誠の観てきた!クチコミ一覧

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クーロンの法則

クーロンの法則

劇団たいしゅう小説家

ウッディシアター中目黒(東京都)

2008/03/20 (木) ~ 2008/03/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

生きていればなんとかなる
 生きていればなんとかなる。前向きに必死にもがきつづけている。
 みんな前向きに生きている。観ている僕たちが「生きていて辛いな」と、くよくよしていることが小さなことに見えてしまう。演劇を観終わって、明日から頑張るぞと元気が出てくる演劇でした。

 クーロンハウスに集う人々は、共同生活でお互いを助けあいながら、他人に言いにくい事情から逃げずに立ち向かうようになる。明日への活力を充電して巣立っていく。
 全体的に明るい雰囲気で、笑いあり涙ありの喜劇でした。
 この演劇はポジティブに生きようと必死にもがく姿を描いているので、自然と明るい雰囲気となりました。脚本、演出とキャストのハーモニーが心地良かったと感じました。

ネタバレBOX

【あらすじ】
 クーロンハウスは、事情があって住む場所を追われた人達がたどり着いた避難場所である。

 クーロンハウスのリーダーが困っている人を助けたいと思っている。その人柄が魅力となって、メンバーが引き寄せられていく。
 共同生活を送る上でいろいろケンカなどしたけれど、共同生活を送るうちにみんなの気持ちは通じ合い、結束は固くなっていく。運命共同体である。
 借金取りや浮気男に捕まりそうなときも、みんなで守る。お互いが人に言いにくい事情を持っているから、共同生活を送る他人の痛みがわかる。

 そして、皆それぞれがやりたいことを見つけ、運命共同体から離れて頑張っていく。
 クーロンハウスは住む人が変われども、リーダーの魅力に引き寄せられる。最後の休息地である。

【ネタバレ内容】
 本作品は脚本や演出だけでなくキャストも良かったと思います。
 ほんの一部ですが取り上げます。
 借金取りが関西人で、精悍な外見通り、冷徹非道の取立てをする。しかしええ話にすぐ感動する。涙もろく人情味のある人間であった。両極端なギャップがあり面白かった。
 奥さんから嫌われ家を追い出された弁護士、キャラクターや言動がおもしろおかしい【funny】が、弱い立場の女性を守るときは毅然とした態度で浮気男を追い払う。人間らしさがあってかっこよかった。
HAVE A NICE FLIGHT!

HAVE A NICE FLIGHT!

劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)

赤坂RED/THEATER(東京都)

2007/08/22 (水) ~ 2007/08/26 (日)公演終了

満足度★★★★★

今度はうまく飛ぶよ!
WAHAHA本舗の大女優 清水ひとみさんをはじめ、WAHAHAのセクシー寄席女優陣が出演するので観に行きました。

ネタバレBOX

不仲の夫婦で、奥さんがストレスで昏睡状態になってしまった。
旦那が幸せな家庭を取り戻そうと新婚旅行先にやってきた。
旦那が正気を失ったとき、ホテルでベランダから墜落するというアクシデントに見舞われる。
このアクシデントがタイムスリップのきっかけとなります。
4年、6年、10年前、時間を行き来するお話。

タイムスリップといえば、コンタキンテさんが出演していた 立川志らくダニーローズの『ヴェニスの商人?』で扱っていたスジ(物語の筋)と似て非なるものでした。

まず一方の『ヴェニスの商人?』では、過去の歴史に手を加えると、良い方向に現在の歴史が変わる。ハッピーエンドの大団円を迎えました。
しかし、もう一方の『HAVE A NICE FLIGHT!』では、一筋縄にハッピーエンドとはいきません。

過去の歴史を変えて現在に戻ると、逆に悪い方向に変化してしまっています。
やり直そうと、何度も過去と現在を往復します。

最終幕では、変化してしまった歴史の時間が追いついて、主人公がとんでもないことになってしまいます。
会場では皆、すすり泣く声が聞こえました。私も瞳から涙があふれ出ました。

主人公が奥さんに言ったセリフ。

『今度はうまく飛ぶよ!』

このセリフでピンときました。
これはタイトル『HAVE A NICE FLIGHT!』にかかっています。

心の中で「今度こそうまく飛べよ!」と思いました。
(アンケートチラシの感想にも書きました)

エンディングはようやくランディングできました。
生まれてきた赤ちゃんは、旦那が欲しがっていた女の子ではなく男の子。決めていた名前も「ショウコ」から「ショウタ」に変わっていましたが、まあよいかな。善哉。めでたしめでたし。ハッピーエンドとなりました。
ヴェニスの商人?

ヴェニスの商人?

立川志らく劇団・下町ダニーローズ

アイピット目白(東京都)

2007/06/05 (火) ~ 2007/06/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

30年前、60年前の悲しい出来事をリセット
『ヴェニスの商人?』を観てきました。

シェークスピア作品は『ハムレット』を読んだことがあるだけですが、いろんなジグソーパズルのピースがどんどん合わさっていき、感慨無量です。

パンフレットにあるキーワード「タイムスリップ」がエッセンスになっています。
人生はリセットできない。だから今を大切に過ごそう。

モロ師岡さん、名古屋でやっているテレビ番組『エイデンシアター』でみたことがあり、きょうご本人を見て、うれしかったです。いい演技していましたよ。
コンタキンテさんはY字バランスがきまりました。

ネタバレBOX

パンフレットにあるキーワード「タイムスリップ」がエッセンスになっています。

30年前、60年前の悲しい出来事をリセットする。
現在に戻って、時間が記憶に追い付く。

時空を越えた愛。感動のラストシーン。



【終幕】暗ポップ 【劇団員募集中】

【終幕】暗ポップ 【劇団員募集中】

空間ゼリー

赤坂RED/THEATER(東京都)

2009/08/26 (水) ~ 2009/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

人間関係、人間模様
病院を舞台にストーリーが進められます。
7日間の心療カウンセリング・セミナーの受講者、医師や看護士たちの人間関係、人間模様を描いています。
医学的に難しい話を取り扱っていないので、物語で言いたいことは理解しやすいです。

