1
【第29回池袋演劇祭「大賞」受賞作品】成り果て
ラビット番長
こだわりの一線を 魂込めて さらっと越えて魅せた。 負けない戦いでなく、負けられない戦いで。 負けない手でなく、あえて負ける手で。 成り果て続けるニコニコな盤面を AI するときまで。 「どこ見とんねん!」とくやしいほど AI されるときまで。 二段構えの一体感あふれる戦法にいとも絶妙にひねられて、めでたく奨励会入りの一局。
2
60'sエレジー
劇団チョコレートケーキ
あんまりオジサンを泣かせないでほしい・・・ 勝手に蛇口が開いちゃう、困るなあ、見ていられない。
身ぎれいに生きてゆきたい(できるだけ)、と切に思う。
どんな顔して逝ったのだろう・・・ あ、もしかしてこの写真って・・・!
3
女ばかり
三度目の思春期
スキばかりで隙なし。 はぐハグ剥ぐ・・・ アブラが乗って実にウマいなぁ、大鰻ゾクッ!
4
doubt -ダウト-
いいむろなおきマイムカンパニー
いたずらに回る鉄路のうたた寝は、口元揺らす垂涎の面白さ! 当てのない行き先へ、それでもレールの上をガタゴトと。 たずね熱れた夢のあと、言い知れぬ寂寥がこみ上げる ”モノローグ” 。 劇場一体となって羽ばたく名残の拍手で見送った。
5
ファンタズマゴリア
天幕旅団
さんざめいていた、遊園地が憶えている淋しさが、回る、回る、回る・・・ 美しさがにじむ雨、美しいからにじむ涙・・・ 意識が夢の中に落ちかけた、素晴らしい!
6
七、『土蜘蛛 ―八つ足の檻―』
鬼の居ぬ間に
赤目・八つ足に睨みつけられて、甘さの欠片も無く隧道の先が透ける気配さえ感じられない穴倉で、身じろぎもできず固まった。 絶望は、見せるのでなく追い込まなければ伝わらない・・・ 覚悟が滲む徹底ぶりに、不条理の何たるかを否応なく叩き込まれた。 悪は吐いても悪者は居ない、綱がりを思い出して黒糸でがんじがらめのおのれに気付けばそこが真の生き地獄、か。
7
鬼啖
芸術集団れんこんきすた
全身全霊の塊から解放されたとき、ほっと抜けて震えを覚えた・・・ 呑み込んだ者同士、悲憤慷慨に強ばる鬼と尼。揺るぎ揺るがせ、戻し戻された女の咽び泣きで届いたのは、安堵と浄化の悦びだった。フリスク不要! また来ずにはいられぬ・・・投魂の舞台。
8
Huis Clos ユイ=クロ
「戯れの会」
自己への愛、他者への愛、社会からの承認・・・ 三すくむ他人が招くのは、自我という ”地獄” 。主たるブロンズ像が施錠する室に永遠に ”死んで” 盛んな誘惑は、拒絶され、抑圧され、見下され・・・ 成就することのない堂々巡りに暇のない2時間はあっという間。
9
りんぷん手帖
やみ・あがりシアター
なんて美しく可愛らしいラスト・・・ ”逆に” 冒頭が秀逸、「面接」は採用! ”悪い” ”嫌な”トコは ”気になる”トコ、つまりは”違う”トコ。ひらひらと気紛れに翔び回るチョウが授粉して実を付けたなら、それが"トモダチ”。面倒くさいけれど造花で済ます訳には・・・。あのチョウが白から黄に色付いてゆく・・・ 予定帖から日記帖へ・・・燐くページを繰り戻す、懐かしさを覚える帰り道。
10
RS(2017年版)
演劇制作体V-NET
実験にえずく。人間性を憂う。より”らしさ”のある「事実」を決める、プロファイル化された社会における「納得」の危うさ。「なるほど、でもこれって・・・」言いかけたらスマートな腕でむんずと胸ぐらをつかまれたよう。あわいある彼我の世界にあわいなく引き込まれる怖さの極致。