家の内臓【作・演出 前田司郎】 公演情報 家の内臓【作・演出 前田司郎】」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★★★

    「アレだから」的な前田ワールドが、うだうだと炸裂していた
    「家族」「温泉旅行」というキーワードが前回と共通していたが、前田さんの手によるものだから、違うものになるだろうと期待して観に行った。

    やはり違っていた。前回はハードな内容で、シンプルで簡略化された舞台装置がそれを引き立てていた。
    今回は、リアルな温泉宿内で、カバンやふとんやいろいろなものがある。それに包まれた話には、温かさがあった。

    めんどくさいけど、楽しい感じ。
    わかるなあ、その感じ、と思う。

    ネタバレBOX

    深夜で、ちょっとアルコールが入った状態のテンションが見事。
    言葉の絡み方がとてもいい。
    空気感までうまく作り込まれている。

    出演者がとにかくいい。
    「ほら、あれ」とかの言葉も、逆に平田さんの年齢だからよけいに活きてくる。歳取ると言葉でないことって多いし、深夜だし、眠いし。
    五反田団があと10年、20年たったときにも、こういう雰囲気になっていくのだろうなあと。

    とても眠い様子がまたいい。わかるその感じ、の演技が秀逸。
    細かい動きや位置、姿勢までもきちんとコントロールされ、それが自然の形に見えてくるあたりがうますぎる。

    夫婦も親子も会社も、そして劇団もみんな家族。
    夫婦はもともと家族ではないのだが、ある日突然家族になる。
    そして突然また他人に戻る。
    親子は、生まれたときから家族になって、両親が別れても、子どもが嫁いで名字が変わっても家族として続く。
    社員も長く一緒にいると、まるで家族のような関係になることもある。
    同じ職場にいたり、特に零細・中小企業ならば、そういう関係になる可能性は高い。

    別れて家族でなくなった元夫婦や親子が、同じ会社でまた家族になっていく(る)というねじれた関係性が面白い。「家族だ」と宣言しなくても成立する家族。たぶんそれは純日本的な感覚ではないだろうか。
    温泉旅館で、川の字に布団を敷き、うだうだするのがとても似合う日本の家族だ。
    何気ない会話と、1時間ちょっとの時間の中で、「家族」というテーマが見事に結実していたように思えた。

    とてもいい舞台だった。

    しかし、「家の内臓」≒「家の内装」だったとは(みんなが勤めている会社が内装業・笑)。
  • 満足度★★★★

    温泉宿の一夜。なんでもない会話に人の本心や性格が垣間見れる。
    3月の前回公演『罪~ある温泉旅館の一夜~』は
    モダンスイマーズの蓬莱竜太さんの作・演出でしたが、
    今回は五反田団の前田司郎さんという人選が、
    まずはすごい。
    平田さんと井上さんは、若い作家と積極的に
    組もうとしているのでしょう。
    そして、前回と全く同じ「温泉旅館の家族」という
    シチュエーション、同じく平田満・井上加奈子夫妻
    が夫婦役・元夫婦役という連作。

    中小企業の慰安旅行、温泉旅館での一夜。
    来た社員は、元夫婦とその娘+ほか2名。
    深夜の狭い旅館の一室で、
    特に事件が起きる訳でも無く、ただただ
    どうでもいいような、とりとめの無い話が続く。
    しかし、零細企業の親密な人間関係に加えて、
    家族でもあった微妙な思いが、
    会話の合間に言葉の端々に漏れ聞こえる。
    それは、家族ゆえの近すぎる嫌悪であったり、
    表には出ない思いやりや心配であったり。
    そのような細かいところに、人の心の動きや
    やさしさが出てくる。

    平田さんのぐだぐだとした父親の感じや
    仲良くなりたい気持ちやちょっとしたことに
    すごくかわいらしくうれしがったりとか、
    井上さんの元夫をわかりきっていて
    結構きついところとか、
    橋本さんの娘としてちょっとしたところで
    父親に気を使ったりとか、
    小林さん、西園さんのいかにも小さい会社
    (工場?)の社員らしいちょっとけだるい
    だめな雰囲気や閉塞感とか、
    俳優さんたちの距離感・空気感のようなところ
    が見物でした。