ネタバレBOX

ストーリーの内容についての箇条書き。

他者を見た第一印象。
自分を見られてる他者の目。
人は他者と出会った瞬間に壁をつくる。

その壁をカーテンにたとえて、セラピー受講者のカーテンを開ける手助けをしたいと願う医師達。

一週間過ごす中で、ケンカ、衝突、友情、片思いの恋、勘違いによる事件、トラブルの発生。
人呼んで こずれぇ~狼

人呼んで こずれぇ~狼

脱線劇団PAGE・ONE パートII

駅前劇場(東京都)

2008/05/02 (金) ~ 2008/05/05 (月)公演終了

満足度★★★★★

ビール飲みながら笑って観られる
時代劇をテーマにした演劇はたくさんあると思います。ビール飲みながら笑って観られる楽しい芝居でした。

この芝居は時代劇らしくない、時代劇コントと言うのが伝えやすいのかな、と思います。

岡田あがさ一人芝居「ワタシガタリ」

岡田あがさ一人芝居「ワタシガタリ」

空間ゼリーLabo

pit北/区域(東京都)

2007/12/10 (月) ~ 2007/12/10 (月)公演終了

満足度★★★★★

希望を捨ててはダメ、絶対に。
【感想】
 圧倒されました。記憶喪失の女。父親や彼氏の暴力に虐げられる女、情婦、たくさんの携帯電話。
 妄想が現実味を帯びていて、本当にあった話なのかと勘違い、錯覚してしまうほど迫真の演技でした。

 「即興芝居やアドリブで出た言葉、動作や感情はその人の価値観、人生観や実際に体験したことがとっさに出てくる」
 名古屋ローカルの即興ドラマTVバラエティ番組『スジナシ』で鶴瓶さんの言葉です。
 今回の岡田あがささんの一人芝居では、脚本も自ら手がけられていました。
 ストーリの筋書きやセリフは、岡田さんの人生観を映し出す鏡であると思います。
 一人芝居なので、ストーリー進行が自分の思いのままにできる。自分が体験した話でなくても、小説や映画などの話を見聞きして演じられていると思います。リアリティがある。

 全身がうちみ、捻挫や筋肉痛にならないように湿布をはって、養生してくださいね。

 アフタートークで訊いた今回のテーマについてまとめました。

【テーマ】
 この世で一番幸せで不幸な人、それは希望を持ち続けている人である。
 希望を持っていても、それが現実となるのはせいぜい2割ぐらいしか叶わない。実現しない希望をたくさん持ち続けていられる人ほど不幸である。
 それでもなお希望をあきらめず、ポジティブに生きている人を描きたい。
 手に入れたくても、なかなか手に入れられないもの、それは希望である。
 人はそれを望み、あこがれ、生きていかなければならない。希望を捨ててはダメ、絶対に。
 人とのつながり、接点がない。一人ぼっち。愛されたい、苦しい、痛い、心細い、つらい。
 つらいときは妄想する。つらくても、あきらめないための特効薬。

ネタバレBOX

【アフタートーク語録】

『一人語り一人遊び』
 一人芝居をして得たもの、それは自由に演じていることで、まるで空想(妄想)する一人遊びをしているようだった。演じていて楽しかった。

『イベントフラグを立てる』
 何気ない行動には、何か意味があるわけではない。役者が集中するためのステップである。
 意味のない行動であってもフラグが立つ。それによって周りの人物が影響を受け、ストーリーが展開される。 物語の通過点である。
 常に動く、アクション(Act)の連続、役者はActorである。
 ダンサーだけでなく役者も、体一つさえあればでショーを行い、世界を渡り歩くことができる。
 ダンサーはカバン一つだけで世界を渡ることができる。役者も、たとえ狭いスペースであっても、演技をすることができる。

 演出家(劇作家)は役者に感想をもたない。この人はこういう演技をする人だと思い込むと、役者として見られなくなる。思い入れができてしまう。しっかりとした演出ができなくなる。
私、わからぬ

私、わからぬ

空間ゼリー

赤坂RED/THEATER(東京都)

2008/04/09 (水) ~ 2008/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

他人と比較・評価しないと、私自身のことはわからない
 ある1年間、四季が移り変わっていく、徳井家の茶道教室に集う人々のつながりを映した戯曲でした。カンタンにいうと、人との出会いやつながりを大事にしたいことを訴えたホーム・ドラマでした。
 ストーリーには始まりのあといつか終わりが訪れるけれども、それでおしまいというわけではなく、ずっと続いていくというテーマを持った作品でありました。

ネタバレBOX

 本作品のキャッチコピーに『私は、私のことがよくわからない』とあります。
 「私のことは私だけが一番よく理解している」という言葉があります。しかし、私自身だけでは必ずしも判断できない。他者と自分を比較してはじめて、私のことがよくわかるということです。
 「他人の不幸は蜜の味」という言葉があります。他人の不幸を知って、嬉々とする人の考えは卑しいけれど、それをものさしにして、私はまだ私自身が思っているほど不幸じゃないとわかるのです。

 他人と比較したり、他人から評価されないと、私自身のことはわからないのです。

 つながりを大切にしたいこと、思いやる気持ちを保つことは、頭で思ったり口にすることはカンタンだけど、実際にやるには難しい。
 家族から大事にされたい、愛されたい、よい子と評価されたいと思っている次女。
長女や長男は家の中に居場所があるが、私には居場所がない。大事にされずに疎まれる存在と思っている。
 私は必要とされているかそうでないかという基準で私自身がわかると思っているため、叱ってくれる家族に暴力を振るって対立してしまう。

 ほめてばかり、甘い言葉でかわいがってくれる他者は、本当に自分のことを必要と思っている人ばかりではない。利用したいだけである。利用する価値がなくなったら、掌を返されてポイと捨てられる。
 家族、知り合いや仕事つながりなど、叱ってくれる人というのは、自分のことを本当に大切にしたいと思っている。暴力を振ったり、怒ったりのではなく、よりよくなるために叱るのである。叱られて自暴自棄になって周囲にやり場の無い怒りを撒き散らすのはよくない。

 逆に物分りのよい大人として、自分の意見や主張を他人に言わないのも、あまりよくない。大切な人と気持ちが通じ合えず、終わりが訪れてしまうのです。
『ここだけの話』『一日だけの恋人』

『ここだけの話』『一日だけの恋人』

サンモールスタジオ

サンモールスタジオ(東京都)

