満足度★★★★
演じるの、演劇
Genetの「Les Bonnes」とこしばさんと私にはちょっとした縁がある。
...2006年の利賀演出家コンクール。私は自分の翻訳・演出で自団体で出品したのと同時に、ドラマトゥルクとしてもう一団体の作品にも参加していた。どちらも同じ「女中たち」。そこに審査員として参加していたのがこしばさんとの出会いだった。
なのでそのこしばさんが自演出の女中たちをやると知って、期待は高まる。
その期待に応えてくれる刺激的な作品だった。2 versionsあることになっているが、これは2 versions別作品として観るべきではなくてまとめて一つの原作者への応答になっていると思う。なのでまだ未見の方は是非とも両方観てほしい。
時間の制約の中におしこめられて、破壊的な速度になった台詞が、微妙なルール変更を施しただけで、同じ台詞のはずなのに違って聴こえてくる。だから結末が違った絵になることが必然にみえる。
そして演じること=戯れることを主題とした作品において、どこまでが遊びであるかの二通りの線引きを両 versionsで提示して、そのことで、さらにどこまでが遊びであるかの無限の可能性へと観るものの妄想をかき立てる。二つ観たあとに、「いや、私だったらこの戯曲のこの段階までを演技と考えここからを演じ終わったもののリアルと考えるよ。」「いや私は...。」そんな議論が観客の間に誘発されたらおもしろいと思う。
4人の俳優のそれぞれに演技体の異なった居住まいが、演じるということについてさらに考える助けとなる。
アングラだ地方の劇団だと比較的マージナルに追いやるような肩書で紹介されるこの劇団、少なくともこの作品においては、演劇史のメインストリームとして、社会の中で「演じる」とはどういう行為なのかその考えを提示している。
満足度★★★★
B班観劇-虚虚実実、考えさせられた
この作品、過去に2度見逃してる。昔、花組芝居でもやってるはず。で、もうひとつ、明治大学の実験劇場アトリエ公演、唐十郎の後輩たちの劇団だけに観たかった、いや観ておくべきだったといまも思うが、体調が悪く断念。
旬の観たいもの展の一環公演だったんですね。知らなかった。
この劇団に注目したのは以前の公演をtetorapackさんが絶賛してたから。
自分の観た日、A班はまったく違うアングラっぽい演出と聞いて、A班も観たかったなーと思った。
今後、ときどき上京するらしいので、また機会があれば観たいと思っている。
虚虚実実の、このお芝居みたいなことがけっこう私たちの身の回りにも起こっているような気がして怖くなった。
満足度★★★★
全編「外郎売り」的緊張感(笑)
2パターンのうちの「クレージーな方」とのことで、平均1.2倍速、瞬間最大1.8倍速(推定)の台詞回しがロックギターの速弾きのようにスリリングで、換言すれば全編「外郎売り」の緊張感、的な?(笑)
それにしても4月に観たM.M.S.T版(『Les Bonnes』)はサックスで今回はヴァイオリンと生演奏付き(+実験的な演出)が続いたのは偶然?
なお、速回しの台詞もM.M.S.T版に比べると聞き取り易く、今回初めてストーリーを理解する。(爆)
秘密の花園のような舞台空間が印象的。
『旬の観たいもの展2010』参加作品。
ジャン・ジェネの『女中たち』は他者への羨やみが妬み→恨み→殺意へとステップアップしていく姉妹の心理模様と『ごっこ遊び』の多層的な演じ分け、そしてこれらを補佐する視覚的な道具が見物の作品だと個人的にはおもうのですが、3点目の視覚的な道具(舞台美術含む)以外では、戯曲の持ち味を堪能することが少々困難な結果になりました。(※原作に忠実なB班の感想です)
満足度★★★★
ぶっ飛んだ3人芝居
売春婦であった母から生まれ、生後7ヶ月でその母に捨てられたジャン・ジュネ。その後、田舎に住む木こりの夫婦の養子となったジュネは犯罪を繰り返すようになった。養母が死亡した後、新たな夫妻の養子となったが、繰り返して起こした犯罪のため、15歳のときに感化院に送られた。18歳のときに外国人部隊に志願し入隊するが、後に脱走してフランスを離れ、ヨーロッパを放浪した。この際にも、窃盗や乞食、男娼、わいせつ、麻薬密売といった犯罪を繰り返していた。このように数奇な運命を自ら実践してきた彼は遂に1942年に中央刑務所に投獄されるという、小説の主人公みたいな生き方をしてきた。
だから、今回「女中たち」を楽しみにしていた。。