バルブはFB認証者優遇に反対!!の観てきた!クチコミ一覧

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美談殺人

美談殺人

タカハ劇団

駅前劇場(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/20 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

■130分強■
話が大がかりな方向に行き過ぎた。

ネタバレBOX

舞台は、短命化が進み、特筆すべきことを何も為せないまま死にゆく人が増え、せめて死に様だけは劇的なものにしようとする人々相手に“美談ビジネス”が幅を利かせている近未来の日本。売れっ子の女性美談作家は、ホームレス出身の男性美談作家にこう話す。
「自分の人生には意味があった。そう思いたい欲望が人間にはある。その欲望に寄り添うように書きなさい」(大意)
この言葉から、人生論的な方向に話は進むのかと思いきや、物語は大がかりな展開をみせ、「お国のために死ぬ」という美談を餌にホームレスを徴兵して日本は戦争へと突き進む。
戦争は国家レベルの美談殺人、という皮肉なのかもしれないが、正直、この大がかりな展開があまり面白くない。
人生とは何か? 人間にとっての幸福とは何か? 美談ビジネスを取っ掛かりにしてそうしたテーマを地道に掘り下げていくお話にしてくれたほうが、少なくとも私はより惹きつけられたと思う。
『水』/『青いポスト』

『水』/『青いポスト』

アマヤドリ

新宿シアタートップス(東京都)

2021/12/16 (木) ~ 2021/12/26 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■『青いポスト』鑑賞/約140分■
誰かが何かを為す場合、その動機というものが知りたくなる私のような人間には、隔靴掻痒の感が否めなかったが、逆説的でねじれたストーリー、美しい照明のもとハイセンスないでたちで演技する12人の女優たち、音楽とムーブメントの取り合わせの妙、等々に魅せられ、劇世界に没入。上演時間の告知を見てハァ?となったが、そこまで長くは感じなかった。
『すばらしい日だ金がいる』以来のアマヤドリだったが、豊かな時が過ごせた。

ネタバレBOX

定期的に悪人総選挙が開かれる架空の町が舞台。得票数1位の者は消されてしまうとかで、みんなイイ子ぶって生きているという設定が面白く、誰もが偽善者というところにフォーカスしたスピンオフが観たくなった。
それにしても、悪評高い姉を2位に押しやり予備選挙でまさかの1位となった極悪姉妹の妹が、不正を働いたら得票数に関係なく悪人オブザイヤーになるというルールを悪用(?)し、本選を戦わずして自分が消される道を選んだ理由は何だったのか? 理由は明示されないが、姉を救うための自己犠牲なのだとしたら、アマヤドリ版『泣いた赤鬼』か。
徒花に水やり

徒花に水やり

千葉雅子×土田英生 舞台製作事業

ザ・スズナリ(東京都)

2021/12/15 (水) ~ 2021/12/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■約100分■
腑に落ちないところもあったが、相当ワケありな一家のホームドラマとして面白く鑑賞。土田英生作・演出だけあり、笑いを生むような設定が色々と凝らしてあって、楽しく時が過ぎた。

ネタバレBOX

暴力団の三次団体の組長だった男を父とする四人きょうだいの話。一人だけ腹違いで幼少期から養子に出されていた三女が兄と姉二人に久々に再会するが、婚約者として連れてきた男はなんと、父をはめて殺した元暴力団員だと判明。三女は、きょうだいの仇敵である男を捨て割合すんなりときょうだい側につくが、そんな男であれ、人間、愛した異性をそう簡単に見限れるものだろうか? そこには、葛藤や未練があって然るべき。そうしたものがほとんど窺えないところに多少違和感を覚えた。
ワクチンの夜

ワクチンの夜

城山羊の会

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2021/12/03 (金) ~ 2021/12/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

■115分強■
色欲ムキ出しの祖父、出そうとせずともにじみ出てしまう嫁、ムッツリスケベのその息子、息子と同じ大学に通うフツーに色恋を楽しんでそうな男女…それぞれに色欲の表し方の異なる男女が関わり合って生まれる数々の喜劇的状況を堪能!
ただ、上演時間の過小告示はやめてほしい。約105分と発表されていたのに…。告示を信じて予定を組むので、本当に困る。

