柔らかく搖れる 公演情報 ぱぷりか「柔らかく搖れる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    依存し合う家族が一家の大黒柱であった父親の一周忌に顔を合わせる、と聞いて、
    正直なところ「なんかいたたまれないようなシーンが出てきて、みんなで感情
    ぶつけ合って、それで最後はちょっと前向いて終わるような作品でしょ」と
    思ってたんですけど。

    3割当たっていて、7割不正解といったところの、最後まで怖い作品でした。

    ネタバレBOX

    ・精子に異常があって、生活を改めないと何ともならないけど、ブラック仕事で
    何日も帰れないような毎日が続き、最後には子供が欲しいのかも分からなくなって
    妻と離婚して出戻ったアル中の長男
    ・実家を「楽な方を選んだ人たちの吹き溜まり」と称して嫌い、同性パートナーと
    1年以上同棲している売れてる美容師の長女
    ・広島の実家の家事を一手に引き受けているストレスか、パチ狂いがひどく、姉に
    30万円もの借金を抱えている次女
    ・家が火事になって娘と実家に居候することとなったシンママで調子のいい従姉妹、
    地元をさっさと離れたいのか朝から勉強漬けになっている死んだような表情の娘
    ・完全な「田舎の無神経なおばあちゃん」といった風情の亡夫の妻

    こうした人たちが何も変わらない、あんまり変えようという気持ちもなく、問題は
    うっすらと分かってはいるものの「でもどうしようもないよね」といった形で
    やり過ごしていく姿をそのまま描いた話です。

    驚いたのは一周忌そのものよりも、一家の中心だった父親が死んでから一周忌
    までの各人のエピソードを断片的に描いていく方に時間を割いていること。
    全体の8割ぐらいじゃないのかな?

    人の気持ちを逆なでする癖に「大きな声出さないで落ち着いて話してよ!」
    「すぐ怒る!」と言い返してくる妻、周囲にそういう人いるし、なんなら
    言動がトレスしているかのように全く同じなので、作者の観察力にビックリ
    しちゃいますよね(苦笑

    みんな基本的には声を荒げたり、怒ったりすることはなく、笑顔で機嫌よく
    切り抜けていくんだけど、それだけにもうどうしようもない状況に対する
    末期的な諦念、くすぶり切ったような押し殺した闇の感情がじんわりとのぞいて
    くるのが怖い。

    一番うげっとなったのは、娘が家の引き出しからためらいなくお金盗む場面。
    家に特に思い入れとかないから何も葛藤なくお金盗っていけるんだろうなぁ。。

    田舎とか閉塞空間のイヤな感じを描いた作品は多数あるけど、これは
    そういうのでは片付けられない人間が集まって暮らす上で堆積してくる
    「澱み」のようなものなんだろうなと。作中でも「手キッドに距離を取って
    生きていればみんないい人なのにね」みたいなセリフがあって、さっきの
    妻ではないけど、人が生きていく上での感情の解像度が恐ろしく高いなぁと。

    夢がなく父親の仕事を継いで、亡夫にはいいように使われてた農協の
    気前のいい笑顔な兄ちゃんがめちゃくちゃに怖い。

    普段は人を装ってるのに、誰も見てないところではそおっと不気味な姿を
    さらけ出してくる怪物みたいで、娘が部屋で寝てる場面に出くわして
    すうっと近づいてく姿が「え?」と思った。結構な年で結婚せず、微妙に
    娘に執着してるように匂うところとか、「もしかして……少女趣味の人……
    だったりしますか……?」とぞおっとした。娘が起きてるのに気づいて
    スマートに返してるのもうん、なんだかなって。

    妻と農協兄貴が暗い闇の河原を前に話す場面も気味悪いよね。何も知らないし
    何も聞こえなかったという相手の言葉を聞き飛ばして(農協兄貴は溺れ死んだ
    夫が見つかる直前、河原にいた第一人物)、「あの人の最期はどんなんだった?」と
    何気なく聞く妻に、農協兄貴が苦いような顔で「最低な最期でしたよ」と返す姿、

    ラストシーンで暗闇の中みんなが雑魚寝してる中、妻が「遠くん方で聞こえとった
    水を弾く音がフッと消えたよ」とぽつり漏らして誰も返すことなく明かりついて
    終わるのとか、誰が何を知っててでも言わないのを考えると、本当に気持ちよく
    観て帰れないいい戯曲だったな。

    ……やっぱり農協兄貴が夫を溺死させたんだろうか?

    0

    2023/10/04 18:59

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大