満足度★★★★★
細長いステージは、ポスターの写真同様、道を表しているのだろう。関を守る側、越えようとする側。それぞれの思惑を追いつつ、物語は進む。ラップなども使ったスピーディな展開に、すり足のような和物の所作が混じる独特の雰囲気。
弁慶と富樫の命を賭けたやり取りの緊張感と疾走感、そして、越えられぬ境界を見据える哀切さをスタイリッシュに描いていた。
そこで見せるいくつかの関係が興味深い。弁慶と富樫の丁々発止のやり取り。主を守るために主を叱咤する弁慶の胸のうち。直接には目線を合わせることもない義経と富樫のある種の共感。
義経を演じた高山市のえみさんの、静かな覚悟を感じさせる凜とした美しさと、冨樫役の坂口涼太郎さんの胸のうちをうかがわせる微かな笑みが、それぞれ切なく印象に残った。
満足度★★★★★
鑑賞日2016/10/22 (土)
まずイントロに痺れた。最初、すごく無造作に役者陣が現れて仕込みを始めるんですよ。思わず、「えっ?」ってなる程、全く芝居っ気が無い。そこに照明と音響がグワっと入り、役者の姿勢が変わる、一瞬にして纏う空気が変わる、800年の刻を超える… 痺れるわぁ…
始まると、1つのシーンを分解したり繰り返したり、2つのシーンを融合させたりの進行で「時空間の使い方」が面白い。現代との融合もいつもながら見事ですが、中でも様式美を活かしつつもダンスの様に昇華された「足捌き」とか格好良かったなぁ。
音楽の使い方も、今まで観た中で一番ポップでした。歌舞伎語(?)が少ないのも特徴的でしたね。
そして、やっぱりキャスティングが素晴らしくて、弁慶・義経の異彩の放ち方が尋常じゃない。そういう"見てくれ"だけじゃない意味が込められているのも印象的でした。
奥が深い。
歌舞伎の勧進帳を現代語に置き換えて、歌舞伎の特徴も残しつつ演じられていきます。有名な話ではありますが、衣装や音楽、小道具も現代風にしていますが、芯は押さえられています。
義経の家来4人と関守の家来4人が2役で演じられており、切り替えも違和感なく、照明の山奥を意識させる配置もよく、作品が深いです。