満足度★★★★★
俺の分まで生きてくれ。そして幸せになってくれ
天使アリア役の本田清香さん、矢島かおり役の塩原奈緒さんの2人には、上演中にすごい憎たらしさを感じました。
つまり、それだけ演技が上手であるということなのです。
ネタバレBOX
本作品は、主人公の記憶が断片的しか残っていなく、時間がどんどん経過したり、過去にさかのぼることで、展開されます。
主人公は不慮の交通事故で亡くなってしまった。
信号無視してしまった運転者も、自責の念にかられ、苦悩の末に自ら命を絶ってしまった。
残された家族や恋人たちの、大切な人を失った恨みや憎しみは、悲しみの悪循環を作り出す。負のスパイラル(螺旋)である。
主人公は自分たちを守護する天使たちと協力し、問題を解決していく。
主人公・太一は現実世界に遺した家族、妻のキミカに想いを託す。
「俺の分まで生きてくれ。そして幸せになってくれ」
満足度★★★★
オムニバスストーリーの二人芝居
2時間半の公演、オムニバスストーリーの二人芝居
ギターやウクレレを演奏するイッセー尾形さんの芸達者ぶりに感激しちゃいました。
ネタバレBOX
2時間半の公演、オムニバスストーリー仕立ての芝居でした。
・55才の現役ボクサー(尾形)とプロモーター兼レフリー(小松)
・カジノに初めてやってきた老夫婦
・夜間巡回中の警備員
・ハワイ港に停泊している、船長(小松)と船員(尾形)
・高校以来からの親友
このほかにも一つストーリーがあったような記憶があります。
最後のストーリー「高校以来からの親友」ではストーリー進行に合わせて、尾形さんがギターやバイオリンを演奏し、小松の親分が昭和の名曲を唄いました。
高校三年生など、8曲ぐらいありました。ミュージカルでした。
「船長と船員」ではウクレレ演奏とイッセー尾形さんの芸達者ぶりに感激しちゃいました。
満足度★★★★★
30年前、60年前の悲しい出来事をリセット
『ヴェニスの商人?』を観てきました。
シェークスピア作品は『ハムレット』を読んだことがあるだけですが、いろんなジグソーパズルのピースがどんどん合わさっていき、感慨無量です。
パンフレットにあるキーワード「タイムスリップ」がエッセンスになっています。
人生はリセットできない。だから今を大切に過ごそう。
モロ師岡さん、名古屋でやっているテレビ番組『エイデンシアター』でみたことがあり、きょうご本人を見て、うれしかったです。いい演技していましたよ。
コンタキンテさんはY字バランスがきまりました。
ネタバレBOX
パンフレットにあるキーワード「タイムスリップ」がエッセンスになっています。
30年前、60年前の悲しい出来事をリセットする。
現在に戻って、時間が記憶に追い付く。
時空を越えた愛。感動のラストシーン。
満足度★★★★★
今度はうまく飛ぶよ!
WAHAHA本舗の大女優 清水ひとみさんをはじめ、WAHAHAのセクシー寄席女優陣が出演するので観に行きました。
ネタバレBOX
不仲の夫婦で、奥さんがストレスで昏睡状態になってしまった。
旦那が幸せな家庭を取り戻そうと新婚旅行先にやってきた。
旦那が正気を失ったとき、ホテルでベランダから墜落するというアクシデントに見舞われる。
このアクシデントがタイムスリップのきっかけとなります。
4年、6年、10年前、時間を行き来するお話。
タイムスリップといえば、コンタキンテさんが出演していた 立川志らくダニーローズの『ヴェニスの商人?』で扱っていたスジ(物語の筋)と似て非なるものでした。
まず一方の『ヴェニスの商人?』では、過去の歴史に手を加えると、良い方向に現在の歴史が変わる。ハッピーエンドの大団円を迎えました。
しかし、もう一方の『HAVE A NICE FLIGHT!』では、一筋縄にハッピーエンドとはいきません。
過去の歴史を変えて現在に戻ると、逆に悪い方向に変化してしまっています。
やり直そうと、何度も過去と現在を往復します。
最終幕では、変化してしまった歴史の時間が追いついて、主人公がとんでもないことになってしまいます。
会場では皆、すすり泣く声が聞こえました。私も瞳から涙があふれ出ました。
主人公が奥さんに言ったセリフ。
『今度はうまく飛ぶよ!』
このセリフでピンときました。
これはタイトル『HAVE A NICE FLIGHT!』にかかっています。
心の中で「今度こそうまく飛べよ!」と思いました。
(アンケートチラシの感想にも書きました)
エンディングはようやくランディングできました。
生まれてきた赤ちゃんは、旦那が欲しがっていた女の子ではなく男の子。決めていた名前も「ショウコ」から「ショウタ」に変わっていましたが、まあよいかな。善哉。めでたしめでたし。ハッピーエンドとなりました。
満足度★★★★★
人生は遊びが大事!
