ことほぐ 公演情報 ことほぐ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.1
1-17件 / 17件中
  • 満足度★★★★

    実によかった
    幸せと不幸は表裏一体。行き当たりばったりで、他力本願的な妊婦さん達の話は考えさせられることが多く、実によかったです。次の公演も観たいですね。

  • 満足度★★★★

    考えさせられる
    幸せなはずの妊婦達が、実は様々な問題を抱えていて、未来への不安で一杯だったが、現実を受け止めて成長していく物語。
    子供から大人への成長を、北海道の2部構成の盆踊りを使って巧みに表現したところが素晴らしい。

  • 満足度★★★

    貧乏妊婦さん達の悲喜劇でした
    貧乏な妊婦3人がアパート201号室にて繰り広げる人生劇場。
    強かさや甘え、打算や許容などいろいろ綯交ぜにしながら。
    前向きな姿勢が評価できる舞台でありました。

    <90分>

    ネタバレBOX

    舞台入り口と奥の前後席で中央が舞台上となりますが、
    ローマの円形劇場みたいで面白い。
    (大きなセットとしては電信柱とブランコくらい)
    (ちらほら空席あり、全体で30人ほどの観客でした。)

    バツイチで不倫で妊娠して、認知もされていない201号室家主の愛子。
    いろんな男と遊び歩き、妊娠告げたら全員逃げてしまったエリコ。
    エリコの姉で旦那の暴力から逃げてきたサトミ。
    アパートの隣の部屋の住人で、
    無職で楽しみが自分より貧乏で惨めな隣の3人妊婦の話だけという杉田君。
    妊婦達は米があるが(電気も大丈夫)水道が止められてご飯が食べれず、
    杉田君に水を貰ったりして話は進む。
    場所は北海道で、お盆の盆踊りのある1日の話です。
    お腹の空いたエリコが屋台の焼き鳥を盗んできます、
    盗みはいかんと同室の二人に叱られますが反省が薄いエリコ。
    そこへ愛子の兄英一がハワイの新婚旅行から、
    お土産もって部屋に来ますが。
    ゲイであり祝福されたカップルではありません。
    そして焼き鳥200円分盗まれたとエリコの後をつけてきた、
    エリコのバイト先の上司、山下が来ますが。
    サトミの機転を利かせた攻撃(エロ系でした)で敗退、
    追加の焼き鳥まで注文したりします・・。
    またサトミの暴力=DV夫がアパートを突き止めて乗り込んできます。

    いろいろな葛藤の末、サトミは離婚を決断し実家に戻ることを決意。
    エリコにも身の振り方を考えるように促し、
    皆で盆の踊りに興じて終幕です。

    働く意思が強くとも無職となっている杉田や、
    水道が止められてるので、水汲みに行く事を決意するエリコ。
    食事3回とするところとか、実際に炊飯器でご飯炊いて。
    白米だけを食べる貧乏なシーンはオカシ味と面白味がありました。
    でもなぁ、実際米よりも麦の方がはるかに安いし。
    たかが公園とかでの水汲みをプライドが邪魔するようでは、
    愛子の貧乏も甘いなぁと感じたねぇ。
    試食コーナーで食いつなぎ、
    足りない分はペットフードでも購入するとか。
    底辺さが薄かったのが残念でした。
    (日に2食にしてペットフードで過ごした事あります=実話、
    味が薄いので寿司コーナーのパック醤油などで味足してました。)

    パンフにはありましたが、
    北海道の盆踊りについて東京公演では劇内で言及しても良かったのでは?
    と感じました。

    追伸 やはり手袋は「はく」のですかねぇ
  • 満足度★★★★★

    自分で立つ
    「生きさせろ」と世間に向かって迫るような熱い前向きなメッセージ、その腹のくくり方、その力強さはどっしりとして美しい。今の境遇は誰のせいでもない、自分のせいだと思わされる風潮はずっとずっとあるけれど。そうは言っても生きていかないといけないし、誰に文句言っていいかわからない。こうでなくてはいけない現実なんて決まってないし、でもうまくいかないことばかりだけど。世の中の押し付ける希望に抗いながら、自分の心に立つ生き方を必死に求める登場人物たちに勇気付けられました。

