1
山笑う
僕たちが好きだった川村紗也
故人にまつわる、知ってる時間と知らない時間の重なり、衝突、混ざり合い。そして雪解け、山笑う。地に足の付いた感情はとても優しく暖かなもので、笑いの加減もよく、酔っぱらいのおっさん(山田百次)の親身の怒号に目頭が熱くなった。
2
メイツ! -ブラウン管の向こうへ-
劇団6番シード
この距離感、この熱量、この汗のかき方。小劇場での演劇はこうでなくてはならないと思わせてくれる気持ちのよい作品。「向こうへ」の「へ」とは即ち、私という人間がここにあることを知ってもらいたい、届けたいという願いそのものなのだろうと思う。
3
こわくないこわくない
クロムモリブデン
約一年半ぶりに観たクロムモリブデン。響き渡る重低音に牧歌的な雲の舞台セット。勧善懲悪を蹴散らす狂気のバランス感覚。生きてりゃ出くわす咎を背負って、善悪の狭間を縫うように走るブラックコメディ。100年経ったら、素敵な世界……。
4
幻書奇譚
ロデオ★座★ヘヴン
見栄やプライドで塗り固めた事実。判断を狂わす世論の風潮。そして、一夜にして全てを破壊する「炎上」に翻弄された偽典を巡る論争劇。笑いを交えたそれぞれの人間模様、想いや言葉の応酬が面白い。
5
ロボ・ロボ
キティエンターテインメント
ずっと観たいと思っていた西田シャトナーの作品。人間によって課せられた役割と「アナライザー」が出した新たな指示。2つの命令の間で生じたほころびと、機器の劣化で徐々に顕在化するエラー。それらが新たな発想のヒントを生み出し、様々な偶然が奇跡に結実する物語は感動の一言。
6
パダラマ・ジュグラマ終演いたしました!総動員3672人。ありがとうございました!
おぼんろ
どこまで客席でどこからアクティングエリアか見分けがつかない。それがおぼんろスタイル。まるで大きな殻に包まれたような世界で語られたのは諦めの世界。「誰かの夢が叶うところが見たい」という強い願いが奇跡を呼ぶ。
7
眠る羊
十七戦地
二世議員とその一族の「守るべきもの」とは? 意外にも今回は茶目っ気が多く、客席を笑いに包みながらも一切ダレることなくエンディングまで突っ走った。毎度毎度のことだが、十七戦地の洪水のような言葉の応酬は見応えがある。
8
海猫街・改訂版
劇団桟敷童子
日本が大国化する中で消えていった小さな街の物語。舞台上で醸成される息吹のようなものが何とも言えない高揚感を生む。序盤は騒がしい印象を持ったが、気づいた時には固唾を呑んで観ていた。客席まで盛大に降ってきた紙吹雪も今となってはいい思い出。
9
世迷言
柿喰う客
日本の古典を下敷きにしつつ、うつろでソリッドな世界観は独特としか言いようがない。いい意味での違和感や落ち着きの無さはすべて計算されていたのだろう。題名のとおり世迷い言である。客演の篠井英介はその不気味さで抜きん出ていた。
10
毒婦二景「定や、定」「昭和十一年五月十八日の犯罪」
鵺的(ぬえてき)
観たのはBプロ「昭和十一年五月十八日の犯罪」のみ。実は私、阿部定のことを全く知らないのだが問題なく楽しめた。平行線をたどる調書作成の現場を一人の乱入者がかき回す構図だが、まあ、面白い。鵺的でこんなに笑うとは思わなかった。