新大久保のグローブ座で明石家さんまさんの舞台『メルシィ!僕ぅ?』を観てきました。
生で観るさんまさんはすごい存在感でした。
この芝居でいちばん言いたかったことは、劇中でさんまさんがトチってしまったクライマックスのシーンのセリフ、
『人生は遊びが大事!』だと思います。
ネタバレBOX
妻とケンカしていても、愛する息子には嫌われたくない父親。
家でゴロゴロしているだけの「つまらない父さん」が大嫌いな男の子。
『ボクはつまらないお父さんにはなりたくない!』
愛する息子が父親である自分を嫌う理由がわかり、自分らしさを取り戻すため『人生は遊びが大事!』と決心する。
ダンス大会でお父さんが優勝するのを見た息子は、父のもとに帰ってくる。
満足度★★★★
正しいことばの使い方
2007年4月22日(日) 18:00 千秋楽
『ハレモノ2007』
下北沢「ザ・スズナリ」
間寛平………長野にあるさびれた旅館の主人
ベンガル……新人賞を取って以来、ヒット作が出なくて苦悩する小説家
ネタバレBOX
約1時間50分。前半の1時間は世界観・人物を知るためのギャグ、ボケ仕合。会場はかんらかんらと笑う。
後半の50分はストーリーの中核に向け、動き始めました。
冒頭の導入、実はエンディングでタネ明かしとなります。
これは喜劇であり、エンディングはシュールな結末を迎えました。
冒頭の導入、第一幕はこう始まる。
スーツでビシっと決めたベンガル演じる小説家の芥川賞の授賞式から始まる。謝辞が建前で、本音は芥川賞を取るべくして執筆した作品とスピーチ。そのスピーチは『思い起こせば、あの男が現れなければ…』としめくくられる。
『正しいことばの使い方』という作品で新人賞を取って以来、ヒット作に恵まれず、テレビのワイドショーのコメンテーターとして日銭を稼ぐ日々。若いディレクターにコメントが難しく、さらに話が長い。もっとカンタンに短くと叱咤される。
なんとか起死回生をと模索した小説家は、賞を取る創作小説を作るために、生まれ故郷の長野に1ヶ月ほどこもることにする。
新人賞を取った作品が長野で執筆した為で、再起をかけようとしたのである。
さびれた旅館についた小説家。そこで出会った旅館の主人に翻弄される。ことば使いがおかしい。話が通じない。
堅物の小説家は自由奔放な主人に困惑する。
主人の妻が美人であることから、創作小説を不倫と逃避行の話として考える。しかし、なかなか話が思い浮かばず、先に進まない。
旅館の主人は作家志望であった。3年前に子供が他界した手術する金がなかったため、筆を取るのをやめた。今は好きでもない旅館を営む主人をやっているのである。
美人な妻は主人に、自分の過去の作品を小説家に見てもらうように薦める。小説家の刺激になるだろうと。主人は自分の作品をプレゼントとして小説家にあとでもって行きますと言う。
そんな中、近所の少女が旅館の夫婦にあいさつにやってくる。女優志望の彼女は上京して成功したいと告げる。少女の父は大反対、母親は娘に興味がない為、旅館の夫妻に自分の気持ちを知ってほしかったためである。
そんな気持ちを知った旅館の女将は、ここに宿泊している小説家にTV関係者のコネクションを紹介してもらうように薦める。
少女は意気揚々と小説家の部屋を訪ねることにした。
何か刺激がほしい小説家は、少女が部屋にやってきたことを、旅館の主人からの刺激的なプレゼントと勘違いする。
娼婦と勘違いした小説家の事件は、地元スポーツ紙のスキャンダル記事となる。
