/LIghtS
有限会社がらんどう
APOCシアター(東京都)
2019/03/16 (土) ~ 2019/03/17 (日)公演終了
テロ事件など日常茶飯事の混乱した社会。
壁にしっかりと囲まれた世紀末感漂う街の中で、人を、社会をじっと見つめる少年の視線。
僅か2公演。この日の為に結集し制作された公演には若者達が今どうしても表現したかったのであろうメッセージが詰め込まれていて胸が熱くなりました。
仕組まれた窮屈な容器、腐敗した雨風にさらされた状況下でも育っていく青い芽。
翻弄されるだけでは留まったままではいられない大切なこと・・・どこか懐かしい香りがしました。

THE Negotiation
T-works
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/03/13 (水) ~ 2019/03/17 (日)公演終了
満足度★★★★★
代表同志が繰り広げる、お互い負けを許さぬ交渉劇。さぞかし頭を使いまくる作品であろうと鼻息荒くして行きましたが、何ともウイットに富んだ「駆け引きエンターテイメント」でした。
格調高きホテルが「交渉」という名の戦いの舞台。
何としてでも相手方をマウンティングしたい両チーム。
時には用意周到に、時には臨機応変に・・・経営陣らしいインテリジェンスでキレッキレな人達、そのキャラクターがギャップとなって狡猾な策略の数々に逐一笑わされてしまいます。
時には格調高きホテルマンまで巻き添えに(笑)
第一ラウンド⇒反省会⇒第二ラウンド⇒反省会⇒・・・の如く交渉の合間に入る、双方の出方に対する咀嚼と次なる攻略作戦会も面白かったです。
笑いを誘う切れ者な雰囲気をまとった登場人物ばかり。
どちらかに肩入れしたくなるというより、どちらも応援したくなってくるのが作品の魅力だと思えました。

WHATEVER?
劇団てあとろ50’
早稲田大学学生会館(東京都)
2019/03/08 (金) ~ 2019/03/10 (日)公演終了
当日パンフの挨拶文には本公演の主宰さんが今回主宰初挑戦であり、同時に脚本・演出も初めて手掛けられているとの情報が。
「おっとー、これは暖かい目で観たほうが良さそう」と、どこか一段高い所から考えていましたが、とんでもない思い上がりでありました。
これって初めての人間が創り出すクオリティー?!
タイムトリップという数多あるシチュエーションでありながら、やたら面白い。
早稲田女(ワセジョ)の男前な芝居、いやいや男性陣も大健闘。
何より演技スキルの高い2名を中心にした役割配分、バランスが絶妙。
学生演劇の瑞々しさも活かしながらの笑い満載な人生選択ストーリー。
もし本作品に演劇を志す決意表明の意味がこめられていたのであれば、良質なエンターテイメントを手掛ける才能は充分備わっていると思わせる完成度でした。

名前を呼んで、もう一度
ウィークエンドシアター
Arise 舞の館(東京都)
2019/03/09 (土) ~ 2019/03/24 (日)公演終了
満足度★★★★
前回、結婚式場として拝見した「大安不吉日」の同会場が、今回は男女5人を閉じ込める謎の密室に。
ウィークエンドシアターさんは会場(Arise 舞の館)の使い方がとにかく巧い。
全席がVIPシート(テーブル付)の贅沢な空間。
観客はさしずめ密室の(透明な)壁のすぐ向こう側から監禁された彼等を取り囲み、その動向をお茶まで楽しみながら優雅に観察している、そう!性格の悪~い富裕層のよう(笑)
ただそんな呑気な想像も一気に吹き飛ぶ展開に・・・終演後は唖然としたまま暫し言葉を失うことに。
監禁モノだからといって、決して大げさなヒステリック芝居には走らず、流れと共に繊細な演技の変化が見て取れる演出が見事です。
欲を言うなら「もっと観たかった!」の一言。
濃厚な時間でしたが、ホントもっと観たかったです。
納得の3度目の再演作品、将来的には4度目も期待できそう。
次回は是非ボリュームアップを。

