公演情報
「紙屋町さくらホテル【7月17日~18日公演中止、山形公演中止】」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
1945年、新劇の団十郎の異名を持つ丸山定雄と元宝塚の園井恵子を主軸とする移動演劇隊「さくら隊」は、国の方針で広島へ根をおろすこととなる。空襲警報の鳴る中、演劇経験のない市民も巻き込んで「無法松の一生」上演に向けて練習を積む一行だったが、8月6日はやってくる。そして8月15日も……。史実を基にしたレベルの高いフィクション。笑いもあり、平和への切実な願いもある、濃密な演劇だった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
たかお鷹と千葉哲也がよかった。これは、生き残った海軍大将の回想の中の幻、という見方を見て、なるほどと思った。千葉はこの演劇を愛する人々の中では異端児なのだが、この異端児がいてこそ、この世界がリアリティーを持つ。鵜山仁は千葉に「一人で他の全てと対等に張り合うくらいに」と、そに存在の重要性を語ったそうだ。千葉はその期待に良く応えた。
原爆によって全ては消えてしまった。だからこそ宝石のように輝きは失せない、奇跡の瞬間。「どの公演でも必ず一人は、初めて芝居を見て人生観を変える人がいる。その人のために演じる」という井上ひさしの自説もセリフに盛り込まれている。日系二世役の七瀬なつみは雰囲気が初演の森光子を彷彿とさせた。
実演鑑賞
満足度★★★★
前から観たいと思っていたが、今日観る予定だった別の舞台が中止になったことで、急遽知人の代わりに行くことに。「さくら隊」が軸になっているが、先月亡くなった佐野浅夫氏もこの「さくら隊」の一員だったそう(1945年3月に出征のために劇団を離れた)。3時間20分(休憩15分)の長尺だが、観に来てよかった。
実演鑑賞
満足度★★★★
現代史の裏面の事実(ファクト)をちりばめ、巧みな作劇術で一編の現代史エンタティメント劇に仕上げた井上ひさしの代表作だ。この舞台が時代設定した三月後に広島で起きた悲劇を思えば、そくそくと胸に迫る名作である。久しぶりにこまつ座の公演で見た
作劇については既に言い尽くされていると思うので今回の公演について。
初演〈1997年〉は、新国立劇場の中劇場のこけら落とし、芸術監督だった渡辺浩子の演出、森光子をはじめ、大滝秀治(民藝)、小野武彦(文学座・六月劇場)井川比佐志(俳優座)。三田和代(四季)当時、随分妙な座組だなぁと思った記憶があるが、日本演劇界(現代劇)を挙げてこの作品に取り組む、と言う意気込みだったのだ。昭和史の大きなハイライトである敗戦を素材にした二十世紀総決算である。
冒頭、終戦後に、長谷川海軍大将(たかお鷹)と陸軍針生大佐(千葉哲也)が一人の人間の歴史の中で果たせる責任について対立する。初演の時はまだ多くの戦争責任者も、軍隊経験者も存命だった。今は違う。筆者は終戦時小学三年生、とても彼らと同じ経験をしたとはいえないが、その現実は子供ながらに体験していて、作者の非戦論には本能的に傾く。今回の公演は、やはり、と言うか、初演の時の張りつめたような緊張感は失われていた。それが冒頭と幕切れにも表れている。それはその時代と共にしか生きられない演劇の宿命のようなものだが。
次に、この作品の果たした役割。現在の若い劇作家たちは歴史を素材にした作品をよく書く。時代劇、と言ってもいいかもしれない。戦争が遠くなった世代の古川健、野木萌葱、詩森ろば、みな、近過去をうまく書く。その原点はこの作品の成功にあったようにも思う。現実にあった事実の上にフィクションを構築することで「真実」を描けるという確信とでも言ったらいいだろうか。これは、ファクトを素材にした前の世代の木下順二、久保栄、三好十郎などと違うアプローチである。これはフィクションの裏表で、ある意味危険な面もあるのだが「演劇」と言う文化の最前線の大きな戦術変化でもあったと思う。
観客席は八分の入り。驚いたことに民藝の客層よりも年齢層は高い。平均80歳くらいか。これには井上ひさしも少しがっかりするのではないだろうか。野田やケラがすでに試みているように思い切って若い演出家と新しい俳優を起用する時期が来ているようにも思う。半端な座組ではとてもこの難局を乗り切れないだろう。
余談になるが、この芝居でも素材としている、官憲との演劇の関係で言えば、戦後も長く新劇に対する保守派の警戒感は強く、新国立劇場の建設・運営については政府(文部省)と演劇界で長年の対立もあった。国立の劇場のこけら落としには官・民の確執の一つの決算でもあった。これは日本の現代劇の大きな屈折点でもあるので、まだ関係者が存命の内に第三者的な観点から事実関係だけでも明らかにしておいた方がいいと思う。
これも一つの二十世紀裏面史である。((現在の新国立劇場の惨憺たる官製運営を見ているととても自主記録できる状態ではないので))
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/07/07 (木) 13:00
座席1階
先の戦争で、特高に監視されながらも当時の新劇の舞台をやり遂げようと奮闘する役者たちの物語。自由に表現できる喜びを痛感させてくれる。
身分を隠して高位の軍人が劇団に参加しているのがポイント。冒頭に、その軍人たちによる核心となるシーンが展開する。陸軍と海軍の確執は知られているが、お互いを尾行したり、自分たちの主張を通すためなら同じ帝国軍人なのに切り捨てる道も取るという、組織としては崩壊している姿も劇中で描かれる。
印象的なのは、テーマソングとでも言うべき「すみれの花咲く頃」だ。この曲をピアノをバックに合唱するシーンは強く印象に残る。これこそが失われてしまってはならない大切な平和なのだろう。
宝塚をやめて新劇に移った実在の女優が描かれ、演じる松岡依都美が宝塚方式の演技を披露する場面がおもしろい。座組みに参加している俳優たちがしっかり自分の持ち味をそれぞれ発揮していることで、この舞台が輝くのを目の当たりにする。
台詞の中に「人間の中でも宝石のような人達が俳優になるんです」という場面があった。ホントにそうかもね、と思ってカーテンコールがやまない劇場を後にした。