旅館の主人のプレゼントであった作品を小説家が見るが、最初の1ページの導入部だけを見て、ダメだダメだと思った。あんたは昆虫や動物の世界を書くのがいい、と適当なアドバイスを言うだけであった。
あなたの言うことはでたらめだらけだ。正しいことばを使いなさい。
スキャンダルが大きな騒ぎとなり、出版社から釈明会見を開くことを迫られる。小説家は旅館の主人に口裏を合わせ、次のことば以外のことはしゃべらないように命令する。
『それは全くのデタラメです』
『先生はそんな人じゃありません』
『私が目撃者です』
記者会見で主人がインタビューされたとき、最初はスキャンダルを否定する内容となり、小説家はほっとした。
しかし記者からの追及で、このことばが裏目に出た。
小説家は主人を問い詰めるが、主人はこう言った。
正しいことばを使ったほうがいいんじゃないですか、と。
スキャンダルがもみ消せなくなり、新作小説出版の話はなくなる。小説家としての人生を終わらせまいと、部屋にひきこもりペンを取るが、話がすすまない。
話が進まないのは旅館の主人を殺していないからだ!と思い、主人に襲いかかる・・・。
ここで舞台は暗転する。
(次の幕は拘置所・刑務所か?と想像したが少し違った)
エンディングは、冒頭と同じく、小説家の受賞スピーチのシーンとなる。しかし辺りの様子がそぐわない。何かがおかしい。
明かりが全体を照らす。
小説家の服装は病院のパジャマ。隣には精神科医。
その脇には、出版社の担当者と旅館の主人。
旅館の主人は無名ながら新人賞を受賞したのである。
その新人賞作家は入院している小説家にお見舞いにやってきたのであった。
作品は動物のキリンのメルヘンなストーリー。奇しくも小説家がそういうものを書いていればいいんだと適当にアドバイスしていた話であった。
ぶつぶつとスピーチする小説家。旅館の主人の名前を耳にして暴れだすが取り押さえられる。
新人小説家が口にする。正しいことばを使いなさいと僕に教えてくれたじゃないですか、と。
満足度★★★★★
『サバンナの掟』を観て来た感想レビュー
空間ゼリー所属の岡田あがささんが客演した演劇、
柿喰う客『サバンナの掟』を観てきました。
「観て来た感想レビュー」
「演出家とゲストによるポストパフォーマンストーク」
「スジ、要約」
観て来たレビューを言います。
【観てきた感想】
≪総論、感想について≫
赤裸々に人間の性について、セックス、援助交際、妊娠、性癖など赤裸々に演じていました。オブラートや隠語で表現せず、人間のもつ欲望、本能が剥き出しになっていました。
クライマックスは登場人物全員の殺し合い。サバンナの掟。
主人公の女子高生「比良山ソネコ」を除き全員絶命してしまう。
≪各論、岡田あがささんの感想について≫
「日本初の女性内閣総理大臣、富永正子(トミナガ・マサコ)」という配役で、主役と対決する悪の枢軸といった様相でした。
客演ながらもメイン・キャスト級でした。
羽根をまとったスーツ姿がかっこよく、男装の麗人、宝塚、パタリロにでてくるバンコランといった感じで、眉が細く凛としていました。
男性役でもよかったんじゃないか、と一瞬思いましたが、日本初の女性内閣総理大臣という英雄的存在として演出したかったのかなと観終わって帰路の電車の中でそう思いました。
人間の狂気、妄想、サディスティック、いやらしさ、憎らしさや醜さがあふれんばかりに出ていました。
岡田あがさをこの総理役にキャスティングして正解だよ!
