実演鑑賞
満足度★★★★
実は少し苦手な系統かも…と不安を抱えての観劇だったが、思いっきり惹き込まれた。
人間の身勝手さというかエゴを淡々と描いていてまるで現実を見ているかのようだった。
高校生ひかるがそれらを客観視してたように感じた。
良かった!
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/10/08 (日) 11:00
喋ってる言葉とは裏腹に、川の奥底に澱んでるかのような気持ちとそれぞれの関係のズレ具合が何とも緻密で、、、もうやれん。いや観ていておもろかった。
実演鑑賞
満足度★★★★
なるほど。青年団から生まれた現代口語演劇、という補助線を引いて観ると(実際そのアンテナをビンビンに立てて観てしまってたが)、家族(及び親族)の群像が平田オリザ舞台ほど淡白でなくリアリズムに寄って描かれ、しかし全体的には抑制が効いていて(「現在」の場面で特にそれが効いている)、人物への感情移入は強くは起きない。
もっとも俯瞰を促す過剰な配慮(平田舞台のような?)はなく、従って淡白さの中では必須な(砂漠で水を求むる如く)笑いを欲する事なく、十分に感情の通う湿度の中で呼吸ができた。
回想場面への唐突な移行、にも関わらずガッツリ長いエピソード叙述により、現在の空白(淡白に表出せる荒んだ生活風景の背景)が埋められるあたりに作家の個性を見た気がしており、他の作品も観たく思った次第。
母が体現する地方の家族の息苦しさも、否応無く浸潤する現代の重苦しさの前ではほろ苦さとなり、群像が人生のほろ苦さへと集約される。
実演鑑賞
満足度★★★★
依存し合う家族が一家の大黒柱であった父親の一周忌に顔を合わせる、と聞いて、
正直なところ「なんかいたたまれないようなシーンが出てきて、みんなで感情
ぶつけ合って、それで最後はちょっと前向いて終わるような作品でしょ」と
思ってたんですけど。
3割当たっていて、7割不正解といったところの、最後まで怖い作品でした。
実演鑑賞
満足度★★★★
岸田國士戯曲賞なんて日本アカデミー賞程度の業界内政治の権威付けで、紅白出場を肩書きに地方巡業を回る演歌歌手程度の認識だったが。(偏見)。
傑作。これは役者もやり甲斐があるだろう。この脚本にこの演出、役者冥利に尽きる。替えがきかない配役。(実は初演と全員配役を変えているのだが・・・)。演じ手としてこんな作品と巡り会える幸運。川沿いの砂利の上をジャリジャリ歩きながら、ゴボゴボ水中で溺れる音にまみれながら。
シャッフルされた時系列、広島の田舎町にある古い一軒家。従姉妹の家が火事になり従姉妹とその娘が同居することに。絶対的な君主として家に君臨していた父親。父親は川の浅瀬で溺死体で見付かる。葬儀、その一周忌。パラパラと配られたカードの一枚が唐突にめくられて語られるのは断片。
井内ミワクさんはずっと腰を曲げていて、このキツさは相当なもの。心配になる。
大浦千佳さんは田舎のヤンキーからシンママ、水商売と王道を歩む貫禄。登場シーンの両目から順番に流れる一筋の涙が美しい。こんなスナックに通える男は強い。
佐久間麻由さんはさとう珠緒系の美人で巧い。
産婦人科の医師、江藤みなみさんは白のNew Balanceで足を組み、残酷な診断結果をラフに夫婦に告げる。この演出が心憎い。
富岡晃一郎氏はお宮の松っぽいなと思っていたが、ふとした拍子に國村隼の得体の知れぬ表情に変貌。
日常会話の中に雑然と投げ込まれた様々な物語の欠片。皆それぞれ、解決策のない痛みと苦しみに苛まれている。そもそもハナから解決させる気すらないようだ。「この家のもんは皆キチガイやけんね。」どうしようもない現実、どうしようもない自分から目を背けてどうにか今日一日をやり過ごすだけ。何とか今日一日を乗り切る為だけに。
何でも治すという薬などないけどよ あるとして
飲まないさ 無茶のネタも切れた 逃げようがねえや
The ピーズ『手おくれか』
実演鑑賞
満足度★★★
役者の実力は太鼓判を押す。
これだけの演技力があると違和感なく物語の世界に没入することができて心地よかった。
但し、観終わって心に引っかかるのは、ある種の戸惑いだ。人様の家庭内事情を根掘り葉掘り覗き見ただけの罪悪感。所謂、田舎の強烈な"おやじ"が亡くなった後の家族模様を過去や現在を織り成しながら話は展開するが、"おやじ"への憎しみや愛が語られるのでもなく、同性愛やギャンブル依存症にある種の姿勢を示すでもなく、なんだか皆さんそれぞれ大変ですね、に感想が留まる戸惑い。なんだろ、覗きをしてしまったと警察に出頭しようかな(苦笑)
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2023/09/27 (水) 14:00
2021年に上演されて岸田戯曲賞を取った作品の再演で、初演も観てるが、ちょっと違った感触を持った。面白い、とは言える。96分。
広島らしい家の家族の物語。母・長男・その嫁・長女・次女・従妹・その娘などが展開する普通の生活を描く。それぞれ悪い人ではないが、それぞれの持つ感覚のズレが他の家族を傷つける。セリフにもあるが、他人なら距離を置くことができるが家族はそうはいかない、という現状から、幸せになり切れない家族の話が紡がれる。興味深くは観たが、なぜこんな芝居を、とも思う。
暗転が多いが、闇を効果的に使い、エンディングも巧い。ただし、その大切なエンディングのタイミングでスマホを光らせる客がいて(芝居中しばしば光る)、何考えてるんだと思う。劇団のせいではないが…。
実演鑑賞
満足度★★★★
広島出身女性作家の一昨年度の岸田戯曲賞受賞作品の再演である。昨年「どっか行け、くそたいぎいな我が人生」という母子共依存のドラマをここで見た。この岸田賞作品も父が事故急死してから一年の家族の微妙な変化を描いていて、大きくは生死の意味(ねこも含めて)を軸に広島の田舎の一族の動きを現代風俗の中に描いてユニークな家族ドラマになっている。
子供が出来ない長男夫婦の危機、レズビアンの関係がグズグズ続く長女、都会にいながら地方が捨てられない親子親族関係、家父長が亡くなったことでそれらの関係が微妙に動き出すところなど、新人らしからぬしたたかな旨ささである。
ほとんどノーセットの一幕モノで100分。照明の切り替えだけで、多くの場(シーン)を切り替えていく手法で、テンポは早いからシーンは80くらいはあるかんじだが、混乱はしない。疑問に思ったところも、次に出てきたときに、あぁそうかと納得することも多いが、やはり、人間関係は複雑すぎてこの手法ではわかりにくい。特に最初の三十分くらいまでは俳優になじみがないせいもあって、混乱する。
広島弁はほとんど演劇に登場しない方言でなじみがない。その情緒性を欠いたところがかえってこのドラマの冷え冷えとした家族関係の言葉としては良かったと思う。