2008/01/16 (水) ~ 2008/01/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

2組の男女が愛と幸せについて考える戯曲
 ホテルの一室で、赤の他人同士、2組の男女が愛と幸せについて考える戯曲。

 売れない役者の男を雇い、一日だけ自分の恋人のフリを装ってほしいと依頼する女。
 結婚式直前に逃亡し、部屋に飛び込んできた花嫁。

『この先に幸せはあるのかしら?』
『行けばわかる。まずは行かなくちゃ』

 IKKANさんの活動を知っている人はニヤリと笑えるネタがたくさん織り込まれていました。会場は爆笑の嵐。
 面白く笑いつつも、最後には信頼関係ができてホロリと涙しました。

空間ゼリーの『夏の夜の夢』

空間ゼリーの『夏の夜の夢』

劇団たいしゅう小説家

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2008/12/13 (土) ~ 2008/12/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

日本人になじみやすい物語に
シェークスピアを原案に、日本人になじみやすい物語に置き換えています。
オベロン王とティターニア妃など妖精達が登場するので、シュテンドウジやビャッコとして江戸時代を選択したのが絶妙です。

時代劇の雰囲気、歌舞伎の口上を加えて、日本人が話にのめり込ませやすくしている。見て聞いてとても理解しやすい。

現代風のコントを取り入れているのも心地よい。
張り詰めた雰囲気を和ませてくれる。

原案、脚本や演出だけでなく、キャストも素晴らしかったです。

大林素子さん。背が高くビャッコ(ティターニア)にぴったり似合いました。

ザ・ギースの高佐さんと尾関さんのコントは、面白く素晴らしい出来栄えでした。コントも演劇も同じフィールドです。劇中のコントは違和感ありませんでした。

今がいつかになる前に

今がいつかになる前に

空間ゼリー

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2010/10/30 (土) ~ 2010/11/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

明日や将来の僕は、将来なりたい僕自身になっているでしょうか
 本作品を観て、印象に残った劇中の台詞から、タイトル『今がいつかになる前に』に込められたテーマを僕の視点で解釈します。

 『過ぎた時間(とき)はもどせない』
 『(仕事を辞めようと思っても)続けていけば、世界が変わってみえるようになる』
 『また明日』

 本作品は小学校が舞台となっています。それにちなんで、僕が小学生だったときを振り返ってみました。
 あのとき、もっと頑張っていれば、今とは違う結果になっていたかもしれない、と後悔することばかり連想してしまいます。
 今回は小学校ですが、これに限らず、高校生の時に片思いをしていた女の子に告白しておけばよかった。子どもだった時の方が今より幸せだったと考えてしまいます。

 誰もが、過去、昔の「いつか」に「たられば」と、後悔することが多いのではないでしょうか。僕はそう考えます。
 10代、20代でどのように頑張ったかで、30代、40代の生き方が変わってくると考えます。過去の「いつか」にいた僕にとって、今の僕は期待に応えているでしょうか。ウソや言い訳をついていないでしょうか。
 「大人だから」「子供だから」で割り切っていないでしょうか。

 「また明日」は劇中ではふつうのあいさつですが、明日が『今がいつかになる』ときです。
 今がいつかになったとき、要するに、明日や将来の僕は、将来なりたい僕自身になっているでしょうか。

 何かを辞めよう、あきらめようと思っても、必死に続けていけば、世界が変わってみえるようになります。過ぎた時間はもどせないので、今を大切に、明日の僕のために頑張っていこう。また明日。僕はこう考えます。

ネタバレBOX

 理事長の中里弓枝先生と瀬尾先生、昔は先生と男子生徒で、恋愛関係にあった。
 恋愛に『大人だから』『子どもだから』という言い訳で割り切れない。僕はこう考えます。
 瀬尾先生役の半田さんが机を蹴飛ばして苦悩するシーンで「恋愛は気持ちで出来ている」と考えさせられました。
木に花咲く

木に花咲く

新宿サニーサイドシアター

こった創作空間(東京都)

2008/01/15 (火) ~ 2008/01/18 (金)公演終了

満足度★★★★★

どうしたらいいのかわからないから狂ったように咲いている
 学校でのいじめ、家庭内暴力を振るう子供に向き合う家族をテーマにした演劇である。

 祖母役を演じた加藤久美の迫真の演技に、客席の僕たちは圧倒されました。
 劇中で、客席からすすり泣く声がよく聞えました。閑話休題のおじいさんとおばあさんの語らいのシーンでほのぼのとしていても、ストーリー全体がシリアスであるため、笑い声を押し殺してしまいました。

 母親役の菅田華絵さんが第3幕あたりから目頭がうるうると赤くなっていて、今にも泣き出しそうでした。エンディングでは口がプルプルと振るえ、瞳から涙が溢れ出していました。

 演者の皆さんの感情がキャラクターに入り込んでいます。客席の僕たちも一緒にもらい泣きしてしまいました。

ネタバレBOX

【あらすじ】

冒頭第一幕。桜が咲いた樹の下で老婆が花見をしている。
お婆さんは男の子に膝まくらをしていたことを回想している。
膝にかかった頭脳の重さを今でも忘れていないと、亡き孫に語りかけるようにささやく。

 男の子は学校の階段から転落して大怪我をした。
父母は、自分でつまずいたのが原因だと学校側から説明されたのだという。
お婆さんは、孫はあの子達に突き飛ばされたに違いない、なぜ自分達の息子がいじめられていることに気がつかないのか、と父母に叱責する。

 しかし、母親はあの子たちに会ったことがあり、いたって普通の子でいじめをするような子供達ではない、と反論する。

 祖母はかわいい孫に、お前のことはおばあちゃんが一番わかっているとなぐさめる。そして、友達なんていらない、勉強に集中して出世するように説く。いじめてくる子よりも偉くなり、見返してやるんだ、と説教する。

 同級生達に迎合して、仲良くなり友達を作ろうとした孫に、こころが弱くなった表れ。自分が弱くなった証拠だと老婆は叱る。
他人を憎しみ続けることが、強さである。絶対に負けてはいけないと命ずる。

 人を憎しむことが強さだと云う老婆はまるで鬼のようなことを言う人に見える。しかし、根っから嫌な人間ではない。
 桜を眺めていると、死んだはずのおじいさんが登場する。課長などに出世したいという野心がない男であった。
 亭主関白だけど、寡黙で不器用な男。そんな夫にに呆れつつも、生涯の伴侶として共に過ごしてきた。