One Situation Four Texts
舞台企画 斜楽生
萬劇場(東京都)
2019/03/06 (水) ~ 2019/03/10 (日)公演終了
満足度★★★★
毛色も内容も全く異なる個性的な4作品共通の舞台セットはシックでダイナミックでどこかファンタジック。
開演までの間、しげしげと見惚れてしまいました。
『アミューズ・ブーシュ』作・演出「7%竹」主宰
笑わせる事に長けたノリでもって、何かと自己アピール上手。
そのアピール上手が心憎いです。
例え親が亡くなったとしても、こんな賑やかに見守ってくれるなら寂しくないなぁと素敵に思えたホームコメディー。
『コミックストーリー』作・演出「マリーシア兄弟」主宰
今回お目当てだった劇団マリーシア兄弟さんの作品。
タイトルからコメディーを連想、ところがどっこい がっつりヒューマンドラマでした。
落語の世界、真摯に取り組む熱意が伝わってくるのは非常に良かったものの、本来の持ち味が何故か封印されている気がして、どこか勿体ないと思ったのが正直な感想。
『クライマックスに向かってる』作・演出「青色遊船」主宰
群像劇・・・元々4つに切り分けられた3番目の蓋を開けると、更に切り分けられているというまさか・・・できれば単独で観た方が効果的ではないかと思えた、ほろ苦い旨味の広がってくる作品。
『ツルのハ』作・演出「劇団時間制作」主宰
3人組の大学生が、ある姉妹を誘拐監禁・・・始まった一瞬にして身が凍り付き、取り込まれてしまう圧倒的な手腕。
一体この事件は彼等のどの時間までさかのぼれば防げたというのか・・・このパートの時間だけ妙に濃厚に感じられたのが不思議。
今回のセットを最も効果的に活用されていたのも大きかった。
過去に一度作品を拝見させて頂いた時には「自分とは相性が良くないのかも」と思ってしまったのが嘘のようでした。

TOCTOC あなたと少しだけ違う癖
株式会社NLT
ザ・ポケット(東京都)
2019/02/28 (木) ~ 2019/03/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
心の疾患を題材に、こんなにポップでエキサイティングな作品が出来上がるなんてフレンチコメディー恐るべし(笑)
役者さんの存在感には各々華があり、交錯する会話も実に賑やかなる長編喜劇でした。
患者さんが一人増えていくごとに、面白さが増幅していき患者さん全員が揃ったところでMAXに。
そのまま揃い踏み状態がずっと続くのですから、つまりはMAX状態がず~っと続くということ。
治療を試みるシーンでは、観ているこっちも思わず力が入り、その後プッと噴き出してしまいました。
この作品で炸裂する笑いの法則のひとつには、昨年のM―1グランプリで3位に輝いたジャルジャルの可笑しさと通じるモノがあると思ったのですがどうでしょう。
軽快なテンポと絶妙なノリがとても重要、見事な連携プレーでした。

コマギレ
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2019/02/28 (木) ~ 2019/03/04 (月)公演終了
観終わっても暫くはじっとしたまま余韻に浸っていたい、と思う公演でした。
ラビット番長さんの将棋モノはこの作品で3度目ですが、将棋の知識が無くても大丈夫というか、むしろ知識無い方が純粋に楽しめるのではないかと思えるほどです。
フィクションと分かっていながらも、ひとつひとつの試合の行方に固唾をのみ、その結果から生まれる物語の流れに心地よく乗ったまま、とうとう最後の試合へと流れ着いてしまいました。
千秋楽、主演・雪島さら紗さんの本当のラストステージ。最高に輝いていました。

