誠の観てきた!クチコミ一覧

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今がいつかになる前に

今がいつかになる前に

空間ゼリー

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2010/10/30 (土) ~ 2010/11/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

明日や将来の僕は、将来なりたい僕自身になっているでしょうか
 本作品を観て、印象に残った劇中の台詞から、タイトル『今がいつかになる前に』に込められたテーマを僕の視点で解釈します。

 『過ぎた時間(とき)はもどせない』
 『(仕事を辞めようと思っても)続けていけば、世界が変わってみえるようになる』
 『また明日』

 本作品は小学校が舞台となっています。それにちなんで、僕が小学生だったときを振り返ってみました。
 あのとき、もっと頑張っていれば、今とは違う結果になっていたかもしれない、と後悔することばかり連想してしまいます。
 今回は小学校ですが、これに限らず、高校生の時に片思いをしていた女の子に告白しておけばよかった。子どもだった時の方が今より幸せだったと考えてしまいます。

 誰もが、過去、昔の「いつか」に「たられば」と、後悔することが多いのではないでしょうか。僕はそう考えます。
 10代、20代でどのように頑張ったかで、30代、40代の生き方が変わってくると考えます。過去の「いつか」にいた僕にとって、今の僕は期待に応えているでしょうか。ウソや言い訳をついていないでしょうか。
 「大人だから」「子供だから」で割り切っていないでしょうか。

 「また明日」は劇中ではふつうのあいさつですが、明日が『今がいつかになる』ときです。
 今がいつかになったとき、要するに、明日や将来の僕は、将来なりたい僕自身になっているでしょうか。

 何かを辞めよう、あきらめようと思っても、必死に続けていけば、世界が変わってみえるようになります。過ぎた時間はもどせないので、今を大切に、明日の僕のために頑張っていこう。また明日。僕はこう考えます。

ネタバレBOX

 理事長の中里弓枝先生と瀬尾先生、昔は先生と男子生徒で、恋愛関係にあった。
 恋愛に『大人だから』『子どもだから』という言い訳で割り切れない。僕はこう考えます。
 瀬尾先生役の半田さんが机を蹴飛ばして苦悩するシーンで「恋愛は気持ちで出来ている」と考えさせられました。
【終幕】暗ポップ 【劇団員募集中】

【終幕】暗ポップ 【劇団員募集中】

空間ゼリー

赤坂RED/THEATER(東京都)

2009/08/26 (水) ~ 2009/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

人間関係、人間模様
病院を舞台にストーリーが進められます。
7日間の心療カウンセリング・セミナーの受講者、医師や看護士たちの人間関係、人間模様を描いています。
医学的に難しい話を取り扱っていないので、物語で言いたいことは理解しやすいです。

ネタバレBOX

ストーリーの内容についての箇条書き。

他者を見た第一印象。
自分を見られてる他者の目。
人は他者と出会った瞬間に壁をつくる。

その壁をカーテンにたとえて、セラピー受講者のカーテンを開ける手助けをしたいと願う医師達。

一週間過ごす中で、ケンカ、衝突、友情、片思いの恋、勘違いによる事件、トラブルの発生。
空間ゼリーの『夏の夜の夢』

空間ゼリーの『夏の夜の夢』

劇団たいしゅう小説家

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2008/12/13 (土) ~ 2008/12/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

日本人になじみやすい物語に
シェークスピアを原案に、日本人になじみやすい物語に置き換えています。
オベロン王とティターニア妃など妖精達が登場するので、シュテンドウジやビャッコとして江戸時代を選択したのが絶妙です。

時代劇の雰囲気、歌舞伎の口上を加えて、日本人が話にのめり込ませやすくしている。見て聞いてとても理解しやすい。

現代風のコントを取り入れているのも心地よい。
張り詰めた雰囲気を和ませてくれる。

原案、脚本や演出だけでなく、キャストも素晴らしかったです。

大林素子さん。背が高くビャッコ(ティターニア)にぴったり似合いました。

ザ・ギースの高佐さんと尾関さんのコントは、面白く素晴らしい出来栄えでした。コントも演劇も同じフィールドです。劇中のコントは違和感ありませんでした。

猫目倶楽部

猫目倶楽部

空間ゼリー

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2008/11/27 (木) ~ 2008/11/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

ダメ男から女の子を助ける秘密のクラブ
ダメ男から女の子を助ける秘密のクラブ。
戦いに勝ったが、女の敵はまだ現れる。
毒牙から恋する女の子を守り続ける猫目倶楽部。
がんばれ女の子。負けるな猫目倶楽部。

この公演を観た女性は、友達も大切にし、素敵な恋愛ができる。
この公演を観た男性は、彼女や女性に対してもっと優しくなれる。

外見がよくても、暴力を振るう男は最悪。
優しくても、彼女をモノのように扱う男は最低。

男が見ても、典型的なダメ男。
恋する女性はダメ男につかまってはだめです。

彼氏、友達、お金。バランスが取れていないと、いずれかが壊れてしまう。
親しい仲であってもお金の貸し借りは人間関係を壊してしまう。

猫目倶楽部のメンバー3人は強い女性。しかしそんな彼女達だって恋愛する。胸がぎゅっと締め付けられ、苦しむ。恋は医者には治せない病。

恋する女性をサポートする猫目倶楽部。
困ったときは掲示板に「XYZ」ではなくて「猫の瞳」を書き込んで依頼しよう。
弱い女の子は変われる。強くなれる。

公演で登場したキーワード
「恋は友情を壊す」
「人を機械のように利用しては駄目」
「こころはコロコロ変わる」
「人は変われる。強くなれる」

ネタバレBOX

物語は勧善懲悪。
ボスがいる女性3人組。

女性による女性のための女性の秘密倶楽部。

「暴力で対抗し、問題解決しないこと」
「女の子を立ち直らせ、(女の敵に)自ら立ち向かわせるのを支援すること」
「依頼を受けない限り、介入しないこと」

依頼を受けないと民事介入できない。

女性からカネを搾取する詐欺グループに対抗すべく結成された正義の味方である。
おしおきや鉄拳制裁を与えるものではなく、恋する女性が立ち上がらせるのを手助けする秘密クラブである。

