満足度★★★★
温泉宿の一夜。なんでもない会話に人の本心や性格が垣間見れる。
3月の前回公演『罪~ある温泉旅館の一夜~』は
モダンスイマーズの蓬莱竜太さんの作・演出でしたが、
今回は五反田団の前田司郎さんという人選が、
まずはすごい。
平田さんと井上さんは、若い作家と積極的に
組もうとしているのでしょう。
そして、前回と全く同じ「温泉旅館の家族」という
シチュエーション、同じく平田満・井上加奈子夫妻
が夫婦役・元夫婦役という連作。
中小企業の慰安旅行、温泉旅館での一夜。
来た社員は、元夫婦とその娘+ほか2名。
深夜の狭い旅館の一室で、
特に事件が起きる訳でも無く、ただただ
どうでもいいような、とりとめの無い話が続く。
しかし、零細企業の親密な人間関係に加えて、
家族でもあった微妙な思いが、
会話の合間に言葉の端々に漏れ聞こえる。
それは、家族ゆえの近すぎる嫌悪であったり、
表には出ない思いやりや心配であったり。
そのような細かいところに、人の心の動きや
やさしさが出てくる。
平田さんのぐだぐだとした父親の感じや
仲良くなりたい気持ちやちょっとしたことに
すごくかわいらしくうれしがったりとか、
井上さんの元夫をわかりきっていて
結構きついところとか、
橋本さんの娘としてちょっとしたところで
父親に気を使ったりとか、
小林さん、西園さんのいかにも小さい会社
(工場?)の社員らしいちょっとけだるい
だめな雰囲気や閉塞感とか、
俳優さんたちの距離感・空気感のようなところ
が見物でした。