お召し列車 公演情報 お召し列車」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
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  • 満足度★★★★

    「台詞が沁みる」
    多分、色々な「思想」があるので、どれが正しくて、間違ってるとは言い難い。

    予備知識なしに観劇した『お召し列車』。

    まず、「台詞が沁みる」。




    個人的には「女」を演じた渡辺美佐子さんの「幸せを何ではかるの?」

    と言った台詞が妙に沁みた。




    渡辺美佐子さんのお歳をあとで調べて、かなり衝撃を受ける。




    普段、観劇する状況とかなり違ったのも、面白い。




    日本特有の排他する事によっての、調和保持。臭い物に蓋をする・・。




    ただ、当事者(排他される)になった時は・・・




    色んな史実も元になっている。

    ただ、史実、資料だけでは虐げられた人たちの

    本当の涙は見えないのかもしれない。




    物凄く最初の方で、「女」が旧友と再会した場面。

    何故だか、この場面が好き。ぎゅうと時を引き戻した「ふたりの女学生」

    楽しい事ばかりでは無かった・・。という台詞。




    当時の人たちが未来を見る事は、夢の様な事だったのかもしれない。

    人知れず、都合で追いやられる。

    劇中の中で、病気の人に対しての「未来」が悉く、奪われる処置を国が行っていた事。

    一番、簡単で、一番、残酷なんだろう。







    演技は勿論、するのが演劇。でも、今回、「演技」と、

    その年輪のパワーを感じた。




    物語は、「未来」のオリンピックに向けての車両選考会。

    でも、その「未来」は色んなものを踏みつけてきた「未来」なのかな?

    「関係ない」と見ない事も簡単。

    今まで、「知らなかった」事も多かったのだから・・。

    でも、この「芝居」をきっかけに

    少しでも「知ってしまった」事は事実。

    考える事、少し、出来る筈・・。










    何故今回観劇しようと思ったか?

    ダルカラード・ポップの東谷英人さんがこの劇団に出演しているのを

    機会があればと・・と思っていた。

    前情報がほとんどない状態で拝見。

    もっと、重苦しい、堅い芝居のイメージを持っていたが、そうでは無かった。




    劇中の東谷さんは、少し、クールな感じで他の役柄があまり、

    波風立てないようにしているのに、あえて、ある「モノ」に執拗に絡んで、

    色々面白い。

    個人的に、東谷さんの「S」っ気のある声のトーンが好きなのでこういった役柄はハマっていると思う。

    でも、少し、寂しい役柄なのかなと思う。

  • 満足度★★★★

    横長な座高円寺1は鉄道モノが正解?
    そう言えば以前この劇場で観たとくお組も駅ホームの芝居だった。燐光群は昨年の「8分間」が駅ホームだったが、今回は列車の中、及び奥側はホームにもなる。
    今回の燐光群は、いつもながらの「言い合わず」「補強し合う」群衆セリフで多くを説明する場面の割合も高いが、渡辺美佐子の存在も大きく影響してか、程よく重く深みのある芝居になっていた。お召し列車と揶揄された列車に乗り込んだ、究極の差別対象であった「病」の当事者のグループと、20年東京五輪での「おもてなし」案としての「お召し列車」を吟味し決定するべく集った一般人のグループ。過去に繋がる集合と未来を見据える集合が列車の中で行き交うも、二つの問題が並行して重ならない時間は長い。それが一瞬の内に劇的に交わるのは終盤での事だ。両者が手をとり、「あるべき日本」を眼差す厳粛な時間がよぎる。そしてあっと言う間に幕は下りるが、この含意は後から心の中に浸潤し、焼き付いて離れない。 

  • 満足度★★★★

    演劇としての味付けが進化
    燐光群観劇は、久しぶりでした。

    社会派、坂手さんの、洪水のような情報伝達舞台に、ちょっと辟易した時期があったもので…。

    でも、今回は、テーマにも興味があり、渡辺さんの舞台も、拝見したくて、急遽、昨日チケットを予約して、行きました。

    相変わらず、坂手さんの知識を、てんこ盛りにした台詞が語られる芝居ではありましたが、以前と違って、演劇としての娯楽要素も兼ね備えた、構成の妙に感心しました。

    ご主人が亡くなられた当初の舞台では、お疲れが見えて、心配していた渡辺さんも、昔ながらの、ベテラン演技の真骨頂を見せて下さり、安心しました。

    ただ、皇室への皮肉な台詞に、承服し兼ねる部分もあり、個人的には、その部分が減点要素になりました。

    途中、舞台運びが、中だるみしたのも、やや残念な部分です。

    ネタバレBOX

    ハンセン病については、最初に認識したのは、「砂の器」でした。

    その後、子供の通う学校の近くに、全生園があったことから、患者さんが作った作物などをご馳走になる機会があり、知らなかった差別の実態を、講演会などで伺って、胸を痛めていました。

    でも、胎児の標本とか、「お召列車」の隠語のことなどは、この芝居で初めて知った知識でした。

    今の政府の数々の所業や、日本の歴史の闇をうまく織り交ぜて、江戸時代の戯作者のような視点で、社会問題を、演劇として、昇華させて坂手さんの手腕に感服しました。

    あの、幻のエンブレムも、小道具として使用されていて、これも坂手さん流の皮肉かなと、思いました。

    アンドロイド添乗員が秀逸。

    「俺たちは、既に、ロスタイムを生きている」という台詞には、共感すると共に、戦慄が走ります。

    今、政府の肝いりで、福島に建設されている、寄宿制の学校は、この芝居に出て来る、新良田教室と、同じ意味合いにはならないのでしょうか?