人魚のウタ
ガンガンガング
シアター711(東京都)
2019/02/28 (木) ~ 2019/03/03 (日)公演終了
満足度★★★★
旗揚げ公演でありながら、もう既に脂が乗っていましたね。
生命力弾ける演技の見事にまとまっている感「人魚のウタ」ワールドがしっかり出来上がっていました。
人間に捕らえられた人魚は意外と控えめな印象で、その人魚を取り巻く村民達の思惑がビシバシ駆け巡る物語。
特に人魚をかくまう兄と、世間に疎い彼等を利用して甘い汁を吸おうとする男との1対1の掛け合いは火花バチバチ、観ていて壮観でした。
村全体に教養さえあったなら、違った展開になっていただろうに、ユーモアの中に無知なる人間の恐ろしさが漂ってくるこの感じ・・・知らず知らずのうち集団の中の一人として残酷な言動をとったまま、分かった風でやり過ごしている可能性・・・他人事ではないかもしれないと思うと空恐ろしい話です。

サンカイ
やみ・あがりシアター
サンモールスタジオ(東京都)
2019/02/27 (水) ~ 2019/03/03 (日)公演終了
満足度★★★★
やみ・あがりシアターの定石とも言えるウィットに富んだやり取りに加え、魅せるテクニックにますます磨きが掛かって、客席も超満員。イイ感じにイイ流れに乗った劇団さんという印象です。
それにしても、別れる?別れない?こじれた関係の各階を這いずり回るヘビっていったい・・・なんて不思議な発想力。
同じ年月を共有した者同士ならば泥臭さをもう少し・・・とも思いましたが、ヘビ出てきますから・・・なんちゅう奇妙なスパイス。
人がひしめき合い各々の自我が交錯する集合住宅、変幻自在 やみ・あがりシアターの館でした。

WEEK END
劇団ピンクメロンパン
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/02/20 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
いろんな味が混ざり合って一言では言い表せないテイストの群像劇。
訳あり家族や個々が関わり合うことで巻き起こる予想外の展開は、様々な特性を持った人間を駒にしてハプニングを楽しむ、ちょっと残酷な神目線なゲームみたいです。
ある人間は人狼や共犯者であり、ある人間はまんまと餌食となり、ある人間は見事脱出成功みたいな・・・
最初はどの様に観て楽しめば良いのか戸惑うところもありましたが、勝手が分かってくるごとに世の不条理に巻き込まれる人間模様を俯瞰で観ているような感覚に。
独特の世界観。不思議な立ち位置で観ている気分にさせられる作品でした。

グッバイ・ルサンチマン
劇団サラリーマンチュウニ
上野ストアハウス(東京都)
2019/02/21 (木) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★
サラリーマン、OLでありながら同時に舞台俳優。
それに甘んじない為、貴重な休日・土日をフルに使って稽古されてきた姿が目に浮かんできますし、何より自ら楽しむことも忘れず演じる姿勢にほっこりします。
ストーリーは、一部で大人気のカリスマ作家とお騒がせ女性との奇妙な同棲生活・・・のみならず「玉の湯」の存続問題、更には怪しげなヨーガ集団も登場。10周年記念作品だけあり何とも盛り沢山。
私としてはサラリーマンチュウニさんって「サザエさん」の世界観がきっと似合うのではないかと思いながら観ていました。
一家モノでなくとも、ごくごく何気ない日常の可笑し味に時事ネタを添えた作品。
誰もが身近に感じられる魅力が最大に活かせるのではないかと思えるのです。

あじさい
大森カンパニー
本多劇場(東京都)
2019/02/20 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
2015年の初演も拝見しましたが、もう一度観たかった作品。
会場は初演時の中野テアトルBONBONから本多劇場へ。
ロビーに入って当日パンフを丁寧に手渡してくれたのが何と主演の役者さんだったのでビックリ。
キャパは随分大きくなりましたが、距離間は近い!
作品としても変わらぬ心地良い時間が流れてきました。
舞台となるのは年季の入った建築会社の元請け食堂。
ここに集うのは現場のおっさん達とカタコトのホステスさん(この女性めちゃくちゃ可笑しい)
おっさん達の日常会話、背中を丸めて飯を食う姿、がなる笑い声、どれにも味があって生命力に溢れています(小浦一優さん=芋洗坂係長が新キャストで更にパワーアップ)
若いもん達も加わって動き出す人情劇場。
温かいダブルコール、熟練のほっこりパワーをたっぷり頂きました。

