くれない博徒
蜂寅企画
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2014/12/25 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★
日本映画が全盛期を少し過ぎた頃の個性派監督が撮った娯楽時代劇、的な
とある目的のためにさすらう壷振り女がある宿場町に投宿したことで起こる騒動記。
おりんに予言をする老女、おりんが狙う宿敵の娘の三姉妹、宿場町で対立する二大勢力など、名作リスペクトもあり、味わいは映画全盛期の娯楽時代劇。
いや、お約束的な勧善懲悪ではなく、主人公を含む大半の人物が「ワル(もしくはアウトロー)」の要素を持っているあたりは全盛期を少し過ぎ、個性派監督がウケ始めた頃のノリか?
そんなアウトローたちが織り成すのは復讐の連鎖(「殺られたら殺り返す」の世界)のハナシ。これ、好きなんだよなぁ。
そういや少し前にも女性主宰のユニットがこのテーマで公演していたっけ…。
それを人物の個性を表現した衣裳、終盤での仕掛けも仕込んだ精緻な装置、サンプリングの音響を付けなくても迫力を感じさせる殺陣などでコーティングしているのだからその観応えたるや…!
2時間余を堪能いたしましたぁ♪
なお、同じ疑問を抱かれる方もいらっしゃるだろうから書いておくと、かんざしを他人に渡す時に尖った方を相手に向けるのは正式な作法だそうで。
『ろりえ』
ろりえ
シアター風姿花伝(東京都)
2014/12/26 (金) ~ 2014/12/30 (火)公演終了
満足度★★★★
早目の「遺書」あるいは劇団の「生前葬」?(笑)
毎夏に子供向けにハートウォーミングな劇を上演していた地方の劇団主宰が急逝、残された4人の女優は…な物語はろりえの4人娘ならではで、奥山主宰の「もし自分が死んだらこうあって欲しい(あるいはこうなるのではないか)」という一種の「遺書」ではなかろうかと…(笑)
もちろん4人娘のみならず他の面々もキャラにピタリとハマっていて、それを「飛び出す絵本」風の装置(以前同趣のものを見た記憶があるが、どこだったか?)を駆使して見せて楽しい。
また、「最後の大芝居」というキャッチコピーもいろんな意味に解釈でき、観た後でも複数に思えて巧み。
そんなこんなで本作はろりえの「生前葬」であるのではないか?とも思った。
2014年をこれで納めて正解♪
山笑う
僕たちが好きだった川村紗也
新宿眼科画廊 スペース地下(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/24 (水)公演終了
満足度★★★★
そこだけそのまま宮崎のような演技空間
母の通夜で10年振りに宮崎の実家に帰った主人公、彼女が交際相手を伴っていたことで兄は…な物語。
演技空間である四畳半部分だけ現地から切り取ってきた…どころか空間が曲がって現地がそのままそこにあるような現実感さえおぼえるのは方言のためだけではあるまい。
そんな中で兄の妹に対する複数の(アンビバレントな)想いや幼馴染みの感情、それに主人公の交際相手の「居心地の悪さ」がじわじわと、しかし確実に伝わってくる感じ。松本脚本(と演者たち)、さすがだなぁ。
なお、一人っ子なモンで、兄妹の想いに関しては実感ではなく「さもありなん」という納得に近い感覚?
一方、交際相手の居心地の悪さについてはまさしく実感。(笑)
オスカーワイルド『幸福な王子』全回満席にて無事公演が終了いたしました。深く深く感謝!!