(僕はこんな発言して何様のつもりなのでしょう、調子に乗っていますね、ごめんなさい)
ネタバレBOX
【演出家とゲストによるポストパフォーマンストーク】
終演後に「ポストパフォーマンストーク」と呼ばれるダイアログを聴きました。
空間ゼリー・ラボでいう所の「アフター・トーク」でした。
客席の質問コーナーで、イの一番に質問してしまいました。
2個も質問してしまうという暴挙、会場からは冷たい視線、ごめんなさい。
僕は知らない。この作家・演出家さんがどんなテーマを訴えたかったのか。
僕は知らない。この方ははどんな頭の中、心の中を持っているのか。
僕は知らない。この方はどんな生い立ち、人生観、世界感、ものさしをもっているか。
だから。僕は知りたい。
1番目の質問は『寡黙な父親の教育方針「幼少期にどうぶつ番組を見せられていた」の大罪で、少年時代にやれなかったことについて』を訊いてみました。
ハンサムな2枚目、高校演劇コンクールで優秀な成績を収め、とくに不自由なかった。という答えが返ってきて意外でした。
なにかしら、愛情が乏しい、女性に虐げられる男性をまのあたりにしたなど
パンフレットの挨拶文にあった『父の大罪』(※ 註1) がこの作品のテーマとして現れているのかと思いました。しかし僕のこの思い込みとは遠くかけ離れていて違っていたようです。
刑事コロンボよろしく「あともう一つだけ」2番目の質問を訊いてみた
『この作品のテーマは何か』
僕の印象に残ったセリフ、キーワードはつぎの三つ。
『セックスを生活のツールにしている人がキライ』
『ハイエナの群れのリーダーはメスである』
『優秀なメスを探す。強い人で生き抜いてきた。実際に遭遇すると、殺さないと殺される』
作・演出の中屋敷 法仁さんからの回答
「オスは優秀なメスに殺される」
確かに受精したメスはオスを捕食し、子育ての養分とする。
「カマキリがそうですね」とあいづちを返す。
「自分自身に主義・主張がない、動物に教えてもらった」
ここに中屋敷さんの『父親の大罪』の一片があるのかなと思いました。
(※ 註1) パンフレットの挨拶文を引用
『幼少期、父親に
半ば強制的にさまざまな
「どうぶつ番組」を見せられていました。
それが、寡黙な父なりの
子育てのかたちだったのだろうが、毎日毎日
ライオンの狩りやらカバの交尾やら
シマウマがハイエナにぶちーって喰いちぎられたりするのを
見て、育った僕は
なんだか、よくわからないことになっていたらしく
思春期になってから親友が欲しいとは思わず、とりあえず
群れの中に紛れていないと気が済まないし
恋人なんていらなくて
とにかく多くの人とセックスできている事実に
安心感を覚えていたのです。
残念なことに、23歳になった今でも
そんな自分の本質は
変わっていない気がします。
ので、
父の大罪を弾劾する
っぽいこの作品を、このたび
再々演するのです』
【公演情報】
柿喰う客 第12回公演
<フリーステージ参加作品>
『サバンナの掟』(再々演)
作・演出 中屋敷法仁
http://kaki-kuu-kyaku.com/nextstage12.html
【スジ、要約】
女子高生 名罪(ナツミ)は黒ずくめのスーツ姿の男女から報酬を受け取るが、口止め料を要求するシーンから始まる。ナツミはその場で射殺されてしまう。
クライアントは総理大臣、富永正子(トミナガ・マサコ)。日本初の女性首相で英雄的存在であるが、サディスティックな性癖を持っていた。
時同じくして、主人公ソネコは、援助交際の接客中に局部を咬まれる。謎の男は逃亡してしまう。
援助交際斡旋組織の捜査・摘発をしたい刑事は、警部の上杉に捜査許可を求める。しかしことごとく却下されてしまう。