  • 満足度★★★★

    おかずはないが飯はある
    本来めでたいはずの妊娠を誰からも祝福してもらえない3人の女が
    ひとつ屋根の下で貧乏共同生活をしている。
    根拠のない希望を食い散らかして、絶望を蹴散らして
    生まれて来る子どもと2人分あがきまくる女たちに、私はいつしか寄り添っていた。

    ネタバレBOX

    劇場へ入ると、舞台を挟んで奥と手前に向かいあうかたちで客席があった。
    奥の客席へは黒い敷物の上を歩いて舞台を横切って行く。
    舞台中央が3人が共同生活するアパートの部屋。

    北海道の盆踊りには「子供の部」と「大人の部」があり、曲も踊りも違うのだそうだ。
    隣の公園からその「子どもの部」の盆踊りが流れて来る部屋で
    お腹の大きい女3人が元気に喧嘩している。
    水道代として渡した2千なにがしのお金でピザを食べてしまったさとみ(のしろゆう子)を
    その妹えりこ(柴田知佳)と家主である愛子(菜摘あかね)が責めているのだ。

    愛子は不倫相手の子を妊娠している。
    さとみはDV夫から逃げて来て別れたいと思っている。
    えりこは誰の子かわからない子どもを産もうとしている。

    いやー、落ち込んだり文句言ったりしながらもたくましいやね。
    一環して「産むのだ」ということに迷いが無い(妊娠初期には迷ったかもしれないが
    結果として産むと決めた)、後悔する発言が皆無であることはすごいと思う。

    社会のせい、相手のせい、自分のせい・・・たぶん全部あるだろうが
    “複合貧乏”みたいなこの状況をどう見るか、その視点によって道は決まりそうだ。
    役所へねじ込むか、相手に慰謝料を要求するか、プライドを捨てるか。
    3人はそのどれをもしないで「妊婦が幸せじゃないなんておかしい」と憤り、
    「私たちは貧乏じゃない」と呪文のように唱えている。

    多分ひとりではこの状況を受け容れられないだろう。
    だから3人は喧嘩しながら、「出てけ!」とキレながら、それでも一緒に丸くなって眠る。
    親切ごかしに近づいてきた隣人(加藤智之)の、“自分より下を見たかった”という告白に
    ようやく誰かのせいにしている場合じゃないと目が覚めて
    さとみは離婚を決意、一番行きたくなかった場所、実家へ頭を下げて戻ろうと決める。
    えりこはパートナーが必要だと、自分達を下に見て喜んでいた隣人に
    「この子の父親になりませんか?!」と言ってみたりして相変わらず懲りない女だ。

    出演者全員の盆踊りが賑やかに繰り広げられ、ひとり、また一人と舞台を去って
    愛子だけが取り残されたように佇んで終わる。
    盆踊りが「子どもの部」から「大人の部」に移って、
    時間の経過と地域性、妊婦たちの変化が映り込んでとても良かったと思う。
    照明がまたとても繊細で効果的だった。

    妊婦は皆孤独だが、救いが無いわけではない。
    愛子の兄や、えりこのバイト先の上司だって優しい人達で心配してくれている。
    文句言いながらもさとみの実家は助けてくれるだろう・・・。
    社会を代弁するような隣人の無職男だって、水は提供してくれる。
    この男を含めた4人が、おかずも無しで白いご飯を食べる場面が良かった。
    米と水と、互いにあるものを持ち寄った結果の白いご飯だ。
    全員丁寧に「いただきます」と箸を取って無言で食べた。
    本来あるべきおかずはないが、白いご飯はあるじゃないか・・・。
    切ないながら希望が見えて、何だかちょっとほっとしたのだった。