楽園王
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2014/12/23 (火) ~ 2014/12/24 (水)公演終了
満足度★★★★
主題とその変奏
音楽における「主題とその変奏」のように原作に忠実(+αあり)な前半と翻案した後半と、という構成。
後半では「得ることによって失うもの、与えることで得るもの」という原作では描かれない要素も附加して「なるほどそういうことか」と納得。
また、前半は原作の再現に加えて後半に繋がる部分が練り込んであるのがミソ。
なお、冒頭の「私(必ずしも作者自身の分身ではない)」が「幸福な〇〇(←隠れて見えない)」という本にたどり着くまでのシーンが最近観た別の芝居と同趣向だったのにビックリ。またもや「小劇場シンクロにシティ」…。
シカク
企画演劇集団ボクラ団義
サンモールスタジオ(東京都)
2014/12/18 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★
久保田脚本の真骨頂
雨の夜に襲われ視力を失った女性と彼女をめぐる3人の男…。
中盤で事件の表層が明らかになってからが久保田脚本の真骨頂、二転三転どころか五転も六転もする展開は角を曲がる度に新たな景色が見えてくるよう。
そんな中、バレにくい嘘に関する台詞は久保田式の演技メソッドか?なんて見方をしたりもして。
で、主要な4人の他に2人が助演、そして多人数のシーンが1つ(複数回演じられる)という「変則4人芝居」形式が独特だが、この多人数のシーンを何らかの方法(会話で処理とか?)で他の役者を使わずに済ますことができれば商業系での上演もあるのではないか?とも思ったり。
あと、前方2列の小さな椅子での150分はさすがにキツいよね。
孤独な絵肌・滑り込む音楽
ナズ・ラヴィ・エ
ギャラリーCASA TANA(東京都)
2014/12/02 (火) ~ 2014/12/07 (日)公演終了
満足度★★★★
贅沢なひととき
画家が描いた4枚の絵と描かれた人物たちのエピソードと…な、謂わば“演劇版「展覧会の絵」”。
各エピソードが微かにリンクしていたり、冒頭は仕切られた4つのブースで「動く絵画」的に見せたりというアイデアが面白いし、バンドネオンをフィーチャーしたバンドの生演奏が付くとは何とも贅沢。
また、ギャラリーであり、一般的な劇場のようなライティングができないことを逆手にとり、ランタン的なものや懐中電灯をも利用した照明もイイ感じ。
うぶ
INUTOKUSHI
駅前劇場(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★★
裏の裏は表
内向的な女子高校生の成長物語…何と、あの犬と串が、そんな王道青春物語を!しかも“毒”があまりないなんて!(笑)
がしかし、考えてみれば従来作品の根底にはこういった要素が少なからずあったワケで、その意味では今まで奥底に隠していた部分を敢えて見せました、的な。
そう思って顧みれば他の「普段隠している部分」は今までにもう十分見せてきた(爆)から、あとはコレしかない、みたいな?(笑)
さらに、前々作「プラトニック・ギャグ」をすべて裏返すとこういう作品になる気がして、その意味ではこれもまた「犬と串らしい」と言えるのではあるまいか。
ある意味「裏・犬と串」なんつってな。(笑)
あと、「ああいうカタチ」で得意の(爆)下ネタを出すとはねぇ…(笑)
或ルゴリズム~duplicate~
電動夏子安置システム
スタジオ空洞(東京都)
2014/12/04 (木) ~ 2014/12/06 (土)公演終了
満足度★★★★★
ある意味「電夏版ブレードランナー」
人造人間開発中に起きたトラブルで密室に閉じ込められた3人の開発者と4体の人造人間。
一部の人造人間が人間に恨みを抱いていると気付いた人間は人造人間のふりをするが…な物語。
人造人間はプログラムされた3つの動作しかできない設定で得意の「ルールとその運用」的な電夏スタイル(再演でもあるし)を展開し、さらに欺こうとして馬脚を現す「笑いの王道パターン」まで加えて笑わせる笑わせる。
そんな中で自分だけ助かろうとするエゴ丸出しの人間と逆に互いの可能な動作を組み合わせて状況打開を図る人造人間たちを対比させて見せ、さらには「人間(である条件)とは一体何なのか?」と哲学的な命題まで考えさせるとはお見事。
「電夏版ブレーメンの音楽隊」もしくは「電夏版さるかに合戦」、ある意味においては「電夏版ブレードランナー」でもあるのではないか。
ちなみにこの6日間で3度目の四方囲み客席…。
赫い部屋
深夜ガタンゴトン
スタジオ空洞(東京都)
2014/12/23 (火) ~ 2014/12/23 (火)公演終了
満足度★★★★
往年のATG映画の如し
所謂「イケメン社長」の浮気現場写真を撮影するための張り込みに恋人も連れ込んだ興信所員の物語。
スタイリッシュな台詞と渇いた雰囲気は往年のATG映画を思わせる。
今一つ起伏に欠けるところまでATG風だが(爆)、ラストのビジュアルはインパクト大アリ。
キャッツ・ザ・ライフ
劇団ミックスドッグス
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2014/12/21 (日) ~ 2014/12/23 (火)公演終了
満足度★★★
まさにオトナの童話
いわば「オトナの童話」、童心に還ると言うかコドモの頃の童話を読んだ時の「ワクワク感」を懐かしく思い出す。
甘い部分もあるが、童話ってのはもともとそういうモンだし(←)、最終場での着地のさせ方が良かったのでよしとしよう(爆)。
欲を言えば「悪役(世相を反映している)」の「闇の部分」をもう少し掘り下げればもっと良かったのではないか?
