りいちろが投票した舞台芸術アワード!

2011年度 1-10位と総評
グラデーションの夜 《群青の夜》 《黒の夜》 《桃色の夜》

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グラデーションの夜 《群青の夜》 《黒の夜》 《桃色の夜》

KAKUTA

残念ながら「黒の夜」は観ることができませんでしたが、他の二本には観る側を惹きこむ圧倒的な力がありました。
特に桃色の夜で語られた物語には、
それがすっと沁み込み溶けていくような常ならぬ感覚があって。

この作品にとどまらず
作り手の2011年の作品たちには、いずれも心を捉われました。
「ひとよ」にしても「往転」の脚本にしても、
作劇の豊かな円熟と新たな歩みのようなものを感じることができました。

塩ふる世界。

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塩ふる世界。

マームとジプシー

作り手の一つのステージが満ちた作品のように思えました。
描きこまれていく世界の広がり方に
さらなる充実を感じた作品。
世界をそのまま流し込まれた印象がのこって。

作り手の作品たちにずっと惹かれ続けた一年でしたが、
同時に何かにとどまることのない
作り手の新しい歩みを感じつづけてもいて。

新しい年の彼の作品もとても楽しみです。


うつくしい世界

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うつくしい世界

こゆび侍

絵本をめくっていくうちに
その世界に閉じ込められてしまったような・・・。

世界に対する不要な説明は一切なく、
シーンの絵面に編み込まれたニュアンスやイメージで
観る側に広がっていく世界。
そこには、これまでに観た演劇とは異なる踏み越え方での
豊かな奥行きがあって。

ひたすら魅了されました。

節電 ボーダー トルネード

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節電 ボーダー トルネード

クロムモリブデン

役者たちの震えが来るほどに密度を持った演技から
静止画ではなく動きとして描き出されていく
作り手の心風景の移ろい、
閉塞感や高揚、さらにはそのループに至る突き抜けに
ただただ引き込まれ見入ってしまいました。

劇団のこれまでの作品の表現力も凄かったのですが、
そこに更なる新しい筋肉がついたような感じ。
作品ごとの頂きからさらに進化し続けていることが驚きでもあり、
観客にとってのさらなる楽しみでもあり・・・。

観終わって、圧倒され浸潤されつつ、
なにかわくわくしてしまいました。

IN HER TWENTIES

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IN HER TWENTIES

TOKYO PLAYERS COLLECTION

2011年に観た中でも一番ビビッドな作品だったかもしれません。
一人の女性が生きる10年の肌触りがしっかりと感じられて。
一年ごとに生きる女性たちの想いやつながりにも心を奪われました。

作り手が彼でしか描きえない世界を表現の引き出しに納めたことを
実感した作品でもありました。

五反田の夜

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五反田の夜

五反田団

周りの評判を聴いてふらっと観に行った感じだったのですが・・。
やられました。
市井のちょっとしたことから、世界の縮図を描き出す
作り手の手腕の凄さ・・。
その腕力を改めて実感しました。

役者も上手いなぁとおもう。
「カダフィ大佐・・・」という台詞の切り出しの絶妙さや
作り手と役者の身体表現の凄さは
ちょっと忘れられそうにありません。

ロロvol.6 『常夏』

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ロロvol.6 『常夏』

ロロ

抽象画をみるような作品でしたが、
なによりも
世界が一気に広がり解き放たれる後半の、
そのグルーブ感に圧倒されました。

この作り手の制御されていた底力が
解放されたような感じ、あっという間に世界に巻き込まれてしまいました。

パイナップルの食べすぎ

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パイナップルの食べすぎ

ナカゴー

この作り手が紡ぎ出すものには
観ていて愕然とするベクトルの方向性と
恐ろしい脚力での突き抜けがあって。

この劇団
人によって好き嫌いは出るのかも知れませんが、
私にとっては麻薬のような面白さをもった作品ばかりでした。

ハイヤーズ・ハイ

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ハイヤーズ・ハイ

劇団ガバメンツ

関西的なテイストを保ちつつ、
一方で緻密に組み上げられていく物語に
観る側をぞくぞくと前のめりにさせる力があって。
それが破綻したりへたれたりせず
最後まで貫きとおされることに驚嘆。

