第8回せんがわ劇場演劇コンクール
せんがわ劇場
調布市せんがわ劇場(東京都)
2017/07/15 (土) ~ 2017/07/16 (日)公演終了
満足度★★★★
せんがわ劇場が主催する演劇コンクールで、予選(書類審査)を通過した6団体によって競われた。40分間という限られた時間の中で表現することになる。コンクールは2日間にわたって専門審査員、特別審査員、市民審査員および全公演を観劇した観客の投票によって審査する。専門審査員が優勝および脚本・演出・演技の各部門を選び、特別審査員等が投票(持つ票は異なる)によってオーディエンス賞を決める。
今回のコンクールの特徴は、パフォーマンス系が5団体、ストレイプレイは1団体であり、圧倒的にパフォーマンスを取り入れた公演の方が多かった。この傾向は、時間的制約が影響していると思う。
(上演時間各40分)
ネタバレBOX
上演団体・演目は次の通り。
〔1日目〕
①平泳ぎ本店『コインランドリー』
②waqu:iraz『closets』
③Pityman『ぞうをみにくる』
〔2日目〕
④HOLIDAYS『ちゃぶ台』
⑤Spacenotblank『Love Dialogue Now』
⑥くちびるの会『プールサイドの砂とうた』
それぞれの公演は観応えがあるが、それ以上に劇場主催のコンクールで専門審査員、特別審査員、市民審査員および観客の投票で賞を選ぶという開かれた形式が良い。コンクールは、演劇それも小演劇界で活躍する劇団、団体の励みになっていると思う。また賞の受賞は形として残るが、時間的制約がある芝居を創るという試みは、脚本・演出・舞台技術等の色々な演劇要素の向上に役立っているのではないか。
次回のコンクールも楽しみにしております。
ワンマン・ショー
やっせそ企画
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2017/08/02 (水) ~ 2017/08/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
面白くて、説明にある東京都新宿区新宿三丁目8-8の「箱」から出ることが勿体無く思えてグズグズした。チラシは、変形版をこれまた変に折り、写っている写真の人物の顔は皆見えない。
舞台セットは物語の印象を表しているようだ。中央に具体的な物、周りは抽象的で表現し難い。その対比のようなものが、登場人物の存在と立ち位置を示している。
物語は、引き出しが多いタンス、またはジグソーパズルのようで、その場所・大きさの違いが時間や空間の違いを思わせる。それらの組み合わさって出来ている物語は、その全体像がラストに明かされる。その意味で一種のミステリーのようであり、その謎を解く鍵を持つのが…。色々な引き出し(ピース)を覗き込むが、それが何を意味するのか頭を巡らせるので、少し難しく又もどかしい気もするが、順々に引き出しの関係、繋がりが見えてくる面白さがある。観応え十分の秀作。
(上演時間2時間強)
ネタバレBOX
セットは中央に古いテーブルと椅子。周りは無秩序に立てられた柱に白っぽい布や紐が垂れ下がり、乱れたもしくは退廃・荒廃したイメージ。また床の所々が張り合わせのようになっている。全体的に不統一で不安を抱かせる。
時間と空間を自在に切り張りしたジグソー・パズルのごとき構成。ちりばめられたキーワードの台詞などを手がかりに、頭の中で、出来事の時系列の整合を巡らすことになる。ラストに、バラバラだったエピソードの欠片がピタリと揃い、謎めいていた劇の全体像が見える納得が、この作品の見どころのひとつであろう。
ジグソーのピースは、順々に次のシーンが描かれる。
●青井あゆむは、「懸賞マニア」で、自分の身内等の名前を使用し、応募必要事項以外にも細々書き込む。 ●あゆむの仕事は町の航空写真を撮り、変化があれば役所に報告する。ある日、増築された部屋があるにもかかわらず、届け出のない佐藤家を訪ねる。●あゆむの妻・紫(ゆかり)は、あゆむから受け取った葉書を投函せず、段ボールにため込んでいる。 そして、紫の兄・白根赤太に葉書が詰まった段ボールを捨てに行ってくれと頼む。 ●無職の赤太は、自治体の女・イェローから仕事を斡旋された。依頼主・緑川緑から言い渡された仕事の内容は奇妙なものだ。「近いうちに、一人の男が私についてあれこれ聞きにくるが、私のことなんて知らないと答えてほしい」。 ●緑は、夫・黒雄と青井家の隣りに暮らす。黒雄は、青井家を監視し、庭の池が大きくなっていると言う。 ●赤太が捨てた段ボールは、山中に廃棄したが誰かによって再び青井家の玄関に戻る。
断片の集積は、現実とは一つではなく、見方によって、その受取り手の数だけある。それは、唯一懸賞で当たったとされる木彫り人体人形に象徴される。目鼻がない顔の人形(無表情)であるが、その左右から見ると泣き笑いの区別がつくという。この人形は登場人物イェローが担っている。さらにラストシーン…この劇全体が「ワンマン・ショー」ということが明らかになる。その衝撃が素晴らしい。
次回公演を楽しみにしております。
「REVIVER・リバイバー 〜15老人漂流記〜」「ダンパチ15・獣」
ショーGEKI
「劇」小劇場(東京都)
2017/07/27 (木) ~ 2017/08/06 (日)公演終了
満足度★★★★★
日常が非日常に転換(無人島生活)した結果、その環境・状況から受ける刺激は”逝き”から”生き”へ意識が変化して行く。タイトル「REVIVER・リバイバー~15老人漂流記」は「二年間の休暇(十五少年漂流記)(邦題)」(ジュール・ヴェルヌ)のパロディのように思った。ヴェルヌ作では、全員男の子、青少年であるが、この公演では男女7人ずつの老人とツアーコンダクターの中年女性である。その世代間のアイロニーが可笑しく、時に哀しい感情が伝わる。物語はテンポ良く2時間強がアッという間であった。
【Bチーム】
ネタバレBOX
セットは、舞台側(浜辺)から客席側(海側)に傾斜しており、後景は密林を思わせるような壁画。上手側と下手側に別スペース。ほぼ素舞台で役者の演技で観せる。時間軸は漂着時から順に経過しており、経過日数は時々フリップで示す。時間順であるが、その容姿は逆に遡行するように若返る。物語は考えを巡らせることなく、観たまま素直に受け入れやすく、瞬時に楽しめる。