  • 満足度★★

    本気でやるユルさ
    前作「罪」では蓬莱竜太を迎えたアル☆カンパニーが、今度は
    五反田団の前田司郎を迎えての新作。

    前回の、恐ろしいほど簡素なステージと比べ、今回は畳張りに
    所狭しと置かれた荷物や布団と雑多でユルい独特の旅館の
    雰囲気がまんまそこに切り張りされてました。

    1時間15分のほとんどが、動きなしのほぼ山なし・オチなし・意味なしの
    ユルくてありそうな雑談で埋め尽くされて、小ネタとしては面白いのも
    あったけど、ちょっと長く感じられたのが正直なところ。

    ネタバレBOX

    「桶狭間、って何よ?」
    「だからー、アレでしょ、桶と狭間のことなんでしょ」
    「何だよ、その桶と狭間ってのは」
    「だから、こうでしょ、(役者、手で二つの桶状の円を描く)こんな
    形してるやつでしょ」

    大体↑みたいな、言葉尻をとらえての突っつき返し、混ぜっ返しの
    オンパレードで、正直このネタで一時間突っ切られるとキツい。

    平田満の、どこの会社にもいそうな、やったら馴れ馴れしげで
    追求好きな上司役はハマってたけど、「ある人たちの旅館の風景」を
    抜け出てなかったような気がします。

    良く知ってると思ってた他人の事を、実は自分は何一つ知らない、
    他の人のことは家族でさえ不明瞭だ、というのが最後の最後で
    出てきたけど、取ってつけたようなもので、基本あのドツキ漫才
    みたいな雑談のノリについていけるかどうかだと思います。
  • 満足度★★

    客が悪い
    前田司郎さんの芝居は初めて観たのですが、やはり青年団の系列らしく、日常の言葉での雑談が中心でした。
    この手の駄弁る劇の魅力は、クスリと笑ってしまう面白さや、細かく繊細な台詞と役者の動作から伝わるイメージだと思うのですが、それが感じられませんでした。
    その原因は芝居のぬるぬるした雰囲気についていけなかったこともありますが、それ以上に周囲の客のせいで劇の雰囲気を拒絶したくなったからだと思います。

    役者が一言喋るだけで大爆笑するような人がいるのはとても不快です。
    それも大笑いを狙っているわけでも、なんでもないところでです。
    どうやらその客は出演していた役者の知り合いのようでした。
    サクラなのか、気を遣っているのか知りませんが、あまりにひどいです。
    芝居の客層に演劇関係者が多いのは分かりますが、内輪で馴れ合う雰囲気を放出して良いわけがありません。

    作品そのものは内輪受けを狙っているわけではないので、製作側に罪はありませんが、劇は作る側と観る側の両方の人間で作られるため、低い評価を付けさせていただきました。

  • 満足度★★★★★

    笑いに品があり、心地よい作品
    前回の「罪」にも温泉宿が出てきたのでは?と思ったが、「罪」を見逃したので、これはぜひ観たかった。
    前田司郎氏がシナリオを書き、久米明と渡辺美佐子が老夫婦を演じたNHKドラマ「お買い物」は、五反田団のイメージとはまた違った感じでとても良かったので、家族の物語に期待して観に行きました。舞台なので、もう少し深刻な内容かと思ったけれど、想像以上にライトな仕上がりで安心しました。前田司郎曰く「舞台は日常の些細な事を忘れさせてくれる装置だったのかも知れません。でも、使い方によっては日常の些細なことを思い出させてくれる装置にもなると思うのです」。
    まさにその通り。驚愕するようなことは何も起こらないけれど、大人がニヤリとできる大変心地よい作品でした。1時間15分と上演時間も程よく、彼の言葉を借りると「本当にどうでも良い話をずっとしている物語」をもう少し観ていたいような気持ちになりました。腹八分目ってところがいいのかもしれません。この節度は貴重です。