バンドをやっているイケメン。自己主張をしない彼女の性格につけこんで、金の無心をする。貢がせ男。別れ話を切り出したら、刃物を振り回した。
性悪なダメ男であったが、詐欺グループとは無関係であった。

学力があって、優しく接する男。そんな男でも家庭の事情でカネに困る。
彼女をキャバクラ嬢としてカネを稼がせる。金に工面がつかず、詐欺グループにそそのかれて、ネット犯罪に手を染める。

女友達はそんな彼氏とは別れたほうがよいとアドバイスするが、忠告を聞き入れない。
恋は友情を壊す。女友達も好きだった男性を彼氏にした為に、友情を嫉妬に捉えていた。

猫目倶楽部のメンバーにだって恋の悩みがある。
メンバーの一人は、昔の幼なじみと再会した。
昔好きだった彼は、彼女がいた。
運命のいたずらなのか彼は敵グループの幹部だった。

戦いに勝ったが、女の敵はまだ現れる。
毒牙から恋する女の子を守り続ける猫目倶楽部。
がんばれ女の子。負けるな猫目倶楽部。
死んだ赤鬼/戦争に行って来た(反転)

死んだ赤鬼/戦争に行って来た(反転)

MU

ギャラリーLE DECO(東京都)

2008/11/25 (火) ~ 2008/11/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

両A面と冠を付与するにふさわしい2作品
サバイバル・ホラーと不条理なサスペンス、両A面と冠を付与するにふさわしい2作品でした。

2作品とも上演時間はそれぞれ約45分。あいだに休憩時間が約15分あります。両方観てだいたい2時間弱ぐらい。ちょうどいい時間。ストーリーも理路整然とまとまっているので観やすい。

まずはじめに『戦争に行って来た(反転)』からスタート。
掃いて捨てるほどあるウソと現実。
よくある日常の風景のはずなのに、人質となった恐怖体験を経た彼女達には異質な世界に感じている。
ルポ写真の向こう側、喫茶店の窓ガラスの向こう側では戦争がある。
生き残るか、殺されるか。
物語を観て、不条理なサバイバル・ホラーだなと感じました。

『戦争に行って来た(反転)』で印象に残ったシーン。
「現実をなめんな!」というセリフ、恐怖におののいている件(くだり)が鮮明に記憶に残っています。


休憩の後に続いて『死んだ赤鬼』がスタート。
物語はサスペンス。
弱い人間は、誰とでもなかよくしたいと思っている。
『泣いた赤鬼』の童話になぞられて赤鬼と例えている。

強い人間だって皮一枚はがれると、か弱い。同じ人間、赤鬼。
強い人間が赤鬼を死なせてしまった。
強かったはずの人間が、あっけなくもろくなる。
物語の結末は意外なものでした。

『死んだ赤鬼』で印象に残ったシーン。
男二人が、ある小物を鼻と口の上にあてて呼吸するシーンがあります。
実は二人とも病室にいるらしい。実際はよくわからない状況なのです。
まるでベットの上で酸素吸入器で生きるか死ぬかもがき苦しんでいるような姿に見えました。

ネタバレBOX

『戦争に行って来た(反転)』

掃いて捨てるほどあるウソと現実。
男女それぞれのグループでカネと恋愛の駆け引きを始めていたはずなのに、知らないおじさん(怖いお兄さん)たちとの戦争になっていく。
窓ガラスの向こう側は戦場。生き残るか、殺されるか。ボールペン1本で立ち向かっていく。現実をなめんな。

濡れたジーンズ。毎回、水風船かなにか仕込んでいるのには大変な労力がかかっているだろうなと思います。乾かすか、他のジーンズを複数用意していたりするのではないかと思います。

反戦家のリーダーの女性より、バンドのマネージャーの男が一枚上手だった。
バックマージンをより多くもらうよう仕向けたはずなのに、利益を100パーセント全部もっていかれた。

他の方のコメントで「誰が被弾したのかわからない」とありましたので、僕が観た記憶を話します。

フォークバンドのデュオが、撃たれた由季(あがさ)が車の中に押し込まれたのを、喫茶店の窓ガラス越しに見ていた、と思います。

圭(カメラマン)が改造モデルガンだったから役に立たなかったのではというセリフを言っていたように記憶しています。
由季(あがさ)が改造モデルガンを撃ったときに暴発したようです。
印宮(ヤクザ)にはあたらなかったのではと思います。
外の銃撃戦では返り討ちにあったと思います。
銃声は1発か2発。聞こえにくかったのが原因の一つかもしれません。

(舞台裏ではクラッカーか銃のおもちゃの火薬を鳴らしていたと思いますが)

逆にヤクザに命中して、女の車に乗せたと仮定すると、喫茶店の外から様子をうかがっていた「知らないおじさん(槇原組のヤクザ)」が黙って見過ごすとは思えません。

状況的にリーダー、マネージャーを含め3人ともやられた。
カメラマンとバンド・デュオの3人がボールペンで目つぶしを狙って玉砕する。

こういう結末を迎えただろうと思いました。

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『死んだ赤鬼』
物語の結末は夢オチだったけど、話の展開や演出が素晴らしかった。
先を読ませない。

切多摩湖のほとりに死体を遺棄する、完全犯罪を狙う展開が、エンディングで実は夢・まぼろしだったとわかる。
殴り殺してしまった元・彼氏が、2度も言ったセリフに納得、合点がいくようになりました。
「足にボールペンを刺しても痛くもなんともないんだ。これは夢にちがいない」