ネタバレBOX

論文について息子から指導を乞うため来宅した女子大生と、彼女に付き添ってきた、その交際相手とおぼしき男子学生。仲良さげな2人の様子に嫉妬心を抑えきれない息子がその女子大生をケータイの待ち受けにしていることを、母が「お嬢さんにお会いするのは初めてだけど顔は知ってますよ(笑)」と前置きした上で笑い話として2人に喋るくだりには笑った。戸惑う女子大生が可笑し(笑)。
Dreamtime

Dreamtime

melomys

アトリエ春風舎(東京都)

2021/12/09 (木) ~ 2021/12/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■75分弱■
環境問題に代表される“ヒトと地球の関わり方の問題”を、大上段に構えず、等身大の感覚で捉えているところに好感。正義ポルノになっていないところがいい。

ネタバレBOX

それだけに、結末が残念。ラジオから流れる声が、ある災害について、「ある人は、これは天災ではなく人災だ、と語った」(大意)と締めくくるが、そうした「天災か?人災か?」問題についてあえて白黒をつけず、ああでもないこうでもないと考え続けるところに、本作の面白味はあるのに…。
更地の隣人

更地の隣人

青年団若手自主企画vol.85 近藤企画

アトリエ春風舎(東京都)

2021/03/31 (水) ~ 2021/04/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

◼️100分強◼️
人間の綾に満ちた、素晴らしい物語。折笠富美子さんの、声優さんらしい、情感豊かな演技に惹き付けられた。

みんなしねばいいのにII

みんなしねばいいのにII

うさぎストライプ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/11/26 (金) ~ 2021/12/07 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■85分弱■
頽廃味、不条理味、滑稽味、猟奇性…このカンパニーの持ち味がもれなく盛り込まれた、うさぎストライプの見本市的な一作。Ⅰも観たが、本作のもたらす、不気味な迷路に嵌まり込んで脱け出せずにいるような感覚がより強まって、釣り込まれた。

ネタバレBOX

自分好みの女性客(清水緑)を店内で口説いていた長身男を弾みで殴り殺したりと、不器用で上手く生きられないコンビニ店員の男(伊藤毅)が、看護師をしている上述の女を椅子に縛りつけ、斧を構えながらやり取りする終盤が圧巻。
「僕はいつも間違うから…」と自暴自棄な行為に及ぼうとする男と、「間違ってもやり直せるから!」と必死で止める女。伊藤の鬼気迫る演技に心がヒリついた。
異常以上ゴミ未満、又は名もなき君へ

異常以上ゴミ未満、又は名もなき君へ

good morning N°5

小劇場B1(東京都)

2021/11/25 (木) ~ 2021/12/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■105分弱■
数々のバカ話をとある趣向によって一つにまとめ上げた作品。全体的構成は上出来とは言いがたいが、くだらなすぎて愛おしくなるようなお話が少なくなく、あれだけの美人が飽かずバカ演劇を追究しているという、そのミラクル、その奇跡に嬉しくなった。
ブルー&スカイさんご出演ということで、久方ぶりに観たgm5だったが、女優陣が捨て身でバカをやっている感じがかつてより薄まっているように思えたのは、単なる気のせいか、はたまた意図的にそうしているのか、最後まで判じかねた。
開場から開演までの、ほぼほぼ30分にわたる育子さんの前説は作品同様あいかわらずエネルギッシュで、惹きつける。歯切れのよいトークで場を盛り上げながらも、「周りの方がトイレとかで中座しようとした時、『なんだよ。。』って渋い顔をするのはやめてくださいね。同じ演劇を一緒に楽しむ仲間なんだから、そこは和やかにいきましょう」(大意)と不寛容を諫めたりするあたりには育子さんの平和志向が感じられ、その姿勢は、お客様を笑顔にさせるバカ演劇を長きにわたって続けていることと、通底しているようにも思えた。
なお、劇中のセリフのほとんどは早口かつ絶叫調で繰り出され、澤田演劇ならではの諧謔と文学味が、セリフの聴き取りづらさ故に十全には汲み取りきれず、もったいなく思えてしまう。前説で「人間の集中力が続くのはせいぜい90分。だからあんまり長くはしたくない」と演劇の尺について持論を述べておられたが、時間短縮のための早ゼリフなら、少し尺を伸ばしてでも、発話の速度を落とすべき。尺を伸ばすのが嫌ならば、いくつかのシーンを割愛するのも選択肢。絶叫調の早ゼリフは劇に勢いをつけるためなのかもしれないが、釈迦に説法を重々承知で言わせてもらえば、笑いは緩急。じっくり魅せるシーンも増やしたほうが、全体的な笑いの量は増えると思う。