    「ことほぎ」「ことほぐ」と来て、次は何だろう?
    「ことほいだら・・・」どうなったのか、続きを見てみたい気がする。
  • 満足度★★★★★

    幸せとは相対的な物なのかもしれない
    一見、不幸せのように見える。

    ただ、よくよく考えてみると、不幸せとばかりも言えないように思う。

    幸せは相対的なものだから、
    一見、不幸せにも見えるが、それを外から羨ましがっている存在も、
    きちんと存在する。

    また、過去の筆者の作品を観た感想から、
    この作品が単純な
    『幸せ・不幸せ』
    の構図ばかりでないことも分かる。

    登場する女性は、一見、3人。

    ただし、冷静に観察すれば「女性」がもう一人存在する。

    ネタバレBOX

    実際の同性愛者の心理と言うのは、自分には不明だ。

    ほとんど接点が無いからだ。
    (仙台貨物の「芸スクール漢組」にでも入学すれ分かるのかもしれないが死んでも入らん(笑

    ただ、筆者はこの物語に登場する一人の同性愛者に、
    女性の心を持った男性を配置したと自分は受け止めた。

    そういう意味で、登場する女性は4人だ。

    つまり、女性の心を持った人が4人。
    また、男性の体を持った人が4人。
    登場人物は7人(ややこしいな

    一見、男性4人の女性3人で男性が多いように見えるが、
    実は(ほぼ)同数だ。

    女性(の体を持った)3人は、妊娠している。

    一見、不幸なようだが、
    冷静に考えてみれば、
    妊娠できない男性の体を持った女性(の心の持ち主)のほうが不幸だと思う。

    女性3人は、それに気づかないふりをして、
    自分たちの不幸に集中している。

    そのことを認めると、
    「自分たち妊婦こそが最も不幸である」
    という共感の前提が崩れてしまうからだ。

    女性たちというのは、
    自分たちの共感を妨げるものに対しては、残酷である。

    ただ、その同性愛者の男性も、
    女性のその本質に対し、おそらくは女性たち以上に敏感であるため、
    深くは追求しない。

    女性である筆者は、
    まずその特質を描きたかったのではないかと思う。

    即ち、自分たちの大きな幸福に気付かず、
    目の前の不幸に集中する妊婦たちをだ。

    考えてみれば、
    お金持ちの旦那を見つければ幸福か、といえば
    そんなはずはないことに気づく。

    つい先日も、家の近所の金持ちの家で、
    母親が小さな子供を虐待して殺したばかりだ。

    子供を一人きりで苦労して育てなければいけない、
    というのは、
    一見不幸にも見えるが、
    良く考えれば逆に、
    子供に一生懸命自分が頑張っている姿を見せられる、
    ということでもある。

    本来は二人で分かたなければならない子どもの感謝が、
    自分一人に向けられることを考えれば、
    それを絶対的な不幸と捉えるのは早計だと思う。

    経済的に恵まれた中で子供だけに愛情を向けるより、
    ご飯を食べさせるために一生懸命に外で働く姿を見せる方が、
    子供の心には良いのかもしれない(学力はともかく

    幸せ・不幸せというのは、相対的なものだと思う。

    自分が不幸せだと思っても、
    きっと近くでそれを羨ましいと思う人間も存在する。

    別に、母子家庭は意外と幸せである、と呑気に考えている訳ではない。

    自分は昔見た景色が忘れられない。

    学生の頃、どこかの施設に見学に行ったとき、
    隣の建物の窓から無邪気な顔が覗いていたのにふと気づいた。
    でも、窓の中は真っ暗でほかにひと気も無い。
    自分は、その子に似合わない部屋の冷え切った荒涼とした様子にびっくりして、
    表に出たときそこが母子家庭の人の入居している施設だと知った。

    自分の先入観などもあるのかもしれないが、
    その時(あくまで自分が勝手に)感じた寂寥感と、
    舞台の上の風景は、似ていても全く違ったものであるように思う。

    舞台上には、ぶっきらぼうな口調で実は心配している、
    近所のオッサンや兄や、心配してるのかなんだかわからない
    アパートの隣の住人や、
    これはたぶん母親じゃなくて子供だけ心配してると思われる
    暴力夫などがいる。

    お金はないかもしれないが、
    とりあえず今日のご飯は食べられた。
    (食欲がキーワードになるのが筆者の脚本の特徴であると思う

    おなかの中には幸せがあるのだけれど、
    一人では不安で、
    支え合って、
    自分たちは不幸だと大声で言って、
    おなかが空いて、
    ご飯をたべて。

    ・・・あ、これって女性だね。

    女性たる筆者が眺める、
    ずるくてわがままで早とちりで自分勝手で、
    でもおなかがいっぱいになれば結構何とかなりそうな気がする、
    男性よりずっと逞しいっぽい、
    女性たちの姿なんだろうね。

    きっと筆者は次また生まれ変わっても女性が良いっていう気がする(笑


    ・・まぁ、自分は女の人たちは本当すげぇなって思うけど、
    次生まれ変わった時も
    気ままに虫捕まえたりしていたいから絶対、男のままが良いけどね(笑

    (最近舞台見ても頑張って全部感想書く時間が無いから今回は特に頑張って書いてみた(笑
  • 満足度★★★

    変わらないのは盆踊りだけ
    昔と同じことをやっていていいのか、先の見えない現代の不安が反映された作品ではあるが、彼女たちは・・・(以下ネタバレにて)

