文太の観てきた!クチコミ一覧

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時をかける稽古場2.0

時をかける稽古場2.0

Aga-risk Entertainment

駅前劇場(東京都)

2017/03/22 (水) ~ 2017/03/28 (火)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2017/03/25 (土) 14:00

3年弱の時を経て新たに構築された「2.0」というパラレルワールドを堪能してきました。
登場人物多め・暗転多め・策略多め、「舞台を初めて観る方」はいささか癖が強いと感じるかも知れませんが、
・人々が状況を打開しようと右往左往するコメディが観たい
・ハッピーエンドは好きだが、どうせ観るならひねりの利いた作品がいい
・特段気に留めていなかった諸々の要素が不意に手品のごとく繋がる瞬間が好き
・「当時は心底しんどかったけれど、今思い返すと懐かしい」という思い出がある
・今までに見たことがないものを求めている
という方にはお薦めです。

ネタバレBOX

初演時同様、登場人物達は3つのパラレルワールド間を行き来しまくる。今回はさらに5年後の世界の人々による強制同窓会まで加わったが、物語の筋を追いにくくなったりはしていない。むしろあの場面(+そこに至る交渉)によって、登場人物それぞれも作品全体も深みが増したように思う。描かれていない5年間の出来事、飲み会の計画は果たして実現できたのかなどなど、いくらでも想像できて終演後も楽しい。個人的には、ツワノの5年間に何が起こる(可能性がある)のかが気になる。タイコモチ化したりパルコをネタに悪態ついたりしてた人が、妻子の許に帰ろうと必死の新米お父さんになる(かも知れない)とは。どんなドラマが待っているのだろう。

そしてもしもボックス仮説の衝撃!「単純構造のはずが妙に柔軟に都合よく移動できちゃうタイムマシン」をより説得力のあるアイテムとして定義し直し、同時に僅かな希望を提示する手際が見事。「ヤブキ寝てばっかだよ、どうなってるの?」と少し気を揉みつつ観ていたら実は伏線仕掛け人だったと判明する瞬間も痛快。
それにしても脚本家アサコシがあれほどパワーアップしているとは……初演時同様短時間で状況把握して陰謀企てるわ、最終的に懲りてないわ、敵としても味方としても恐ろしい存在。おまけに専門家の称号(?)まで手に入れてるし。

細井寿代さん演じるほんわかキャラ・ホソイがいなくなったことや、筋を知ってから観ると最初の入れ替わりに伴うゴタゴタがやや冗長に感じられてしまう点など、物足りない・気になるところもある。
それでも、初演と2.0、いずれの平行宇宙にも惹きつけられた。
だからこそ、5年後のクマガイが口にした「全ての劇団はいつか解散する」という台詞を、今は全力で否定したい。
わが家の最終的解決

わが家の最終的解決

Aga-risk Entertainment

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2016/05/04 (水) ~ 2016/05/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

最近笑ってないという人に片っ端から薦めたい
ここしばらく声を上げて笑ってないっていう人は、とにかく試しに一度観に行ってみて欲しい。
もちろん何を面白いと思うかは千差万別だし、そもそも題材が題材なので立場が違えば笑いごとではなくなってしまうのだろうけれど、それでも。

時代ものだけど予備知識なしでも大いに楽しめるし、笑いばかりではないけれど堅苦しさは全くない、バランスの取れた作品。
何を書いてもネタバラシになってしまいそうなのでこちらではここまでに。

ネタバレBOX

不鮮明な音声の演説は恐らくかの独裁者のもの。そして白黒写真とワルキューレの騎行と結婚行進曲の組み合わせがあれほど人を不安な気持ちにさせるものだとは思わなかった。ここでまず揺さぶりをかけられる。
そうしておいてあとはひたすら笑いの海へ。嘘・誤解・その場しのぎ、優柔不断と確固たる意志、思慕に未練に横恋慕、家族愛に同胞/同朋愛、絡み合い対立しあるいはズレまくる人々の思惑、そしてちょいちょい横槍を入れてくるお隣さん。登場人物の一挙手一投足がもれなく笑いに変わっていくかのような時間。
面白さの波が来たら身を任せてとことん笑う。そうこうするうちに「線引き」が迫害される側、あるいはする側からなされ、ひりつく痛みとともに現実が戻ってくる。当然のことながら人生は笑える状況ばかりではない、ごまかせることばかりでもない。それでも、迫害する側もされる側もどちらでもない者も、美点も欠点も強さも弱さも抱える血のかよった生き物のはずで、だから全面的悪人も全き善人もいなかった(いない)はず。喜劇の中にも、真面目に考え、絶望したり希望を持ったりできる要素が鏤められている、と思う。このあたり好み・評価が分かれるかも知れないけれど。