物語の冒頭、警棒で殴らないでからエンディングまでのわずかな時間に、元カレの頭には、妄想をふくらませる何かが分泌されていたのです。

2作品とも不条理ながら、体と脳がぞくぞく震えてしまう、両A面級の作品でした。
MY WAY

MY WAY

劇団め組

「劇」小劇場(東京都)

2008/11/05 (水) ~ 2008/11/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

祖国と市民を守る兵士達の生きがい
この演劇は、祖国と市民を守る兵士達を描くことで「愛すること」を伝えるストーリーと思います。

日本が平和であること。理想として追求する幸せです。
有事、非常事態がなければ、出動することがない。出番の無い兵士達。
祖国を守る任務を全うすべく行動する兵士達の生きがいとは何だろう?

サバイバルスクールに召集された、特殊部隊に所属する自衛官と警察官。そしてサバイバル訓練に参加希望してきた謎の公務員。

サバイバル訓練を通じて仲間を守る。大切な家族を守る。祖国を守ることを再認識する。その兵士達の姿を通じて「愛すること」を伝える演劇でした。

ネタバレBOX

ルポライター安西役の高橋佐織さん。ド根性で喰らい付いていました。
かっこいい女性。素敵な女性です。
外部客演(SSTプロデュース)で演じている美少年、青年役。今後の公演で、男と女、1人2役を見てみたいです。

堂島 遥(三等陸佐。軍隊では陸軍少佐と同じ階級)役の藤原習作さん。
第一幕、何も映っていないテレビの前で引きこもっている時と、それ以外のシーン(サバイバル学校)で演じていた中隊長役。全く雰囲気が違いました。

戦争映画の将校役が似合うハンサムな顔立ちでした。ベレー帽を被っていたらいいなと思いました。

サバイバル訓練を通じて仲間を守る。大切な家族を守る。祖国を守る。ここに兵士達の生きがいをみつけて「愛すること」を伝える演劇と思いました。
劇中で胸に秘めた想いを「地雷原」と表現されていました。これは「戦友・仲間を守る」「家族を守る」「祖国を守る」という愛することだと演じられていました。
くちなし

くちなし

dramatic theater RARA☆

TACCS1179(東京都)

2008/05/09 (金) ~ 2008/05/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

日本の未来を想う以蔵
殺陣に迫力が出て圧倒されました。
人斬り以蔵は、異名で恐れられているような極悪人ではなく、人間らしい柔和な人柄でした。

ネタバレBOX

幕末での政治家の先生に忠実な暗殺請け負い剣士として活躍していた。

その暗殺された武士の遺族、主人公の村井の母が敵討ちの為に京都へ向かったが、以蔵の人柄を知り、仇討ちをやめる。

母は死のうと思っていたが、日本の未来を想う以蔵の考えに触れ、東京に戻ることにした。結婚し子供を産み「生きた証明」を遺す。
人呼んで こずれぇ~狼

人呼んで こずれぇ~狼

脱線劇団PAGE・ONE パートII

駅前劇場(東京都)

2008/05/02 (金) ~ 2008/05/05 (月)公演終了

満足度★★★★★

ビール飲みながら笑って観られる
時代劇をテーマにした演劇はたくさんあると思います。ビール飲みながら笑って観られる楽しい芝居でした。

この芝居は時代劇らしくない、時代劇コントと言うのが伝えやすいのかな、と思います。

私、わからぬ

私、わからぬ

空間ゼリー

赤坂RED/THEATER(東京都)

2008/04/09 (水) ~ 2008/04/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

他人と比較・評価しないと、私自身のことはわからない
 ある1年間、四季が移り変わっていく、徳井家の茶道教室に集う人々のつながりを映した戯曲でした。カンタンにいうと、人との出会いやつながりを大事にしたいことを訴えたホーム・ドラマでした。
 ストーリーには始まりのあといつか終わりが訪れるけれども、それでおしまいというわけではなく、ずっと続いていくというテーマを持った作品でありました。

ネタバレBOX

 本作品のキャッチコピーに『私は、私のことがよくわからない』とあります。
 「私のことは私だけが一番よく理解している」という言葉があります。しかし、私自身だけでは必ずしも判断できない。他者と自分を比較してはじめて、私のことがよくわかるということです。
 「他人の不幸は蜜の味」という言葉があります。他人の不幸を知って、嬉々とする人の考えは卑しいけれど、それをものさしにして、私はまだ私自身が思っているほど不幸じゃないとわかるのです。

 他人と比較したり、他人から評価されないと、私自身のことはわからないのです。

 つながりを大切にしたいこと、思いやる気持ちを保つことは、頭で思ったり口にすることはカンタンだけど、実際にやるには難しい。
 家族から大事にされたい、愛されたい、よい子と評価されたいと思っている次女。
長女や長男は家の中に居場所があるが、私には居場所がない。大事にされずに疎まれる存在と思っている。
 私は必要とされているかそうでないかという基準で私自身がわかると思っているため、叱ってくれる家族に暴力を振るって対立してしまう。

 ほめてばかり、甘い言葉でかわいがってくれる他者は、本当に自分のことを必要と思っている人ばかりではない。利用したいだけである。利用する価値がなくなったら、掌を返されてポイと捨てられる。
 家族、知り合いや仕事つながりなど、叱ってくれる人というのは、自分のことを本当に大切にしたいと思っている。暴力を振ったり、怒ったりのではなく、よりよくなるために叱るのである。叱られて自暴自棄になって周囲にやり場の無い怒りを撒き散らすのはよくない。