刑事は警部が援助交際斡旋組織をかばっていると疑う。
市長は地元出身の総理大臣が来ていることで、ご機嫌を取る。次第に自分が罷免されるのではと勘違いしてしまう。暗殺計画を企てる。
総理の正子は、援助交際斡旋組織の抹殺を計画し、地元マフィアに暗殺を命ずる。
援助交際斡旋組織のメンバー達はナツミの弔い合戦だとして、首相殺害を決意する。
主人公ソネコが総理に対面する。目的はナツミの敵討ちではない。自分の大事なところを咬んだ男を探して欲しいと要求した。
総理は目的は復讐と問うが、分からないとソネコが返答したことに「その男が好きなのね」と逆上する。
もみ合いの末、ソネコは正子にのしかかり絞殺してしまう。
クライマックスは斡旋組織、マフィア、警察、市長、総理による殺し合い。主人公ソネコと上杉警部以外は命を絶たれてしまう。
上杉警部は刑事を殺害した。彼は斡旋組織の顧客名簿を探し消滅させたかった。
彼が主人公ソネコの局部を咬んだ男であった。
警部・上杉も銃撃戦の末、瀕死の重傷を受ける。そしてソネコと対面する
ソネコは「愛してくれた人。あのときも今も顔を真っ赤にしている」と言う。
上杉は「優秀なメスを探していた。ハイエナの群れのリーダーはメスで、強く生き抜いてきた。実際に会ったとき、殺さないと殺されると思った」と答える。
ソネコは自分の白い下着を脱ぎ、額から流血した上杉の顔に覆い被せていく。
満足度★★★★★
希望を捨ててはダメ、絶対に。
【感想】
圧倒されました。記憶喪失の女。父親や彼氏の暴力に虐げられる女、情婦、たくさんの携帯電話。
妄想が現実味を帯びていて、本当にあった話なのかと勘違い、錯覚してしまうほど迫真の演技でした。
「即興芝居やアドリブで出た言葉、動作や感情はその人の価値観、人生観や実際に体験したことがとっさに出てくる」
名古屋ローカルの即興ドラマTVバラエティ番組『スジナシ』で鶴瓶さんの言葉です。
今回の岡田あがささんの一人芝居では、脚本も自ら手がけられていました。
ストーリの筋書きやセリフは、岡田さんの人生観を映し出す鏡であると思います。
一人芝居なので、ストーリー進行が自分の思いのままにできる。自分が体験した話でなくても、小説や映画などの話を見聞きして演じられていると思います。リアリティがある。
全身がうちみ、捻挫や筋肉痛にならないように湿布をはって、養生してくださいね。
アフタートークで訊いた今回のテーマについてまとめました。
【テーマ】
この世で一番幸せで不幸な人、それは希望を持ち続けている人である。
希望を持っていても、それが現実となるのはせいぜい2割ぐらいしか叶わない。実現しない希望をたくさん持ち続けていられる人ほど不幸である。
それでもなお希望をあきらめず、ポジティブに生きている人を描きたい。
手に入れたくても、なかなか手に入れられないもの、それは希望である。
人はそれを望み、あこがれ、生きていかなければならない。希望を捨ててはダメ、絶対に。
人とのつながり、接点がない。一人ぼっち。愛されたい、苦しい、痛い、心細い、つらい。
つらいときは妄想する。つらくても、あきらめないための特効薬。
ネタバレBOX
【アフタートーク語録】
『一人語り一人遊び』
一人芝居をして得たもの、それは自由に演じていることで、まるで空想(妄想)する一人遊びをしているようだった。演じていて楽しかった。
『イベントフラグを立てる』
何気ない行動には、何か意味があるわけではない。役者が集中するためのステップである。
意味のない行動であってもフラグが立つ。それによって周りの人物が影響を受け、ストーリーが展開される。 物語の通過点である。
常に動く、アクション(Act)の連続、役者はActorである。
ダンサーだけでなく役者も、体一つさえあればでショーを行い、世界を渡り歩くことができる。
