先にぃ 公演情報 劇潜サブマリン「先にぃ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    映画「ワーキング・ガール」(1988年)を思い出す。一人の少女が夢見た光景は、都鄙の違いほどに自身が変化していく。その姿は成長といえるものなのか、大いに考えさせられる。内容はシュールであるが、その見せ方はポップコメディという表現が相応しいようで観応えがあった。
    劇団の紹介文...人間や社会に対するアイロニーにあふれた寓話的作風が特徴。軽妙洒脱な台詞回しを軽快なテンポでハイテンションに疾走するエンターテイメントの演劇集団だという。まさに真骨頂。 【1番線チーム】
    (上演時間2時間5分)

    ネタバレBOX

    舞台は挟み客席、その間に線路をイメージさせる白線がある。左右に車内灯をイメージさせる電燈。時代は昭和の戦前期(台詞に戦争が終わった)であろうか。しかし衣装は必ずしも時代を反映していない。設定ギャップがあるかもしれないが、それを凌駕するほどのテーマが透けて見える。

    梗概...一人の少女が都会での暮らしに憧れ就職する。慣れない営業活動、社長や先輩から小言を言われ落ち込む。それでも必死に仕事に取り組む。ある日、社長の指示で接待を命じられ、その変態・エロ行為以降、少しずつ好転していく。社長を追い落とし、自分が社長に就任する。前社長が行っていたダークなことを自分でも行うようになる。立場が人をつくる、その典型的な展開である。いつしか自分も崩壊するような...。

    現在(都市)と過去(田舎)を往還するような場面転換、と言っても主人公A子(小川菜摘サン)が眼鏡をかけ、俚言になることで識別させる。”朱に交われば赤くなる”のか、都会暮らしの環境や立場の違いで性格も変わってくる怖ろしさ。
    一方、田舎での暮らしは大らかな様子。鳥、牛という家畜が擬人化され登場し、少女の心の友、癒しになっていた。しかし人が生きるための食材になる視点も忘れない。

    労働という行為を視点に、人の醜悪と純真という二面性、苦悩と解放という両局面を、都会・田舎という時間と場所の違いを交錯させ重層的に観(魅)せた秀作。
    役者は主人公A子を演じた小川サンの熱演と、人生案内人・道化師の役割を果たす車掌・松澤太陽サンの沈着演技が対照的。車掌の白塗り顔、その無表情さがこの世のものとは思えないような...。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2017/07/12 19:03

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