 孫の母親がおばあさんの元へやってくる。死んだおじいさんにあった夢の話を語る。
 孫の父親である娘婿も祖父に性格が似ている。老婆自身も、孫の母である娘に、あなたは私と同じように、似た性格の男性を選んだ。運命だと言う。

 月日は流れ、息子の父と母が不仲になる。教育方針や子育ての考え方に相違ができ、夫婦喧嘩になった。父親は妻と話し合った。悩んだ末に、お婆さんと息子を離れ離れにし、別居する決断をした。

 ある日、息子が母親に刃物を向ける事件が発生した。母親は息子が来ていないかお婆さんに相談する。そこへ息子が飛び込んでくる。
 おばあさんは息子に、母親が憎いならおばあちゃんを刺しなさいと。息子はそんなことはできないと泣き崩れる。

 父親は勤め先に同級生の親がいるつながりを使い、同級生に息子をクラス会に誘ってもらうようにお願いをした。
 招かれざる客であった息子がクラス会に来たことで、逆にいじめ行為がエスカレートしてしまった。
 父親は「僕は人からどう言われようと構いません。先生やクラスの皆に謝りにいく」という。
 お婆さんは、父親にそんなことはおよしなさいという。祖母は息子に、友達なんかいらない、いじめっ子達を憎しみなさい。勉強をして将来出世することで偉くなりなさい。見返してやりなさいと叱咤する。

 しばらく経ち、母親がお婆さんの元へ駆け込んでくる。息子がやってこなかったかと訊く。
 おばあさんは息子の事情を知っている様子で母親に「何か学校であったんだね」と尋ねる。

 学校で同級生の女子の財布が無くなるという事件が発生した。クラスのみんなは、息子に嫌疑をかけた。
 息子は僕がやったと言い、教室を飛び出したという。
 母親は教師からどこにいったか知らないかと連絡がきたのだという。

 この事件の顛末は、実は女の子は自分のロッカーにちゃんとカギをかけてしまっていた。財布は盗まれてなんかいなかった。その事を忘れていた勘違いなのであった。

 老婆は母親に、息子は父親の元に向かっているに違いないという。
「僕は人からどう言われようと構いません」という父親をどうやって憎しんだらいいのかわからない、殺しに行ったに違いない。やめさせるように父に連絡を取り、急いで逃げる様に連絡を取るように母に指示する。

 息子が見つかったとの連絡が来た。家の近所にあるビルから飛び降りたという。変わり果てた姿だった。
おばあさんは苦しかったろうと孫を想い、涙する。

 数年が経ったある春の日。桜の木の下で転寝をしていたお婆さんの元へ母親がやってくる。おばあさんは母親に桜が狂って咲いているのだと言う。

  桜が満開に咲き乱れるのは、咲きたいからではなく、どうすればいいのかわからないのだ、と老婆は想う。
  学校でいじめられる、家庭内暴力を振るった孫が、自分がどうしたらいいのかわからなくて狂ってしまっていた。このことを祖母は桜の木に花咲く姿に例え、孫の姿を投影していたのだろう。
メルシィ! 僕ぅ? ~我が人生は薔薇色に~

メルシィ! 僕ぅ? ~我が人生は薔薇色に~

フジテレビジョン

東京グローブ座(東京都)

2007/06/26 (火) ~ 2007/07/05 (木)公演終了

満足度★★★★★

人生は遊びが大事!
新大久保のグローブ座で明石家さんまさんの舞台『メルシィ!僕ぅ?』を観てきました。

生で観るさんまさんはすごい存在感でした。

この芝居でいちばん言いたかったことは、劇中でさんまさんがトチってしまったクライマックスのシーンのセリフ、
『人生は遊びが大事!』だと思います。

ネタバレBOX

妻とケンカしていても、愛する息子には嫌われたくない父親。
家でゴロゴロしているだけの「つまらない父さん」が大嫌いな男の子。
『ボクはつまらないお父さんにはなりたくない!』

愛する息子が父親である自分を嫌う理由がわかり、自分らしさを取り戻すため『人生は遊びが大事!』と決心する。
ダンス大会でお父さんが優勝するのを見た息子は、父のもとに帰ってくる。
MY WAY

MY WAY

劇団め組

「劇」小劇場(東京都)

2008/11/05 (水) ~ 2008/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

祖国と市民を守る兵士達の生きがい
この演劇は、祖国と市民を守る兵士達を描くことで「愛すること」を伝えるストーリーと思います。

日本が平和であること。理想として追求する幸せです。
有事、非常事態がなければ、出動することがない。出番の無い兵士達。
祖国を守る任務を全うすべく行動する兵士達の生きがいとは何だろう?

サバイバルスクールに召集された、特殊部隊に所属する自衛官と警察官。そしてサバイバル訓練に参加希望してきた謎の公務員。

サバイバル訓練を通じて仲間を守る。大切な家族を守る。祖国を守ることを再認識する。その兵士達の姿を通じて「愛すること」を伝える演劇でした。

ネタバレBOX

ルポライター安西役の高橋佐織さん。ド根性で喰らい付いていました。
かっこいい女性。素敵な女性です。
外部客演(SSTプロデュース)で演じている美少年、青年役。今後の公演で、男と女、1人2役を見てみたいです。

堂島 遥(三等陸佐。軍隊では陸軍少佐と同じ階級)役の藤原習作さん。
第一幕、何も映っていないテレビの前で引きこもっている時と、それ以外のシーン(サバイバル学校)で演じていた中隊長役。全く雰囲気が違いました。

戦争映画の将校役が似合うハンサムな顔立ちでした。ベレー帽を被っていたらいいなと思いました。

サバイバル訓練を通じて仲間を守る。大切な家族を守る。祖国を守る。ここに兵士達の生きがいをみつけて「愛すること」を伝える演劇と思いました。
劇中で胸に秘めた想いを「地雷原」と表現されていました。これは「戦友・仲間を守る」「家族を守る」「祖国を守る」という愛することだと演じられていました。
穢れ知らず

穢れ知らず

空間ゼリー

ザムザ阿佐谷(東京都)