ネタバレBOX

序盤だけ書いてはクシャクシャに原稿を丸めて放り捨て、序盤だけ書いてはクシャクシャに原稿を丸めて放り捨て…を繰り返している、髪の毛までがクシャクシャの、昔の文豪みたいなナリをした和服姿の小説家が登場。自分の産み落としたお話に自由に出入りできる作家は、「続きを書いてよ!」と各話の主人公に迫り、主人公らは作家の産んだ架空世界を生きることで、お話の続きを作っていくという趣向。
中には、作家が間借りしている一家を描いた私小説的な話もあり、30歳も年下の新妻を迎える家主から離縁を言い渡された妻は、「これまでお世話になりました」と間借り人の作家に感謝の思いを込めたお茶を出したりと、ひどい仕打ちに遭いながらも平静を保ち続けて取り乱さず、涙さえ流さない。
出色なのは、その奥さんを泣かせようと頑張るリコーダー集団のくだり。家を追い出されるというのになかなか泣かない奥さんを泣かせるよう先述の家主に頼まれ、金まで受け取った集団は保護色の服(笑)を着て家周りにひそみ、哀愁あふれる楽曲をリコーダーで奏でて奥さんの涙腺を緩ませようと頑張るも、試みはあえなく失敗。これにぶちキレたブルー&スカイ演じるリーダーが、メンバーたちを言葉巧みに激しくなじるシーンには、フルスロットルで悪罵を飛ばすブルー&スカイさんの演技が可笑しく、大いに笑った。
夢を抱いて東京に来るもいまだ何者にもなれず、底辺でくすぶり続ける不良ネコたちが可愛い牝ネズミをいじめたりして暴れる話は、なにかなんだか、よくわからなかった。
イモンドの勝負

イモンドの勝負

キューブ

本多劇場(東京都)

2021/11/20 (土) ~ 2021/12/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■約200分(途中休憩込み)■
徐々にシリアス味を帯びてきたシーンに没入しかけてはナンセンスギャグで蹴飛ばされ、徐々にシリアス味を帯びてきたシーンに没入しかけてはナンセンスギャグで蹴飛ばされ…の繰り返し。
たまにはこういうのもいいな。
まだそこまで取っ散らかってはいない前半が好き。後半はいくらナンセンスコメディったって取っ散らかりすぎか(笑)。
謎の動物は、見てくれがもうひとつ。もっと、ありえねぇ、って外見をしていれば、いや、ありそうなのにありえねぇ、って外見をしていれば、一層笑えたはず。現存するおかしな見てくれの奇獣が次々紹介されている今、あの見てくれではやや弱い。
本作、政府高官の4つのお願いとか、いいネタがたくさん仕込まれているが、それらがどう展開するかは観てご確認を。

ネタバレBOX

もちろん、そこはそれナンセンスコメディ、政府高官の4つのお願いをはじめ、撒かれた伏線のほとんどは回収されない(笑)。
数あるギャグの中で出色なのは、ポンコツ探偵が尾行をしていることに、標的を除いて町のみんなが気づいている、というもの。「よっ! 尾行してるね!」(だったっけ?)には笑った。
Gardenでは目を閉じて

Gardenでは目を閉じて

毛皮族

ザ・スズナリ(東京都)

2021/11/20 (土) ~ 2021/11/28 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■約130分■
討議あり、ダンスあり、時事をたくさん詰め込んだ世間話のようなやり取りあり、その混沌が楽しい一作。全体的に、トガった大学生集団がやっているような青臭さがあるが、その青さが中年の自分の中にも眠っていた青臭さを覚醒させてくれる。
こういう演劇をやる若手が現れないのは嘆かわしい。