    ネタバレBOX

    墓穴を掘ってないか?自己チューだし、他人に対する想像力がなさ過ぎる。第一不倫相手、DV男、誰だか不明男の子供なんか生んで幸せか?生んだ後の子供の事もあんまり考えてないみたいだし。あまり共感できない人たちだった。
  • 満足度★★★★

    妊婦の聖域
    チケットプレゼントにて鑑賞。面白い。

    チラシ裏を見るに、過去の公演のほうが舞台が広かったのかな。ジャングルジム無かったし。

    ネタバレBOX

    三人のワケあり妊婦の話。

    愛子(菜摘あかね)…アパートの借主。さとみとえりこと同居する。正社員。不倫の結果妊娠。ひとりで生きるというが、生きていけないし寂しいことを理解している。
    さとみ(のしろゆう子)…若干チンピラ気質の妊婦。無職。DV夫から逃げてきた。
    えりこ(柴田知佳)…手癖の悪い妊婦。アルバイト。誰が父かわからん子を妊娠するbicchiでちんちくりん。男を見る目がないのか、無職の隣人・杉田(加藤智之)に惹かれる。

    三人とも問題を抱えた妊婦で、貧困とともに社会的弱者である。そんな三人が文句いいながらも安心を得ようと、自尊心を支えようと、壁の薄いアパートの一室に身を寄せる。そこに踏み込む男性(社会)の図。立場が悪くなると出ていってと排除しようとする愛子。杉田の告白で、どうしようもない現実を見つめる三人。その時、ご飯が炊き上がり、4人で卓を囲み白米を食し、未来への活力を見出す…そんな話。

    理解されない寂しさと今の自分らの状況は自分らだけのせいではないという逃げを暗に発する妊婦らは、自分のせいだという杉田の発言でちょっと変わったかなと思わせる。ただ、愛子は、ラストの踊り後、一人舞台に残りやはり独りなんだという印象を持たせた。

    弱者やマイノリティを一室に集め、社会の一端を俎上にあげ、社会の歪みとか、貧すれば鈍するって人間の性質を上手く魅せてくれた。
    ちなみに、DV夫はもうひと波乱起こすかなと思ってた。また、妊婦を材料にしたわりに母性を感じさせないのはあえてなのか。「妊婦」というより「女」という意識が強かった。
  • 満足度★★★★

    貧困
    悲惨

    ネタバレBOX

    不倫して妊娠した女性のアパートに姉妹の妊婦が居候。とある盆踊りの夜の三人の妊婦を巡る90分間に亘るお話。妊娠したもののDVの夫から逃げている姉に金が無いのは仕方ないとして、行きずりの男としまくって妊娠した妹もバイト生活で金が無く、アパートの主も休職中で金が無い、隣の部屋の男も金が無い、お先真っ暗な話です。

    広場で焼き鳥を焼いているおじさんを浮気騒動で脅して焼き鳥をせしめるなど理不尽なところもあり、妹が隣の部屋の男性に家族になろうと持ち掛け、それに乗れば不条理的な展開にもなったのでしょうが、現実はそんなに甘いこともなく、時は過ぎていきます。

    どうするんでしょうね。金が無くてもお腹は大きくなる、ああ悲惨。

    前の日に観た『マンハッタンの女たち』とは大違い。週末、三人の女性がお洒落して集まって酒飲んで男の話をして、そんな時代はどこへ行ってしまったのでしょう。こちらは三人の妊婦が集まって食事の心配をしている、ああ貧困。

    ところで、料金不払いの場合に電気とかガスに比べて生命維持に直結する水道は一番最後に止められると聞いたことがあります。もちろん現金で支払っていてたまたまそうなったのかもしれませんが、違和感を覚えました。

    ですから、本来ご飯を炊くのは隣の男性の部屋ではないかと思ったりもしたのですが、それはさて置き、具体的にご飯を炊いたのは生活感が出て良いことでした。しかし、お箸を直接舞台上に置いたのを見せつけられるとさすがに気色悪くなりました。札幌ではカーペットがあったとアフタートークで話がありましたが、それも如何なものかと。ちゃぶ台ならアゴラにもあるでしょうし、せめて風呂敷程度のシートくらい敷きましょうよと思いました。
  • 満足度★★★★