2007/08/31 (金) ~ 2007/09/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

穢れてしまった女神と弟に訪れた悲劇
会場、木造の客席は古き良き日本家屋を連想させる。

客席と舞台上の距離はゼロである。
テレビ・モニターや銀幕の向こう側の世界の話ではない。
自分が存在する空間と同じくしている。

空間ゼリーの舞台と私の間の距離はゼロである。
私の距離感がゼロになる。
私は、まるで底なし沼に引き寄せられるかのように、物語にのめり込んでいく。

後日談として、下山夏子さんの引退公演であることを知りました。とてもショックを受けました。
しかしこれで終わりというわけではない。終わりは次への始まりでもあります。
次のステージが終わったら、また空間ゼリーに戻ってきてほしいものです。
彼女の今後のご活躍、ご健勝を祈ります。

次回の春公演である『私、わからぬ』も必ず観に行きます。

本公演『穢れ知らず』に興味を持たれた皆様は、近日発売予定DVDを
劇団のホームページにてご予約して、ご覧になって下さい。
過去の公演DVDもぜひご一緒にご購入を強くおすすめします。

ネタバレBOX

『穢れ知らず』のスジ、ストーリーの要約

この物語は悲劇である。

ここは都会から遠く離れた、山に囲まれた小さな村。
まるで昭和を想い起こさせるような、のどかな村である。
しかしこの村の人々は、恋愛、浮気、嫉妬や噂話にとても敏感である。
小さな工場を経営している一家の物語である。
(台詞の方言で語尾に「~じゃけん」と口にしていたので、広島あたりの山陽地方と思われる)

この家では古くから、狐が人間に取り憑くと伝承される。
家の離れに狐が多く現れる。特に狐の鳴き声がうるさいと大人たちは皮肉めいて言う。
(狐とは女性のことで、鳴き声はあえぎ声と連想できる)

古くから伝わる『鶴の恩返し』『鶴女房』の物語が登場する。
機を織る神聖な儀式。
鶴は機を織り、その織物を商売にし、財を旦那にもたらす。
鶴は神様である。
しかしながら鶴は獣(ケモノ)である。
獣は穢れている。

姉のことが大好きだった弟
血のつながっているが故に「決して結ばれることのない二人の純愛」の悲劇が始まる。

姉は6年前、この家族の問題がいやになり、東京に出て行ってしまった。
6年が経って、姉が突然東京から帰ってきた。
いや、東京からも逃げ帰ってきたのだ。
姉にはもう、帰る場所はこの家しかない。

嫉妬の女郎蜘蛛たちが、張り巡らせた情報収集の蜘蛛の巣。
インターネットのWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)は、その名の通り、地球規模の蜘蛛の巣である。
この網によって嫉妬の蜘蛛たちは、姉が秘密にしてきたこと、穢れていることを知ってしまった。

姉の秘密とは「アダルトビデオに出演している女優であり、体を売っていること」である。
奇しくも、まるで機を織る鶴のようである。
鶴は自身の体を切り刻み、織物を作り、売り物にした。
女は自身の体を男たちに捧げ、売り物にした。

女蜘蛛たちは、自分達の求愛に何の興味を示さない弟に対する切り札を手にした。

一家が経営する工場の経営状態は、自転車操業、火の車であった。
一家が破綻する危機をなんとかしようと、姉が金を工面すると皆に言う。

女蜘蛛たちは、ここぞとばかりに、この姉の秘密を弟にばらしてしまう。

弟は姉がいつまでも綺麗で純粋な穢れのない女神であると信じていた。
しかし、姉はただの女であり、獣(ケダモノ)であるという事実を突きつけられてしまった。
弟は姉に、気にしていないから忘れるからとなだめ、俺が守ると決意する。

ここで、この物語のキーワードである『言えば知る、知れば忘れぬ』が登場する。
姉は弟にこう告げる。

『言えば知る、知れば忘れぬ』

世の中には「取り返しのつかない事」が存在する。
この物語のテーマの一つである「見てはいけないものを見てしまったとき必然的に訪れる別れ」がやってくる。
弟の両腕が、白い肌で妖艶な姉の首筋に触れる。
弟が自らの手によって、穢れてしまった姉を殺める。
姉と弟は永遠の別れを迎える。

この物語は悲劇である。


【物語の魅力に引き寄せられる細かな設定】

この一家に関係する人物相関図が複雑である。
ドロドロの愛憎劇が繰り広げられる。

姉と弟は血のつながった家族である。二人は愛し合えども。叶わうことのできない愛である。

昔、叔父が母に浮気をした。この二人の間に生まれてしまったのが、弟である佐伯五樹である。
そして今から6年前、家の離れで、母が他の男とセックスをしていた。
弟、佐伯五樹は母に男ができていることに気付いていた。しかし、見て見ぬふりをした。
姉は、幼い妹が泣き止まない為、母親の元へ行ってしまった。

母は娘に淫行を見られてしまった。
母はもうここにはいられないと、男と一緒に村から出て行き、蒸発してしまう。

帰らぬ母親、村中にこの話が広まる。

・叔母と母は姉妹。

・叔父(夫)が蒸発した母に寝取られたことを今でも嫉妬する叔母。ノイローゼになっている。

一人残された父親は、軽蔑され、工場経営もままならず、3年後に他界する。
この出来事は物語現在から数えて3年前の話である。
東京に出て行ってしまった姉は、父の葬式には現れなかった。

・突然帰ってきた姉を、蒸発した母に想い重ねる叔父。

・近所の男の子、遠野 栄吉と妹たちの間の三角関係。
 栄吉は三女が好き。
 四女は栄吉に惚れていて、周囲の大人たちも結婚の期待を寄せる。
 三女は栄吉が好きであることを、四女が惚れているため、公に言えない。
 栄吉は四女よりも三女のことを愛している。

・工場の女従事者が叔父に接近し、家の中にずかずかと入り込むのを警戒する妹(次女)。
・工場の金を持ち逃げし、叔父と逃避行する工場の女従事者
Blue Man Group IN TOKYO

Blue Man Group IN TOKYO

Blue Man Group

Zeppブルーシアター六本木(東京都)