ネタバレBOX

ビデオ映像が軸となっている本作。その根幹を否定するようなことを言うが、Zoomを使って収録した討議部分は、Zoom映像という体(てい)の実演でよかったのではないか。ビデオの音声が聴き取りづらかったこともあって、上演中、ずっとそう感じていた。役者がフレーム様の物を持ってその中で喋るとか、陳腐な演出かもしれないが、生演技でやり取りしたほうが、話も入ってきやすかったと思う。
どうしよう 孤独だ 困ったな

どうしよう 孤独だ 困ったな

第27班

王子小劇場(東京都)

2021/11/18 (木) ~ 2021/11/23 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■約140分■
力作。人生のままならなさを描いた極めて王道的な演劇ながら、ちゃんと書き、きちんと演出し、しっかり演じれば、ここまでのものが出来上がるんだなぁ。。

ネタバレBOX

居酒屋バイトの青年と休憩時間の間だけ店の裏手で交流を持つ、じつは病院を抜け出してきていた心臓病の流浪の少女が魅力的。小悪魔っぷりがいい。
カナリヤ

カナリヤ

日本のラジオ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/11/18 (木) ~ 2021/11/23 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■85分弱■ 
教祖を登場させないのは賢明な判断。出てきていたら、バチボコつまらなくなっていたと思う。

とりわけ眺めの悪い部屋

とりわけ眺めの悪い部屋

ピンク・リバティ

浅草九劇(東京都)

2021/11/10 (水) ~ 2021/11/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■約120分■
若くて美しい地縛霊が住み着いているマンションの一室を舞台に、家主である映画青年と部屋に出入りする二、三十代の男女七人が織り成す群像劇。主人公の映画青年が女幽霊と同居しているという設定があまり生かされていない気がしたものの、劇中人物たちのキャラクターの切り分けがとても上手くなされているため、痴情が複雑にもつれ合う男女群像劇としての面白味は十二分。

ネタバレBOX

友達も恋人もなく、脚本コンペに応募するための作品を書く書くと言いながらなかなか書こうとせず、裕福な実家からの仕送りとたまにやるウーバーイーツのバイトで生計を立てている、幽霊さながらに“死んでいるような”映画好きな青年・津野一郎が主人公。今は映画本の編集をしている大学時代の映画サークルの先輩から「書いてみない?」と誘われて映画ライターとなり、編集室代わりに使われ始めた広めの自室に出入りする編集者やライター、映画監督と交わることでやっと“人間らしく”生き始め、遂には女性編集者と結ばれるまでが描かれる。
性別問わず多くの人間が出入りするその部屋では男女間のトラブルが相次ぐが、そんな中、一郎は桜井琴子という編集者とちゃっかり愛を育み、二人が新生活のために女幽霊・夏子を残して部屋を去り、劇は終わる。
一郎の結婚相手となる桜井琴子は、一郎の部屋に出入りする面々のうち唯一、夏子の存在に気づいており、一郎と違って見ることはでないまでも、夏子の気配を感じることはできるという設定。一郎以外で夏子を唯一感知できる人間が、夏子が人間と幽霊の垣根を超えて淡い想いを寄せていた一郎と結ばれるというのはなんとも因果な話。一郎に対する夏子の恋心は終盤のモノローグでそれとなく明かされるが、その淋しげな口ぶりは今も耳に残っている。
この女幽霊・夏子は、いかにもオバケオバケしている昔風の幽霊ではなく、見た目も生活様式も人間とほとんど変わらない、なんなら、流行りの配信動画の話を一郎と交わしたりもする、今様の幽霊。なぜ死んだのか、生前どんな人生を送っていたのか、そのあたりのことも一切語られないために幽霊感はほぼなく、気絶させて人間に乗り移れるのが、唯一の幽霊らしい特技。ただ、この能力もそう頻繁には用いないため、物語にはほとんど影響をもたらさず、狂言回しとして物語を補足するのが主な役割。また、ダメ人間・一郎の保護者的な役割も担っており、劇の序盤では脚本を書かない一郎を母親のごとく親身になって叱咤。ただ、一郎が映画ライターとして一人前になってしまうと保護者として振る舞う機会も減り、その存在感は幽霊のように(?)薄まっていく。最後は一郎と琴子の門出を見送り、その有りようはさながら神父のよう。夏子という超常的な存在が二人の結婚に承認を与えることで、その結婚はどこか崇高な色合いを帯び、運命的なものに感じられた。もし夏子という幽霊の存在がなかったら、本作は奥行きを欠き、通俗的な男女群像劇にとどまっていたことだろう。
それにしても、一郎はなんといい女を妻にしたことか。朴訥で不器用ながら、口を開けば割愛サッパリ、ハキハキとしゃべる琴子のような女性はモロ筆者好みで、少し嫉けてきた(笑)。あの朴訥で奥ゆかしく、それでいてサッパリハキハキした感じは、演じ手である大西芳礼さんの地なのだろうか?
ベンバー・ノー その意味は?

