若手演出家コンクール2017 最終審査 公演情報 一般社団法人 日本演出者協会「若手演出家コンクール2017 最終審査」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     実に様々な解釈が可能な作品だが、脚本の緻密な安定感と、言葉の実験、舞台美術と衣装及び作品内容との関連性と統一性もさりげなく自然に而も柔らかく的確に表現している点が凄い。(花5つ☆)

    ネタバレBOX

    通常小劇場の舞台で見る作品とは次元が異なる完成度の高さを見せてくれた作品である。これまで、この劇団の作品は4作拝見して来て、何れも優れた作品であることに感心してきたのだが、今日、この番外作品を拝見するに至って、天才出現という思いを強くしている。
    演出コンクールなので、脚本重視の自分と審査員の見解には相違も生じるかもしれないが、ドットの増減、ミラーボールの使用など視覚的なことにもにもかなり力を注いだのではないだろうか。役者陣では長女イブ役の加藤睦望が、気に入った。他は武田役。
    この2人、互いの相互関係も絶妙である。見えないもの・ことに共鳴できるイブと末娘・ルルの彼、武田の間のコレスポンダンスが理解できるかできないかで評価が分かれそうだが、これが見える者にとっては堪らない作品である。
    ところで虫の複眼を拡大するとドットの集積のように見えるが、舞台美術と衣装が、劇中に登場するテントウムシの文様とも交感・共鳴し合いながら、物語の進行に応じて減少。死んで見えなくなっている猫に、虫が潜む裏の世界では出会っているというような巧みな論理のすり替えが、魔法使いとして登場する武田との三角関係にもつれ込みそうなイブの切ない恋愛感情の危ういバランスの上で咲きかける緊張感と、その極点に於けるパラドクサルな永遠性を表現するに至っているが、念を断ち切るように紡がれるさよならの現実に由って確固たるものになる。
     ここには、チェシャ猫も居れば、三人姉妹も居る。更にチェーホフの「三人姉妹」は、姉妹同士が恋敵になる三角関係は描いていないのだが、今作では、それが提示されていることで、チェーホフに挑んでいる側面も感じさせる。長女が教師で頭痛持ちという設定は、オリガと同じであることは誰の目にも明らかだろう。

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    2018/03/12 00:24

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