 逆に物分りのよい大人として、自分の意見や主張を他人に言わないのも、あまりよくない。大切な人と気持ちが通じ合えず、終わりが訪れてしまうのです。
クーロンの法則

クーロンの法則

劇団たいしゅう小説家

ウッディシアター中目黒(東京都)

2008/03/20 (木) ~ 2008/03/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

生きていればなんとかなる
 生きていればなんとかなる。前向きに必死にもがきつづけている。
 みんな前向きに生きている。観ている僕たちが「生きていて辛いな」と、くよくよしていることが小さなことに見えてしまう。演劇を観終わって、明日から頑張るぞと元気が出てくる演劇でした。

 クーロンハウスに集う人々は、共同生活でお互いを助けあいながら、他人に言いにくい事情から逃げずに立ち向かうようになる。明日への活力を充電して巣立っていく。
 全体的に明るい雰囲気で、笑いあり涙ありの喜劇でした。
 この演劇はポジティブに生きようと必死にもがく姿を描いているので、自然と明るい雰囲気となりました。脚本、演出とキャストのハーモニーが心地良かったと感じました。

ネタバレBOX

【あらすじ】
 クーロンハウスは、事情があって住む場所を追われた人達がたどり着いた避難場所である。

 クーロンハウスのリーダーが困っている人を助けたいと思っている。その人柄が魅力となって、メンバーが引き寄せられていく。
 共同生活を送る上でいろいろケンカなどしたけれど、共同生活を送るうちにみんなの気持ちは通じ合い、結束は固くなっていく。運命共同体である。
 借金取りや浮気男に捕まりそうなときも、みんなで守る。お互いが人に言いにくい事情を持っているから、共同生活を送る他人の痛みがわかる。

 そして、皆それぞれがやりたいことを見つけ、運命共同体から離れて頑張っていく。
 クーロンハウスは住む人が変われども、リーダーの魅力に引き寄せられる。最後の休息地である。

【ネタバレ内容】
 本作品は脚本や演出だけでなくキャストも良かったと思います。
 ほんの一部ですが取り上げます。
 借金取りが関西人で、精悍な外見通り、冷徹非道の取立てをする。しかしええ話にすぐ感動する。涙もろく人情味のある人間であった。両極端なギャップがあり面白かった。
 奥さんから嫌われ家を追い出された弁護士、キャラクターや言動がおもしろおかしい【funny】が、弱い立場の女性を守るときは毅然とした態度で浮気男を追い払う。人間らしさがあってかっこよかった。
佐藤けいこ一人芝居「私の部屋」

佐藤けいこ一人芝居「私の部屋」

空間ゼリーLabo

pit北/区域(東京都)

2008/03/03 (月) ~ 2008/03/03 (月)公演終了

満足度★★★★★

大切なものは捨てられない
ストーリーのテーマは二つです。一つは「大切なものは捨てられず、部屋に堆積していく」です。もう一つは「自分が見たいものしか見ようとしなかった(でもいまは見える。あらゆることを観察したい。何にでも挑戦していきたい)」というものです。

 大切なものは捨てられない。
 大切にしていることを言いたいけど、うまく言えない。
 健康グッズやおしゃれな洋服。買ったときには感動があるけれど、時間が経つと物足りなくなる。彼氏も私を飽きさせない努力が足りなかった。
 散らかった部屋のモノは、売ったりあげちゃったりしようかなと思うものもあった、しかしそれは収納できないだけで、思い出と手に入れた瞬間の感動が残っている。色褪せて見えなくなってしまったけど、大切なものは捨てられず、部屋に堆積していく。

 今回の作品で、キャンディーの部屋、散らかった部屋にある洋服、小説本等は、捨てられず部屋に積もった大切な思い出や感動の瞬間がリンクされたものなのである。 無造作に置かれた文庫本『アルジャノーンに花束を』『あしながおじさん』も、感動した瞬間が思い出と一緒につながっているのでしょう。

 人からこう思われたい、見られたいと思う気持ちが散らかった部屋にあるもの全てにある。部屋を振り返ってみて、今までの自分が見たいものしか見ようとしなかったことに気づく。でもいまは見える。あらゆることを観察したい。何にでも挑戦していきたい。そう決意したストーリーです。

ロックオイル砦の決闘

ロックオイル砦の決闘

新宿サニーサイドシアター

こった創作空間(東京都)

2008/02/12 (火) ~ 2008/02/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

人なつっこいビリーと友人パットの決闘劇
 人なつっこいビリーと友人パットが決闘するクライマックス・シーンに感動しました。
 保安官パットを演じた高橋沙織さん。黒のベストと羽根帽子かっこよかったです。

いっぱい夢中で大変だ!

いっぱい夢中で大変だ!

夜ふかしの会

笹塚ファクトリー(東京都)

2008/02/15 (金) ~ 2008/02/17 (日)公演終了

満足度★★

夢中になっている人のシチュエーション・コント
今回はシチュエーション・コントでした。
今回のコントで僕が好きなコントは天文部長が部費を獲得するために生徒会長選挙に立候補するため会議をしている「会議に夢中」です。

ネタバレBOX

各コントのタイトル
1.本に夢中
 前説。好きなマンガ本を一言あらすじで語る。
2.記者会見に夢中
 映画の完成記者会見で、キャストの恋愛が発覚する。
3.刑事に夢中
 一日署長とサボっている刑事の話。
4.ヒーローに夢中
 一般人がサスペンダーというヒーローになるコント。
5.裁判に夢中
 交通事故の裁判で、判事と弁護人が判決の日を決めるのに都合がつかず夢中になる。
6.歌に夢中
 友達同士、待ち合わせをする。何気ない話で歌の話題となる。一人が歌を口ずさむと町中が夢中になる。
7.俺に夢中
8.続きに夢中
 一般人ヒーロー、サスペンダーの続編。
9.世界に夢中
10.会議に夢中
11.休みに夢中
12.サッカーに夢中
13.小さい頃からの夢に夢中
おとことおんな、時々、動物