    祝祭の儀式として!
    三人の妊婦が舞台上に登場した瞬間にこの作家の感性に恐れ入った。
    臨月の近い妊婦が三人だけで暮らしている。そのシチュエーションだけでどれだけ劇的なことか。

    そして、劇中叫ばれるが、本来最も幸せであるべき妊婦が不幸せを競うという状況に胸打たれるものがある。彼女たちは何から逃亡し、何と戦っているのだろう。

    ことほぐというタイトルがいい。演劇は祝祭の文化だ。円形の舞台に祭りという要素を取り込み、神に祝福されるべき妊婦の悲喜劇を見事に凝縮して見せてくれた。北の国に演劇の神髄を観た気がする。

  • 満足度★★★★


    盆踊りの音楽はセミの声よりちょっと遅い夏を感じます。まだ6月で長袖なのに、夏が終わりそうな寂しい気分になりました。そんなにあつくはない。

  • 満足度★★★★

    北国のダークホース
     わたしにとってまったく未知の、名前すら聞いたことのない劇団だったintro。今回のCoRich舞台芸術まつり!のダークホース的存在。「ロストジェネレーション」問題が勃発して久しい、もはや貧しさがデフォルトになった現代的な町の片隅を舞台に、異なる価値観をぶつかり合わせながら、女が(人が)この先ゆき不透明な時代をどのように生きていくかを描いた物語。
     キャラクターとそのバックボーンがやや類型的に描かれすぎていると感じるところもあった。しかし貧しさの中にもささやかな幸福を追求しようとする人々への温かな眼差しには、同時代を生きる人間としてシンパシーを感じます。特に、北海道の盆踊りの特徴であるらしい「子供の部/大人の部」という二部構成をモチーフにした物語の構造は秀逸(だからこそディテイルはもっと冒険していい気もする……)。そして簡単に物語を投げてしまわない粘り腰がある。なるほど妊娠というのは、2つの生命体が特別な共存関係を持ちうる特殊な時間であり、にも関わらず、結局は人間はひとりなのだあ、と感じさせるものがあった。そのことはむしろ希望であり、清々しいもののように思えます。イトウワカナ(作・演出)の別の作品もまた観てみたい。『ことほぐ』は東京でも上演されるそうです(2012年9月@こまばアゴラ劇場)。
     ただ、序盤の時間があまりスリリングではなく、しばしば入るツッコミもグルーヴを損なっていたと思う。もっとアブストラクトでシュールな不条理劇に接近してみるとかいう方法もあるのかも。余談ながら、まだ全貌を把握しているわけではないので断言はできないのだが、地方演劇の弱さのひとつは、そうした抽象性への耐性が弱いところにあるのかもしれない。よく「分かりやすくしないとお客さんに通じない」と地方の演劇関係者が口にしているのを耳にするのですが、しかし、それは本当にそうだろうか? 観客のポテンシャルをもっと信じていいのではないか? 意外と大丈夫、という手応えを感じる実例に接することが、増えてきているので。(以下、ネタバレボックスに続く)

    ネタバレBOX

     演劇のガジェットのひとつに「ちゃぶ台」がある。生活感も表現できるし、空間的にも(サザエさん的な)求心力をつくることができる。しかしこの『ことほぐ』ではおそらくわざとちゃぶ台を登場させていないのだと思う。安易に道具に頼らないそのこだわりはなんか、いいことのような気がした。
     3人の良き理解者にも思えた隣家の貧乏青年(今回の座組に単身大阪から参加した俳優・加藤智之が好演していた)が、突如裏切って妊婦たちを罵り始めてどんづまりになったところで、炊飯器の炊けた音がチャララーと鳴るシーンも印象に残った。善や悪、敵や味方といった区分けがすべて無効化されるような静けさがあり、あの時間がずっと続いてもいいなと思った。ラスト、力強く鳴り響く太鼓の生音がGood。
  • 満足度★★★★★

    「ここにいる」ということ
    ブラックボックスの中に楚々と立つ電信柱を見た瞬間、「あぁ、北海道まで来てよかった」と思いました。円形にとられた演技スペースの周囲にはバス停や自転車が置かれ、その上を電線が走っています。