幕が上がるなら
演劇商店 若櫻
ひつじ座(東京都)
2019/02/16 (土) ~ 2019/02/21 (木)公演終了
満足度★★★★★
舞台裏のあれこれ、これでまたひとつ詳しくなってしまいました(笑)
特に今までぼんやりとしか把握していなかった舞台監督(&舞台監督助手)にもしっかりスポットが当たっていたのが新鮮です。
ストーリーはさながら毎回開演30分前になって様々なトラブルに見舞われる楽屋を描いたフジテレビ深夜ドラマ『GAKUYA~開場は開演の30分前です~』のスペシャルバージョンの様な雰囲気で、本作ではトラブルを引きずったまま開場、開演へと突入していきます。
本作はドタバタコメディーであり、それに必要不可欠な力量が役者さん達には充分備わっていたと断言できるものの、笑いの沸点までには達することができず・・・各回ごとの微妙な空気感で受けたり受けなかったり、とも考えられますし、内容として劇中劇公演が上手くいくか、いかないか、リアリティーの妙の加減かなと思ったりもしましたが、そんなことは割とどうでも良く、結論として本作が良く無かったかといえば、否よかったのです。
キャラ立った面々。やり過ぎ一歩手前の絶妙なテンション、小気味よいテンポで可笑しなトラブルが次々と・・・確信的な笑いの連鎖・・・のはずなのに起きない爆笑・・・役者さんの胸中は如何に。
いやいや役者さん達、全く動じもせず気持ちの良い演技を続けるのです、最後まで。
これは作中で描かれる劇団の姿ともリンクして、何とも言えない素晴らしい感慨をもたらしてくれました。
個々の心意気もあるでしょうが、劇中と同じ演劇を創る面々の、強い結束力がなければここまで心に迫ってこないはず。
”show must go on” の精神。偶然私も含め観客の反応が大人しい回だったかもしれませんが、それ故に突き刺さる観劇となりました。

最期の作戦行動
有機事務所 / 劇団有機座
阿佐ヶ谷アートスペース・プロット(東京都)
2019/02/15 (金) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★★
有機座さんの作品は3度目の観劇となりますが今作品が本来の規格路線だったのですね。
「なるほどなぁ」と過去作の経緯を鑑みながら、納得しながらの有意義な公演でした。
舞台は1980年頃の喫茶店。
新たな出逢いが生まれる交流の場として、何ともまったりした時間が流れておりました。
まったりが過ぎるのじゃないかと言えなくもなく、表現のぎこちない方もおられましたが、もし全てが効率的で完璧な演技であったなら。と考えると、それもまた違う気がしています。
隙がある処が味になるという事か、上手く表現できないのですが・・・
舞台上には演者として気概ある方が多く、小劇場ではこの気概がダイレクトに伝わってくるので、かなり有効な強味だなと思えたのは確かです。
あ~ぁ劇友さんがいれば、あーだこーだ色々ツッコミしながら帰りたかった!
そう思わせる魅力。
良くも悪くもひっくるめて人間味の詰まった舞台、結論は「とても楽しめました!」です。

