燃える花嫁 公演情報 名取事務所「燃える花嫁」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/06/15 (日) 13:00

    ああ、日本はもうすぐこうなるんだな、
    もう既に小さいのは、あちこちで始まっているんだなと思う。
    安く都合よく外国人労働者を使い、そのために移民を受け容れ、
    増えすぎてコントロールが出来なくなり社会が分断される・・・。
    それを移民一人ひとりのリアルな視点から複合的に見ている。
    翻弄され、追いつめられていく”個”の物語が痛切。

    ネタバレBOX

    架空の日本が舞台。
    人手不足を補うため、海の向うから移民を受け入れている。
    彼らは業務の得意分野ごとに居住地を割り当てられ、安い賃金で下請けをしている。
    当日パンフには、登場人物の日本人の名は漢字で、移民の名はカタカナで書かれている。

    日本人社長とその息子拓也、
    「解体」を請け負う下請け会社の移民の社長、社長の娘アカリと、社長の姉カナエ、
    移民たちのために奔走する日本人弁護士昌美、
    そこへやって来た流れ者のような、戦士のようなトラックドライバーミドリカワマキ・・・。
    移民たちは見た目も言葉も、ほとんど日本人と区別がつかないほど達者だ。
    たった一つ「ザ行」を「サ行」と発音してしまう事を除いて。

    これは”未知の価値観とどう対峙して新しい社会を創るか”という問いを与えられた
    国を試すような”現在進行形の”テーマだ。

    ミドリカワマキの影響を受けて、若いアカリの価値観がひっくり返る様がダイナミック。
    平体まひろさんの、壁に正面からぶち当たりながら無茶苦茶に進むアカリが清々しいほど。

    そのミドリカワマキを演じた森尾舞さんが素晴らしかった。
    ただ者ではない雰囲気が漂っていて、孤高の旅人でありながら人を惹きつける。
    複雑な人間像を全身で表現していてとても魅力的。

    日本人社長の息子として、移民の会社を管理する拓也の立場の辛さが痛々しかった。
    おそらく現場で一番苦しむのは、この拓也のような人間だろう。
    失敗の許されない窮屈な日本人社会と、祖国を離れ安全な国で自由を謳歌したい移民たち。
    国の無策を最前線で浴びるのはこういう人たちで、拓也は結局負け組として堕ちていく。
    それを冷やかに突き放す父親のことばに慄然とした。
    西山聖了さんは、生真面目で要領悪く、自分を責めながら生きる拓也の孤独を
    哀しいほど見せて共感を呼ぶ。

    作品の冒頭、ミドリカワマキがアカリの元に現れるシーン、
    そのシーンがもう一度最後に再現される。
    ああ、祖国へ戻ってテロリストとしての最期を選んだミドリカワマキが
    アカリに会いに来たのだと判る、この構成が秀逸で泣いてしまう。

    移民たちの祖国では、高校生くらいの少女が、親の決めた結婚をさせられる、
    そしてSNSで他国の情報を知ると、自分の未来に絶望し自殺するという。
    彼女たちは、一体何を選択すれば幸せになれるのだろう。
    16歳で花嫁になるか、日本に来て搾取されるか、祖国のテロリストとなるか。
    そのことを考えさせてくれた名取事務所とスタッフの皆さんに感謝します!

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    2025/06/18 13:55

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