ジキルの告白
ISAWO BOOKSTORE
サンモールスタジオ(東京都)
2024/11/06 (水) ~ 2024/11/12 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
演劇は、その作者の主張が強く表れ、時に観る側が取り残されることがあります。モヤモヤした状態で話の内容に入っていってもよく分かりません。そんな経験が時たまあるものの、今日の芝居の導入、とても上手い。簡単に言ってしまえば分かり易いのです。何故「ジキル」かも最初に語られ、状況設定を明確にしています。殺される教え子は出てきませんが、登場人物の数、休憩無しの1時間50分も適切だと思いました。サンモールスタジオ、約100人程度の収容人数の小劇場、濃密な環境です。大学内の人物が事件の対応に右往左往、議論を重ねます。学校の隠蔽体質がよく描かれています。もっと早く警察に連絡していれば、さらなる悲劇は避けられたのではないかと思いました。大学職員・阿久津役の清水ひとみの演技が一本調子になりがちな芝居を和らげてくれました。
七曲り異聞・隠れ処京香
劇団芝居屋
中野スタジオあくとれ(東京都)
2024/10/22 (火) ~ 2024/10/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第41回公演『七曲り喫茶紫苑』の続編のような作品。それを私は観ていないので、最初は分かり難かった。前半は登場人物が二人ずつ現れ芝居を展開、徐々に全体の輪郭が見えてきました。コロナ禍後の話ですが、「昭和」の香りが濃い人情話。増田再起の脚本・演出、そして出演。いつもの雰囲気になってきました。セットは殆ど無く、舞台は地下室という設定。ここに新たに開業する居酒屋の姿を登場人物が想像する。役者の表現力が試されます。観客も同じ気持ちで楽しみます。芝居らしい芝居。決して古いという言葉で終わらせてはいけませんね。上演時間1時間35分の心に響く作品でした。
未踏
wonder×works
座・高円寺1(東京都)
2023/11/01 (水) ~ 2023/11/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
この作品のテーマは、「言語学者、民族学者 金田一京助の伝記」でしょうか、それとも「少数民族アイヌに対する差別問題」でしょうか。いつも地味な脇役の文学座 助川嘉隆が熱演です。3時間にも及ぶ芝居ですが、アクセントを付けたのは、サンドアート、白黒の画像が舞台に映し出されます。『銀の滴降る降るまわりに』はアイヌの神謡のひとつ。「梟の神の自ら歌った謡」知里幸恵の編訳『アイヌ神謡集』(1923年)に収録されている言葉が出てきます。2013年の文化座の舞台を思い出しました。
第11回西谷国登ヴァイオリンリサイタル
西谷国登リサイタル
浜離宮朝日ホール(東京都)
2023/09/23 (土) ~ 2023/09/23 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
クラシックのコンサートでは珍しい、いきなり舞台が真っ暗闇。明かりがつくと既にピアニストが座っている。演劇の舞台のよう。演出でしょう。ラヴェル/ヴァイオリンソナタより第2楽章「ブルース」というタイトル、ジャズの調べでした。その雰囲気を表現したかったのかも知れません。前半はその後、現代曲が並びます。湯山昭作品は意外と聞きやすい。「スレンナタリア」というヴァイオリンと5弦ヴィオラの為の曲。西谷国登と作曲家ハケンの二重奏、普通に演奏するだけで無く、激しいアクションもあり驚かされました。後半は一転して、正統派の弦楽合奏。メンデルスゾーンの弦楽だけのV協。聴く前は違和感があるかと心配しました。管楽器・打楽器があるものだという先入観。やはり杞憂。名曲は楽しめますよ。ひょっとしたら、元の協奏曲を知っているからこそ面白いと感じたのかも知れません。勿論、演奏は素晴らしいものでした。新納洋介の「バースデー演奏」あり、メンデルスゾーン初期の作品のアンコール演奏あり、十分楽しませて頂きました。
トラベルモード
sitcomLab
上野ストアハウス(東京都)
2023/09/04 (月) ~ 2023/09/10 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