ベンバー・ノー その意味は?

はえぎわ

新宿シアタートップス(東京都)

2021/11/03 (水) ~ 2021/11/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

■約110分■
はえぎわ約3年ぶりの新作公演。
シンプルな舞台の上で次々と演じられる断片的シーンが脈絡を生んだり生まなかったり、笑いを生んだり生まなかったり、哲学を生んだり生まなかったり…。こうした“はえぎわのような演劇”は他に類がなく、はえぎわ公演でしか味わえないことを強く強く再認識し、急な公演だったために参加できないメンバーもいたものの、この稀有な演劇集団が久々に揃ってじつに“らしい”公演を打ってくれた、そのことにまず感動。
なくなることをテーマにするあたりがまず“らしい”し、そこから“ない”と“ある”の弁証法を展開し、それが、ないことをあることに、あることをないことにすることで成立するこのジャンルを自己言及的に語った演劇論にもなっていて、こうしたメタ構造もじつにはえぎわらしく、その相変わらずっぷりに嬉しくなった。
ただひとり客演として参加した内田健司さんはイキのいい演技で作品を活気づけて、本作の見応えを倍加。劇団員になっちまえ!

ネタバレBOX

“ない”と“ある”の弁証法は、やがてとある夫婦の哀切な物語へと重なって、胸を焼かれた。
The Kitchen

The Kitchen

TABACCHI

駅前劇場(東京都)

2021/11/10 (水) ~ 2021/11/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度

■85分強■
じつに深みのない劇。締まりも悪く、まだ続きがあるのだろうと思ったら、そこでまさかのジ・エンド。アーノルド・ウェスカーというイギリス人の原作戯曲は未読だが、原作もあれで終わるのか、それとも時間短縮のために続きをカットしたのか?
それ以前に、なぜこんな薄っぺらい作品を選んで上演しようと考えたのか、理解に苦しむ。
これで前売4500円、当日5000円とは…。

ネタバレBOX

厨房で働く男たちは互いにしょうもない言いがかりをつけては「バカ!」などと単純な言葉で罵り合ってばかり。飛び交う罵言にひと捻り感じられれば、この劇をもっと楽しめたはず。
既婚の同僚ウェイトレスとの恋が捗らずご機嫌斜めの若手調理師が、盛り付けを手伝おうとした別のウェイトレスに「(俺の仕事だから)俺がやる!」と溜まっていた怒りを爆発させ、食器の山を厨房にぶちまけるのがヤマ場というのも、あまりに安っぽい。
夜を治める者(ナイトドミナント)ワーク・イン・プログレス

夜を治める者(ナイトドミナント)ワーク・イン・プログレス

お布団

アトリエ春風舎(東京都)

2021/11/12 (金) ~ 2021/11/14 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

■90分弱■
話がぶっ飛びすぎていて、最後まで戸惑いを抱えたまま鑑賞。
ワーク・イン・プログレスとは言うものの、今回、戯曲を余さず上演し、これで話は完結しているらしいが、謎を明かしながらも増幅させるような、あんなラストじゃ得心がいかない。