物語の主人公は3人の祝福されない妊婦たち。頼れる男もいなければ、水道代さえない彼女らは、悪態をつきながらも、なんとか身を寄せ合って生きています。

    ネタバレBOX

    一見閉じた設定のようですが、舞台装置と同じく、彼女たちもまた、外部との繫がりを完全に絶つことはできないし、またそうした隣人や兄弟とのかかわり(それはけっこうハチャメチャなものだったりもするのですが)を通じて、自ら「ことほぐ」ことに近づいていくわけです。水道も止まった、ある夏の1日の終わり。三人に小さな転機が訪れようとしたその時、遠くに聞こえていた「北海盆踊り」の節が、子供バージョンから大人バージョンに変わり、やがて太鼓の音が劇場中に鳴り響きます。それはこの作品が、作り手たちの生きる場所、現実のコミュニティへと接続される、感動的な瞬間でした。

    誰に向けて何を届けたいのか——。この作品とカンパニーは、普遍的なテーマを扱いながら、自らの拠って立つ場所をしっかり見据えていると感じました。でも、考えてみれば、個人の創造的営みを、集団で共有し、さらに社会の中におく演劇は、はじめからそうした普遍性と固有性のあいだにあるものなのでしょう。輪になって一緒に踊っていたはずの登場人物たちが次々といなくなり、家主の妊婦一人が踊る、そのシルエットで、芝居は幕を閉じました。

  • 満足度★★★★

    みんな、ことほがれたい
    誰もが不安と闘いながら生きているんです! みんな、祝福されて暮らしたいんです! 登場人物からそんな心の叫びが聞こえてきました。

    ネタバレBOX

    不幸な3人の妊婦は、ジュースを万引きするわ、隣人のお金を巻き上げるわ、焼き鳥をせびるわ、悪事を重ねているけどなんか可愛らしく、逞しく、うっかりすると美しさまで感じてしまう。下品にならないのは、脚本・演出のセンスの良さにあったと思います。
    ラストの盆踊り、狂ったように踊る人々から、生き辛いこの社会を戦って生き抜いて行くのだという強い意志と気迫を感じ、こみ上げてくるものがありました。舞台装置も素敵でした。
  • 満足度★★★★

    “不幸”な妊婦と陽気な仲間たちの夏のファンタジー
     演技スペースをぐるりと囲むように、客席が四方に分散して設置されています。床には円の模様が放射線状に描かれ、灰色に塗られた電信柱、ジャングルジム、バス停の看板などが、中央の円を囲みつつ点在。輪郭のはっきりしない円形劇場ともいえます。昭和歌謡が流れる、メラコンリックでどこか空虚な空間でした。劇場に入るなり期待度アップ。

     舞台は貧困状態にある妊婦3人が同居するアパートの一室、とはいえ壁がなく、玄関の位置も曖昧です。女性3人の閉じられたひ弱なユートピアに、彼女らとゆかりのある男性たちが入り込んできます。会話に若干のまどろっこしさを感じましたが、ある意味のん気な妊婦たちと、彼女らを叱咤激励する男性陣にはそれぞれに憎めない魅力がありました。

     子供ができたことを素直に幸せだと思えない、そして祝福もされない妊婦たちの悲しみ、憤りが、強がり混じりの切実な叫びとして直接セリフで語られる場面もあり、現代日本の若者の疑問や諦念を代弁しているようにも受け取れました。そんな悲壮感が漂う設定に軸を置き続けることなく、余白を多く残しながらコミカルに飛躍させていく演出には、演劇の力を信じて委ねる余裕と意気込みが感じられました。

     北海道の盆踊りは子供の部と大人の部に分かれていて、音楽も振付も違うそうです。このことが当日パンフレットに書かれていたおかげで、作品から伝わる意味がずいぶんと味わい深いものになったと思います。
     作・演出のイトウワカナさんが開演前にCoRich舞台芸術まつり!およびCoRich舞台芸術!の宣伝をしてくださいました。札幌でも公演登録やクチコミが増えて欲しいです。

    ネタバレBOX

     妻子ある男性との不倫の末に妊娠し、相手に内緒で1人で産んで育てようとしている愛子。DV夫から逃げて、同じく妊娠中の妹えりこと一緒に愛子のアパートに転がり込んだ、わがままで厚かましい人妻さとみ。えりこはアルバイターで、男好きかつ奔放ゆえに誰の子を妊娠したのかがわかりません。愛子、さとみ、えりこの手持ちの全財産は1万円に満たず、さとみのせいで真夏なのに水道も止まってしまいました。ワケあり妊婦の3人は親に頼ることもできず、給料日までの数日間をどうやって乗り切るのか…。