    ネタバレBOX

    炬燵が中央にある群馬の温泉宿の一室。内装関係の会社の同僚である男女5人が雑魚寝している。5人部屋だと宿泊料金が割安だったらしく、ほかの同僚も誘ったが来なかったという。同僚と言っても、ヌマタ(平田満)と離婚した妻ヤマザキトミコ(井上加奈子)と娘のエリコ(橋本和加子)、ほかに独身のタシロ(西園泰博)とキザキ(小林美江)が来ている。俗に言うアットホームな雰囲気のこじんまりとした会社らしい。私は温泉のある観光地に住んだ経験があるので、ヌマタの話し振りを聴いていると、温泉旅行に来る中小企業の中間管理職というのは車中でもだいたいこんな感じだなぁと思った。やたら、若い部下との距離を縮めようとして、どうでもよいことを饒舌に語りかけ、若い部下たちは調子を合わせながらも、内心辟易しているのが見てとれて、傍で観察しているとなんともほほえましい。上司というのは、こういうとき、他人にさえ職場の人間関係がわかってしまうほど、いらぬことをしゃべりたてるものらしい。社員旅行独特の解放感がそうさせるのかもしれない。
    また、アットホームな雰囲気の会社での勤務経験もあるが、何でも筒抜けで上司が家族のようにプライバシーに介入してくるのは疎ましいものだ(笑)。
    この芝居でも「忍者の里」の「忍者」の存在をめぐってヌマタとタシロが堂々めぐりの会話を続けるかと思えば、キザキに彼氏がいるのかとしつこく訊ねるヌマタをタシロがセクハラだと諌めたり、ヌマタが比喩に使った「桶狭間」の説明をめぐって、ヌマタがタシロの揚げ足をとったり、他愛ない会話が続いていくが聞いていて面白いので飽きない。劇の冒頭で「顔を洗ってくる」と席をはずしてしまうトミコと風邪気味でずっと寝ているエリコ。ヌマタ、タシロ、キザキが風呂に行っている間にトミコが戻ってきて、起きてきたエリコとの2人芝居になる。
    いまも会社にいるイシワタリという人物(劇には登場しない)とヌマタが昔トミコを取り合ったとか、彼氏と別れたばかりのキザキは実はタシロを好きらしいという話が出る。そして、ヌマタは近く、会社を自主退職することになっているとトミコが話し、エリコは「自分が入社したせい?」と気にする。退社理由は「からくり屋敷のような家を作りたいから」らしい(笑)。この元夫婦はエリコの幼いころも家の内装の仕様をめぐって意見が対立したそうだ(笑)。
    ヌマタは、もうすぐ別れることになる同僚たちとのスキンシップをはかりたくて旅行に誘ったらしい。だが、退職を打ち明けられないのだ。タシロやキザキをなかなか寝かそうとしなかったのも、少しでも長く話をしていたかったらしいことがわかってくる。トミコは母子家庭に育ったタシロがヌマタを慕っているとエリコに言う。ヌマタらが「設備を清掃中で風呂に入れなかった」と戻ってきて、本式に布団を敷く段階になり、ヌマタの布団だけが離れていることに不服を唱え、少しずつ重ねて間を詰め、5組並べて敷くことで決着する。「少しずつ重ねて重ねてね」と嬉しそうにヌマタが言うところで終わる。この台詞がすごく生きている。
    出演者は全員とても良かった。平田、井上のご両人は言うに及ばずだが、西園と平田の会話が特に面白い。小林は「間」がよく、最後にゴロンと転がりながら寝るのが笑えた。橋本は目を覚ました直後の演技の「間」が昨今の小劇場女優にありがちな不自然さを残すが、母娘の会話の場面はとてもよかった。
    「夫婦は他人」という感じで突き放してヌマタを見ているトミコ、「トミコはね、暇さえあれば風呂に入ってるような女なんだよ」と真顔でタシロに冗談を言うヌマタ。夫婦のこういう描写が面白い。「土産に持って帰るからダメ」とタシロが頑なに開封を拒んだ味噌味のせんべいを、トミコが知らずに開けて食べてしまい、部屋に戻ってきたタシロがギョッとして袋を見つめる姿が可笑しい。先日、やはり温泉宿を舞台にしたコメディを観たので、あの空虚なわざとらしい笑いとどうしても比べてしまう。こちらは何と自然で気分がよい笑いだろう。
    この作品の会話を聞いていると、昔の森繁久弥の映画を思い出した。森繁の出演映画は喜劇でなくシリアスなものでも、どこか今回の芝居と共通する可笑しみがあった。本作もコメディではないと思うが、前田司郎氏の笑いのセンスが感じられて嬉しかった。
    この日も開演前から大声で連れではない隣の客に話しかけ、本番中も一人けたたましく笑う女性客がいて、最後には「ブラボー!」とおおはしゃぎ。会場が狭いので悪目立ちする。やれやれ、こういう人こそ、先日のコメディの会場にいてほしかったですよ。うまくいかないものですね(笑)。
  • 満足度★★★★★

