焼肉ドラゴン 公演情報 焼肉ドラゴン」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
1-8件 / 8件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    スタンディングオベーションで四度のカーテンコール
    あんなに長く拍手してたのは人生初めてでした
    鄭義信さんが横通って舞台に上がって行くとき拍手が贈れて良かったです

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    10月から2回目。
    小劇場から中劇場に変わったが観ている側からすれば全く同じ感覚。出演者は呉日白(オ・イルベク)役のキム・ムンシク氏が健康上の理由で降板、チョウ・トガン氏に変わったのみ。チョウ・トガン氏はタカアンドトシのトシっぽい。

    演劇として完璧な作品にも思える。観客に芝居を体感させるアトラクション的な開かれ方。特に自分が敬服するのはイ・ヨンソク氏とコ・スヒさん。韓国人の俳優の為、他の情報が一切なく今作の登場人物そのものとして観てしまう。この佇まいは他の人に代え難い。全てを受け入れる片腕ドラゴンと自分の宿命を呪い、すぐ「南無阿弥陀仏(ナムアミタブル)」を唱える高英順(コ・ヨンスン)夫妻役。二人は済州島(チェジュド)出身だが1948年(昭和23年)4月に始まった「済州島四・三事件」によって故郷の村も親族も全て失われる。済州島は日本の沖縄的な島で元々は流刑地。第二次世界大戦後、南北統一した独立国家を求める島民に対し、反共を掲げる米国統治の韓国軍が住民を虐殺。大虐殺と脱出の結果、28万人いた住民は3万人まで減った。何もかもを失くした二人の出来ることは働くこと。働いて働いて働いて働いた。

    村川絵梨さんは安田成美を思わせる正統派美人。このルックスで演技もこのレヴェルなら怖いものなし。
    智順(ちすん)さんは鈴木京香的。「や゛め゛で〜!!」が響き渡る。
    石原由宇氏は森脇健児に見えた。

    これで終わりとは考えられない。
    観客の声から必ず復活上演されると思う。
    素晴らしかった。

    ネタバレBOX

    2年前、息子のいつも居たトタン屋根の上にのぼって一緒に桜吹雪を眺めたことを述懐するラスト。
    「春の風に桜が舞うとる。えぇ心持ちや。こんな日は明日が信じられる。たとえ昨日がどんなでも明日はきっとえぇ日になる。」
    必ず明日は良い日になる。全てはうまくいく。

    ※開演前、隣人役の松永玲子さんが右足ギプス、松葉杖にて登場。前回とキャラ変えてきたなと思ったが智順さんの右脚のキズと被る為不思議に思う。他の役も全て松葉杖で演じた為、ガチの骨折と知る。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    作演出の鄭義信氏は中劇場を「苦手」と称していたけど、見事に空間を支配して強い感情が
    ダイレクトに全身へ投げつけられるような「焼肉ドラゴン」に昇華させたように感じた。

    1幕が終わった時点で複雑な家族関係や時代背景も相まって、ちんぷんかんぷんというお客も散見
    されたので、Wikipedia序盤の家族構成や制作経緯を押さえておくとすんなり作品世界に入って
    こられる気がする。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%BC%E8%82%89%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3

    ネタバレBOX

    いつも寡黙で三姉妹ほか「焼肉ドラゴン」のみんなが賑やかにやっている中でもいつも舞台の隅にいて
    ただただ自分のなすべき仕事に精を出している金龍吉。

    肝のすわった感じの妻・高英順や個性が強い三姉妹に押されるようにしてあんまり目立たなかっただけに、
    美花が長谷川と結婚の許可を得に訪れた時、世間話でもするように自分の過去を訥々かつ切実に語るシーンが
    脳裏に焼き付いて離れない。

    済州島虐殺事件で村も故郷も失って命からがら日本へ逃れ、家族を養うために土地を取得して(本人は元の
    所有者から買ったと言っているけど、資金的な面を考えるに不法占拠に近かったと思わざるを得ない)、
    「働いて……働いて」と何度となく繰り返すほど必死で働き抜いて長い年月を過ごしてしまった。

    自分の人生がただただ家族を守るだけ、生き延びるだけの労働だったってひたすらしんどくて、何のための
    数十年間だったんだろう……って今生きているこちらとしてはふと心をよぎりかねないけど、こういう人は多分
    東アジア中心にたくさんいて「焼肉ドラゴン」はそのささやかな一例に過ぎない。

