わが家の最終的解決 公演情報 Aga-risk Entertainment「わが家の最終的解決」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    最近笑ってないという人に片っ端から薦めたい
    ここしばらく声を上げて笑ってないっていう人は、とにかく試しに一度観に行ってみて欲しい。
    もちろん何を面白いと思うかは千差万別だし、そもそも題材が題材なので立場が違えば笑いごとではなくなってしまうのだろうけれど、それでも。

    時代ものだけど予備知識なしでも大いに楽しめるし、笑いばかりではないけれど堅苦しさは全くない、バランスの取れた作品。
    何を書いてもネタバラシになってしまいそうなのでこちらではここまでに。

    ネタバレBOX

    不鮮明な音声の演説は恐らくかの独裁者のもの。そして白黒写真とワルキューレの騎行と結婚行進曲の組み合わせがあれほど人を不安な気持ちにさせるものだとは思わなかった。ここでまず揺さぶりをかけられる。
    そうしておいてあとはひたすら笑いの海へ。嘘・誤解・その場しのぎ、優柔不断と確固たる意志、思慕に未練に横恋慕、家族愛に同胞/同朋愛、絡み合い対立しあるいはズレまくる人々の思惑、そしてちょいちょい横槍を入れてくるお隣さん。登場人物の一挙手一投足がもれなく笑いに変わっていくかのような時間。
    面白さの波が来たら身を任せてとことん笑う。そうこうするうちに「線引き」が迫害される側、あるいはする側からなされ、ひりつく痛みとともに現実が戻ってくる。当然のことながら人生は笑える状況ばかりではない、ごまかせることばかりでもない。それでも、迫害する側もされる側もどちらでもない者も、美点も欠点も強さも弱さも抱える血のかよった生き物のはずで、だから全面的悪人も全き善人もいなかった(いない)はず。喜劇の中にも、真面目に考え、絶望したり希望を持ったりできる要素が鏤められている、と思う。このあたり好み・評価が分かれるかも知れないけれど。

    一観客の小理屈はさておき、オットーの悪行暴露を経て繰り返される「人間というのはそんなに強いものじゃない」にはアルフレッドと一緒に突っ込みたくなるし、ヨーゼフはオランダまで連れて来てもらえたのが不思議に思えるくらい性格に問題あるし(コメディだってあれほど露骨な焼き餅焼きキャラは珍しいような)、出番は決して多くないレジスタンスの男は出て来るとなったらまあ喋る喋る(ああいうのをトリックスターって言うんだろうか。屁理屈キャラと訣別なさったわけじゃなかったんですね淺越さん?)。一方でゲルトナー班長はそこまで極端な娘煩悩には見えなかった。職務に忠実かと思いきやハンス達のことも見逃してくれたようだし(ナチスの天下もそう長くないと見抜いていたんだろうか)。
    前作『ナイゲン(全国版)』(およびそれ以前の『ナイゲン』)を思い出して思わずにんまりしてしまう台詞もあるし、そちらで王道ヒロインだった榎並さんが今回チョロイン化(?)しちゃってるし。
    最後に純粋な結婚行進曲になったから恋愛成就したのかと思いきやエヴァひとり遠くで幸せになってて(近現代史振り返ってみるとそうとも言い切れないのか)、なーんだ残念と思ってるうちに更に敗戦を経た立場逆転からの「ふりだしに戻る」!
    透ける本棚のからくり素敵だし、おしまいまで観たら再見時には「陰の隠し部屋」に演者さんが近づくたびにハラハラしちゃいそうだし(万万一ふとした弾みで開いちゃったらオチが台無しになりかねない!)。
    割と目立つ場面で演者さんがちょこっととちったりハンスの発音が怪しくなるところがあったりと気になる部分はあれど、それでもやっぱり、楽しい、面白い、素敵な夜だった。

    0

    2016/05/08 06:06

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大