若手演出家コンクール2017 最終審査 公演情報 「若手演出家コンクール2017 最終審査」の観てきた!クチコミ一覧

★ 満足度の平均 ★ ★ ★ ★ ★ 4.2
1-5件 / 5件中
  • 劇団 短距離男道ミサイル『走れタカシ~僕が福島まで走った理由(わけ)~』。仙台公演に続き、拝見するのは2度目。日本演出者協会「若手演出家コンクール2017」最終審査会で最優秀賞、観客賞を受賞。3/11(日)14:00開演のステージには、東日本大震災発生時刻に黙祷の時間が用意されていた。

  • 満足度★★★★

     チェーホフのプロポーズを演出。

    ネタバレBOX

    演出家のコンクールであるから正攻法なのだが、このコンクールはオリジナル作品での応募も多いので、できればオリジナルで演って欲しかった。でなければ、協会の方で上演作品を決めて、演出だけを評価対象にするということも考えなければならないかもしれない。何れにせよ、尺も約40分で既に上演を拝見した東京の2劇団と比べて尺が短いのも勿体ない。演技自体は熱演で、地力もある劇団だと思うだけに猶更勿体ないという気がしたのである。
  • 満足度★★★

     今回の審査員の一人によると緻密な作品も作るらしいが自分は、この劇団では全*とか、アナーキーで様々な概念をブッ飛ばす作風の作品しか拝見したことが無かったので、今作もイメージ通りといえばイメージ通りであった。

    ネタバレBOX

    予想通りのシーンも出て来たし。
     面白く感じたのは、作・演の松森モヘー氏が狙いの一つにしているのが、現実に起きているもの・ことをそのまま舞台に上げようとしていることである。それは日常的に見慣れていて、何の変哲も無いと普段我々が思い込んでいるもの・ことが、じっくり観察してみると新たな側面を見せたり独自性を持っていたりすることを発見しようとする試みであるということができよう。
    描かれているのは、在る家族の在り様だが、その内実は、DVあり、不倫あり、幻視あり、自殺あり、失踪あり等々ぐちゃぐちゃである。おまけに末娘が付き合っている彼氏は妻子持ちで不倫なのだが、その彼の子を身籠って出産する話迄出てくる始末。つまり家族とは言っても、現在、日本中にごろごろある崩壊家庭が描かれているのであり、そのような家族が生活するわが日本の現実として、家族を取り囲む状況そのものが現在増々非人間的傾向の進行度合いを強めていること、即ち民衆の命の値が日々どんどん軽くなっているという事実認識にも表れていよう。このように誰が見ても明らかだが、日本人は滅多に口に出さないことを言ってのけている点が面白い。但し、壊すのであれば、最初はもっとかっちりした世界観を持った家族が壊れてゆく方が説得力を持つだろう。どうしようもない家族がその結果としてどうしようもないのでは変わり映えがしない。
    注:*は裸
  • 満足度★★★★★

     実に様々な解釈が可能な作品だが、脚本の緻密な安定感と、言葉の実験、舞台美術と衣装及び作品内容との関連性と統一性もさりげなく自然に而も柔らかく的確に表現している点が凄い。(花5つ☆)

    ネタバレBOX

    通常小劇場の舞台で見る作品とは次元が異なる完成度の高さを見せてくれた作品である。これまで、この劇団の作品は4作拝見して来て、何れも優れた作品であることに感心してきたのだが、今日、この番外作品を拝見するに至って、天才出現という思いを強くしている。
    演出コンクールなので、脚本重視の自分と審査員の見解には相違も生じるかもしれないが、ドットの増減、ミラーボールの使用など視覚的なことにもにもかなり力を注いだのではないだろうか。役者陣では長女イブ役の加藤睦望が、気に入った。他は武田役。
    この2人、互いの相互関係も絶妙である。見えないもの・ことに共鳴できるイブと末娘・ルルの彼、武田の間のコレスポンダンスが理解できるかできないかで評価が分かれそうだが、これが見える者にとっては堪らない作品である。
    ところで虫の複眼を拡大するとドットの集積のように見えるが、舞台美術と衣装が、劇中に登場するテントウムシの文様とも交感・共鳴し合いながら、物語の進行に応じて減少。死んで見えなくなっている猫に、虫が潜む裏の世界では出会っているというような巧みな論理のすり替えが、魔法使いとして登場する武田との三角関係にもつれ込みそうなイブの切ない恋愛感情の危ういバランスの上で咲きかける緊張感と、その極点に於けるパラドクサルな永遠性を表現するに至っているが、念を断ち切るように紡がれるさよならの現実に由って確固たるものになる。
     ここには、チェシャ猫も居れば、三人姉妹も居る。更にチェーホフの「三人姉妹」は、姉妹同士が恋敵になる三角関係は描いていないのだが、今作では、それが提示されていることで、チェーホフに挑んでいる側面も感じさせる。長女が教師で頭痛持ちという設定は、オリガと同じであることは誰の目にも明らかだろう。
  • 満足度★★★★★

     男道ミサイルという宮城の劇団、観劇前未見だった2つ劇団のうち決勝に残るチーム2つの内の1つとして予測していた劇団が矢張り順調に勝ち上がってきた感じが強い。

    ネタバレBOX

    大地震、大津波そして福島第1原発人災三重苦を背負わされた地域から予選を勝ち抜いてきたチームだけに天才脚本・演出家、笠浦静花が主宰する“やみ・あがりシアター”に対峙することのできる劇団の最右翼と踏んでいた劇団だが、見事にその期待に応えた形であり、否それ以上であった為、どちらを優勝チームに選ぶかが大問題になってしまった。
     何しろ開演前から板を挟んだ入り口側・対面に設えられたスクリーンに渋谷から下北を目指して走るタカシのライブ映像が映されており、それを座長役の本田が解説つきでアナウンスしているのだが、このトークが絶妙で芸質の高さを示している。一所懸命に走っているタカシの地方から出てきた故のルート選択の過ちを含めて一瞬の隙もない、フォロワーからの“いいね”“がんばれ”などの投稿が、画面上にリアルな協同感覚を盛り上げる。若者達が、大事なニュースや自分達の将来を決定する政治動向を間違え続けていることの原因の一つが、このような協同感覚に訴える手法のリアリティーに在るであろうことを実感させられたシーンでもある。それほどまでに効果的な演出であった。
     さて、本編に入ると劇小劇場に到着したタカシがルームランナーとでも呼ばれているのだろうか? 室内ランニング用の機械の上に乗り、走り始める。劇団の推移・状況説明や家族との関係、そして下敷きにしている太宰治の「走れメロス」の主題に絡ませた劇団内紛をドラマツルギーの対称軸としながら物語が語られ紡がれてゆく。この縒り合わせ方も巧みである。而も、通常公演と異なり江戸時代の歌舞伎のように飲食OK。音声・写真・動画撮影、ツイッターなどのSNSもOK。劇団サイドとしてもネットで本編同時中継をしているという。
     本編は、原作の本質を過不足なく抉り出してベースとすると同時に、アレンジを加え現在福島を含め被災県民が現実に向き合っている逃げ場のない状況を、原作の呈示している本質的問題の仮借ない追及と重ね併せて描いた後、終盤重く深いこの問題から、観客を日常感覚の世界へ連れ戻す為の創作を極めて手際よく加えている点も素晴らしい。
     タカシを演じた役者さんの体の鍛え方が半端ではない。無論、出演していた他の2人の役者さんの力量も大したものでああり、作・演出の澤野氏の力量も本物である。

このページのQRコードです。

拡大