ともあれ、カウンター部分も使った演出も良く、総じて満足。
コンフリクト
演劇ユニット チャンぷる
現代座会館(東京都)
2014/12/17 (水) ~ 2014/12/21 (日)公演終了
満足度★★★★
序盤に惜しい部分あるも総じて良くできたアクションもの
冒頭のいくつかのシーンがバラバラに感じられてしまうのとはじめのうちは本役とモブの区別がしにくい(麻見組はみんな顔に個性があるからなぁ(笑))のが惜しいが、キャラクター設定(演者に合わせた?)、程よいボケ具合、必ずしもハッピーだけではない結末、各々が手にする武器(種類・デザイン・それを使った殺陣)、タイミングが的確な音響効果など、総じて良くできたアクションもの。
美女木ジャンクション、他
santacreep
RAFT(東京都)
2014/12/02 (火) ~ 2014/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★
煙草と私たちの害について
イメクラの控室、突然禁煙になったことから日頃の不満・不仲が噴出…な物語が妙にリアル。
2年前のひつじ座での踊れ場による初演がプロトタイプでこちらが正式版?な印象。
もちろんそれぞれに味わいが異なり、優劣を語るものではない。
超天晴!福島旅行
笑の内閣
こまばアゴラ劇場(東京都)
2014/12/04 (木) ~ 2014/12/07 (日)公演終了
満足度★★★★
笑いとシリアス部分のバランス配分が絶妙
修学旅行の行く先に関する高校教師たちの数日間にわたる議論。
基本的には娯楽作品の体であるが、原発事故被災者の複雑な心境や放射線関連の科学的データがごく自然に織り込まれているバランス配分が見事。
また、「ダークツーリズム」の是非も問われるが、この作品自体がそれを体現しているようなところが巧み。
ただ、劇中で日が替わる度に前日の様子を語るのは親切ではあるが、ややくどいかも?
桃色家族
桃と団地妻
Gallery & Space しあん(東京都)
2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
【詳報】「劇場版」での再演も希望
父の七回忌の翌日、久しぶりに兄弟姉妹が集まった中に訪れる不審人物…。
序盤から昭和中期の「オトナが作っていた頃の日本映画」のように丁寧な日本語・正しい敬語に感心。
奇しくも2週間ほど前のコマイぬ公演で日本語の美しさに気付いたこの会場でまたもや…。
ほのぼのとした“ホームドラマ”系の前半と、来訪者の正体が明かされ波乱が起こるもさりげなく敷いておいた伏線を回収してキレイに落とす後半という対比もメリハリが利いているし起承転結に則って巧み。
ネタがネタだけに類型的な部分も少なからずあるが巧く組み込み効果的に使っているし、中盤での末っ子とその恋人、終盤での長女夫婦の会話を筆頭に名台詞も随所にちりばめて全体としては完成度が高く大いに満足。
(ま、一部演技に力みはあったがな(ぼそ))
恐らく一般的な劇場での公演に変換することも可能…どころか堤泰之の「煙が目にしみる」のようなスタンダードになりうる作品だと思うので演を重ねて欲しい。
なお、双頭ユニットであり両主宰の企画を交互に上演するそうなので、その意味で次回公演、次々回公演にも期待。
運命の女
味わい堂々
スタジオ空洞(東京都)
2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★
心理サスペンス風味の娯楽作品
永年の腐れ縁の相手を刺してしまった女が駆けつけた男に語る被害者とのあれこれ。
中心となる2人の名前にヒントがあったり、駆けつけた男性の名前にトリックがあったりというのも巧みで、娯楽作品として上出来。
いつの間にこんな作風を身に付けた?(笑)
なお、サイコサスペンス風の味わいにバーベット・シュローダー監督の「ルームメイト」('92年)を想起。
しんみりなーんてしまへんしまへん!とびっきりの、クリスマスパーティーにするんだってばぁぁぁぁ!!!!↑(≧∇≦)↑
38mmなぐりーず
新宿ライブハウス&イベントスペースLEFKADA(レフカダ)(東京都)