おとことおんな、時々、動物

WHATCOLOR

サンモールスタジオ(東京都)

2008/02/06 (水) ~ 2008/02/11 (月)公演終了

満足度★★★★

全く接点や脈絡のないものなのに、構図が同じ
 今回のWHATCOLORさんのアンケートに「何色に見えましたか」というものがありました。
 僕の場合は「赤」にみえました。全体的に血生臭いシーンが多く、赤が印象に残りました。

 今回のオムニバス・ストーリー4本のうち、特に第3話「牛 -ドナドナのうた-」が一番印象に残りました。

 牧場で乳をもまれ、ミルクを搾り取られる牛。
 風俗店で巨乳をもまれ、金を搾取される女。

 全く接点や脈絡のないものなのに、構図が同じだと思ってしまいました。

ヤング★ボーイズ

ヤング★ボーイズ

THE♥フォービーズ

笹塚ファクトリー(東京都)

2008/02/08 (金) ~ 2008/02/10 (日)公演終了

満足度★★★★

もう一度スポットライトを浴びたい
 吉本の劇団THEフォービーズ『ヤング★ボーイズ』を観てきました。

 全体的な感想としては、泣けるええ話でした。
 第一幕は吉本らしく全員でズッコケていました。これは場の雰囲気をつかむ、お約束の儀式なのです。
 最後は感動して涙ぐんでしまいました。

ネタバレBOX

【あらすじ】
 あるプロダクションで、ライバルに負けてモチベーションを無くしていた、一人のマネージャーがいた。
 担当するグループのマネジメントもできず、恋人にもそっぽを向かれ、 自暴自棄になっていた。
 プロダクションの社長は、今は壁にぶち当たっている正念場なのだ、と
彼にチャンスを与える。
 それは、70年代にトップ・アイドル集団であったヤング★ボーイズの再結成ライブを成功させよ、というものであった。

 ヤング★ボーイズはリーダーの克己が絶大な人気を誇っていた。しかし、ある出来事によりリーダーが脱退する。リーダー不在となったヤング★ボーイズは、人気がなくなり解散してしまったのであった。
 しかし解散後の現在でも、事務所には一通のファンレターが毎月届いていた。

 ヤング★ボーイズのメンバー達は今では50代になっていた。アルバイトや契約社員で普通の生活をしていた。彼らが昔トップ・アイドルだった面影もなく、誰も覚えていなくなっていた。

 そんな中で、ヤング★ボーイズの再結成ライブの話が持ち上がる。メンバーは集結する。しかしリーダーの克己が現れて、メンバー達は反発する。

 『もう一度スポットライトを浴びたい』
 紆余曲折の中、6人は一致団結し、ライブの練習に励む。
 しかし、娘から反発されたり、メンバーの一人が病で倒れてしまうなど、困難が立ちはだかる。

 意気消沈してしまったリーダーの克己は、再結成をあきらめてしまう。
 残ったメンバー達から「また逃げるのか」と怒鳴られる。再結成をやる意味を失った克己に、ある一つの事実が判明する。

 マネージャーは、このヤング★ボーイズの再結成ライブを成功させることができるのであろうか。
セサミストレート

セサミストレート

カカフカカ企画

アイピット目白(東京都)

2008/02/06 (水) ~ 2008/02/13 (水)公演終了

満足度★★★

タイム・トラベルとラブ・コメディ
 開演してから前説の寸劇。くだらなさがおもしろかったです。
 本編は、意外にもタイム・トラベルとラブ・コメディをテーマにしたストーリーでした。

 前説と本編でキスシーンが20~30ぐらいありました。客席に見せ付けるほどの本気な口づけで、気持ちがいっぱいになりました。ごちそうさまでした。

 アニメのキャラクターへのオマージュやパロディ・ネタがエッセンスとしてふんだんに盛り込まれていました。

 本公演に客演されている太田友紀子さん、美人でした。けっこうサバサバしているところに魅力を感じました。お疲れ様、おもしろかったよとごあいさつして劇場をあとにしました。

 客演の熊谷有芳さんも美人で、僕の心はときめいてしまいました。前説コントの一つで、ツンデレなウェイトレスを演じていました。
 あんな彼女がほしいな、と心の奥底で思いました。

【ストーリー・導入部】
 2008年、家でひきこもる一人の男がいた。その男の名は新戸風太郎(にいと・ふうたろう)であった。
 この風太郎に未来からやってきたエージェント達は指令を下した。一組のカップルを別れさせて、彼女に告白して付き合えというものだった。
 2058年9月13日の金曜日。世界規模の同時多発テロにより、10億人以上が犠牲となる。首謀者はフライデー13。13人で構成される使徒の中心人物である。
 エージェント達は諸悪の根源であるフライデー・サーティンの生誕を阻止しようと画策する。フライデーの両親こそがこのカップルなのであった。
 未来からタイム・トラベルで歴史を変える行為を取り締まる警察機構もやってきて、風太郎は争いに巻き込まれていく。
 風太郎はひきこもりを抜け出し、みんなを幸せにできるのだろうか。

ネタバレBOX

 オープニングでプロジェクターをつかって役名と出演者紹介が映し出されます。映像演出は素晴らしい。

 本編中に5分間の休憩時間があります。
 シーン・チェンジや衣装替えなどで、回避できなかったのでしょう。

 せっかくプロジェクターを駆使して「SRUまで+5:00.00」とカウント・ダウンしているのがもったいない。
 この5分間をつかって、2058年の出来事をニュースで伝えるなど、本編に関連するサイド・ストーリーVTRをプロジェクターで上演すればよかったんじゃないかな。僕はそう思いました。
 場がつなぐ目的も達成できて、世界観や笑いも深めることができて一石二鳥ではないかと思いました。