    そう思うと、今までの全てが「自分の運命であり、妻の宿命」だったと繰り返し劇中で出てくる龍吉の言葉が
    何か取り返しつかないポイントに達してしまったようにも、どこか達観しているようにも、何度でも乗り越えて
    きたからこれからも同じことをするだけだってこぼしているようにも受け取れる。たぶんその全部が入り混じった
    感じなんだろな。

    最初と最後の桜がピンク色のフィールドを作っていくシーンで、龍吉が「明日はきっと良くなるはず」「昨日が
    どうであったとしても」には泣かされるね。高英順がリアカーに乗っかって夫にまんまと運ばせるってコメディ
    部分なかったら胸が痛すぎたと思った。

    イジメのストレスで失語症になり自殺したはずの息子が最初と最後で語り部を行う。最終部分で街を出ていく
    両親についていかなかったの、おそらくなんだけど死者は過去の者であり、これからどんなものであれ未来へ
    明日へ向かって歩みを進めていく2人には重荷になってしまうという思いもあったのかな……と。

    この作品、演出次第ではどこまでもシリアスにできたと思うけど(現にあらすじだけ見るとドロドロした話
    だと感じる)、多用されるギャグやコメディパート(個人的には元婚約者の静花に未練ありまくりの大樹へ
    哲夫が「お前、しつこいぞ!」と放言するの、ブーメランにもほどあるやろと笑った)に助けられたところはかなりある。

    あと、帰国事業で北へ渡っていく長女夫妻、朴正煕体制下の韓国へ渡っていく次女夫妻、一応日本には残る三女夫妻、
    土地と店を失う格好でどこかへ流れていく龍吉夫妻と、どう考えても二度と全員が一緒に集まる機会なんて歴史を
    振り返れば振り返るほど無いと分かるので、しきりに写真を撮りまくる哲夫がなんか切なかったなぁ。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    最初に見た9年前の三演の感動が大きかった。今回はそれをなぞるような味方になったが、でも新しい発見もあった。
    ムードメーカーの太った常連客の櫻井章喜が目立った。また歌手志望の三女もよかった。歌もうまいし、笑いを取る。これが知らない俳優だが、何と韓国の女優。日本語もうまかったので、日本の女優と言われても驚かないくらいだった。父が片腕だったのをすっかり忘れていた。父役は新しい韓国俳優、母役は初演・再演と同じコ・スヒで、ふたりともよかった。

    前回の中学生の大窪人衛、哲男の高橋務が印象深い。

    ネタバレBOX

    最後のリアカーに、何と母親は乗っかってしまい、片腕の父が一人で引くとは。舞台でも坂道なのでさぞ重くて大変だろう。重いリアカーを勢いつけて一気に駆け上るところに、軽いリアカーを重そうにひくのでは出ないリアリティーがあるのかもしれない。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/10/23 (木) 13:00

    腹の底から搾り出すような、やり場のない怒りと悲しみの台詞に圧倒される。
    怒涛のように笑っても歌ってもつかみ合いの喧嘩をしても、
    深いところには涙の川が流れている。
    宿命とか運命とか言ってあきらめるにはあまりにも過酷な人生。
    国って何だ? 人を幸せにしない国って何なんだ?
    それに耐えて生きている人々の姿に、ただ泣いているだけの自分が情けなくなる。

    ネタバレBOX

    1970年大阪万国博覧会があった頃・・・大阪国際空港に近いこの一角は、在日の人々が
    肩を寄せ合うように暮らす地域だ。
    そこに「焼肉 ホルモン」という看板を掲げる小さな店があった。
    人々がこの店を「焼肉ドラゴン」と呼ぶのは、太平洋戦争で左腕を失った店主、
    金龍吉の名前に“龍”の文字があるから。
    店主は先妻亡き後、二人の娘を連れて再婚し、後妻とその連れ子の娘、二人の間に生まれた
    長男、という複雑な6人家族となった。

    この店に出入りする人々、とりわけ男たちの焦燥とあきらめ、そこから逃げるように
    毎日酒を飲んで歌う様子に女たちが怒鳴り散らすのもうなずけるというものだ。
    在日の人々の制限の多い社会で、濃密な人間関係が否応なしに絡まってしまう、そのジレンマ。
    長女も次女も三女も、申し合わせたように結婚はトラブルだらけだ。