ダンサーはカバン一つだけで世界を渡ることができる。役者も、たとえ狭いスペースであっても、演技をすることができる。
演出家(劇作家)は役者に感想をもたない。この人はこういう演技をする人だと思い込むと、役者として見られなくなる。思い入れができてしまう。しっかりとした演出ができなくなる。
満足度★★★★★
穢れてしまった女神と弟に訪れた悲劇
会場、木造の客席は古き良き日本家屋を連想させる。
客席と舞台上の距離はゼロである。
テレビ・モニターや銀幕の向こう側の世界の話ではない。
自分が存在する空間と同じくしている。
空間ゼリーの舞台と私の間の距離はゼロである。
私の距離感がゼロになる。
私は、まるで底なし沼に引き寄せられるかのように、物語にのめり込んでいく。
後日談として、下山夏子さんの引退公演であることを知りました。とてもショックを受けました。
しかしこれで終わりというわけではない。終わりは次への始まりでもあります。
次のステージが終わったら、また空間ゼリーに戻ってきてほしいものです。
彼女の今後のご活躍、ご健勝を祈ります。
次回の春公演である『私、わからぬ』も必ず観に行きます。
本公演『穢れ知らず』に興味を持たれた皆様は、近日発売予定DVDを
劇団のホームページにてご予約して、ご覧になって下さい。
過去の公演DVDもぜひご一緒にご購入を強くおすすめします。
ネタバレBOX
『穢れ知らず』のスジ、ストーリーの要約
この物語は悲劇である。
ここは都会から遠く離れた、山に囲まれた小さな村。
まるで昭和を想い起こさせるような、のどかな村である。
しかしこの村の人々は、恋愛、浮気、嫉妬や噂話にとても敏感である。
小さな工場を経営している一家の物語である。
(台詞の方言で語尾に「~じゃけん」と口にしていたので、広島あたりの山陽地方と思われる)
この家では古くから、狐が人間に取り憑くと伝承される。
家の離れに狐が多く現れる。特に狐の鳴き声がうるさいと大人たちは皮肉めいて言う。
(狐とは女性のことで、鳴き声はあえぎ声と連想できる)
古くから伝わる『鶴の恩返し』『鶴女房』の物語が登場する。
機を織る神聖な儀式。
鶴は機を織り、その織物を商売にし、財を旦那にもたらす。
鶴は神様である。
しかしながら鶴は獣(ケモノ)である。
獣は穢れている。
姉のことが大好きだった弟
血のつながっているが故に「決して結ばれることのない二人の純愛」の悲劇が始まる。
姉は6年前、この家族の問題がいやになり、東京に出て行ってしまった。
6年が経って、姉が突然東京から帰ってきた。
いや、東京からも逃げ帰ってきたのだ。
姉にはもう、帰る場所はこの家しかない。
嫉妬の女郎蜘蛛たちが、張り巡らせた情報収集の蜘蛛の巣。
インターネットのWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)は、その名の通り、地球規模の蜘蛛の巣である。
この網によって嫉妬の蜘蛛たちは、姉が秘密にしてきたこと、穢れていることを知ってしまった。
姉の秘密とは「アダルトビデオに出演している女優であり、体を売っていること」である。
奇しくも、まるで機を織る鶴のようである。
鶴は自身の体を切り刻み、織物を作り、売り物にした。
女は自身の体を男たちに捧げ、売り物にした。
女蜘蛛たちは、自分達の求愛に何の興味を示さない弟に対する切り札を手にした。
一家が経営する工場の経営状態は、自転車操業、火の車であった。
一家が破綻する危機をなんとかしようと、姉が金を工面すると皆に言う。
女蜘蛛たちは、ここぞとばかりに、この姉の秘密を弟にばらしてしまう。
弟は姉がいつまでも綺麗で純粋な穢れのない女神であると信じていた。