2014/12/06 (土) ~ 2014/12/06 (土)公演終了
満足度★★★★★
なぐりーずの「次のステップ」を示したライブ
ついに持ち歌を全曲歌うライブが実現。それも基本的には卒業するなっこをセンターにし、何曲かは同じく卒業する研究生ままんも加わるスペシャル・バージョン。
また、三期生にとっての本格デビュー的なライブでもあり、いろんな意味で38mmなぐりーずの「次のステップ」を示したライブだったと言えよう。
「制服ByeBye」を残した「ほぼ全曲ライブ」と卒業セレモニーという二部構成は、観客にとっても愉しいものであり、こういう場に立ち会えたことは甚幸。
みえない雲
ミナモザ
シアタートラム(東京都)
2014/12/10 (水) ~ 2014/12/16 (火)公演終了
満足度★★★★
見せ方の工夫などで145分の長さを感じず
原作と出逢った子供の頃を語る作者(役)に導かれて始まるドイツの少女の原発事故体験。
避難パニックに始まり被曝まで至る内容に(ここまで極端ではないにせよ)福島の被災者もかくや…との思いにとらわれる。
また、これも語り継ぐべきこととする締め括りも鮮やか。
シリアスな題材での145分間ではあったが、見せ方の工夫などもあり、それほどの長さは感じず。
体夢-TIME
劇団桟敷童子
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2014/12/11 (木) ~ 2014/12/23 (火)公演終了
満足度★★★★
新型桟敷童子、発売中!
従来は暗色だったチラシが白を基調にしたものになったことから漠然と抱いていた予感が的中?
桟敷童子としては異色の作品となった。
最初は「作風が変わった」と思うも、作風と言うよりは題材が変わったと言った方が的確かと思い直す。
抽象というよりむしろ素に近い舞台で描かれるのはハードSF、時間の環、ゾンビ、ナウシカ、英雄伝説などどこか既視感のある世界だが、複数組み合わされている上に桟敷童子流に変換されているので明確に思い出せないのがまた巧いところ。
そうして戦争や殲滅戦、欲望などを取り上げて語るのが新味。
どちらかと言えば物語よりもテーマを重視した感じか。
そう言えば洋楽…というか英語の歌詞が付いた歌を使うのも初では?
さらに普段よりもアングラ色が濃かったのではあるまいか。
これはこれでアリと思うが、賛否は分かれそうだよね。
あと、カプセル兵団の某作品(内容)や別役実作品(ビジュアル)も連想。
【ご来場ありがとうございました!!】媚媺る、
ロ字ック
小劇場B1(東京都)
2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★
いつもながらの女性作家ならではの作品
「女性はコワい、オトコはクズ」、そういう部分もあるだろうけれど敢えて見たくはない…な事象を客の眼をこじ開けて見せる(笑)ロ字ック、今回は「虐げられながらも堪える」女性を中心に据えて。
怖いもの見たさ的に眺めているといつの間にやら精神的に前のめりになってしまう。
中でも片桐はづきの「堪えっぷり」、榊菜津美の「悪い顔」、日高ボブ美の「〇〇ぶり」(劇中形容につきネタバレ自粛)が特に印象的。
また、場転の際にモニターに表示される「心の叫び」が次第に誰のものとも思えてくるのが上手い。
勾配の浅い短辺側の客席の前方の椅子を小さめにする心遣いも嬉しい。
しかし機種依存文字をタイトルに使うのは避けて欲しいな。
桃色家族
桃と団地妻
Gallery & Space しあん(東京都)
2014/12/10 (水) ~ 2014/12/14 (日)公演終了
満足度★★★★★
【速報】実は正統派にして完成度高し
タイトル、団体名とは裏腹に(爆)起承転結に則ったストーリー展開・全体構成から昭和中期の「オトナが作っていた頃の」日本映画のようにきれいな日本語・正しい敬語から、完成度はかなり高い。
一部気張り過ぎな演技や椅子の座り心地などの難点もあるが、それを補って余りある出来映えに大いに満足。
※「初物」に弱い(あるいは甘い)σ(^-^)ゆえ、ハナシ半分で受け取って下さい(爆)