一観客の小理屈はさておき、オットーの悪行暴露を経て繰り返される「人間というのはそんなに強いものじゃない」にはアルフレッドと一緒に突っ込みたくなるし、ヨーゼフはオランダまで連れて来てもらえたのが不思議に思えるくらい性格に問題あるし(コメディだってあれほど露骨な焼き餅焼きキャラは珍しいような)、出番は決して多くないレジスタンスの男は出て来るとなったらまあ喋る喋る(ああいうのをトリックスターって言うんだろうか。屁理屈キャラと訣別なさったわけじゃなかったんですね淺越さん?)。一方でゲルトナー班長はそこまで極端な娘煩悩には見えなかった。職務に忠実かと思いきやハンス達のことも見逃してくれたようだし(ナチスの天下もそう長くないと見抜いていたんだろうか)。
前作『ナイゲン(全国版)』(およびそれ以前の『ナイゲン』)を思い出して思わずにんまりしてしまう台詞もあるし、そちらで王道ヒロインだった榎並さんが今回チョロイン化(?)しちゃってるし。
最後に純粋な結婚行進曲になったから恋愛成就したのかと思いきやエヴァひとり遠くで幸せになってて(近現代史振り返ってみるとそうとも言い切れないのか)、なーんだ残念と思ってるうちに更に敗戦を経た立場逆転からの「ふりだしに戻る」!
透ける本棚のからくり素敵だし、おしまいまで観たら再見時には「陰の隠し部屋」に演者さんが近づくたびにハラハラしちゃいそうだし(万万一ふとした弾みで開いちゃったらオチが台無しになりかねない!)。
割と目立つ場面で演者さんがちょこっととちったりハンスの発音が怪しくなるところがあったりと気になる部分はあれど、それでもやっぱり、楽しい、面白い、素敵な夜だった。
七人の語らい/ワイフ・ゴーズ・オン

七人の語らい/ワイフ・ゴーズ・オン

Aga-risk Entertainment

シアター風姿花伝(東京都)

2015/08/20 (木) ~ 2015/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

11月に向けて
勢いよく離陸してゆかれました。おめでとうございます。
高校会議劇前の高校生審査員賞ってなんてタイムリー!

ネタバレBOX

英国の喜劇作家ゲイ・ルーニー氏にホイッスルに「決を採りましょう」に壁の時計、理屈あるいは自分自身の言動によって追い詰められてゆく人物、そして無関係に見えた要素が見事につながる瞬間、どれも愛すべきお馴染みの場面。
けれど、これまでに観たことのない作品。
淺越さんの嵐を呼ぶ老人は新境地にしてハマリ役、いつも通り武闘派かと思いきや実は意外と腕力に訴えない塩原さんもなかなか新鮮。シチュエーションコメディの流れを整え仕切り直しをするための道具であったはずのホイッスルはシチュエーションコメディをぶった切る凶器へと変貌し、演者自身が流れを止め駄目出しを連発する。告知に違わぬ「魔改造」ぶりの一方、いずれのパートでも追い込まれ必死に足掻く矢吹さんの姿はまさしくシチュエーションコメディの王道。
すべてが潰し合うことなく融合している。

パンフレットによれば最優秀作品賞(グランプリ)と観客賞のW受賞は過去2回と同様、しかし最優秀脚本賞含む3賞同時受賞は大会初とのこと。それだけの栄誉に相応しい一作であったと思う。
15 Minutes Made Volume12

15 Minutes Made Volume12

Mrs.fictions

王子小劇場(東京都)

2015/07/08 (水) ~ 2015/07/14 (火)公演終了

満足度★★★★

初15 Minutes Made
7/12(日)19時開演の回を観に行きました。MUさん以外の団体さんは全て初見だったのですが、思い切って行ってみて正解だったな、と。
各団体の上演前に入る“NEXT PERFORMANCE”→団体ロゴ→作品名のアニメーションがシンプルで恰好いい。
終演後、「おわりの会」のアフタートークを聞きながらアンケートを書こうとしたのですが、時間内に終わらず外に出てから続きを書くことに。ながら作業の苦手な人間は欲張っちゃいけませんね(T_T)

ネタバレBOX

以下、上演順に感想。

1. Mrs.fictions
主催団体がトップバッターを務めるとは思っていなかったので驚き。登場人物2人の描き方が幾分物足りなく感じられたものの「謝って勝手に終わりにされても痛めつけられたこっちはどう生きてきゃいいんだコノヤロウ」という心境には共感。ラストは自殺エンド? 忌村が火のついた煙草を投げ込んだ段ボール箱にもダイナマイトは入っていたのだろうか。