    進学校へ進んだもののいじめに遭い、多分そのせいで「あ~」と発するだけの“失語症”に
    なってしまった長男が哀れでならない。
    彼だけは“日本生まれの日本育ち”であり、大人たちのように酒や歌で憂さを晴らすことも知らない。
    逃げたり帰ったりする故郷を想像して心を慰めることもできない。
    辛酸をなめ、逆境の中で生き抜いてきた父親の強さもない。
    出席日数が足りずに中学校を留年することになり、親からは転校も許されず、絶望の果てに二階の屋根から飛び降りて死んでしまう。
    唯一彼が自ら選んだ選択肢がそれかと思うと、差別の激しさと何に対してなのかわからない悔しさで胸がいっぱいになる。

    その長男が、物語の冒頭屋根に上って大声で叫ぶように語る。
    「この町が嫌いだった…」
    そしてラスト近く、死んだはずの彼は再び屋根の上から叫ぶのだ。
    「今は…この町が好きだ」
    ことばが出なくなった時間を取り戻すかのようなその声が、登場人物の中で一番切羽詰まって聞こえた。

    立ち退き、取り壊し、バラバラになる家族、と最後は別れを惜しむ時間をたっぷり
    取ってくれたおかげでずっと泣き通しだった。
    この先の運命を知っていると余計に希望が持てなくて暗澹とする。
    それでもきっとドラゴンは、その片腕で生きていくのだろう。
    そのへんのヘタレとはわけが違う。
    でもだからこそ、余計に涙が止まらないのだ…。

    韓国語の訳がタイミングよく表示されるので勢いが損なわれることなく話が進む。
    人を根本から支える母国語の強さを感じる。
    そのことばを失った長男の孤独が、痛みを伴って際立つ。
    開演前から演奏されるアコーディオンと太鼓の演奏、劇中歌われる当時の流行歌、テレビのCM等
    時代を彷彿とさせる要素が盛りだくさんで、当時の日本の空気感が色濃く漂う。
    ハマリ過ぎの配役に考える間もないほどの台詞の応酬、完全に持っていかれた3時間強。
    最後の「ドラゴン」を観たいけど、泣き虫の私は観られないかもしれない (/_;)

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/10/22 (水) 13:00

    日韓国交正常化60周年記念公演『焼肉ドラゴン』作/演出 鄭 義

    舞台の伊丹市とほど近い神戸に住んでいた。時代は1969年から71年、中3から高2だっただったか。小中、特に小学校では韓国出身のクラスメイトが多かった。台湾ルーツの子供も。通学経路には朝鮮学校があった。社会人になって鶴橋の焼肉屋にはたまに行っていた。焼肉の匂いに包まれる街。

    時代を切り取る流行語や、上演前のアコーディオンで弾いていた曲達は懐かしかった。

    在日韓国人、直接的には描かれてなかったが、差別。そして居住している劣悪な環境の地区。

    戦後を生きて来た両親、そこで育った子供達、三姉妹、彼が生きた 3年を描いた 2時間45分の上演。私立中学での韓国人へのいじめ、自死を選んだ彼。時生はちょうど同じ世代だ。生きて欲しかった。我々の世代はいじめはほとんどなかったのだけど、小学校時代、同級生は何人とか何も気にしていなかった。

    劇中、台詞にあった済州島での事件のこと、あとで調べてみるが、島民の惨殺/虐殺。

    次女夫婦の北朝鮮への移住。在日の帰還事業の結末を知っている訳で、あの出発がどういうことを意味するのか、悲しい気持ちを抱く。
    そういったことを背景に、厳しい時代を生きて来た夫婦の姿、家族、時生の姿に最後は涙が止まらなかった。

    でも、あの最後のシーン、笑いを生んでいた様に、次へのスタート、辛いことになるのだけど、次へと歩き出す姿だと受け取った。未来への消えていったのだと

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    第一幕90分休憩15分第二幕75分。

    チェーホフの『三人姉妹』をだぶらせる人が多いと思う。立ち昇る諦念は『ワーニャ伯父さん』や『桜の園』にも。人生を蹂躙される不合理を運命だ宿命だと無理矢理受け入れ生きていかざるを得ない。無力なんだ、人間は。でもそれだって気持ち次第だろう。気持ちの持ちようで何とか生きていける。それはどんな気持ちなのか?一体どんな?