Collapthree ~SF3x~
MANIAX
ステージカフェ下北沢亭(東京都)
2019/02/13 (水) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★★
マルチBバージョンを観劇。
会場に入ると既に男女4人の演者さんが舞台でフリートークを。
ステージ映えする華のある容姿と、イイ感じに温まっていく会場に、演劇ではなくまるで音楽ライブに来たような雰囲気。
そして演出家さんがフリートーク終盤に登場、黒ずくめながらもう完全にバンド系でしょう(笑)
ここで演出家本人から事前の簡単な作品解説が入るのですが、中々に凝った設定であることを知りちょっとビックリ。
この解説、観劇を楽しむうえで随分助かりました。
ジャンルとしては下北沢カルチャーと秋葉原カルチャーが融合した、といえばいいのでしょうか。
冒頭での現代風刺の効いた斬り口の角度や深さがあまりに絶妙なので、もっと多用してほしいと思えたほど。
ひと公演3パートで構成される組み合わせは、マルチエンディングを含め全5通り、何だかカプセル玩具が出てくるガチャガチャみたいです(笑)
若い役者さんばかりなので同年代中心の観客層かと思いきや意外と中高年のファンの方々も多く、ライブ感と共に和やかな雰囲気の中、楽しめました。

世界で一番可哀想な境遇の人々
劇団ボンボヤージュ!
APOCシアター(東京都)
2019/02/09 (土) ~ 2019/02/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
今をときめくIT業界ではあっても下請は社畜の宝庫?!その他の業界エピソードにも結構なリアリティーが。
タイトル通り、全くもって報われない可哀想な人々のオンパレード。
めくるめくドツボの数々を全て笑いに昇華していく爽快感がたまりません。
ミュージカルのオマージュは時折無駄に迫力があって、いや妙に巧ければ巧いほど異様な豪華さ&面白さに拍車がかかって、冒頭からこちらのテンションもあがってしまいます。
存在感ド~ン!ミュージカル演技の巧い役者さんの散在が、高ポイント要素のひとつだったのは間違いないかと。
ドラマとしても誰の動向にも目が離せない丁度いいブス加減の人間賛歌“超大作”でした。

大安不吉日
ウィークエンドシアター
Arise 舞の館(東京都)
2019/02/02 (土) ~ 2019/02/23 (土)公演終了
満足度★★★★
身も心も普段着の気軽な気持ちで参加できる披露宴。
歌舞伎町の地下を降りると、さっそく式場スタッフ(役者さん)がうやうやしく案内してくれるトリップ感が嬉しい。
受付で飲物を注文した後、式場に約20席ほどある好きな座席へ。
コの字に並んだ、どこも特等席。
どんな式になるのか。途中花嫁が逃げ出すのは知っちゃ~ぁいるものの、新郎新婦の入場!やっぱりワクワクします。
途中、来るべくしてやってきたトラブルのリアルに説得力を持たせるのは中々難しいものだと思いながらも、乾杯やケーキカット(お約束の記念撮影)、ゲーム等々々心地良い気配りの数々、楽しい披露宴でした。
先週観劇レビューをされたオヤジ♪さんの指摘どころであった噛みは現在きれいに解消されています♪
非日常の中にスルッと入る事ができる面白い企画公演でした。

『十年希望』
きくち万ゴールディング
ワーサルシアター(東京都)
2019/02/06 (水) ~ 2019/02/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
大学卒業を迎えたサークル仲間の男女8人。
今どきの若者らしいというか、皆 ウェ~イばかり(笑)
10年後も変わらぬ友情を誓った彼等のそこから先の物語。
当然、実社会に出たからには、いつまでもそのノリで通用しない訳で・・・
毎年、集合して各自の夢や近況を映像に記録する「約束の日」が節目になっており、1年ごとに変化していくそれぞれの「現在」の姿。
移ろいゆく状況、友人として自分ならこういう場合どう対処するだろうと想像しながら興味深く拝見しました。
ありそうな話、おめでたい話、良くない予感は、そのまま良くない状況へ・・・奇をてらうことの無い実直な演出は、円熟の演技ではなくとも実直に演じる役者さん達にはとても合っていたと思え、もう腰さえ許せばいくらでも観ていられるし。
どうにもこういった話にはめっきり弱くなってしまい、途中からウルウル状態キープのまま最後の「約束の日」を迎えてしまいました。
劇としては最後でも、その先まだまだ人生は続いていくのですね ウェ~イ
年を重ねても誰も老けていかないのが難点ですが(笑)切なく好感のもてる公演でした。