1
組曲「空想」
空想組曲
奇跡のような作品でした。
上質なフルコースと評された方がいらっしゃいましたがまさにそのとおり。掌編の印象が、作品全体で俯瞰する人生のパーツとして色を残して・・・。
個々と全体がそれぞれに織り上げていくものの広がりが常ならぬほどに心にのこりました。
この劇団の作品は他も実に秀逸で、ふかく浸潤されるものばかりでした。
2
葬送の教室
風琴工房
いろんな意味で圧倒された作品でした。
重い内容だし、息がつまるようなテンションが
何度も舞台を満たす。
でも、やってくる質感は筋が通って端正なのです。
描かれるものの本質が筋目を通して
観る側にしっかりと伝わってくる。
観客として今年一番真っ向勝負ができた作品でありました。
3
しゃぼんのころ
マームとジプシー
繰り返され重なる刹那が観る側の内にぞくっとするような
記憶のリアリティを醸し出してくれて。
次第に組みあがっていく時間から溢れだしてくる質感に
ひたすら引き込まれました。
10年に観たこの劇団の3作品には、それぞれに抱える側が制御できないような記憶の質感があって・・・。個々に深く心に残りました。
4
吐くほどに眠る
ガレキの太鼓
物語を組み上げていくメソッドに瞠目。
コアになる部分、広がっていく部分のそれぞれに
創意と演技の精度の高さを感じ、
描き出されたものの質感に
ぞくっとくるようなリアリティを感じて。
この劇団は他の公演(マンション公演・劇場公演)でも
既存の演劇からやってくる感覚を凌駕するような、枠をすっと外して広がっていくような力を発揮していて。
次の作品がとても待ち遠しい劇団のひとつとなりました。
5
めぐるめく
KAKUTA
造語であるはずのタイトルのニュアンスが、舞台からしっかりと伝わってきて。
時間の満ち干の感覚に深く浸潤されました。
昨年、そして3月も含めて、この劇団の作品には独特の解像度を持った時間の俯瞰があって、その中に生きる登場人物それぞれの質感ととも印象にのこりました。
6
寝台特急”君のいるところ”号
中野成樹+フランケンズ
解像度を持った質感に囚われて、お芝居の世界に浸り込んでしまいました。
「旅」の感覚を表現する語り口の秀逸としなやかさが忘れられない。ぞくっとくるほどの洗練を感じる作品でありました。
7
忘却曲線
青☆組
この作品を思い出すたび
潮風と花の香りが
ずっと肌に残っている感じがします。
もしかしたら、
2010年に観た中で一番再演してほしい作品かもしれません。
8
『F』
青年団リンク 二騎の会
どこか行き場を失ったような感覚や諦観がとても切なくて、でもそれだけではない生々しさが作品から伝わってきました。
劇中で歌われた唱歌が今も耳に残っています。多分あの歌声とやってきた切なさは一生忘れないと思います。
9
渡り鳥の信号待ち
世田谷シルク
研ぎ澄まされた印象深いシーンがたくさんあって
それらが単に尖るのではなく
豊かなふくらみとなって醸成されていく。
深く記憶に残る表現がいくつもある作品でした。
この1年でも
作り手には公演が重なるごとに
精度が増し
表現の引き出しが増えていった印象があって。
15MMadeの短編もとても秀逸でした・
10
りんごりらっぱんつ
劇団競泳水着
個々のシーンの瑞々しさにとどまらず
日々の重なりの質感、さらには齢を重ねる感覚が
とても豊かに伝わってきて。
お芝居のさらに外側にある時間までがいとおしく思える作品でした。
10年は劇団としては3本の作品を観ましたが、いずれの作品でも作り手が照らし出す登場人物たちの想いが本当に緻密で豊か。
劇場の舞台空間でしか伝えることができないような感覚が
しっかりと醸し出されていて。
また、女優陣がそれぞれの成長を感じた一年でもありました。