 SRUの意味は「そのとき・歴史が・動いた」の頭文字を取っています。
Blue Man Group IN TOKYO

Blue Man Group IN TOKYO

Blue Man Group

Zeppブルーシアター六本木(東京都)

2007/12/01 (土) ~ 2009/11/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

パイプ管楽器とロック、コントとお笑いパフォーマンスが一度に楽しめるステージ
 BLUE MANのステージを一言で説明します。
 パイプ管楽器とロック、コントとお笑いパフォーマンスが一度に楽しめるステージです。
 顔の表情は一切変えず、瞳で訴えかける。無言のお笑いパフォーマンスは世界共通なんだな。そう思いました。

 パンフレットの一節を引用します。
 
 『儀式は人間が集団となる事で生まれるが、どうやら儀式なくして集団が存続することはない』

 ブルーマンが世界で長く活動できる秘訣は、必ず実行する、お決まりの儀式があるということなのです。
 その儀式とは何か。この言葉がパンフレットに載っているページの写真を見れば分かります。
 お決まりの儀式はまだまだたくさんあると思います。

 客いじりは、ポンチョ席にいる人だけが選ばれるのではありません。ブルーマンが会場の隅々までやってきて選びます。僕は一番後ろの列でしたが、すぐ近くの女性が選ばれてステージ上に呼ばれていきました。
 料金はちょっと高めですが、もう一度観たくなるステージです。ぜひ1度観られることを強くお勧めします。
 
 6月まで第3期追加公演が決定したようです。まだ観ていない方は是非ブルーマンを観て下さい。

 開演前や終演後にロビーにカラフルで奇抜な全身スーツを来たスタッフが4人います。バック・バンドの皆さんです。遠慮せずに来場記念で握手しましょう!

ネタバレBOX

 BLUE MANが必ずやるお決まりの儀式はいくつかあると思います。

 エンディングの「ロール」は公演パンフレットの写真にもなっている「儀式」です。

 開演直前のステージ上の電飾メッセージ看板に注意しましょう。これも「儀式」の一つです。客席にいるどなたかのお誕生日をお祝いするメッセージなどが流れます。スタッフが「せーの!」と音頭をとります。みんなで大声でメッセージを読み上げましょう。

 東京公演ということで、ご当地日本の国民的アニメ音楽の演奏がありました。
 頭に特徴的なオブジェクトをかぶって、会場は大盛り上がりでした。

 会場から3人以上選ばれて客いじり。会場内のビデオカメラでスクリーンに映し出されます。
 選ばれた観客と4人でシチュエーション・コントもあります。もちろんブルーマンは一言もしゃべりません。

 たくさんの客いじりが行われます。ただ唯一、一つだけ実際にはやらせていないかもと思うものがあります。
 詳しくは言えないですが、気分を悪くさせたりケガをさせる恐れがあるものなのです。
 万が一ケガをしたりすると、損害賠償や訴訟になりかねないです。
 ヘルメットをかぶせて舞台袖に連れて行き、それをビデオカメラが中継しています。ここがポイントです。
 舞台上に映し出される映像はVTRで、実際にはスタント・マンがやっているんだろうと僕は思っています。実際に連れて行ったお客さんは、ステージに戻ってくる箱の中で待機している。
 その1人は客席に戻ってきますが、全身ペンキだらけなので、舞台下から付き添われたスタッフに誘導されて外へ移動させられます。
 レーシング・スーツを脱がされて元通りの服装に。別室で公演を観ていたか、途中で戻ってきたと思います。
木に花咲く

木に花咲く

新宿サニーサイドシアター

こった創作空間(東京都)

2008/01/15 (火) ~ 2008/01/18 (金)公演終了

満足度★★★★★

どうしたらいいのかわからないから狂ったように咲いている
 学校でのいじめ、家庭内暴力を振るう子供に向き合う家族をテーマにした演劇である。

 祖母役を演じた加藤久美の迫真の演技に、客席の僕たちは圧倒されました。
 劇中で、客席からすすり泣く声がよく聞えました。閑話休題のおじいさんとおばあさんの語らいのシーンでほのぼのとしていても、ストーリー全体がシリアスであるため、笑い声を押し殺してしまいました。

 母親役の菅田華絵さんが第3幕あたりから目頭がうるうると赤くなっていて、今にも泣き出しそうでした。エンディングでは口がプルプルと振るえ、瞳から涙が溢れ出していました。

 演者の皆さんの感情がキャラクターに入り込んでいます。客席の僕たちも一緒にもらい泣きしてしまいました。

ネタバレBOX

【あらすじ】

冒頭第一幕。桜が咲いた樹の下で老婆が花見をしている。
お婆さんは男の子に膝まくらをしていたことを回想している。
膝にかかった頭脳の重さを今でも忘れていないと、亡き孫に語りかけるようにささやく。

 男の子は学校の階段から転落して大怪我をした。
父母は、自分でつまずいたのが原因だと学校側から説明されたのだという。
お婆さんは、孫はあの子達に突き飛ばされたに違いない、なぜ自分達の息子がいじめられていることに気がつかないのか、と父母に叱責する。

 しかし、母親はあの子たちに会ったことがあり、いたって普通の子でいじめをするような子供達ではない、と反論する。

 祖母はかわいい孫に、お前のことはおばあちゃんが一番わかっているとなぐさめる。そして、友達なんていらない、勉強に集中して出世するように説く。いじめてくる子よりも偉くなり、見返してやるんだ、と説教する。

 同級生達に迎合して、仲良くなり友達を作ろうとした孫に、こころが弱くなった表れ。自分が弱くなった証拠だと老婆は叱る。
他人を憎しみ続けることが、強さである。絶対に負けてはいけないと命ずる。