梗概…65歳以上が対象の世界一周の船旅。オーストラリアに向かう途中、嵐で船は転覆し、15人が無人島に漂着した。そしてこのメンバーを助けるため1人の男が亡くなった。しかし幽霊となって…その姿は妻だけにしか見えない。そして無人島生活が始まったが…。
15少年だと仲違いを越えて”成長”するというストーリーが、老人だと余命を意識した”生長”が語られる。この生長を巡って、中年(38歳)ツアーコンダクターと老人達の「老い」の定義についての話が興味深い。
漂着直後は、島での生活が出来るか、という根源的な問題であったが、それがある程度解決すると人が持つ生来の欲望が露わになってくる可笑しみ。人の欲望は際限がない。島で暮らすうちに段々と若返ってくる見た目の肉体。一方、実年齢は変化していないのだろう。その悲哀のような心情表現は、卒業式で見かける「不安」と「期待」・「絶望」と「希望」・「過去」と「未来」という呼び掛けで印象付ける。そして心情吐露、もしくは印象付けするシーンでは”歌”で魅了するなど、観せ方に工夫(変化)をしている。
役者は、登場人物の性格や立場さらにはその存在を上手く表現しており、その人柄なりが見えてくる。自分は、老人達とツアーコンダクターの老若の世代間にみる本音、主張の違いを言い合うシーンに惹きつけられた。結局、直接的な行為として、女性を担ぎ上げ、縛り、軟禁する老人たちの行動は、可笑しみとともに怖さも見えてくる。自分たちと同じ環境が心地よい。異なる人種、世代は排除するという怖さ…夢は覚めなければ夢は終わらない。その防衛本能がラストシーンへ…。
次回公演も楽しみにしております。
超絶ブルームーン
宇宙食堂
吉祥寺シアター(東京都)
2017/07/28 (金) ~ 2017/07/30 (日)公演終了
満足度★★★★
地球に住み難くなってきた2067年という近未来の話。時間(過去~未来)を超越した宇宙空間、その悠久の時を思わせる。
月の開発が急ピッチで進んでいる。その日本の開発責任者である彼女と連絡が取れなくなる。そこで彼は彼女がいる月に向かうが、そこで目にしたものは…。
(上演時間2時間)
ネタバレBOX
セットは後景に都市(基地)開発イメージ、上手側は古代の石柱、下手側は現代の鉄骨を思わせるオブジェが建っており、悠久の時を感じる。二階部を設え、一階中央は基地扉イメージであるが、全体的にはシンプルな造作である。
場面転換や印象付けをする際、紗幕に映像を映すなどスクリーン・プロセスによって異空間を想像させる。少し安易と思ったが、映像自体は美しい。
梗概…今から50年後、人類の月移住に向け、月面基地建設工事が急ピッチで進められていた。主人公・近藤新の恋人も6カ月の月面工事計画のため、月へ遠征していた。
しかし6カ月の任期が過ぎても、彼女は帰って来なかった。便りもない。彼女を探しに、近藤は”月”への旅に出ることにしたが…。
物語はシンプルであるが、その内容は激化した宇宙開発競争を思わせる。特に宇宙における未知で広範な資源の確保について、その管理・運用ルールがない。現代の資源確保における国際法の課題・問題へ言及するかのようだ。例えば、境界海域における採掘などを連想させる指摘は鋭い。その問題は、欧州グループ、アジアグループの開発・運用競争、という集団的競争と主人公とその彼女の恋愛という個人的な思いが絡んで展開する。
また、月で生まれた子は月でしか生きられない。「重力」の適応性の関係が原因らしい。その生まれながらにしての運命は難民・移民という排他的なことをイメージしてしまう。
全体的には緩い演出であるが、その観せ方はインター・メディアのようで、観客に楽しんでもらうことを意識している。ダンス・パフォーマンスという視覚に訴えるエンターテイメントといった作品であり、自分は堪能した。
次回公演を楽しみにしております。
清らかな水のように ~私たちの1945~
ドラマデザイン社
劇場HOPE(東京都)
2017/07/26 (水) ~ 2017/07/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
既視感があるが、描いている内容は、72年前(1945年6月)の先の世界大戦・沖縄戦における事実。その事実は圧倒的な力で観客(自分)の感情を支配する。少し緩くなるシーンもいくつかあったが、全体的に反戦メッセージが伝わる。
なお、ラストシーンの余韻と終演後のキャストの撮影会、そのギャップに違和感もあったが、平和だからこそできる公演でありイベント。
(上演時間1時間20分)(Aチーム)
ネタバレBOX
舞台は素舞台。しかし衣装はそれなりに時代が分かるもの(兵隊の軍服、女子学生のもんぺ姿)。後景は上手側に密林、下手側に洞窟が描かれた一枚絵(衝立)。何となく沖縄の雰囲気は出ている。
梗概…沖縄県に修学旅行で来ていた2人の女子高生が、「ひめゆり平和祈念資料館」での話しを聞かず海へ遊びに行ってしまう。ある洞窟抜けたところで異変が起きる。いつの間にか1945年の沖縄へタイムスリップしてしまう。時は沖縄戦の真っ最中、当時の女子学生と遭遇し、いつしか戦争の悲惨さ、無常さという不条理を身を持って体験する。「生」を保つ行為、行動、それは物理的に恵まれ、平和が当たり前にある現代との対比によって鮮明になってくる。その表現が母親からの度々の電話である。
今(2017年)の世の平和の尊さを改めて知る。そんな教訓めいた物語である。しかし、その教訓は、意識して守り維持しなければ…沖縄の砂浜、砂上の楼閣のように崩れてしまうだろう。72年後の平和資料館で邂逅(17歳と89歳)させる展開が印象的である。
疑問として、タイムスリップしたこと、戻ってこれた原因のような説明が少しあると、もっと納得感と感情移入ができた。
少し緩いと感じたのは、隊長がタイムスリップした女子生徒が持っていた菓子をザックから取り出すシーン、当時の女子学生が食糧、水を調達した後のシーンなどは笑いがもれる。重苦しい雰囲気を和らげる、観客へのサービス精神だろうか?せっかく沖縄戦のリアルさが伝わるところで、素に戻す(舞台から降ろす)ような演出?は勿体無い。
