1
Dステ12th「TRUMP」
ワタナベエンターテインメント
末満健一の「リバース・システム」に初めて触れた当作品。上演期間中、同じストーリーを繰り返し演じ、繰り返し観ることまで緻密に計算された輪廻構造・舞台演出が素晴らしい。「観てきた」の数からも分かるようにCoRich的には盛り上がらなかったが、この作品を第一位とした。客席は女性ばかりで男性客にもっと観てもらいたかったと今でも思う。
2
て
ハイバイ
何度目かの再演ということで選考から除外することも考えたが、どうしても外すことができず、結局二位にしてしまった。それほど感動を覚えた作品。合間に入る珍妙な笑いが、全体をおおう憂いや哀しみに水をさすことなく、視点を変えた二周目は、それさえどこか切ないという構成は見事。よくできているとしか言いようがない。
3
風撃ち
劇団桟敷童子
絶海の孤島。荒々しさ。息吹。舞台の中にひとつの世界があり、命があり、魂が宿っている。その生命力、躍動感に終始圧倒された。鬱蒼とした舞台セットは一見すると木材を組んだだけのようで無骨に見えるが実は可動性が高く、ラストの「大海原」に驚かされた。
4
パブリック・リレーションズ
JACROW
5人で立ち上げたPR会社の濃密な悲喜交々。起業の夢と現実、ギスギスした人間関係とヒリヒリする会話劇が間断なく続く力作。『まじめにやってますよ~』と半笑いで言う社員など、「こういう人いる!」と思わず声をあげたくなる登場人物のキャラ付けが秀逸。
5
獣のための倫理学
十七戦地
犯罪研究会のロールプレイによって再現された35年前の殺人事件。語られてきた事実。些細な違和感。言葉の応酬。揺れる心。譲れぬ想い。隠された真実…。テンポがよくグイグイ引き込まれていく会話劇は見応えがあった。小さなギャラリーでの公演だが、その狭さがワークショップという劇中設定をより引き立たせていた。
6
Dear friends (東京)
劇団6番シード
舞台セットはボロアパートの一室。ただそれだけ。そこに人間の全てが詰まっているように見えた。小劇場のワンシチュエーション・コメディはこうやって創るんだよという見本のような作品。楽しい場面も、本来なら悲しい場面も笑いを絶やすことなくグダグダを貫き通し、文字通りの泣き笑い。とても気持ちのよい作品。
7
RE-INCARNATION RE-BIRTH
AND ENDLESS
これぞスペクタクル。これぞエンターテイメントの傑作。休憩なしの3時間半だったが何の誇張もなくあっという間だった。登場人物ひとり一人に想いがあり見せ場があり、それらが組んずほぐれつして物語が動く。続編ということで、前回からの登場人物はすでにキャラが立っているし、客席の空気もスタートから温まっている感じで最初からエンジン全開。私自身、気の高揚が止まらなかった。
8
STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)
株式会社ダイス
「鈴羽編」、「紅莉栖編」、「SG編」を観劇。個人的に大好きなゲームの舞台への移植。ANDENDLESSの西田大輔とMAGES.の志倉千代丸が交わることなどないと思っていたので、観劇中は夢のような時間であった。当初「演劇風のイベント」になってしまうのではないかと心配したが全くの杞憂で、原作の良さそのままの素晴らしい舞台だった。
9
ストリッパー物語
東京芸術劇場
つかこうへいの作品だけにもっとガツガツくるかと思ったが、いい意味で裏切られた。つかの描く屈折した人間模様と、ポツドールの退廃感が融合して、場末のストリップ劇場で生きる男と女の生き様が強く儚く描かれていた。演技なのか素なのか分からないリリー・フランキーの得体の知れぬ胡散臭さが光っていた。
10
虚言の城の王子
空想組曲
絶望と向き合うファンタジー。幸せの意味。生きる意味のひとつの答え。「都合」はよすぎるかもしれないが、優しくて、はっきりとした答えを確かに受け取った。普段はバルコニー席が置かれている2階のサイドゾーンまで目一杯に使った舞台は、客席の誰かが抱えているかもしれない「絶望」をも包み込もうとする試みのようにも見えた。終演後、私としては珍しく上演台本を買った。