    飛行機が近くを飛ぶ度に轟音と振動、桜の花が音を立てて散ってゆく。ピンクの雨がスラムのトタン屋根を染め上げる。少年はそれが好きで好きで堪らなかった。明るかった少年は日本人ばかりの私立中学校に入れられ差別と虐めで失語症を患う。登校拒否で日がな屋根の上に登り自分の世界に浸った。こんな町は大嫌いだ!こんな連中は大嫌いだ!自分の出自を呪うように汚らしいゴミの町を睨みつける。そんな町を一瞬にして桜吹雪が塗り替えてくれる。

    1969年春、大阪国際空港に近い伊丹市中村地区、国有地を不法占拠して暮らす在日韓国人の集落。太平洋戦争で左腕を失くした隻腕の男、金龍吉〈キム・ヨンギル〉(イ・ヨンソク氏)の営む「焼肉ドラゴン」。妻(コ・スヒさん)、右足の悪い長女(智順〈ちすん〉さん)、次女(村川絵梨さん)、クラブで働く三女(チョン・スヨンさん)、中学生の長男(北野秀気氏)。
    常連客の太った陽気な櫻井章喜(あきよし)氏、アコーディオン奏者の朴勝哲(パク・シュンチョル)氏、韓国太鼓(チャング)奏者の崔在哲(チェ・ジェチョル)氏。櫻井章喜氏の親戚であるキム・ムンシク氏が時折顔を出す。彼はリヤカーにドラム缶二つ載せて5km離れた豊中まで豚の餌としてうどんの茹で汁を貰い受ける仕事をしている。
    次女の婚約者、千葉哲也氏、大学出だが仕事が続かず遊んでばかりいる。
    三女の働くクラブ支配人、石原由宇氏。かっぽれが持ちネタで多才な男。歌手を夢見る三女は彼に夢中。
    砂利をトラックで運搬して羽振りのいい韓国人、パク・スヨン氏は舞の海似。

    1970年に大阪万博が開催される為、都市開発の名のもとに朝鮮部落の解体が強制執行、1971年までの物語。

    お父さん=アボジ、パパ=アッパ。
    お母さん=オモニ、ママ=オンマ。

    「これが私の宿命なのか···。」といつも嘆いているコ・スヒさん。
    「たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる。」と自分に言い聞かせるように呟くイ・ヨンソク氏。
    「帰るところはない。日本で生きていくしかないんや。」

    キャスティングが神懸かっている。当て書きとしか思えない。この中で暴れ回る千葉哲也氏は日本代表の貫禄。
    必見。

    ネタバレBOX

    開演20分前から舞台上で宴会が始まっている。チョン・スヨンさんが日本の歌を熱唱。巧い!集落に一つしかない共同水道で智順さんが食器を、松永玲子さん扮する婆さん(何と彼女は三役!)がホルモンを洗う。松永玲子さんは聴こえて来る歌に合わせてノリノリに踊る。

    休憩時間にはロビーにて朴勝哲(パク・シュンチョル)氏と崔在哲(チェ・ジェチョル)氏の演奏会。帽子に括りつけられた白く長い紐をぐるぐる回転させながらチャングを叩く妙技。拍手喝采。

    演劇をチェサ(韓国の亡くなった先祖を祭る儀式、全ての子孫が命日に集まり用意した御馳走で冥福を祈る)に準えた作者の鄭義信(チョン・ウィシン)氏。まるで目の前に死者がいるかのようにもてなしていく祭祀。無数の無縁仏、無数の流離う人々に贈る一夜だけのチェサ。観客はチェサに集う親族であり、チェサに祀られる無縁仏でもある。(パンフレットの内田洋一氏の文章は必読)。

    今回は自分の体調面に問題があって、完全に作品を味わえたとは言えず。12月の凱旋公演のチケットを買った。
    鄭義信氏「今回(12月)の中劇場公演をもって『焼肉ドラゴン』はラストステージとなります。」
    観ざるを得ないだろう。

    ※ラストシーンは吉田拓郎の『唇をかみしめて』みたいな気分。

    理屈で愛など手にできるもんならば
    この身を賭けても 全てを捨てても
    幸せになってやる
    人が泣くんよね 人が泣くんよね
    選ぶも選ばれんも 風に任したんよ
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/10/07 (火) 18:30

    180分。休憩15分を含む。

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