自分の好みとしては、全編硬質に貫いても良かったと思う。それでも、沖縄戦で実際あった話(腕を斬る、青酸カリで自決など)、その事実の重みが物語を引き締め見応えあるものにしていた。今の時代だからこそ思える、当たり前のような”平和”、居て当たり前のような”父母を始めとした家族”、その状態、存在が尊く感じられる。
次回公演を楽しみにしております。
還刻門奇譚〜リローデッド・ゲート ゼロ〜
ZERO Frontier
萬劇場(東京都)
2017/07/26 (水) ~ 2017/07/30 (日)公演終了
満足度★★★
タイトル「還刻門」は、時間が巻き戻せる門だと言う。よく聞く人生の分岐点、その選択によって人生が大きく変わるかもしれない。選択結果によっては、自分が望む時まで還えりたいもの。物語は時間の遡行を描いているのか、それとも別の…。
(上演時間は1時間45分)
ネタバレBOX
セットは、二階部を設(しつら)え、門のイメージと妓楼内をイメージさせた作り。祭り提灯がいくつか飾られ、それが灯ると妖しげな雰囲気になる。下手側には曲がり階段があり、それを使った上下の動きは躍動感を感じさせる。
梗概…この門をくぐり時間を遡行したい人達の争い(霊肉の争いではない)。登場しているのは、妖怪、死者のようで、生きている者がいたのだろうか。すでに何らかの事情で亡くなっている者たちが、自分のため、恋しい人のため時間を遡らせるため、門の鍵(者)の争奪をする。何組かの思いが入れ子で描かれ、徐々に繋がり収斂され本筋を成してくる。時間を遡ることは生き帰ることを意味するのか。物語は此岸・彼岸という現世・来世のような雰囲気が漂い、そこを往還するのであれば輪廻転生に近い世界観。もっとも、整合性・理屈に拘って観ると齟齬が見えてくる気がする。
本公演は観た目のビジュアル(化粧・衣装など)やそれを着ての群舞、さらにアクションなどの視覚・動的魅力を観た方が面白いだろう。演出は緩く笑いや遊びが目についてしまう。自分の好みであるが、その緩さをもう少し引き締めて人生(生死)における往還とその功罪が観られると良かった。自分勝手な行為・行動が他人の人生を狂わせてでも成し得たい。その業(ごう)がしっかり伝わる様な幻想劇を期待したが…。
さて、衣装、アクションの形(太極拳などの拳法か?)や終盤近くに発せられる台詞(日本では「黄泉」という)から、中国を連想してしまう。そう言えば、函谷関という、日本の関所のような所が有名だが…。
次回公演を楽しみにしております。
ファンタズマゴリア
天幕旅団
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2017/07/06 (木) ~ 2017/07/30 (日)公演終了
満足度★★★★
「天幕旅団の遊園地」…劇団の1年半ぶりの書き下ろし公演。とても印象に残る珠玉作。
全編、抒情豊かな雰囲気が漂う作品。少しネタバレになるが、物語は1940年から2040年の100年間という時間軸が長いが、大枠は2つの話で分かり易い。この公演、脚本は人間味に溢れ、その感情を音響・照明といった舞台技術が豊かにしている。
(上演時間1時間)
ネタバレBOX
囲み舞台、四方どこから観ても楽しめる。ほぼ素舞台で、四隅に木椅子が置かれている。その椅子はシーンによって、情景・状況を表す小道具になる。例えば、舞台設定は遊園地、それも当日パンフから向ヶ丘遊園(台詞で「モノレール」と説明)であると連想できる。この物語でも閉園しているが、その閉門を椅子で表現している。
梗概…2020年の閉園後に訪ねて来る話、1964年の遊園地最盛期の話、という2つ。その話が交錯し抒情豊かに描かれる。最初は30歳前の女性が、思い出の遊園地を訪ねて来る。もちろん閉園していることは知っているが、間もなく取り壊される。自分が母親に捨てられた苦しく切ない場所であるが、母親と来た最後の場所でもある。内に入れないため帰ろうとする彼女に声を掛けたのが…当日パンフレットではロボット(渡辺望サン)である。後段の話は、遊園地の園長とその妻の出会いと別れ。開園日、体調がよくない妻と娘をタクシーで帰らせたが、その車が交通事故を起こし、妻は娘を庇い亡くなった。どちらも遊園地の思い出。その長い時間軸を見ているのがロボット。
全編が雨模様。その演出はピアノを弾く(奏でるではなく)雨音、床に照らされる射光は地面を濡らす雨粒、という音響、照明は抒情的で印象に残る。また何本かの傘が何度となく持ち出されるが、その傘色によって情景が異なる。グリーンの傘は、それを持った人の視点(現在)のようであり、情景・状況の変化によって人から人へ渡される。先に書いたロボットは擬人化して見せているが、その温もりから“遊園地”そのものであろう。
少し気になったのが、舞台と客席が近く、役者の表情等が間近に見えること。役者は4人であるが、演技は巧く心象形成も上手い。熱演であることは間違いないが、雨模様で少し肌寒いというイメージの中で顔に大汗をかいて…。役者は常に舞台上に居るから、何とか演出で工夫してほしいところ(少し残念)。
次回公演を楽しみにしております。
リーゼント総理
カラスカ
上野ストアハウス(東京都)
2017/07/20 (木) ~ 2017/07/23 (日)公演終了
満足度★★★★
疾走感が半端なく、上演2時間があっという間であった。また、けっして広くはない舞台上での格闘シーンは迫力があった。不良が何となく正義(庶民)の味方になっていく…映画、TVドラマでありそうなシチュエーションであるが、ある意味王道の公演は観応えがあった。
(上演時間2時間5分)
ネタバレBOX
セットは中央にアーチ型(レンガで出来ているイメージ)の出入り口、その左右に段差を設けた板。左右はほぼ対称で2~3段の段差がある。その上下の動きが躍動感を生み、心地よいテンポで進む。
梗概…2万人の暴走族を率いる宮ノ内タカシ(大野清志サン)は、国会議員である父親と確執があったが、父の非業な死により後継することを決意する。父の死は地元の利権絡みによる敵対する国会議員とその手下の暴力団の仕業によるもの。
父の選挙事務所の秘書等の助けを借り、どうにか当選することが出来た。しかし、相手陣営、暴力団の魔の手は、暴走族の仲間へ及ぶ。
