
境目
劇団HIT!STAGE
広島市東区民文化センター・ホール(広島県)
2017/11/07 (火) ~ 2017/11/08 (水)公演終了
満足度★★★★★
今までこふく劇場にハズレは無かったので、予約だけはしておいたのだが東京から帰った日の夜の遅い公演は、気が重かった。
ところが平日の夜公演の二日間が前売り完売だという。
熊本地震をテーマにした作品らしく、佐世保在住の劇団と宮崎在住のこふく劇場の合同公演。演出は永山智行。
中央の舞台を挟んで両サイドに観客席がある。テーブルや椅子らしき舞台セットは自然の木を直線で組み合わせた象徴的な設えだ。
震災や人の死を扱った作品らしからぬコミカルなシーンが続く。独特の佐世保弁の会話のやり取りのせいだ。日本語のやり取りなのに感情的にならないのが不思議。
役者が動作でリュックを背負ったり、スマホを扱ったりするシーンが多いのにどこか寓話めいた感じもあり、いろいろ考えさせられた。
ロビーでアフタートークが催された。役者も創り手も多くの思いで悩みながらの上演だったという。だが、それが観客の心の中に具体的に見えない何かをありありと映し出したのは確かだ。乗り越えていく勇気を貰った気がする。

ちょっと、まってください
ナイロン100℃
JMSアステールプラザ 大ホール(広島県)
2017/12/12 (火) ~ 2017/12/12 (火)公演終了
満足度★★
休憩を入れて3時間15分の芝居である。
借金まみれで主人だけがそれを知らず、退屈な毎日を送る金持ちの家の庭に、リヤカーに荷物を積んだ貧乏人家族が住み着く。ナンセンスな会話が積み重なって、誰もそれを不思議と思わずに物語が進んでいき、いつの間にか金持ち家族と貧乏人が入れ替わっていってしまう。
久々のナイロン100℃は、不条理劇を目指したものらしい。屋敷の隣に唐突に立っている電信柱や貧乏人たちが引いてくるリヤカーは別役実のオマージュだという。
達者な役者たちの演技とプロジェクションマッピングというらしい、建物や舞台空間に映し出される雨やサイケな映像が物珍しく最後まで見てしまった。
別役作品は30年以上前に文学座のアトリエ公演でたくさん観た覚えがある。若い頃の小林勝也、角野卓造、田村勝彦、吉野佳子、倉野章子たち役者の芝居である。当然のように喋るナンセンスな台詞に気圧されるような迫力があり、うすら寒い怖さがあった。
今日の芝居のように、するすると台詞が流れて行ってしまうとどこが不条理劇なのかと首を傾げる。都で評判の芝居だからといって、私の好みには合わないことがあるということだ。

Equal-イコール-
赤星マサノリ×坂口修一
JMSアステールプラザ 多目的スタジオ(広島県)
2015/03/07 (土) ~ 2015/03/08 (日)公演終了
満足度★★★★
その手があったか!
台詞っぽい会話のやり取りの胡散臭さ、いかにも芝居っぽい演技。
なのにこの面白さは、何としたことだろう!
平田オリザに傾倒していた私はどこへ行ったやら。
観客席で自分の演劇観(大げさやん)がガラガラと崩れ落ちる。
初めて観に行ったお客にも楽しめて、芝居好きも唸らせる芝居ってのは、あんまりないと思う。 ヘタウマ演技の巧妙さにも、舌を巻く。
えっ、何?と引っかかった部分が、劇後半部で次々に解明されていく快感。
出来ることなら、もう一度見直して、うん、うんと再確認したい誘惑にかられる。
人は内心の思いは、案外口にしないものだ。
であるならば超リアルな芝居といっていい。本心はどこに?
徐々に解明されるそのプロセスで味わう奇妙な浮遊感。
そして、衝撃のどんでん返し!
ビデオなんかで観ても面白いかもしれないけれど、この空気感は生で見なきゃ。

パイプ・ライフ 広島公演
INAGO-DX
広島市南区民文化センター スタジオ(広島県)
2014/09/20 (土) ~ 2014/09/21 (日)公演終了
満足度★★★★
実力派、イケメン男優陣!
面白かった。コミカルなダンスも見どころ。
4人の役者が何役も演じるキレのいいエンターテイメントの中に穏やかな正義感とも言える独自の世界観が見えて、好感度アップです。
5人のイケメン役者、「誰に1票入れますか?」のアンケートには、舞台初見の山田健太に一票!

青空カラー
劇団こふく劇場
広島市東区民文化センター・ホール(広島県)
2014/09/10 (水) ~ 2014/09/11 (木)公演終了
満足度★★★★★
こんな芝居が観たかった!
場の転換、役者の出捌け、台詞と演技・・きっと慎重で巧妙な仕掛けが施されているに違いない。ただ、そんなことを意識しなくても、観客は芝居を観ているだけで、演劇空間に易々と入り込んでしまう。
時系と場面がくるくると転換しているのに、観客席の自分自身が、まったく混乱しないことに驚く。大事件も驚愕の展開もない淡々とした芝居だ。これほど釘付けにさせたのは何だろう?
芸達者の役者が障がい者を演じるのではなく、障がいを持った役者が芝居を演じるという小さな衝撃!
こういう芝居を観たかったことに、観客の私自身が気が付いていなかった。これから、私たちが大事にしなきゃならないもの(新しい価値観)の萌芽、それを演劇は的確に捉える。観に行って大正解だった。

一二人の怒れる男
東北えびす
広島市南区民文化センター ホール(広島県)
2014/09/12 (金) ~ 2014/09/12 (金)公演終了
満足度★★★★★
想定外の迫力、予想を上回る面白さ!
言わずと知れた法廷劇の名作。仙台座も出演の役者さんたちも初見だった。東京公演を含む各地の巡演で広島公演は唯一ワンステージのみ。実は、こんなに凄い芝居だとは予想していなかった。
ホール舞台上の上手側と下手側に向かい合うように観客席を設え、舞台中央に陪審室のテーブルとパイプ椅子。迫真の密室劇が目の前で繰り広げられる。
三谷幸喜の翻案「12人の優しい日本人」の映画も含めて、たくさんの「12人の怒れる男」を観た。結果は知っていてもハラハラさせられる。仙台座の舞台にはさらに新たな発見があった。
ひとりひとりの役者さんがすごくカッコいい。最初に無罪を唱えた陪審員8号(映画でヘンリーフォンダが演じた)の樋渡宏嗣、最後まで有罪を譲らなかった高圧的な陪審員3号の渡部ギュウ。周囲のメンバーを巻き込んだ彼の弁舌が、終幕で冷やかに拒絶される鮮やかな展開。
民主的なルールは、決して有能なリーダーによって実現されるものではなく、自分たちが悩みながら見つけ出していくものらしい。
圧倒的に優勢な有罪論に異が唱えられたとき、勇気をもって支持を表明するのが人生経験の豊かな老人の陪審員9号(渡辺貢)や社会の中の弱者であるユダヤ移民の陪審員11号(原西忠佑)やスラム出身の陪審員5号(横山真)あったことに、社会には多様な価値観が必要なのだと思った。自分に一番近いのは、口先ばかりで周りの言動に左右されやすく有罪・無罪・有罪とくるくる意見を変えた陪審員2号(西塔亜利夫)かも。男優ばかりの芝居だが、この芝居を束ねたのが女性演出家だというのも凄い。
進んでるなあ、仙台!