15Minutes Madeで初めて見てから本公演を楽しみにしていたのですが、
その期待を凌駕する驚きがありました。

未亡人の一年

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未亡人の一年

シンクロ少女

時間の繋がり方や因果の質感に
この作り手でなければ描きえないような
独特のテイストがあって。

観終わって、ちょっと逃げられないような残存感が残る。
この作り手の作品をもっと見たいと思いました。

総評

毎年思うのですがランキングを作るというのは本当に難しい作業で、
単純に良いものを選ぶということではとても選びきれない。
そこで、2010年は「心に満ちたもの」を切り口に選んだのですが、
2011年は目先を変えて「何かを突き抜けた感覚を与えてくれたもの」という基準で
選びました。
それと、概ね4000円未満の木戸銭であること、単独劇団による公演であることという
条件をつけて作品を抽出しました。


ちなみに、去年の基準で選べば、
柿喰う客、空想組曲、時間堂、風琴工房、青☆組、オーストラマコンドー、
パラドックス定数、monophonic orchestra、チョコレートケーキなどを選定したはず。
また、複数劇団の短編公演のなかにも、20年安泰の諸作品(特に範宙遊泳、マームとジプシー、)や、日本の問題のいくつかの作品(Mrs.fictions,Dull Colored Pop、ミナモザ、Jacrow)などにはランキング作品たち同様に豊かな膨らみや鋭い切っ先がありました。

震災の影響はいろんな部分にあったように思います。
中でも観る側としてもというか私的には、
ミナモザ、Dull Colored Pop、東京ネジなどの作品に
強烈なインパクトを感じました。
これらの作品をランキングで並べることは、
なにかためらいを感じ控えさせていただきましたが、
それぞれに表現の秀逸さや演劇としての
高いクオリティを持った作品だったと思います。

それと、今年、個人的には首都圏だけでなく関西や東北の劇団の公演をたくさんみることができたのが嬉しかった。
笑いの内閣、石原正一ショー、ガバメンツ、ミジンコターボ、悪い芝居、すでに東京でも着々と実績を上げている渡辺源四郎商店、野の上、うさぎ庵・・・。
それぞれに新鮮にベタであったり、勢いや鮮やかさに満ちていたり、したたかに緻密だったり。
劇団のみならず役者たちにも個性が強く足腰がしっかりとした方が多く、
首都圏の劇団とは違った魅力を感じたことでした。

あと、昨年以前から嵌っている団体、たとえば、あひるなんちゃら、味わい堂々、ぬいぐるみハンター、バナナ学園純情乙女組、tea for two、などの劇団にも、進化や私的に知らなかった新しい一面をみることができたように思います。
また、ブラジルの赤ん坊とかろりえが三鷹に出現させた化け物も凄かった。
それらが単なる外連ならびっくりしたで終わりなのですが、
作り手に作品の中で彼らを生かす理や手腕があって舌を巻いたことでした。

昨年同様にカフェやバー、画廊などでの小スペースでの演劇にも
すぐれた作品が多かった。
新宿眼科画廊での年年有魚や北京蝶々などやエビス駅前バーでの諸作品など、しっかりと作りこまれてたっぷりと楽しむことができました。休止が決まった黒色綺譚カナリア派のリーディングも印象にのこった。
小スペースといえば、
ガレキの太鼓の教室演劇や覗き見公演の進化にも瞠目。
この作り手のフォーマットでしか表現し得ない世界が
さらに歩みを進めていることを実感しました。。

こうやって長々と書きこんでいても、
まだまだ書き尽くせないほどたくさんの作品に惹かれた2011、
大変な一年ではあったけれど、
観劇という意味ではとても豊かに過ごさせていただきました。



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