ところで、脚本・演出の江戸川崇氏は関西出身だろうか。劇中の設定、地元はヤマトということであり、そこに流れる川にまた蛍が集まってくるようにしたい。そんな澄むような川の清掃活動が描かれる。以前、奈良県を流れる一級河川・大和川の水質がワースト2、3になり、近隣住民が清掃し蛍が棲めるようになった記事を読んだことがある。実話を連想させるが、物語はあくまでフィクション。ストーリーにあまり意外性はないが、テンポの良さと登場人物のキャラクターの面白味で十分楽しめる。特に、2つの格闘シーンは見どころ。まず特攻隊長が暴力団を壊滅させる所。次に主人公と腹心・特攻隊長のどちらが強いのか決める所。
通称:暴対法施行、反社会的勢力(暴力団)壊滅、政権・利害争いへのメス、環境保護など色々な要素を盛り込み、いつの間にか暴走族総長が国会議員になり、住民のための活動をし、世論の支持を得るという滑稽痛快な物語。
この男が惚れた女性は暴力嫌い。まだ一国会議員であるが、惚れた弱みで暴力を封印し、さらに人徳が増せば総理大臣も夢ではないかもしれない。それでも髪型はリーゼントのままでくあろうが…。そんな洒落っ気が笑いを誘う。
次回公演を楽しみにしております。
人本のデストピア
バカバッドギター
上野ストアハウス(東京都)
2017/07/15 (土) ~ 2017/07/17 (月)公演終了
満足度★★★★
冒頭は環境問題に関する批判もしくは警鐘するようだが、一転、民族(移民)問題を思わせるような骨太いテーマ、寓意性が観えてくる。全編を貫くブラックユーモア、その観せ方はポップ調で堅苦しくない。チラシ説明によれば、奇病によって人口減の一途。そして本の中(世界)に閉じ込められてしまう。
奇病はアジアの小国で発症しているが、タイトル「人本(ニンホン)デストピア」から日本(ニホン)のように思える。この公演は劇団最後の公演、「ン」の字は五十音順で最後の字、そんな関連付けをさせたか?
(上演時間は2時間)
ネタバレBOX
セットは、本棚が幾重にも重なるトリックアートのようだ。普通に考えれば知の源である本は、ここでは人を閉じ込めてしまう治(ち)のような存在に変質している。本の中の世界観…。
梗概...未来世界におけるアジアの小国。 バラックで生活する少女と老人、そして河童。
身体が「本(=BOOK)」になる奇妙な流行病が世界中を席巻し、地上の人口は減少。
人類は皆、大地にへばりつくようにして黄昏の世界を生きている。人はもちろん、すべての生命は「本」へと帰す。
本になった祖父を助けるために過去へ遡行する。そこで待ち受けているのは祖母であり、この奇病に対処できるとされる魔女でもあった。その街は城壁が囲われ街内と街外では環境が違う。世界的な課題である移民のことを想起する。
理屈では移民・難民(定義は違うであろう)の受入容認と思いつつ、感情的には微妙な思いを巡らすこともある。排他的な思いは、テロ行為との関係を無視することが出来ない。もちろん直結するわけではない。だからこそ、フーコーの振り子のように「理」と「情」の間で考えが揺れ動くのである。なお公演でも軍服を着た大佐が登場する。
奇病=本の中(人本)は死の世界であろうか.死は自然や現実とは違う世界に住むこと。もしかしたら、あの世は永遠平和のユートピア、そう考えれば現世はデストピアと言える。その倒錯を過去への遡行として描く。
物語は、独自用語(当日パンフに説明あり)が使用されストレートに理解できない、人間関係が錯綜している感じ。この2つが少し分かり難かったのが残念だ。しかし、現代的テーマを据えており、演出は軽妙洒脱で観客を飽きさせない。そして役者がその世界観をしっかり体現しているところが素晴らしい。
「環境問題」や「移民・難民」はどちらも“共生”が重要であろう。寛容が肝要というお題目だけではなく、問題解決に向けた努力が必要であろう。考えさせる最終公演は、小ネタも仕込んだ笑いの中、とても観応えがあった。
いろいろな事情があるにせよ、いつの日か劇団が復活することを期待しております。
プールサイドの砂とうた
くちびるの会
調布市せんがわ劇場(東京都)
2017/07/16 (日) ~ 2017/07/16 (日)公演終了
満足度★★★★
本公演は第8回せんがわ劇場演劇コンクールにおいてオーディエンス賞を受賞した。予備審査を通過した6団体によって競われたコンクールは、この団体以外はパフォーマンス系の公演であった。この団体のみがストレイトプレイで、観客には分かり易いところが受賞に結びついたと思う。
(上演時間40分 *コンクールの上演条件)
ネタバレBOX
舞台は転換を含め決められた時間(40分)で演じることから、大掛かりなセットは作らない。この公演では白線で囲い、中央に水槽が置かれている。この水槽が物語の根底にある、或る事件を象徴している。何気なく投じる固形塩素が発する泡が神秘的であり不気味でもある。
梗概…小学校教師を辞めた女性が戻ってきた。それも結婚し幸せに暮らしているようだ。その女性を快く思っていない、むしろ憎んでいる女性がいる。その心情が痛いほど分かり、どうすることも出来ないもどかしさ。小学校のプール授業、吸水溝で水死した事故。苛めにあっていた少女の母親の救われない気持。学校側は責任逃れ、隠蔽を…。事故に繋がる件(水中での碁石と固形塩素の識別が難しい)も説明され、納得感も余韻もある。
本来であればもう少し長い時間の物語であろう。しかしコンクールの制約条件にも関わらず、逆に必要最小限のシーンでストーリーを紡ぎ、簡易な小道具で心象形成させる演出は見事であった。また役者の演技力も確かで、授賞式での専門審査員の評では、この団体のみ噛みがなく安定した演技をしていたと。
次回公演も楽しみにしております(優勝した団体およびオーディエンス賞を受賞した団体は次年に再演するという)。
キリンの夢3
THE REDFACE
渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホール(東京都)
2017/07/21 (金) ~ 2017/07/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