舞台でも映画でも、その設定のポイントは早めに分かった方が良い。これが分からぬままだと、物語の世界に入れぬまま睡魔に襲われることがあります。この話、あの有名な「三銃士」が主人公。でも、実は「偽三銃士」。馬鹿馬鹿しい話のようですが、何が起きるのかが楽しみです。周りの人物の誤解が面白い。中でも、終始好い加減な対応をする「支配人」が騒ぎを大きくします。この「支配人」役が脚本・演出の佐野瑞樹。この芝居、私が初めて見る俳優ばかりですが、特にアトス、ポルトス、アラミスの三銃士に化け物語を展開させる、福地教光、岩田裕耳、平井浩基が良い演技をしていました。対立するジュシャール:石倉良信も面白い。キザな役どころですが剣の達人、ダルタニアン:大野清志との対決シーンもおざなりではなく、十分な練習の跡が見えました。意外なキーパーソンは、ベルボーイ:柊木智貴でしょうか。オチは観てのお楽しみ。約90分の芝居。テンポ良く話が進みます。「三銃士と34(さんじゅうし)」レベルのギャグの連続かと思っていましたが、大間違い。練られた仕掛けに納得、脚本の上手さに感心した芝居でした。
七曲り喫茶紫苑
劇団芝居屋
劇場MOMO(東京都)
2023/08/30 (水) ~ 2023/09/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
昭和の時代を思い出させるような街の喫茶店。小劇場の芝居でよくある、スナックや喫茶店で、様々な人間が織りなす日常の物語。決して新しさはないのですが、「芝居って良いなあ!」と感じさせます。大詰めの喫茶店のママ(増田恵美)の語りで、BGMを入れませんでした。安易にBGMで雰囲気作りをしなかったこと、私は好きです。
桃太郎の大冒険
劇団龍門
阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)
2023/08/03 (木) ~ 2023/08/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
劇団龍門の主宰者である村手龍太は、2011年に旗揚げし、脚本・演出・出演を務めています。エンターテイメントの要素の中に、社会的なテーマを描く作品が得意。今日の作品、最初は何の話なのか、分かり難い。その展開の中で徐々に明確になり、後半も押し詰まったところで、そうだったのか!と、タイトルの意味が分かると思います。かなり厳しい現実を描きながら、人の温かさ、愛が感じられる良い芝居に仕上がりました。
原色★歌謡曲図鑑
株式会社ビーウィズミュージック
CBGKシブゲキ!!(東京都)
2023/05/11 (木) ~ 2023/05/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
失礼な言い方で申し訳ないのですが、思っていた以上に良い芝居でした。歌謡曲愛に満ち溢れた舞台。この作品のために用意したオリジナル曲、素晴らしい。タイムスリップはよくあるパターンですが、説得力ある展開。観客イジリも楽しい。ラストの皆さんの歌唱に楽しさのみならず、実力も感じました。敢えて言うと、もっと自然に笑わせて欲しかったかな。。。
カミサマの恋
ことのはbox
萬劇場(東京都)
2023/03/01 (水) ~ 2023/03/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
私が観たのは初日【Team葉】。カミサマとは津軽に存在する民間祈祷者のこと。人々の心を癒やす仕事する主人公を中心に、津軽の土地の香りがする佳作、登場人物全てに「物語」があります。馬鹿なことをしてしまった人間も出てきますが、皆、一生懸命に生きています。悪人はいません。だから温かな気持ちで終演を迎えることが出来ました。
昭和歌謡コメディVol.17〜バック・トゥ・ザ 築地!~
昭和歌謡コメディ事務局
ブディストホール(東京都)
2023/01/12 (木) ~ 2023/01/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