ネタバレBOX

病はその当事者とそれ以外の者を切り分ける、みたいなことが当日パンフの挨拶文には書かれていたが、仕上がった劇はそんなテーマを大きくはみ出た、もっと得体の知れないものになっていた印象。
せめて、吸血鬼、人狼、人間、人造人間がそれぞれどんな病を寓意化したものなのか、その見当ぐらいはつけられるような作り方を、本公演ではしてほしい。
今作も見当ぐらいはつけられるように作ったつもりだと言われたら、それまでだけれど。

ジャンガリアン

ジャンガリアン

文学座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2021/11/12 (金) ~ 2021/11/20 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

■約140分(途中休憩込み)■
iakuの横山拓也が文学座に脚本提供。横山作品らしくたくさんの笑いを孕みながらも、寛容と不寛容をめぐる素晴らしい人間ドラマに仕上がっていた。

柔らかく搖れる

柔らかく搖れる

ぱぷりか

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/11/04 (木) ~ 2021/11/15 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

■約90分■
方言からして山陽地方の一家? それぞれに悩みを抱える家族の面々のエピソードが同じウェイトで描かれるばかりで、重心となる物語がなく、また、それは意図的なものなのかもしれないが、話同士が互いに深くは交わらず、それがために劇がうねってゆかず、物足りなかった。タイトルがタイトルだし、観る者の感情をそっと、かすかに揺さぶるような、派手さはなくともほんのり胸に残るような静かでささやかな劇をハナっから志向していたのかもしれないが。
観た人は言うかもしれない。家長たる父の死がこの劇の重心であろう、と。しかし、残された家族の会話からは父の人となりがいまひとつ伝わってこず、また、父の死は劇全体にそこまで大きな影を落としてはいない。その死が謎めいていることと、残された家族それぞれのエピソードとの間にもそこまで強い連関は感じられず、劇としては不体裁だと感じた。
一言で言えば、父の死というものが劇全体をくるみきれていない。

ネタバレBOX

だからこそ、父の死が蒸し返されて劇が終幕となることにはどことなく違和感を覚えた。
父の死でなく、個人的には、不妊に悩む長男夫婦の話に最も感情移入。この話を軸に据え、他の家族のエピソードがそこへ有機的に絡んでいけば、少なくとも私はもっと前のめりで鑑賞できたはず。長女とその同性のパートナーが猫を飼うくだりなんざ、眠りこそしなかったものの、あまりにも刺激が乏しく、途中から茫然としてしまった。
ぼんやりブルース

ぼんやりブルース

ヌトミック

こまばアゴラ劇場(東京都)

2021/10/22 (金) ~ 2021/10/31 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

■90分弱■
筋らしい筋がなく、パフォーマンス色の強い、抽象的な一作。大震災を経験し、今はパンデミックに翻弄される日本において、人々が離散していく心細さと、つながり合いたいという強い思いが、音声、音響、身体、美術などをフィーチャーした、言語に大きく依存しない演出により切実に表現されており、五感ごと掴まれた。

ネタバレBOX

鈴木健太によるギターの弾き語りに、額田大志がキーボードとドラムが絡んでいく、終盤の音楽パフォーマンスが圧巻。あれは鈴木氏の自作曲か? 詞・曲とも良かった。
フタマツヅキ

フタマツヅキ

iaku

シアタートラム(東京都)

2021/10/28 (木) ~ 2021/11/07 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

■約115分■
大好きだったお笑いから遠ざかってほぼ何もせず、献身的な母に甘えてばかりの父のことが大嫌いなはずの花楽君。その感情の軌跡に、不自然というか、劇をイイ話に持っていかんがためのご都合主義的なバイアスがかかっているのを感じはしたが、あのラストシーンには高ぶった。

ネタバレBOX

揉め事の絶えなかった家族が最後の最後にようやくスリーショットを織り成すのだから、そりゃあ嫌でも高ぶってしまう。そのラストシーンには、克(すぐる)と花楽が親子で慰問落語会の高座に上がっている姿がほんのり透けて見えもし、少しジィーンときたものの、すでに述べた通り、そこには多少の強引さも感じられた。
花楽と彼を想う由貴の、そして若かりし日の克と雅子のコミカルなやり取りは楽しいの一語。特に、明るく活発ななかに時おり乙女な一面を覗かせる由貴ちゃん、最高!

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