戦後の混乱期、闇金融界の寵児を描いた物語。戦後のマスコミを賑わせた昭和アプレゲール犯罪「光クラブ事件」を題材にしたノンフィクションをフィクション仕立てにした力作。教科書で習う経済用語「信用創造」、その効用を先取りしたような金融活動。しかし、その根底にあるのは「信用」ならぬ「不信」であり、それがゆえに時代の荒波に消えた男の人生譚。
(上演時間2時間20分 途中休憩10分)
ネタバレBOX
舞台セットは、平行の段差、中央に階段があり昇降することで室内・室外を見分けさせる。室内は「光クラブ事務所」であり、主人公・山崎晃嗣(榊原利彦サン)が通った銀座のBarルパンなどである。基本…室内は上手側に豪華な椅子、下手側に机といった簡素な作り。
物語は、「光クラブ」「秀才東大生グループ」というキーワードで知られているが、自分は「青の時代」(三島由紀夫)、「白昼の死角」(高木彬光)の小説・同映画によって粗筋は知っていた。本公演によって改めて事件の概要や主人公の人柄なりを知ることが出来た。劇では戦後間もない時期という特別な時代背景、東大首席という秀才、そして短期間で盛・衰(自殺)した話題性など、そのエポックを人物に投影して観(魅)せる。そこには、時に笑いを交えつつ魅力的な人物像が立ち上がっていた。
学生グループが設立した金融会社。当時の物価統制法違反で逮捕されるなど非合法な活動であったようだが、山崎社長はどのような夢を描いて設立したのか。タイトル「キリンの夢」は、誇り高き、遠く(未来)を見渡すことが出来ること。しかし長い足ゆえ、足元が見えないという台詞が意味深でもある。一歩踏み出すとそこは蟻地獄、倒れたら立ち上がれない。そんな負の連鎖がしっかり伝わる。その遠因と思えるような友人の非業の死、自身の戦争体験が心の痛みとなって、その後の人生に大きな影を落とす。その哀切と慟哭が心情豊かに描かれる。
パンフにも記載があるが、人間の性は、本来傲慢、卑劣、矛盾、邪悪であると…。その暗澹たる気持は、太宰治との会話を通して分かり易くなる。山崎は、人は裏切るが金は裏切らない。太宰は愛こそが大切、心が傷ついた分だけ成長するという。思いの違いはあるが、結局のところ2人とも女性絡みで終わる。人は物欲だけではなく、人との関わりによって成否…その足元という信頼関係が大切ということらしい。公演ではきれいごととして描かず、あくまで山崎の日記(手記)という事実に基づくもの。
役者の演技は序盤こそ軽妙であるが、徐々に重厚さを増していく。そこに人柄の変貌を見ることが出来る。ドキュメンタリー・フィクションとでも言うのか、その雰囲気は”生”の舞台でこそ味わえる醍醐味、堪能した。
次回公演を楽しみにしております。
初めまして、劇団「劇団」です。
劇団「劇団」
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2017/07/20 (木) ~ 2017/07/23 (日)公演終了
満足度★★★
関西の劇団「劇団」(通称ゲキゲキ)の次回作「1000年の恋」のPR公演。劇団名を知ってもらうこと、第29回池袋演劇祭参加に向けた事前準備が目的のようだ。
3話オムニバスとその間に入れた2つの超短編。面白かったが…。
(上演時間1時間50分)
ネタバレBOX
3話は次のとおり。
●エアーポンプマン
生活のため、子供向けイベントに出ている劇団員。その仲間内で起きる恋愛事情をコミカルに描いた物語。その恋の行方は…。
●バカと天才
高額バイトにつられて集まった4人。バカと天才に識別される過程をコミカルに描く。しかし集められた人達には共通した事件が…。
●天国プロデュース!!
カリスマウエディングプランナーが手掛ける結婚式。そのプランナーが事故死をするが、その背景には彼女が抱えていた悩みが…。
それぞれコメディ、サスペンス、ファンタジーというジャンルでエッジも効いて面白く観ることが出来た。しかし、いずれもどこかで観たような、既視感があり新鮮味が乏しかったのが残念。また卑小であるが、短編でエッジを効かせるならば、「バカと天才」における首謀者の毒ガスマスクの疑問、「天国プロデュース!!」における後輩プランナーの黒ネクタイ。葬儀社社員と誤解されそうな衣装も気になる。
劇団名を覚えてもらうこと、東京での初公演というインセンティブは理解しつつも、池袋演劇祭との関わりはあざといと思われないか心配になるところ。ここ数年、関西の劇団が大賞を受賞しているが、それらの劇団はプレ公演を行っていただろうか?
当日パンフに、この劇団…「ゲキゲキの持ち味は、何と言っても物語力!」と書かれていた。次回、本公演を楽しみにしております。
霞の中の少年
演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2017/07/12 (水) ~ 2017/07/18 (火)公演終了
満足度★★★★
物語は、過去の記憶に囚われ又は逃避し続ける男、その過去と現在が往還するように展開して行く。その間にドラマチックな出来事はなく、記憶が暈けているような感じ。あくまで現在の境遇に至っている説明のため過去の出来事が必要のような。しかし、タイトル「霞の中の少年」を深読みすると別の事を思ってしまう。印象付けと余韻に長けた作品であった。
(上演時間2時間)
ネタバレBOX
構成は過去と現在。過去とは35年前、主人公・河内次郎(中原和宏サン)の中学時代に遡る。仲間を先導し山奥へ行ったが遭難して…。記憶を消したい、その思いが強くなって記憶や自分自身が誰なのか暈けてくる。まさに”霞の中”-夢のよう。
現在は50歳・独身、清掃会社のバイトで生計を立てている。若い正社員に嫌味を言われ、嫌がらせを受けても唯々諾々の日々を過ごす。アルバイト仲間が家庭環境を話す件は、今の日本の労働事情・環境が透けて見えてくる。
2つの時代は、それぞれ登場人物が異なり、衣装など視覚的な観せ方で区別する。また照明の照射強弱・色調などで変化を付ける。過去-薄暗く、現在-鮮明な見せ方という印象である。
セットは、中央が少し盛り上がり床は筵(ムシロ)が敷かれ、その上に枯れ葉。上手側には筵が垂れているが、洞窟を思わせるような通路。山奥に蒲団が敷かれているといったイメージである。上演前から次郎が寝ている。過去はこの寝ている時の悪夢であろうか?