 人を憎しむことが強さだと云う老婆はまるで鬼のようなことを言う人に見える。しかし、根っから嫌な人間ではない。
 桜を眺めていると、死んだはずのおじいさんが登場する。課長などに出世したいという野心がない男であった。
 亭主関白だけど、寡黙で不器用な男。そんな夫にに呆れつつも、生涯の伴侶として共に過ごしてきた。

 孫の母親がおばあさんの元へやってくる。死んだおじいさんにあった夢の話を語る。
 孫の父親である娘婿も祖父に性格が似ている。老婆自身も、孫の母である娘に、あなたは私と同じように、似た性格の男性を選んだ。運命だと言う。

 月日は流れ、息子の父と母が不仲になる。教育方針や子育ての考え方に相違ができ、夫婦喧嘩になった。父親は妻と話し合った。悩んだ末に、お婆さんと息子を離れ離れにし、別居する決断をした。

 ある日、息子が母親に刃物を向ける事件が発生した。母親は息子が来ていないかお婆さんに相談する。そこへ息子が飛び込んでくる。
 おばあさんは息子に、母親が憎いならおばあちゃんを刺しなさいと。息子はそんなことはできないと泣き崩れる。

 父親は勤め先に同級生の親がいるつながりを使い、同級生に息子をクラス会に誘ってもらうようにお願いをした。
 招かれざる客であった息子がクラス会に来たことで、逆にいじめ行為がエスカレートしてしまった。
 父親は「僕は人からどう言われようと構いません。先生やクラスの皆に謝りにいく」という。
 お婆さんは、父親にそんなことはおよしなさいという。祖母は息子に、友達なんかいらない、いじめっ子達を憎しみなさい。勉強をして将来出世することで偉くなりなさい。見返してやりなさいと叱咤する。

 しばらく経ち、母親がお婆さんの元へ駆け込んでくる。息子がやってこなかったかと訊く。
 おばあさんは息子の事情を知っている様子で母親に「何か学校であったんだね」と尋ねる。

 学校で同級生の女子の財布が無くなるという事件が発生した。クラスのみんなは、息子に嫌疑をかけた。
 息子は僕がやったと言い、教室を飛び出したという。
 母親は教師からどこにいったか知らないかと連絡がきたのだという。

 この事件の顛末は、実は女の子は自分のロッカーにちゃんとカギをかけてしまっていた。財布は盗まれてなんかいなかった。その事を忘れていた勘違いなのであった。

 老婆は母親に、息子は父親の元に向かっているに違いないという。
「僕は人からどう言われようと構いません」という父親をどうやって憎しんだらいいのかわからない、殺しに行ったに違いない。やめさせるように父に連絡を取り、急いで逃げる様に連絡を取るように母に指示する。

 息子が見つかったとの連絡が来た。家の近所にあるビルから飛び降りたという。変わり果てた姿だった。
おばあさんは苦しかったろうと孫を想い、涙する。

 数年が経ったある春の日。桜の木の下で転寝をしていたお婆さんの元へ母親がやってくる。おばあさんは母親に桜が狂って咲いているのだと言う。

  桜が満開に咲き乱れるのは、咲きたいからではなく、どうすればいいのかわからないのだ、と老婆は想う。
  学校でいじめられる、家庭内暴力を振るった孫が、自分がどうしたらいいのかわからなくて狂ってしまっていた。このことを祖母は桜の木に花咲く姿に例え、孫の姿を投影していたのだろう。
『ここだけの話』『一日だけの恋人』

『ここだけの話』『一日だけの恋人』

サンモールスタジオ

サンモールスタジオ(東京都)

2008/01/16 (水) ~ 2008/01/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

2組の男女が愛と幸せについて考える戯曲
 ホテルの一室で、赤の他人同士、2組の男女が愛と幸せについて考える戯曲。

 売れない役者の男を雇い、一日だけ自分の恋人のフリを装ってほしいと依頼する女。
 結婚式直前に逃亡し、部屋に飛び込んできた花嫁。

『この先に幸せはあるのかしら?』
『行けばわかる。まずは行かなくちゃ』

 IKKANさんの活動を知っている人はニヤリと笑えるネタがたくさん織り込まれていました。会場は爆笑の嵐。
 面白く笑いつつも、最後には信頼関係ができてホロリと涙しました。

サバンナの掟

サバンナの掟

柿喰う客

シアタートラム(東京都)

2008/01/05 (土) ~ 2008/01/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

『サバンナの掟』を観て来た感想レビュー
空間ゼリー所属の岡田あがささんが客演した演劇、
柿喰う客『サバンナの掟』を観てきました。

「観て来た感想レビュー」
「演出家とゲストによるポストパフォーマンストーク」
「スジ、要約」
観て来たレビューを言います。

【観てきた感想】
≪総論、感想について≫
 赤裸々に人間の性について、セックス、援助交際、妊娠、性癖など赤裸々に演じていました。オブラートや隠語で表現せず、人間のもつ欲望、本能が剥き出しになっていました。
 クライマックスは登場人物全員の殺し合い。サバンナの掟。
 主人公の女子高生「比良山ソネコ」を除き全員絶命してしまう。


≪各論、岡田あがささんの感想について≫
「日本初の女性内閣総理大臣、富永正子(トミナガ・マサコ)」という配役で、主役と対決する悪の枢軸といった様相でした。
 客演ながらもメイン・キャスト級でした。

 羽根をまとったスーツ姿がかっこよく、男装の麗人、宝塚、パタリロにでてくるバンコランといった感じで、眉が細く凛としていました。

 男性役でもよかったんじゃないか、と一瞬思いましたが、日本初の女性内閣総理大臣という英雄的存在として演出したかったのかなと観終わって帰路の電車の中でそう思いました。