しかし、姉はただの女であり、獣(ケダモノ)であるという事実を突きつけられてしまった。
弟は姉に、気にしていないから忘れるからとなだめ、俺が守ると決意する。
ここで、この物語のキーワードである『言えば知る、知れば忘れぬ』が登場する。
姉は弟にこう告げる。
『言えば知る、知れば忘れぬ』
世の中には「取り返しのつかない事」が存在する。
この物語のテーマの一つである「見てはいけないものを見てしまったとき必然的に訪れる別れ」がやってくる。
弟の両腕が、白い肌で妖艶な姉の首筋に触れる。
弟が自らの手によって、穢れてしまった姉を殺める。
姉と弟は永遠の別れを迎える。
この物語は悲劇である。
【物語の魅力に引き寄せられる細かな設定】
この一家に関係する人物相関図が複雑である。
ドロドロの愛憎劇が繰り広げられる。
姉と弟は血のつながった家族である。二人は愛し合えども。叶わうことのできない愛である。
昔、叔父が母に浮気をした。この二人の間に生まれてしまったのが、弟である佐伯五樹である。
そして今から6年前、家の離れで、母が他の男とセックスをしていた。
弟、佐伯五樹は母に男ができていることに気付いていた。しかし、見て見ぬふりをした。
姉は、幼い妹が泣き止まない為、母親の元へ行ってしまった。
母は娘に淫行を見られてしまった。
母はもうここにはいられないと、男と一緒に村から出て行き、蒸発してしまう。
帰らぬ母親、村中にこの話が広まる。
・叔母と母は姉妹。
・叔父(夫)が蒸発した母に寝取られたことを今でも嫉妬する叔母。ノイローゼになっている。
一人残された父親は、軽蔑され、工場経営もままならず、3年後に他界する。
この出来事は物語現在から数えて3年前の話である。
東京に出て行ってしまった姉は、父の葬式には現れなかった。
・突然帰ってきた姉を、蒸発した母に想い重ねる叔父。
・近所の男の子、遠野 栄吉と妹たちの間の三角関係。
栄吉は三女が好き。
四女は栄吉に惚れていて、周囲の大人たちも結婚の期待を寄せる。
三女は栄吉が好きであることを、四女が惚れているため、公に言えない。
栄吉は四女よりも三女のことを愛している。
・工場の女従事者が叔父に接近し、家の中にずかずかと入り込むのを警戒する妹(次女)。
・工場の金を持ち逃げし、叔父と逃避行する工場の女従事者
満足度★★★★★
世界は三角形でできている
休日出勤の調整をして(3/11日曜千秋楽の前日、夜11時まで仕事でした)
空間ゼリーの春公演『ゼリーの空間』千秋楽を観劇してきました。また夏休みごろの次回本公演を楽しみにしよう。
テーマは「自殺、いじめ」
世界は丸ではなく三角形でできている。
階級で分けられる世界。
舞台は学校という閉じた世界でのストーリーではあるが、目立つといじめられる。人と違うと攻撃されるという、いじめ問題の原因を捉えたものとなっております。
空間ゼリーさんの本公演DVDのカメラワークはすばらしい出来です。まるでTVドラマのように切り替わるんです。
今回の『ゼリーの空間』では5キャメの手持ち、固定無しだそうで、ステージ上の隅々まで撮影しているそうです。
今回は音響にもこだわりがありました。教室セットの窓を開け閉めしたときの効果音が違いがはっきりしました。どうやってやっているんだろうって不思議に思いました。
ネタバレBOX
自殺に追いやられた女性の先生というのも高飛車な人だったけど、生徒たちによるいじめもすごかった。エンディングは伏線が張られていて予想はできていたけど、良心にさいなまされていたから。人間は体は丈夫でも、気持ちは・・・。
電車の往来する音、警笛、非常制動ブレーキの音、音響効果がすばらしい出来でした。
鉄道好きな私としては、あんまり線路内に人立ち入りしてほしくないけど。