第1部はお芝居。ストーリーもギャグも完全に昭和コメディを楽しみました。第2部は歌謡バラエティショー。「完全無欠のロックンローラー」から始まり、「ギザギザハートの子守唄」「やさしい悪魔」など。リンリン・ランラン、レッツゴー三匹、かしまし娘も登場、勿論モノマネ。次に「恋」「なごり雪」「時代」「母に捧げるバラード」「白い色は恋人の色」「我が良き友よ」「学生街の喫茶店」など。そして「悲しい色やね -OSAKA BAY BLUES-」、聴かせますね。紙テープと光るうちわで大盛り上がり。来年は創立10周年になります。素晴らしい。そして何よりも会場の雰囲気が温かいのが嬉しい。
4人の泥棒と少女のメモワール
PHANTASISTA
高田馬場ラビネスト(東京都)
2022/11/23 (水) ~ 2022/11/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
私は色々芝居を観ますが、これは滅多に観ない珍しいタイプ。客席は若い女性が殆ど。そもそも出演者はイケメンを含む男性ばかり。私は「選択」を間違えたかなと思いましたよ。芝居というのは本当に様々。アドリブ満載のコメディ? 私自身よく分からない状況で前説があり、2時間休憩無しの舞台が始まりました。意外と(いや失礼!)脚本がしっかりしていて、興味深い流れ。でも私は初めて観る劇団、ついて行くにが大変でした。場違いの年齢の私には、笑いの面白さが分からない場面も多いのですが、殺陣が売りの1つ。このタイプの芝居、観ることはあります。エンターテインメントの1つと思えば楽しい。毎回ゲストが出演。今日は小島ことり。他の出演者に無いキャラと存在感が魅力。芝居に良い意味のアクセントを付けていました。
クロスフレンズ 2022
LOGOTyPEプロデュース
光が丘IMAホール(東京都)
2022/09/29 (木) ~ 2022/10/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
この作品に興味を持ったのは、今日の出演者、昨年観た森下知香と二人芝居『セイムタイムネクストイヤー』に出演した加藤大騎、数年前に吉野恵子(そい)が出演した今泉りえプロデュースのライヴに行ったことが切っ掛け。さすが二人共に存在感のある俳優です。申し訳ない。主演の方はよく知らないのです。実は、私自身、固定観念があります。ミュージカルは「1つに形」があるのだということ。従って物語、歌、ダンスが直接つながりがなく、このように派手に見せる舞台、正直、最初は戸惑いがありました。歌とストーリーとの関係、多彩な人物の登場、「時代」についていけない私がいました。しかしながら時間の経過と共に、しっかり作られた舞台セット、実力派の俳優陣と物語の進行、印象的な終わり方。このような舞台も楽しいなあ、と感じました。
第10回西谷国登ヴァイオリンリサイタルSpecial!
西谷国登リサイタル
浜離宮朝日ホール(東京都)
2022/07/03 (日) ~ 2022/07/03 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
初めて聴くヴァイオリニストでしたが、拘りのある曲作り、その熱さに感動しました。アンコールは「チャールダッシュ」、聴衆に十分満足させるコンサートでした。
リ:ライト
トツゲキ倶楽部
「劇」小劇場(東京都)
2022/05/25 (水) ~ 2022/05/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
思ったよりシリアスでした。「記憶」に関する面白いテーマ。ここの劇団の作品、よく知らなかったので、もっと軽い話だと思っていたのです。でも、最初の3人の会話、テーマとどのように関連しているのか、私には謎でした。申し訳ありません。
スタンダップコメディGo!vol.4
合同会社 清水宏
小劇場 楽園(東京都)
2022/05/22 (日) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
一昔前の「漫談」のようですが、一寸違う。観客との一体感を求めています。話題は芸能ネタもありましたが、社会問題、政治に絡みます。単なる政治批判ではありません。弱者に対してではありません。力のある者に向かっては、「かみつき」「突っ込み」「イジり」ます。正に「言いたい放題」。私は初めての参加ですが、その熱気に圧倒されました。テレビでは演じることが出来ない本当の芸です。
SHOWほど素敵なショーバイはない!