2007/12/01 (土) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

パイプ管楽器とロック、コントとお笑いパフォーマンスが一度に楽しめるステージ
 BLUE MANのステージを一言で説明します。
 パイプ管楽器とロック、コントとお笑いパフォーマンスが一度に楽しめるステージです。
 顔の表情は一切変えず、瞳で訴えかける。無言のお笑いパフォーマンスは世界共通なんだな。そう思いました。

 パンフレットの一節を引用します。
 
 『儀式は人間が集団となる事で生まれるが、どうやら儀式なくして集団が存続することはない』

 ブルーマンが世界で長く活動できる秘訣は、必ず実行する、お決まりの儀式があるということなのです。
 その儀式とは何か。この言葉がパンフレットに載っているページの写真を見れば分かります。
 お決まりの儀式はまだまだたくさんあると思います。

 客いじりは、ポンチョ席にいる人だけが選ばれるのではありません。ブルーマンが会場の隅々までやってきて選びます。僕は一番後ろの列でしたが、すぐ近くの女性が選ばれてステージ上に呼ばれていきました。
 料金はちょっと高めですが、もう一度観たくなるステージです。ぜひ1度観られることを強くお勧めします。
 
 6月まで第3期追加公演が決定したようです。まだ観ていない方は是非ブルーマンを観て下さい。

 開演前や終演後にロビーにカラフルで奇抜な全身スーツを来たスタッフが4人います。バック・バンドの皆さんです。遠慮せずに来場記念で握手しましょう!

ネタバレBOX

 BLUE MANが必ずやるお決まりの儀式はいくつかあると思います。

 エンディングの「ロール」は公演パンフレットの写真にもなっている「儀式」です。

 開演直前のステージ上の電飾メッセージ看板に注意しましょう。これも「儀式」の一つです。客席にいるどなたかのお誕生日をお祝いするメッセージなどが流れます。スタッフが「せーの!」と音頭をとります。みんなで大声でメッセージを読み上げましょう。

 東京公演ということで、ご当地日本の国民的アニメ音楽の演奏がありました。
 頭に特徴的なオブジェクトをかぶって、会場は大盛り上がりでした。

 会場から3人以上選ばれて客いじり。会場内のビデオカメラでスクリーンに映し出されます。
 選ばれた観客と4人でシチュエーション・コントもあります。もちろんブルーマンは一言もしゃべりません。

 たくさんの客いじりが行われます。ただ唯一、一つだけ実際にはやらせていないかもと思うものがあります。
 詳しくは言えないですが、気分を悪くさせたりケガをさせる恐れがあるものなのです。
 万が一ケガをしたりすると、損害賠償や訴訟になりかねないです。
 ヘルメットをかぶせて舞台袖に連れて行き、それをビデオカメラが中継しています。ここがポイントです。
 舞台上に映し出される映像はVTRで、実際にはスタント・マンがやっているんだろうと僕は思っています。実際に連れて行ったお客さんは、ステージに戻ってくる箱の中で待機している。
 その1人は客席に戻ってきますが、全身ペンキだらけなので、舞台下から付き添われたスタッフに誘導されて外へ移動させられます。
 レーシング・スーツを脱がされて元通りの服装に。別室で公演を観ていたか、途中で戻ってきたと思います。
猫目倶楽部

猫目倶楽部

空間ゼリー

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2008/11/27 (木) ~ 2008/11/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

ダメ男から女の子を助ける秘密のクラブ
ダメ男から女の子を助ける秘密のクラブ。
戦いに勝ったが、女の敵はまだ現れる。
毒牙から恋する女の子を守り続ける猫目倶楽部。
がんばれ女の子。負けるな猫目倶楽部。

この公演を観た女性は、友達も大切にし、素敵な恋愛ができる。
この公演を観た男性は、彼女や女性に対してもっと優しくなれる。

外見がよくても、暴力を振るう男は最悪。
優しくても、彼女をモノのように扱う男は最低。

男が見ても、典型的なダメ男。
恋する女性はダメ男につかまってはだめです。

彼氏、友達、お金。バランスが取れていないと、いずれかが壊れてしまう。
親しい仲であってもお金の貸し借りは人間関係を壊してしまう。

猫目倶楽部のメンバー3人は強い女性。しかしそんな彼女達だって恋愛する。胸がぎゅっと締め付けられ、苦しむ。恋は医者には治せない病。

恋する女性をサポートする猫目倶楽部。
困ったときは掲示板に「XYZ」ではなくて「猫の瞳」を書き込んで依頼しよう。
弱い女の子は変われる。強くなれる。

公演で登場したキーワード
「恋は友情を壊す」
「人を機械のように利用しては駄目」
「こころはコロコロ変わる」
「人は変われる。強くなれる」

ネタバレBOX

物語は勧善懲悪。
ボスがいる女性3人組。

女性による女性のための女性の秘密倶楽部。

「暴力で対抗し、問題解決しないこと」
「女の子を立ち直らせ、(女の敵に)自ら立ち向かわせるのを支援すること」
「依頼を受けない限り、介入しないこと」

依頼を受けないと民事介入できない。

女性からカネを搾取する詐欺グループに対抗すべく結成された正義の味方である。
おしおきや鉄拳制裁を与えるものではなく、恋する女性が立ち上がらせるのを手助けする秘密クラブである。

バンドをやっているイケメン。自己主張をしない彼女の性格につけこんで、金の無心をする。貢がせ男。別れ話を切り出したら、刃物を振り回した。
性悪なダメ男であったが、詐欺グループとは無関係であった。

学力があって、優しく接する男。そんな男でも家庭の事情でカネに困る。
彼女をキャバクラ嬢としてカネを稼がせる。金に工面がつかず、詐欺グループにそそのかれて、ネット犯罪に手を染める。

女友達はそんな彼氏とは別れたほうがよいとアドバイスするが、忠告を聞き入れない。
恋は友情を壊す。女友達も好きだった男性を彼氏にした為に、友情を嫉妬に捉えていた。

猫目倶楽部のメンバーにだって恋の悩みがある。
メンバーの一人は、昔の幼なじみと再会した。
昔好きだった彼は、彼女がいた。
運命のいたずらなのか彼は敵グループの幹部だった。

戦いに勝ったが、女の敵はまだ現れる。
毒牙から恋する女の子を守り続ける猫目倶楽部。
がんばれ女の子。負けるな猫目倶楽部。
ハルカ彼方

ハルカ彼方

dramatic theater RARA☆

アイピット目白(東京都)

