燃える花嫁 公演情報 燃える花嫁」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
1-6件 / 6件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    "架空の日本"を舞台に描かれる、外見ではその"しゅつし"がわからない移民の生きる今、背負う過去、そして見えぬ未来...。あまりに自然に溶け込む「ザ行が濁らぬ関西弁」が現実の隣人の存在に、人生に、そしてそれらを透明化してしまうことに輪郭を持たせていく。ラストに立ち上がるタイトルの風景に震えるとともに、「花嫁」という言葉が意味する本当のところを考えさせられたりも。

    「シスターフッド」と一口に呼ぶには憚られる複雑な憧れと思慕と共鳴...誤解を恐れず言うならば、私はそこに同性愛/同性婚を巡る問題をも見た気がしたのだった。男女二元論を前提とした結婚あるいは求婚や、女性同士という理由だけで連帯を余儀なくされる昨今のシスターフッドの汎用化に異を忍ばせる意味も含んでの「花嫁」だとしたならば...。そう考えたとき、現実に隣人を透明化してしまう実感がよりリアリティを持って身に迫ってくる。
    移民問題を見つめると同時に、"移民"というラベルのみに個人を収めてしまう社会や世界の横暴をも見つめた作品だったのではないか。振り返れば振り返る程そんな気持ちになって仕方ない。
    いずれにしても今を生きる私にとって、同じく今を生きる隣人の息づかいを切々と伝える作品、俳優陣の見事な緩急あってこそ辿り着けた実感だった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/06/15 (日) 13:00

    ああ、日本はもうすぐこうなるんだな、
    もう既に小さいのは、あちこちで始まっているんだなと思う。
    安く都合よく外国人労働者を使い、そのために移民を受け容れ、
    増えすぎてコントロールが出来なくなり社会が分断される・・・。
    それを移民一人ひとりのリアルな視点から複合的に見ている。
    翻弄され、追いつめられていく”個”の物語が痛切。

    ネタバレBOX

    架空の日本が舞台。
    人手不足を補うため、海の向うから移民を受け入れている。
    彼らは業務の得意分野ごとに居住地を割り当てられ、安い賃金で下請けをしている。
    当日パンフには、登場人物の日本人の名は漢字で、移民の名はカタカナで書かれている。

    日本人社長とその息子拓也、
    「解体」を請け負う下請け会社の移民の社長、社長の娘アカリと、社長の姉カナエ、
    移民たちのために奔走する日本人弁護士昌美、
    そこへやって来た流れ者のような、戦士のようなトラックドライバーミドリカワマキ・・・。
    移民たちは見た目も言葉も、ほとんど日本人と区別がつかないほど達者だ。
    たった一つ「ザ行」を「サ行」と発音してしまう事を除いて。

    これは”未知の価値観とどう対峙して新しい社会を創るか”という問いを与えられた
    国を試すような”現在進行形の”テーマだ。

    ミドリカワマキの影響を受けて、若いアカリの価値観がひっくり返る様がダイナミック。
    平体まひろさんの、壁に正面からぶち当たりながら無茶苦茶に進むアカリが清々しいほど。

    そのミドリカワマキを演じた森尾舞さんが素晴らしかった。
    ただ者ではない雰囲気が漂っていて、孤高の旅人でありながら人を惹きつける。
    複雑な人間像を全身で表現していてとても魅力的。

    日本人社長の息子として、移民の会社を管理する拓也の立場の辛さが痛々しかった。
    おそらく現場で一番苦しむのは、この拓也のような人間だろう。
    失敗の許されない窮屈な日本人社会と、祖国を離れ安全な国で自由を謳歌したい移民たち。
    国の無策を最前線で浴びるのはこういう人たちで、拓也は結局負け組として堕ちていく。
    それを冷やかに突き放す父親のことばに慄然とした。
    西山聖了さんは、生真面目で要領悪く、自分を責めながら生きる拓也の孤独を
    哀しいほど見せて共感を呼ぶ。

    作品の冒頭、ミドリカワマキがアカリの元に現れるシーン、
    そのシーンがもう一度最後に再現される。
    ああ、祖国へ戻ってテロリストとしての最期を選んだミドリカワマキが
    アカリに会いに来たのだと判る、この構成が秀逸で泣いてしまう。

    移民たちの祖国では、高校生くらいの少女が、親の決めた結婚をさせられる、
    そしてSNSで他国の情報を知ると、自分の未来に絶望し自殺するという。
    彼女たちは、一体何を選択すれば幸せになれるのだろう。
    16歳で花嫁になるか、日本に来て搾取されるか、祖国のテロリストとなるか。
    そのことを考えさせてくれた名取事務所とスタッフの皆さんに感謝します!
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    満席でした
    〇〇戯曲賞最終候補にありがちな簡単を難しく説明してしまう作品
    タイトルの意味が分かりませんでした
    森尾舞さんが凛々しかったです

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    昨年、この作家の『日曜日のクジラ』を観てイマイチだった。今回も前半はハマらずこの作家とは相性悪いなと感じたが最後まで観ると本物。もっと受け狙いの兄ちゃんかと思っていたがガチガチのマジの人。本気で真剣に世界と取っ組み合おうとしている。今、2025年だぜ。ああ本気なんだな、この人。名取事務所がオファーする訳だ。
    実はもの凄く古典的な物語。余りにオールドスクールで驚く程。ポル・ポト、チェ・ゲバラ、毛沢東、金日成、ウラジーミル・レーニンにカール・マルクス···、PUNK ROCKでも構わない。とにかく今の自分の思考回路を支配する鉄の掟のような価値観から自由に導いてくれる風であるならば。

    凄いのは構成。『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』の『DEATH』編を思わせる。これはTVシリーズ24話の総集編なのだが初見の人には全く解らない作り。各登場人物が死ぬ間際に見る走馬灯のようなスタンス。解らなくてもいいから感じてくれ、みたいな作風。勿論今作はきちんと解るようにしっかり作られている。逆にこの構成にした作家の意図こそがミステリー、その謎を観客が頭の中で解いていく作品。

    MVPは鬼頭典子さん。この人のキャパシティは想像を絶する程大きい。有り得ない役を振れば振る程開花する。
    そして森尾舞さん。この役を女性にしたことが大きい。
    更に平体まひろさんは流石に凄い。時系列でルックスを変えてみせる。本当に心が生き生きと生命を謳歌し羽根を天空に開いてみせた時の美しさ。

    テーマは『移民と差別』。もろクルド人の物語として受け止めた。正解のない世界でせめてもの擦り合わせで作る、よりマシな答。ラストのタイトルロールは鮮烈。
    是非観に行って頂きたい。

  • 実演鑑賞

     今の世界の社会状況を的確に反映している作品。

     笑いというか息抜きの場の独特な筆致はいまいちな気はするものの、
    最小限に削ぎ落した情報量での説明設定や時間軸を絶妙に操るあたりは、
    クリストファー・ノーランのそれを彷彿とさせる。また、三年ほど前に
    青年座に書き下ろされた『燐光のイルカたち』より戯曲のクオリティーが
    向上している感あり。

     別の形で外国人との共生社会の在り方や外国人問題の底流に迫り、
    民族としての日本人の未熟さやむしろその上をゆく在留外国人のしたたかさの
    一面を垣間見せてくれた、北川大輔 作『未開の議場』とは、ある意味、
    好対照の作品。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    秀作。
    名取事務所の新たな試み、中規模劇場で普段より規模拡大したキャスティングと期待の劇作家ピンク地底人3号の新作は2時間超えの濃密な時間。人物たちが胸に刻まれる観劇の時間だった。拍手。

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