    いいよね~
    この気だるさ。だけど、嫌味じゃないんだなぁ。
    見に行って当たりっ!!って思えるのって見に行くものを吟味しても
    10本に1本くらい。
    これは、そのうちの一本かなぁ♪
    あぁ、もうちょっと見てみたいって思わせてくれるのっていいよね♪

    ネタバレBOX

    なんかいるいるこういう人って感じの役柄ばかり。
    それを見事に表現している役者さんたちに脱帽。
    どこまでが台詞なのって思っちゃう。
    あれ全部台詞だとしたら、前田さんすごすぎ。
    あれ全部台詞だとしたら、役者さんすごすぎ。
    平田さん、あのいい加減さ大好きです♪

    とらえている問題は小さなものだけれど、人間だれしもが抱えているんじゃないかな。
    人によっては日常の一片をそのまま切り取ったようなものを見て
    何が面白いの?っていう方もいるかも。
    ただ、それでもこの切り取り方は秀逸だと思うのです。

    こういう切り口好きです。
  • 満足度★★★

    納豆みたいに粘っこい質感の芝居だった
    「家族」のように近い間柄の人間関係の粘っこさが、小さな劇場で目の前で演じる役者さんからぷんぷんと伝わってきました。

    ネタバレBOX

    普通の家族ではなく、温泉旅館で男女がひとつの部屋に泊まってしまうほど関係が密の、小企業に勤める社員同士、という設定はうまいと思いました。一方、個人的には、とりとめもない話をただだらだらしゃべるだけの芝居に、物足りなさが残った面もあります。
  • 満足度★★★★

    必見のめんどうくささ
    もっと淡々とした感じの作品と思いきや、
    つぼにズボズボとはいって
    笑ってしまった・・・。

    詰まった距離感と温度に
    やられました

    ネタバレBOX

    温泉宿の一部屋、
    眠れない男二人の会話が
    そこはかとなくおかしい・・・。

    そこに目覚めた他の女性たちが絡まりながら、
    笑いが少しずつ舞台を支配していきます。

    派手さやびっくりするような仕掛けはないのですが、
    登場人物のめんどうくささが
    そのまま笑いにつながっていく感じ。

    繰り返されたり掛け違ったりが馬鹿におかしくて、
    作り手の腕を感じる。
    単純にネタで見る側をひきつけるというよりは
    空気でタイミングのスイートスポットを作って
    そこに笑いをもってくるような感じ・・・。
    役者どおしの会話がすれ違う間や、
    投げっぱになる話題までが
    いちいちおかしいのです。

    後半、登場人物たちの関係があきらかになり、
    親子の会話が生まれて、
    前半の馬鹿馬鹿しい感じまでが
    すっと小さな内装会社の日々の雰囲気や
    そこに勤める家族の物語にまで収斂していく・・・。

    そのちょっと詰まった感覚に、
    市井を生きる感覚がすっと浮かんで・・・。
    なにか面倒くさいけどおもしろうみえる
    日々の感覚にたっぷりと浸されてしまいました。

    この空気を雑遊の大きさの小屋で感じるのは
    とても贅沢だと思ったり・・・。

    お勧めの一品かと思います。

    ☆☆★


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