2007/10/26 (金) ~ 2007/10/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

俺の分まで生きてくれ。そして幸せになってくれ
 天使アリア役の本田清香さん、矢島かおり役の塩原奈緒さんの2人には、上演中にすごい憎たらしさを感じました。
 つまり、それだけ演技が上手であるということなのです。

ネタバレBOX

 本作品は、主人公の記憶が断片的しか残っていなく、時間がどんどん経過したり、過去にさかのぼることで、展開されます。

 主人公は不慮の交通事故で亡くなってしまった。
 信号無視してしまった運転者も、自責の念にかられ、苦悩の末に自ら命を絶ってしまった。
 残された家族や恋人たちの、大切な人を失った恨みや憎しみは、悲しみの悪循環を作り出す。負のスパイラル(螺旋)である。

 主人公は自分たちを守護する天使たちと協力し、問題を解決していく。
 主人公・太一は現実世界に遺した家族、妻のキミカに想いを託す。

 「俺の分まで生きてくれ。そして幸せになってくれ」
サバンナの掟

サバンナの掟

柿喰う客

シアタートラム(東京都)

2008/01/05 (土) ~ 2008/01/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

『サバンナの掟』を観て来た感想レビュー
空間ゼリー所属の岡田あがささんが客演した演劇、
柿喰う客『サバンナの掟』を観てきました。

「観て来た感想レビュー」
「演出家とゲストによるポストパフォーマンストーク」
「スジ、要約」
観て来たレビューを言います。

【観てきた感想】
≪総論、感想について≫
 赤裸々に人間の性について、セックス、援助交際、妊娠、性癖など赤裸々に演じていました。オブラートや隠語で表現せず、人間のもつ欲望、本能が剥き出しになっていました。
 クライマックスは登場人物全員の殺し合い。サバンナの掟。
 主人公の女子高生「比良山ソネコ」を除き全員絶命してしまう。


≪各論、岡田あがささんの感想について≫
「日本初の女性内閣総理大臣、富永正子(トミナガ・マサコ)」という配役で、主役と対決する悪の枢軸といった様相でした。
 客演ながらもメイン・キャスト級でした。

 羽根をまとったスーツ姿がかっこよく、男装の麗人、宝塚、パタリロにでてくるバンコランといった感じで、眉が細く凛としていました。

 男性役でもよかったんじゃないか、と一瞬思いましたが、日本初の女性内閣総理大臣という英雄的存在として演出したかったのかなと観終わって帰路の電車の中でそう思いました。

 人間の狂気、妄想、サディスティック、いやらしさ、憎らしさや醜さがあふれんばかりに出ていました。
 岡田あがさをこの総理役にキャスティングして正解だよ!
(僕はこんな発言して何様のつもりなのでしょう、調子に乗っていますね、ごめんなさい)

ネタバレBOX

【演出家とゲストによるポストパフォーマンストーク】
 終演後に「ポストパフォーマンストーク」と呼ばれるダイアログを聴きました。
 空間ゼリー・ラボでいう所の「アフター・トーク」でした。
 客席の質問コーナーで、イの一番に質問してしまいました。
 2個も質問してしまうという暴挙、会場からは冷たい視線、ごめんなさい。

 僕は知らない。この作家・演出家さんがどんなテーマを訴えたかったのか。
 僕は知らない。この方ははどんな頭の中、心の中を持っているのか。
 僕は知らない。この方はどんな生い立ち、人生観、世界感、ものさしをもっているか。
 だから。僕は知りたい。

 1番目の質問は『寡黙な父親の教育方針「幼少期にどうぶつ番組を見せられていた」の大罪で、少年時代にやれなかったことについて』を訊いてみました。

 ハンサムな2枚目、高校演劇コンクールで優秀な成績を収め、とくに不自由なかった。という答えが返ってきて意外でした。
 なにかしら、愛情が乏しい、女性に虐げられる男性をまのあたりにしたなど
パンフレットの挨拶文にあった『父の大罪』(※ 註1) がこの作品のテーマとして現れているのかと思いました。しかし僕のこの思い込みとは遠くかけ離れていて違っていたようです。

 刑事コロンボよろしく「あともう一つだけ」2番目の質問を訊いてみた
『この作品のテーマは何か』

僕の印象に残ったセリフ、キーワードはつぎの三つ。

『セックスを生活のツールにしている人がキライ』
『ハイエナの群れのリーダーはメスである』
『優秀なメスを探す。強い人で生き抜いてきた。実際に遭遇すると、殺さないと殺される』

作・演出の中屋敷 法仁さんからの回答
「オスは優秀なメスに殺される」

確かに受精したメスはオスを捕食し、子育ての養分とする。
「カマキリがそうですね」とあいづちを返す。

「自分自身に主義・主張がない、動物に教えてもらった」

ここに中屋敷さんの『父親の大罪』の一片があるのかなと思いました。


(※ 註1) パンフレットの挨拶文を引用

『幼少期、父親に
半ば強制的にさまざまな
「どうぶつ番組」を見せられていました。

それが、寡黙な父なりの
子育てのかたちだったのだろうが、毎日毎日
ライオンの狩りやらカバの交尾やら
シマウマがハイエナにぶちーって喰いちぎられたりするのを
見て、育った僕は

なんだか、よくわからないことになっていたらしく

思春期になってから親友が欲しいとは思わず、とりあえず
群れの中に紛れていないと気が済まないし
恋人なんていらなくて
とにかく多くの人とセックスできている事実に
安心感を覚えていたのです。

残念なことに、23歳になった今でも
そんな自分の本質は
変わっていない気がします。

ので、

父の大罪を弾劾する
っぽいこの作品を、このたび
再々演するのです』

【公演情報】
柿喰う客 第12回公演
<フリーステージ参加作品>
『サバンナの掟』(再々演)
作・演出 中屋敷法仁

http://kaki-kuu-kyaku.com/nextstage12.html


【スジ、要約】

 女子高生 名罪(ナツミ)は黒ずくめのスーツ姿の男女から報酬を受け取るが、口止め料を要求するシーンから始まる。ナツミはその場で射殺されてしまう。
 クライアントは総理大臣、富永正子(トミナガ・マサコ)。日本初の女性首相で英雄的存在であるが、サディスティックな性癖を持っていた。