    安保法案の陰に隠れて知らない間の決まってしまった癌に関する機密保護法なども、ハンセン病の患者さんと、同じ苦汁を、被災者の人達に与えるのではないかと、心配になります。

    皇室批判には、ちょっと納得できない部分もありましたが、坂手さんには、今後も、何も知らない国民に、少しでも、問題提起になるような芝居を書き続けて頂きたいと、強く思っています。
  • 満足度★★★★

    暗い過去ほど受け継ぐ努力が必要
    お召し列車は天皇、皇后両陛下を運ぶ列車のことだが、ハンセン病の患者輸送でも、この言葉が使われていたという。まず、勉強させられる。
    舞台は今度の東京五輪を引き合いに展開する。外国から来た人のおもてなし列車というお話を設定したのは興味深い。ハンセン病元患者を演じた渡辺美佐子さんは見事だった。

    この戯曲のテーマでもあるが、加害の歴史とか、自国にとって暗い過去は、何よりも努力して、次に伝えていかなければならない。見終わって、そんなことを痛感させられる。
    舞台は軽快に進行するが、重いテーマである。予習なしでタイトルから想像して見に行くと、ズシンと重すぎると感じる人もいるかもしれない。

    ネタバレBOX

    東京五輪だけでなく、TPPとかアンドロイドとかドローンとか、新聞をにぎわすワードがセリフの中に散りばめられている。このあたりが、坂手洋二さんらしい辛口なところ。
  • 満足度★★★★★

    必見、花五つ星
     “お召し列車”と聞けば、誰しも思い浮かべるのが天皇・皇后・皇太后の為に特別に運行される臨時ダイヤだ。並行して他の列車が走ってはならないとか、行き違う列車は速度を25Km以下にしなければならないなどの規則がある、例の列車である。まあ、こんな細かいことまでは知らなくても、何となく特別で内部に立派な装飾が施された特別の列車というイメージを持つ人が多いだろう。
     だが、今作の“お召し列車”はハンセン病(長く使われてきた別名、癩病)患者を国立療養所に集める為に運行した臨時列車の隠語として用いられていたという事実に基づいている。(追記2015.12..2 01:47)

    ネタバレBOX

     大日本帝国が戦争一色に染め上げられてゆく国家総動員体制の中で癩に対する差別は、ますます激しくなっていった。そのさまは、癩を発症したとなれば、家族からも絶縁され、患者を知るものは生涯口を噤み、発症者は療養所に隔離された後は居なかったものとされるほどであった。男女ともに強制的に断種手術が施されたことや、亡くなった場合は解剖に付されることが、施設入所時に確約させられた。その為、妊娠している女性が亡くなった場合、その胎児も解剖に付されたのである。
     ところで物語は、この痛ましい差別を受けた人々と第二回東京オリンピック向け“おもてなし企画会議”の企画コンペモニター達のコンペの模様とが入れ子細工になって展開する。代理店は二社。一社は昔ながらのロイヤルトレインを復活させるという案。もう一社は“和(なごみ)”の愛称を持ちJR東日本の会員制クラブである「大人の休日倶楽部」などで運行しているE655系ハイグレード車両(5~6両編成)を走らせる案。更に第三の案として昭和30年代にハンセン病患者に開校された唯一の高校教育の場、新良田教室に入学する為、新入生が乗せられた「お召し列車」を再現した車両案。世界記憶遺産候補として競合二社の車両の中間に連結されているのだが、これを売りにしようというのである。因みに物語は常時、この車両で展開する。
     By the way,1941年アメリカで発見されたプロミンによって癩は治る病となった。にも拘わらず敵国アメリカからプロミンが輸入されるはずもなく効果の無い薬ばかりを注射され続けた患者たちは、病そのものの齎す苦しみのみならず、徹底的な排除と差別によって痛めつけられていた。そのような状態に一抹の光が見えたのは1955(昭和30)年、岡山県の長島に開かれた新良田教室という高校教育の場(公立高校の分校)であった。普通科4年制で全国唯一のハンセン病患者向け公立高校教育であった。今作に登場するのは、この高校の卒業生や関係者だが、内容は観て頂くとして、今回は、女優の究極の形を観たように思うので、そのことについて。
     その人は居た。板の上に存在していた。そのさまは、観客の想像力を映し出す写し鏡のようであった。過不足なく存在していた。
     この女優さんが渡辺 美佐子さんである。客演だ。無論、劇団員は客演を立てるのが、通常のセオリーだろう。今回もこのセオリーに従って、鴨川 てんしさん、中山 マリさん、猪熊 恒和さんら劇団のベテランが素晴らしい脇を演じている。

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