劇団娯楽天国
ザ・ポケット(東京都)
2022/05/18 (水) ~ 2022/05/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
劇中劇が「シェイクスピア」だったのを「忠臣蔵」に変更。それがまぜこぜ。「ロメオとハムレット、そして忠臣蔵」そして山場では「メモリー」(ミュージカル『キャッツ』より)。ドタバタ喜劇なのですが、それを真面目に取り組んでいる俳優陣の姿勢が良い。若い女性も多く、ここのファンはとても温かい。そんな印象でした。
グレーな十人の娘
劇団競泳水着
新宿シアタートップス(東京都)
2022/04/21 (木) ~ 2022/04/29 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
芝居というのは、本当に多種多様。それが自分の感覚に合うかどうかで、自分にとっての良い芝居が決まります。『グレーな十人の娘』、背景が分かっていないと楽しめないミステリー。最初の段階で、案内役の四女による家族の説明があり分かり易い。ただ無理な設定も感じられる所もあり、リアリティの面では今ひとつかな。でも楽しめましたよ。
そのあとの教員室
enji
吉祥寺シアター(東京都)
2022/04/08 (金) ~ 2022/04/12 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
暗く重たい話に終わっていない所が良い。個性ある多彩な人間の会話劇。太平洋戦争直後の舞台なのですが、これが現代の世界情勢と微妙な繋がりが出てくるのです。と言っても、ひとつの考え方を強く主張するのでは無く、エンターテインメントとして楽しめました。私は後半のサスペンスのような謎解きの場面が好きでした。『12人の怒れる男』を連想させます。事実はどうだったのであろうかと、教員たちの想像溢れる議論が面白い。さらに空襲で何の罪もない人々を殺戮したこと、原爆で無差別大量虐殺をしたこと、アメリカ軍の罪にまで話が及びます。世界史における事実を、我々はどう理解すれば良いのでしょうか。近年、いや昔からでしょうが、自分の立場を明確にせず、マスコミに誘導され、何とは無しに大勢の意見に付いていく。「日本人の考え方がひとつにまとまることが良いこと」そんな風潮、私は好まないのです。
第73回「a・la・ALA・Live」
a・la・ALA・Live
座・高円寺2(東京都)
2022/04/07 (木) ~ 2022/04/07 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
これは芝居ではありません。様々なジャンルのパフォーマンスが一堂に会するアラカルト、大道芸です。色々な芸が、4人のパフォーマーよって演じられました。
・Spring has come・・荒山昌子《一人芝居》
・みま1・・みま《オペラ座の道化師》
・Dancing generation・・荒山昌子
・いま、~improvisation 女生徒~・・バーバラ村田とアラライズ《パントマイム》
<休憩>
・講談・・神田織音《講談》
・みま2・・みま
・Refresh season・・荒山昌子
・みま3・・みま
・Reborn・・荒山昌子
「みま」の3回のパフォーマンスに感動。曲目は、「乾杯の歌」『椿姫』より、「オー・ソレ・ミオ」、「夢やぶれて」『レ・ミゼラブル』より。「聖者の行進」、「トルコ行進曲」。「誰も寝てはならぬ」『トゥーランドット』より、「夜の女王のアリア」『魔笛』より。「乾杯の歌」の1人二重唱に驚き、「夢やぶれて」では自身の人生に重ね、持参の新聞紙を破きます。しかし、それはマジック、破れていない、「自分の夢」は破れていないのです。上手い! 難曲と言われる「誰も寝てはならぬ」、「夜の女王のアリア・復しゅうの心は地獄のように胸に燃え」、歌が巧いだけで無く、十分演技で笑わせるのでした。
風がつなげた物語
グッドディスタンス
新宿シアタートップス(東京都)
2022/03/31 (木) ~ 2022/04/06 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
小劇場の繊細な会話劇。母の遺骨を抱えた珠子と夫はバス停に来ます。バスはなかなか来ないので、夫はタクシーを探しに行くのですが、その間に遺骨とともに珠子は消えてしまうのです。問題はこれが珠子の奇行癖なのかという点です。姉妹は「珠子は昔から変わっているから」と言っていますが、それは真実なのでしょうか。そして父親は定年退職のタイミング。最終的に珠子は家に戻ってくるのですが、姉妹は年老いた父の世話を誰がするかの話に移ります。その時々の微妙な心の変化を実力派の俳優陣が演じています。三姉妹の個性が豊か、実像の女性の生き方を描いています。そしてモロ師岡、味のある父親役です。色々な芝居がある中、劇場でしか観ることの出来ないような濃密な芝居、劇場で観てこそ感動が伝わる家族劇と言えます。