 時同じくして、主人公ソネコは、援助交際の接客中に局部を咬まれる。謎の男は逃亡してしまう。

 援助交際斡旋組織の捜査・摘発をしたい刑事は、警部の上杉に捜査許可を求める。しかしことごとく却下されてしまう。
 刑事は警部が援助交際斡旋組織をかばっていると疑う。

 市長は地元出身の総理大臣が来ていることで、ご機嫌を取る。次第に自分が罷免されるのではと勘違いしてしまう。暗殺計画を企てる。

 総理の正子は、援助交際斡旋組織の抹殺を計画し、地元マフィアに暗殺を命ずる。

 援助交際斡旋組織のメンバー達はナツミの弔い合戦だとして、首相殺害を決意する。
 

 主人公ソネコが総理に対面する。目的はナツミの敵討ちではない。自分の大事なところを咬んだ男を探して欲しいと要求した。

 総理は目的は復讐と問うが、分からないとソネコが返答したことに「その男が好きなのね」と逆上する。
 もみ合いの末、ソネコは正子にのしかかり絞殺してしまう。

 クライマックスは斡旋組織、マフィア、警察、市長、総理による殺し合い。主人公ソネコと上杉警部以外は命を絶たれてしまう。

 上杉警部は刑事を殺害した。彼は斡旋組織の顧客名簿を探し消滅させたかった。
 彼が主人公ソネコの局部を咬んだ男であった。

 警部・上杉も銃撃戦の末、瀕死の重傷を受ける。そしてソネコと対面する

 ソネコは「愛してくれた人。あのときも今も顔を真っ赤にしている」と言う。
 上杉は「優秀なメスを探していた。ハイエナの群れのリーダーはメスで、強く生き抜いてきた。実際に会ったとき、殺さないと殺されると思った」と答える。

 ソネコは自分の白い下着を脱ぎ、額から流血した上杉の顔に覆い被せていく。
「ゼリーの空間」

「ゼリーの空間」

空間ゼリー

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2007/03/03 (土) ~ 2007/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

世界は三角形でできている
休日出勤の調整をして(3/11日曜千秋楽の前日、夜11時まで仕事でした)
空間ゼリーの春公演『ゼリーの空間』千秋楽を観劇してきました。また夏休みごろの次回本公演を楽しみにしよう。

テーマは「自殺、いじめ」
世界は丸ではなく三角形でできている。
階級で分けられる世界。
舞台は学校という閉じた世界でのストーリーではあるが、目立つといじめられる。人と違うと攻撃されるという、いじめ問題の原因を捉えたものとなっております。

空間ゼリーさんの本公演DVDのカメラワークはすばらしい出来です。まるでTVドラマのように切り替わるんです。
今回の『ゼリーの空間』では5キャメの手持ち、固定無しだそうで、ステージ上の隅々まで撮影しているそうです。
今回は音響にもこだわりがありました。教室セットの窓を開け閉めしたときの効果音が違いがはっきりしました。どうやってやっているんだろうって不思議に思いました。

ネタバレBOX

自殺に追いやられた女性の先生というのも高飛車な人だったけど、生徒たちによるいじめもすごかった。エンディングは伏線が張られていて予想はできていたけど、良心にさいなまされていたから。人間は体は丈夫でも、気持ちは・・・。

電車の往来する音、警笛、非常制動ブレーキの音、音響効果がすばらしい出来でした。
鉄道好きな私としては、あんまり線路内に人立ち入りしてほしくないけど。
教育再生シリアスゲーム『昭和クエスト』

教育再生シリアスゲーム『昭和クエスト』

劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2007/10/06 (土) ~ 2007/10/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

ミュージカル・アクション・コメディ
 劇団SETのコンセプト『ミュージカル・アクション・コメディ』は最高でした。三宅さんと小倉さんのギター・プレイが素晴らしいです。

 劇中、スナックでのシーンでは、アコギで昭和の名曲でコントやっていました。唄っていた曲がいきなり転調して別の曲になるというもの。
 コード進行が同じ曲だったのかな。音楽の技術があるからできる芸だと感じました。

 最終幕ではバンド演奏で「第九」やビートルズの名曲を聴かせてもらいました。名前が思い出せないのですが“It was a hard day night”のフレーズが出てくるあの曲です。
 アンコールは2回あって、2回目では千秋楽だけのお楽しみとして小倉さんがひな段の2段目からセンターにジャンプして演奏するという魅せるギターを見させてもらいました。

 エレキギターかっこいいです。 この世代のみなさんはギターが弾けて当たり前だった。僕もこのかっこいい60年代に生まれたかった。

ネタバレBOX

 この物語は喜劇である。

 ゲームの世界でしか生きられない子どもたち。現実のつらさを乗り越えられない。

 そんな子ども達に1960年代の古き良き時代「昭和」へワープし成長してもらおうとするゲームを体験してもらおうという試みが実施された。
 これが『昭和クエスト』である。現実の時間で3日間、テスト・プレイヤーとして中学生3人組がパーティとして選ばれる。
 人々を感動させられればポイントがプラスされる。この逆の場合はマイナス・ポイントとなる。
 100ポイントを稼ぐにはゲーム内の時間では何年もかかってしまうことが分かった。
 子ともたちは一気にクリアを目指そうと、120点を取れるクエスト「バンドやろうぜ」に挑戦する。クリア条件は「バンド演奏で観客を魅了する」ことである。

 この仮想空間は今を生きる大人達のノスタルジー(追憶)である。所詮はゲームであり、過去のコピーでしかない。

 現実の大人たちはゲーム内に留まろうとする子ども達にこう告げる。
 苦労や困難が立ちはだかり、難しいけれども、それをクリアすると楽しいゲーム『現実』へ戻って来い、と。
 生きるためには苦労を知り、困難を乗り越えていくことが肝要である。こうして子ども達は大きく成長していくのである。

 現実世界に戻り、古き良き昭和で音楽に触れた子どもたちは、バンド活動に全力を傾注する。新聞配達などのアルバイトで汗をかき、楽器を手に入れた。
 辛いながらも楽しい人生を過ごすことを覚えたのである。

 最終幕、約30人編成の大型バンド演奏で東京芸術劇場の観客を魅了させ、大団円を迎えた。

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