中学時代のあだ名?…一等兵・二等兵という呼び名や主体性のない態度に対して、もの言わぬことへの批判する台詞。今の平和・平穏を脅かす法が次々成立することへの批判のようだ。
次回公演も楽しみにしております。
アイバノ☆シナリオ
BuzzFestTheater
ザ・ポケット(東京都)
2017/07/19 (水) ~ 2017/07/23 (日)公演終了
満足度★★★★★
初演の時に比べると泣き笑いのメリハリが利いた物語になっていた。ラストの急転する観せ方は、初演を観ているにも関わらず印象的で観応え十分であった。本公演では北海道出身の3人(川村ゆきえサン、アップダウンの2人)が心情豊かに演じている。
ただ初演時と同様、北海道というその土地柄はあまり感じられなかったが…。
(上演時間2時間)
ネタバレBOX
舞台は、スナック「かつら」の店内。中央奥に段差のあるカラオケステージが大きく作られ、上手側はBOXシートイメージ、下手はカウンターと酒棚。床やソファーなどは赤で統一し、スナックの雰囲気は十分漂っている。店の扉を開け放し、そこから「かつら」の看板にネオンが灯っているのが見える。そこに旅情を感じさせる見事な演出である。
梗概...網走にあるスナック「かつら」は、地元の漁師や農家の人々などが集うその場所に元女優・相葉しほり 本名・井野菜緒が働き始める。 網走は、失踪した菜緒の恋人、哲哉の故郷。「ごめんなさい」という書き置きと、愛ある歌だけを残し失踪。 菜緒は、この街に来た意味を見出すことができるのか、というもの。
元女優・相葉しほり、本名・井野菜緒(川村ゆきえサン)は、女優への再起に賭けていた。その精神的緊張...表層的には相葉のシナリオが展開する。舞台は網走になっているのは、タイトルとの関係であろう。「ア○バ○☆シ○リ○」は網走と井野菜緒(イノナオ)の掛け合わせ。職業・女優と本名の一人二役、実は本名のほうが物語を成しており、網走の生活で心を癒やす。実は先に記した本人の精神的なこともあり、スナック「かつら」のママ川島喜世子(川田希サン)、失踪した男の兄・半沢宏哉(かめや卓和サン)が考えた思いやり。この錯綜したような構成がラストの衝撃と余韻を残す巧さ。
また劇中、何度か歌われる「あの空よりも高く」が心に染み入る。
この錯綜したような構成は、謎めいた冒頭シーン、実に意味深で失踪と二年後に読まれるラジオの投稿(「あの空よりも高く」がリクエスト)に繋がるという色々な場面への仕掛け、工夫は見事。本筋はこの女性の心の彷徨であるが、そこに、この店で働く女性・伊東朱音(山本真由美サン)の弟・卓馬(飯田太極 サン)のヤグザ絡みの話、地元漁師・豊川雄介(藤馬ゆうやサン)の子供の時の事故、婚約者との関係などのエピソードを脇筋として絡ませる。その関係を強調すると物語がわざとらしくなり伸縮性がなくなる。その意味で適度な関係性に止めたように思う。
次回公演も期待しております。
変更と加減
劇団冷たいかぼちゃスープ
APOCシアター(東京都)
2017/07/15 (土) ~ 2017/07/17 (月)公演終了
満足度★★★
冒頭とラストを関連付ける、そんな帰結を意識した物語。その物語は、主軸があるような無いような。いくつかの挿話(当日パンフに相関図あり)を織り込んでいるが、主軸との関係性が分かり難い。タイトル「変更と加減」は何を示すのか、テーマのようなものが判然としない。
ネタバレBOX
挟み客席で、真ん中が舞台。ほぼ素舞台で、シーンによっていくつかの椅子が持ち込まれる。物語は学生時代に苛めを受けていた男と苛めを行っていた男が街中で再会するところから始まる。ラストは、苛めを受けていた者と行っていた者の立場と行為が逆転するアイロニー。ラストの件は、冒頭シーンへ繋げるために少し強引。その描き方も寓意のようで教訓臭く感じられたのが残念。
梗概…学生時代に苛めを行っていた”被害者”と”加害者”という括りで、社会人になった元同級生が再会。それを契機に、2人に関係した人物達の話が挿話のように紡がれる。
①会社での上司・部下の関係-部下への苦情処理・責任転嫁と手柄を横取りする上司というサラリーマン社会。 ②女子会トーク-建前のみ、本音のみ、主張しない(曖昧な受け答え)に見る面倒くさい会話。 ③不倫-妻子ある男の遊びと離婚を迫る女の怖さと哀れ。 ④自己満足・偽善-母が余命幾ばくもない。女性を金で雇い偽りの彼女に仕立て、親を安心させる。 ⑤男の身勝手と女の純情-学生時代の苛めの首謀者。社会人になっても定職に就かず、女の世話になっているダメ男。 ⑥姉妹の確執…等々、よく見聞きする典型的な話を織り込んでいる。冒頭のシーンは人間関係を引き出す契機。全体は苛めも含め、人が持つ”暗部”のような内面を描く。
それぞれの話は、台詞と同時に自分の心情を説明する表現がある。その表現形態が多くの注釈付で展開する。また、ほとんどの役者が大声で一本調子の発声。状況・情景にあわせた人情豊かな表現がほしいところ。
一方、このAPOC シアターという劇場の構造特長を活かし、階下(一階部)から上がって出入りに変化をつけ観せようと工夫しており好感が持てる。また、人に動きが出てテンポ感も活きていた。
もう少し主軸の苛め問題と各挿話が有機的に絡むと、物語に厚みが出てきたと思う。
ラストシーンの拘りをなくし、人の厭らしい内面の掘り下げた、という大きなテーマで見せても面白いのでは…。
次回公演を楽しみにしております。
おんわたし
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2017/07/12 (水) ~ 2017/07/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
この劇団、SPIRAL MOONらしい丁寧な作りであるが、描く対象が今まで観た個人または家族とは違い、もっとスケールアップさせたようだ。
また、物語の展開には社会性を潜ませ、実に興味深い作品に仕上げていた。
(上演時間1時間30分、漫才15分)
ネタバレBOX