2. 20歳の国
15分で爽やかにまとまっていたと感じた。ここ数年で何度か結婚式に参列したのでちょっと身につまされるような感覚もあり。多川役・斉藤マッチュさん、先日観た『少年は銃を抱く』にご出演されていたことに上演始まってから気づく(恥)。ところで高校時代にカラオケでglobeとスキマスイッチ歌ってた人って何年生まれって設定なんだろう。自分はglobe全盛期に小学生で『全力少年』がヒットした頃は既に大学生だった。

3. MU
こちらも15分でうまくまとまっていたという印象。笑いどころ多々ありつつえぐみも豊富。序盤で「この店員さんがドピュッシーだったってオチかなあ」と推測するも、結局単純に巻き込まれただけのひたすら不運な人だったことが判明。深読みし過ぎだった(赤面)。 さすがに長編の『少年は銃を抱く』と比べると物足りなさを感じるが、以前観た短編『やっぱり猫が行方不明』よりは本作のほうが個人的には好み。

/*10分休憩*/

4. 第27班
15分で見事にまとまっていたという印象。というか、やられた。「ああもうめんどくさい娘だなあ」とかイラついてる場合じゃなかった。前髪切り過ぎたことが手触りで分かるとかヘアピンで留めようとしても自分じゃ見えないとかヒントはいくつもあったのに悉く見落とした(大恥)。ラスト、ひとり花火を見上げる友樹に「あいつ〝ひと夏の思い出作りに協力する〟以上の熱意ないみたいだし、まだチャンスあるよ、きっと」と励ましの言葉をかけたくなる。

5. The end of company ジエン社
含意は色々とあったのだと思うが、読解力不足で全く読み取れなかった。時間(or時間も場所も?)の異なる複数の会話が同時に展開される場面であっという間についていけなくなる。
アフタートークでのお墓と劇場の類似の話や論語の小劇場的解釈の話は面白かった。

6. シンクロ少女
序盤で土下座する黒田の背中を踏んでいたと思ったら回想では緊縛されたり鞭打たれたり、果たしてミツコはSだったのかMだったのか? 人生経験乏しいしSMに造詣が深いわけでもないので軽く混乱。最後の最後に力業でぶった切ったな、という印象。
新宿コントレックスVol.14

新宿コントレックスVol.14

Aga-risk Entertainment

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2015/07/07 (火) ~ 2015/07/07 (火)公演終了

満足度★★★★

単独ライブ満喫
開演前MCから終演後の告知まで全てアガリスク一色の単独ライブ、濃密で疾走感に満ちたひとときでした。
「複数団体によるコントイベント」が「単独ライブ」になった経緯を知るとイベントの今後が若干気がかりになってくるのですが、それでもとにかく楽しかったです。
個別の感想は以下に↓

ネタバレBOX

『お父さんをください』:Vol.13のジョナサンズVer.も面白かったが、SF風味を維持したまま結末をすぱっと決める本家のほうがやはり好き。邪悪な兄のインパクトが以前動画で観た過去公演より格段に増していて吃驚した。時空の裂け目の効果音に昨夏の『時をかける稽古場』を思い出して懐かしくなる。蛇足だが個人的に沈さんのセーラー服姿は断然アリだと思う。「逆に」じゃなくストレートにアリだと思う。

『LiePhone4s』:笑いどころてんこ盛りの展開は好みなのだが、どうしても「父よ何で最初〝バイト先の店長〟と話した時点で声が恋人と一緒だと気づかない?!」という思いが拭い切れず。あと至近距離で見ると店長(本物)の奇行が動画よりずっと怖く感じられることを発見。

『P3/4』:LiePhoneとエクストリームに挟まれるとどうしても印象が薄くなってしまうか。初見時に「お金あるなら誰かが『もうひとつ買ってくる』って言い出すのが自然なんじゃないだろうか」と思ったのだが、前回・今回と続けて一緒に観劇した友人は「3つともひとつのお皿に出して4人でつついたらよかったんじゃないかな?」と提案。その発想はなかった……! あの4人だとそれでも揉めそうではあるけれど。

『エクストリームシチュエーションコメディ・ペア(淺越・塩原組)』:ここでも顔を覗かせる邪悪な兄。今回のコントレックスは邪悪な兄(の、キャラクター)に支配されていたと言えるかも知れない。
『エクストリーム~』はアガリスク初体験の思い出深い作品。かれこれ5回ぐらい観ているはずだが、何度観ても飽きない。もともと「笑いどころをこれでもかとばかりに詰め込んだテンポの良い漫才」と「細部まで凝りに凝ってオチも綺麗にキメるコント」が大好物なので、そのふたつのいいとこ取りをしたかのような本作は自分にとって理想形である。

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