     「大人になればいい会社に入って、年を取るごとに給料が上がって幸せになれると信じていたのに、ずっとアルバイトで薄給で、すっかり騙された!」というえりこの叫びはもっともです。また、「子供ができたこと(=妊娠)は幸せなことのはずで、無条件に祝われるべきだ」という妊婦らの主張は、現代社会に対して根源的な問いを投げかけています。経済的なことや道義的なこと、世間体もありますから難しいとはいえ、本来なら命はそれ自体が祝福されるべきものだと私も思います。でも、どうすればいいの…と悶々と考えました。

     3人と同じく貧困状態にある隣人男性の杉田、愛子の兄でゲイの英一、えりこの雇い主の山下が、彼女らに水や焼き鳥などの現物支給をしながらも、1人で子供を産み育てることの厳しさを突きつけます。立場も考え方も違う人々が集まった部屋は混乱状態になり、さらには妻さとみに暴力を振るう河野も入ってきてヒートアップ。妊婦たちは男たちの姿としてあらわれた“現実”と初めて本気で立ち向かっているようでした。

     はちゃめちゃな騒動が一段落したところで、隣人の杉田以外の男たちは去りました。杉田が持ってきた水と、愛子の部屋にあった白米を入れた電子炊飯ジャーでご飯が炊きあがり、4人がともに一膳ずつ食べます。「食べる」ことは生きることの基本ですから、そこに立ち戻る姿は感動的でもありました。
     ご飯の残り香が漂う中、杉田が去ったところで終演かと思いましたが、そうはならず。盆踊りの音楽が鳴り始め、妊婦らは踊り始めました。きっと大人の部の振付ですね。現実を直視して生きていこうと決めた妊婦らの、子供から大人への成長が示されたように思いました。その踊りの輪はどんどん広がり、地味な色だった照明もカラフルに変わって、男たちも一緒になって出演者全員が祝祭ムード全開で、飛んだり跳ねたり、独自の振付で踊り始めます。お腹の子供も一緒に踊って、すべての命が祝福されているような、とても幸せな時間でした。

     やがて登場人物が1人ずつ、ゆっくりと消えて行き、舞台には愛子だけがたたずみます。他の2人の妊婦も男たちも夏の盆踊りも、何もかもが愛子の夢だったのかもしれない…と解釈できるエンディングでした。考えてみたら愛子は「(私個人のことなんだから他人は)関係ない!」「(母1人での子育ても)やってみなきゃわからない!」と威勢よく頑な態度を取っていました。彼女はとても孤独で、追い詰められていたのでしょう。でも愛子は夢の中で、母となる自分とお腹の子供を精いっぱい祝福し、他者とともに生きる自分の人生を獲得したのだと思います。

     中盤で説得力にかける展開などありましたが、盆踊りと愛子1人のエンディングを観て、そんなことは重要ではないと思えました。例えば3人のお腹は見るからに臨月の大きさだったので、えりこが堂々とあおむけに寝るのには無理があるな~と思っていたのですが(妊婦はお腹が重くて横向きにしか寝られなくなるため)、すべてが柔らかくファンタジーとして昇華されたので、劇中にどんな嘘があってもいいんですよね。
     最後にひとこと。妊婦3人全員が杉田のことを、「彼氏です!」と紹介するはめになったのが可笑しかった(笑)。
  • 満足度★★★★★

    楽しかった!!
    演劇は永らく見ていなかったのですが、久々に触手が動いたので行ってみたら、これが笑える、共感できる、味わえる!!まだまだ自分の感性を信じても良いなと確信できる劇団でした。冒頭からいきなりカオスに叩き込まれる。でそっからは静と動、程良い緩急でラストのダンスまで連れて行ってくれます。また最後の最後に踊ってるのが誰かってところが面白い!!ずっと出演しているけど姿は一度も見えないヤツなのです。前作「言祝ぎ」の展開よりもより複雑な展開は何ともプログレッシヴでした。次作はBebopか?と今後も楽しみになる劇団でした。演劇の表現の幅広さを感じれましたよ。改めて面白い劇団がいるものだと思い、嬉しくなりました。

  • 満足度★★★★

    見てきました。
    おもしろかったです。
    明日も観に行きます。

    明日は反対側の席に座って観ます。

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