沖縄県の特定郵便局が舞台。そのセットは、上手側に座敷への上がり間口、座卓、雑貨を収納する棚。下手側には果物、扇風機などが置かれている。正面は窓ガラス、そこにカーテン。出入り口の奥(外)には石垣や南国の花が見える。実に風情豊かな作りである。
梗概…ある夏に日、郵便局長が海辺に流れ着いた瓶を拾ってきた。その中には10年前に中学受験の問題が書かれた手紙が入っていた。そこに書かれた住所に返信したところ、手紙の主の母親が島に来た。娘はj受験に失敗し自殺したと…。
他方、22歳の青年が保護司に連れられ郵便局を訪ねてきた。一定期間働かせてほしいというもの。彼は、10年前に犯罪を犯し少年院に入っていたらしい。それは手伝いに行っていた民宿に来た客が…。
この二つの話に、必然的な繋がりを持たせていない。しかし、母親は元教師ということもあり、青年に色々なことを教える。この交流への導きが実に自然体で見事。
青年の処遇を巡って、人々は喧々諤々。今から10年前(2007年)は犯罪の低年齢化を背景に少年法改正が行われている。そして少年法における10年の有期刑は重犯罪であったことは容易に想像できる。青年の過去が知れたのは、都会から来た旅行者のインターネット情報によるもの。都会での更生が困難ゆえ、沖縄で果そうとしたようだ。
本公演の主人公(対象)は人物ではなく、沖縄という土地(地域)を描いているようだ(上演後、沖縄県出身の芸人の漫才など、始終”沖縄”を感じる)。母親は、自分が娘を自殺するまでに追い詰めた悔悟、青年の罪の償い更生…それらの気持を「なんくるないさ~」など沖縄の言葉が柔らかく包み、緊張する心情を解きほぐす。さらに波風、波音という演出効果でしっかり印象付ける。
「恩渡し」…人から受けた恩をその人ではなく、別の人へ渡すこと。ある意味、心に余裕、ゆとりがないと出来ない様な行為。それをサラッと言って行なう風土。その心温まる人情、この劇団らしい見事なラストでした。
次回公演も楽しみにしております。
孤独の観察
シアターノーチラス
OFF・OFFシアター(東京都)
2017/07/12 (水) ~ 2017/07/16 (日)公演終了
満足度★★★★
友情という名の押し売りならぬ押し付けが厭らしく描かれる。このシアターノーチラスという劇団の真骨頂…ざわざわ心が落ち着かない、その心情がしっかり観て取れる秀作。
(上演時間1時間40分)
ネタバレBOX
舞台は挟み客席、中央が舞台(結婚式場の控え室という設定)通路。そこに丸椅子が数個置かれているのみ。物語は、高校時代の友人が結婚することになり、12年振りに再会するところから始まる。昔話に花が咲かせ、その会話姿は円陣を組むよう。客席からは表情が見え難い。人の性格など、すべてが分かる訳でもなく見える部分、見えない部分があることを暗示しているようだ。円陣を組むような親しさを見せるが、その内心は厭らしさが渦巻いているよう。
梗概…同級生同士(新郎・新婦)が結婚することになり、親しかった女性友達(30歳)が集まる。しかし、高校三年生の時、グループのメンバーだった女性が通り魔に襲われ亡くなった辛い思い出がある。自分たちは仲間…なのにあの時彼女を一人にしたという負い目のような感情。実のところ、高校時代の”友情”は、名ばかりの役割・分担がありグループ内に優劣、優越・迎合があったことを思い出していた。友達がいないこと…孤独と孤立といった恐怖心を煽ったこと等。そんなところに12年前に亡くなった友の姉が現れ…。
女性同士の嫌悪、意地悪といった些細な言動、仕草が心の棘になる。その個々の感情の揺れ、その波紋がぶつかり合うように広がり不穏な雰囲気を醸し出す。女性同士には絶対的な悪人は登場しない。それだけに陰湿さの表現は秀逸であった。
結婚式場の控え室に丸椅子のみはあり得ないだろう。本来はソファーなどを置くところであるが、それでは人物の動きが止まり、表情も一方向から見ることになる。あえて丸椅子で動きやすくすることで、(心)落ち着かない様子を表現させる。また人間の多面性を見る、その”観察”する視点を固定させない演出も見事。帰り際に作・演出の今村氏と話をした時、苦肉の策だと言われていた。
物語に男性2人が登場するが、1人は同級生・新郎である。もう1人は招待した同級生の亭主だという。唯一過去の柵に囚われない。暴力性をチラつかせ場を騒がせる。この第三者的な発言が核心を突いたり外したりし物語を動かす重要な役どころ。
気になるのが、この重要な男をどうして招待したのか(または出来たのか)。この男の登場・存在が不自然なのだが…。
友情…”友達でしょ”という悪魔のような囁き。いつも一緒に行動し、拒絶することも難しい。そんな不自由な友情物語を描いており観応え十分であった。
次回公演も楽しみにしております。
トレーディングライフ
ピウス
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2017/07/12 (水) ~ 2017/07/17 (月)公演終了
満足度★★★★
未見の団体。その作風はサスペンスで物語の中へグイグイと引っ張っていく力があった。チラシも人の横顔がノイズのように一定しない。その不安定な感じが物語を暗示しているよう。
(上演時間2時間)
ネタバレBOX
舞台セット、その豪華さに驚かされた。中央にゲームをするギャンブル(トレーディング)場。その場所を四方から囲むようにプレイヤーの控え室がある。出入り口のない館で「人生を換金して奪い合う」ゲームを行う。
男は平凡な人生を歩んできた。大学を卒業しそこそこの企業に就職し、真面目に勤めてきた。しかし、男は大学時代の友人に裏切られ多額の借金を負う。さらに会社も解雇され、何もかも失う。自暴自棄になる男に、昔の友人(恋人?)が失った物を取り戻す方法があると…それは「人生で獲得したものなら、何でも相応の金額として賭けることができる」というギャンブルへの招待だ。