 人間の狂気、妄想、サディスティック、いやらしさ、憎らしさや醜さがあふれんばかりに出ていました。
 岡田あがさをこの総理役にキャスティングして正解だよ!
(僕はこんな発言して何様のつもりなのでしょう、調子に乗っていますね、ごめんなさい)

ネタバレBOX

【演出家とゲストによるポストパフォーマンストーク】
 終演後に「ポストパフォーマンストーク」と呼ばれるダイアログを聴きました。
 空間ゼリー・ラボでいう所の「アフター・トーク」でした。
 客席の質問コーナーで、イの一番に質問してしまいました。
 2個も質問してしまうという暴挙、会場からは冷たい視線、ごめんなさい。

 僕は知らない。この作家・演出家さんがどんなテーマを訴えたかったのか。
 僕は知らない。この方ははどんな頭の中、心の中を持っているのか。
 僕は知らない。この方はどんな生い立ち、人生観、世界感、ものさしをもっているか。
 だから。僕は知りたい。

 1番目の質問は『寡黙な父親の教育方針「幼少期にどうぶつ番組を見せられていた」の大罪で、少年時代にやれなかったことについて』を訊いてみました。

 ハンサムな2枚目、高校演劇コンクールで優秀な成績を収め、とくに不自由なかった。という答えが返ってきて意外でした。
 なにかしら、愛情が乏しい、女性に虐げられる男性をまのあたりにしたなど
パンフレットの挨拶文にあった『父の大罪』(※ 註1) がこの作品のテーマとして現れているのかと思いました。しかし僕のこの思い込みとは遠くかけ離れていて違っていたようです。

 刑事コロンボよろしく「あともう一つだけ」2番目の質問を訊いてみた
『この作品のテーマは何か』

僕の印象に残ったセリフ、キーワードはつぎの三つ。

『セックスを生活のツールにしている人がキライ』
『ハイエナの群れのリーダーはメスである』
『優秀なメスを探す。強い人で生き抜いてきた。実際に遭遇すると、殺さないと殺される』

作・演出の中屋敷 法仁さんからの回答
「オスは優秀なメスに殺される」

確かに受精したメスはオスを捕食し、子育ての養分とする。
「カマキリがそうですね」とあいづちを返す。

「自分自身に主義・主張がない、動物に教えてもらった」

ここに中屋敷さんの『父親の大罪』の一片があるのかなと思いました。


(※ 註1) パンフレットの挨拶文を引用

『幼少期、父親に
半ば強制的にさまざまな
「どうぶつ番組」を見せられていました。

それが、寡黙な父なりの
子育てのかたちだったのだろうが、毎日毎日
ライオンの狩りやらカバの交尾やら
シマウマがハイエナにぶちーって喰いちぎられたりするのを
見て、育った僕は

なんだか、よくわからないことになっていたらしく

思春期になってから親友が欲しいとは思わず、とりあえず
群れの中に紛れていないと気が済まないし
恋人なんていらなくて
とにかく多くの人とセックスできている事実に
安心感を覚えていたのです。

残念なことに、23歳になった今でも
そんな自分の本質は
変わっていない気がします。

ので、

父の大罪を弾劾する
っぽいこの作品を、このたび
再々演するのです』

【公演情報】
柿喰う客 第12回公演
<フリーステージ参加作品>
『サバンナの掟』(再々演)
作・演出 中屋敷法仁

http://kaki-kuu-kyaku.com/nextstage12.html


【スジ、要約】

 女子高生 名罪(ナツミ)は黒ずくめのスーツ姿の男女から報酬を受け取るが、口止め料を要求するシーンから始まる。ナツミはその場で射殺されてしまう。
 クライアントは総理大臣、富永正子(トミナガ・マサコ)。日本初の女性首相で英雄的存在であるが、サディスティックな性癖を持っていた。

 時同じくして、主人公ソネコは、援助交際の接客中に局部を咬まれる。謎の男は逃亡してしまう。

 援助交際斡旋組織の捜査・摘発をしたい刑事は、警部の上杉に捜査許可を求める。しかしことごとく却下されてしまう。
 刑事は警部が援助交際斡旋組織をかばっていると疑う。

 市長は地元出身の総理大臣が来ていることで、ご機嫌を取る。次第に自分が罷免されるのではと勘違いしてしまう。暗殺計画を企てる。

 総理の正子は、援助交際斡旋組織の抹殺を計画し、地元マフィアに暗殺を命ずる。

 援助交際斡旋組織のメンバー達はナツミの弔い合戦だとして、首相殺害を決意する。
 

 主人公ソネコが総理に対面する。目的はナツミの敵討ちではない。自分の大事なところを咬んだ男を探して欲しいと要求した。

 総理は目的は復讐と問うが、分からないとソネコが返答したことに「その男が好きなのね」と逆上する。
 もみ合いの末、ソネコは正子にのしかかり絞殺してしまう。

 クライマックスは斡旋組織、マフィア、警察、市長、総理による殺し合い。主人公ソネコと上杉警部以外は命を絶たれてしまう。

 上杉警部は刑事を殺害した。彼は斡旋組織の顧客名簿を探し消滅させたかった。
 彼が主人公ソネコの局部を咬んだ男であった。

 警部・上杉も銃撃戦の末、瀕死の重傷を受ける。そしてソネコと対面する

 ソネコは「愛してくれた人。あのときも今も顔を真っ赤にしている」と言う。
 上杉は「優秀なメスを探していた。ハイエナの群れのリーダーはメスで、強く生き抜いてきた。実際に会ったとき、殺さないと殺されると思った」と答える。

 ソネコは自分の白い下着を脱ぎ、額から流血した上杉の顔に覆い被せていく。

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