当日パンフには、「ゲームの基本的なルール」と「ゲームの流れ」が書かれており、劇中の説明台詞を聞き逃しても後で確認できる。また登場人物はペア(「ベッター」と「プレイヤー」と呼ぶ)で成り立ち、4ペアで勝敗を競う。ゲーム主催は虚会が運営するが、一癖二癖あるような人物である。もっともペアの人々もそれは同様である。
人生を賭けたゲーム、その人生とは「記憶」の消失と刷り込みといったところ。自分の人生において不要な部分(時代)を金に換算し、勝負する。相手が捨てた人生(時代)を買い取ることも出来る。自分の人生とは…アイデンティティを失い、他人の人生に上書きされる。ゲームという進行、その劇中時間制限が緊張感あるテンポを生み出す。
単に賭けゲームだけではなく、裏切り、どんでん返し等、多くの見せ場を用意している。細かいところ(当初は漫然とした不要部分-英検資格等がいつの間にか○○時代へ変化)を突き詰めれば破綻しそうな展開であるが、むしろ劇中の雰囲気に酔いしれた方が面白く観られる。
卑小はさておき、物語の根底に関わるところ…この館での出来事は全て忘れるのではなかったか(「会場」にいる限り、そのトレードの記憶は残っている。逆に言えば「会場=館」を出たら記憶は無くなるのでは)。しかし、ある目的を持って、以前このゲームに参加した者達が集まって来たのはどうしてか?記憶は…
役者の演技力は確かで、夫々のキャラクターをしっかり立ち上げていた。また、都会の雑踏、車の騒音、時を刻む音、雨音など印象的な音響。またペア人物に焦点を当てた照明、ゲーム・ターンが終了した時の記憶の更新時の照明も妖しげ。舞台技術も効果的で物語全体の印象付けは見事であった。
次回公演を楽しみにしております。
おれたちにあすはないっすネ
なかないで、毒きのこちゃん
駅前劇場(東京都)
2017/07/10 (月) ~ 2017/07/11 (火)公演終了
満足度★★★
「こんにちわ、さようなら、またあしたけいこちゃん。」以来、久しぶりに観た。劇団「なかないで毒きのこちゃん」…らしい公演であった。面白いと思うが、自分の好みとしては前作のラストに向かって収斂する方が良かった。
(公表:上演時間45分、実際はもう少し長い)
ネタバレBOX
開演前から、女優が「劇場の扉を開けて下さい」と叫んでいる。劇場内に入ると客席(椅子)も並べていない。観客には好きなところに座って観てくれと。自分でパイプ椅子を出し見る人、床に座って見る人など、自分の自由・見やすいスタイルで観劇する。観劇といってもメインとなっている場内、ロビー、音響・照明ブース、トイレに通じる通路奥など分散して演じている。その小分けしたグループ毎の演技は時として移動し、違うパフォーマンスを見せる。斬新な演出、コミカル演技など、パーツ毎には面白かった。
劇場(扉内)全体を舞台と見做す独創的な発想。それがメイン舞台以外の各スペースでの演技として観せる。しかし、視覚で捉えられない演技を想像するのは難いのも事実。
パーツを組み立てた物語があったのか?「こんにちわ、さようなら、またあしたけいこちゃん。」では台本が出来ていない。そのリアルな裏切りがシャープで新鮮だった。この「おれたちにあすはないっすネ」の分散・離散したような構成は、小ネタの面白さに止まったようだ。もっと収拾し、同時にはじけた魅力を出してほしかった。
最後はメインの劇場内で歌を歌っての大団円。チラシ説明…大人になったらいつから今日でいつからがあしたなのかわからないと…。その曖昧とした感じを出したかったのだろうか?
ちなみに、チラシには映画「俺たちに明日はない」に出てくる ポニーもクライドもでてきませんと書かれている。その映画、公開直後は暴力性やセックス描写で、保守的な評論家からの非難に晒されたらしい。自分も不自由な観方になっているのだろうか?
次回公演を楽しみにしております。
先にぃ
劇潜サブマリン
シアター711(東京都)
2017/07/06 (木) ~ 2017/07/11 (火)公演終了
満足度★★★★
映画「ワーキング・ガール」(1988年)を思い出す。一人の少女が夢見た光景は、都鄙の違いほどに自身が変化していく。その姿は成長といえるものなのか、大いに考えさせられる。内容はシュールであるが、その見せ方はポップコメディという表現が相応しいようで観応えがあった。
劇団の紹介文...人間や社会に対するアイロニーにあふれた寓話的作風が特徴。軽妙洒脱な台詞回しを軽快なテンポでハイテンションに疾走するエンターテイメントの演劇集団だという。まさに真骨頂。 【1番線チーム】
(上演時間2時間5分)
ネタバレBOX
舞台は挟み客席、その間に線路をイメージさせる白線がある。左右に車内灯をイメージさせる電燈。時代は昭和の戦前期(台詞に戦争が終わった)であろうか。しかし衣装は必ずしも時代を反映していない。設定ギャップがあるかもしれないが、それを凌駕するほどのテーマが透けて見える。
梗概...一人の少女が都会での暮らしに憧れ就職する。慣れない営業活動、社長や先輩から小言を言われ落ち込む。それでも必死に仕事に取り組む。ある日、社長の指示で接待を命じられ、その変態・エロ行為以降、少しずつ好転していく。社長を追い落とし、自分が社長に就任する。前社長が行っていたダークなことを自分でも行うようになる。立場が人をつくる、その典型的な展開である。いつしか自分も崩壊するような...。
現在(都市)と過去(田舎)を往還するような場面転換、と言っても主人公A子(小川菜摘サン)が眼鏡をかけ、俚言になることで識別させる。”朱に交われば赤くなる”のか、都会暮らしの環境や立場の違いで性格も変わってくる怖ろしさ。
一方、田舎での暮らしは大らかな様子。鳥、牛という家畜が擬人化され登場し、少女の心の友、癒しになっていた。しかし人が生きるための食材になる視点も忘れない。
労働という行為を視点に、人の醜悪と純真という二面性、苦悩と解放という両局面を、都会・田舎という時間と場所の違いを交錯させ重層的に観(魅)せた秀作。
役者は主人公A子を演じた小川サンの熱演と、人生案内人・道化師の役割を果たす車掌・松澤太陽サンの沈着演技が対照的。車掌の白塗り顔、その無表情さがこの世のものとは思えないような...。
次回公演も楽しみにしております。