そぞろの民 公演情報 そぞろの民」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
1-9件 / 9件中
  • 満足度★★★★

    TRASHMASTERS(トラッシュマスターズ)さん、初体験となる『そぞろの民』(2時間半)(後はネタバレboxにて)。

    ネタバレBOX

    父と三兄弟、そして、この芝居に出て来る登場人物達は、それぞれ、戦後から今現在に至るまでの、様々な世代・考えの「日本人」を象徴しています。
    かなり作者の政治的プロパガンダ(主張)の強い内容で、登場人物のセリフに対して、アレルギーを起こした観客も、少なからず、おられたようです。
    また、沖縄基地問題やマスコミと政治の癒着等、民主主義社会における様々な今日的課題が提示されたのですが、2時間半の舞台の中で盛り込むには、ちょい「幕の内弁当」的で、話題が散漫になったかな?とも感じられました。
    しかしながら、こうした、普段、私達の日常生活で語られることのない話題について、やや押しつけがましいものの(苦笑)「重厚な家庭のドラマ」として成立させた脚本家の力量、高く評価されるべきだと考えます。
    恋愛とか夢とか心の機微を扱った芝居も、もちろん大切だと思いますが、本作品のような問題提起型の舞台、もっと多くの人達、特に、実社会を動かしている中高年層に、是非、観てもらいたいなあ、と願わずにいられませんでした。
  • 満足度★★★★★

    ずしっと
    さすがやってくれる。時代を客観的にとらえていて、批判するわけではなく中立の立ち位置で描かれている。今の時代は悪い方向に向かっているのではないかと漠然とした不安な気持ちにさせられた。

    蛇足だが、少し狭い劇場かと案じたが、トラムや座・高円寺より空気が濃縮されているようで劇場選びはよかったと思う。

  • 満足度★★★★★

    中身の濃い2時間半の力作
    やっと実現したTRASHMASTERSの初観劇は、強いメッセージを持った中身の濃い2時間半の力作だった。
    細部までリアルに作り込まれた舞台セットと暗示的な導入部、会話は次第に白熱していき、ついにはさながら言葉の格闘技へ、そして衝撃の結末、と最後まで引き付けられっぱなしだった。役者の皆さんの力量も素晴らしく、長丁場の公演の終盤とは思えないエネルギーも見せていただいたことに心から拍手を送りたい。
    また、安保関連法案が成立するこの時期にジャストヒットするように計画し準備を進めてきたところにも作者と劇団の強い情熱を感じた。

    ネタバレBOX

    ただ1点、父親の自殺の動機や次男に対する心情は理解し難いところがあり、その点だけが引っかかった。
  • 満足度★★★★★

    小宇宙と大宇宙
    家族の話をしてたかと思うといつの間にか社会の話になり、そのまた逆の時もあり、こんなにハードな通夜と次の日の朝、私には耐えられないだろうなあ。それにしても、ストーリーがあまりにもタイムリー過ぎて、リアリティー半端ない。

  • 満足度★★★★★

    初見。素晴らしい濃密な2時間半
    初見。素晴らしい濃密な2時間半だった。ひたすら食い入るように観劇した。何より脚本が凄まじく良い。しかも役者も隙のない演技派が揃っている。

    何故私はこのような作家、このような劇団を今まで未見だったのだろう? 本日の観劇の興奮とともに、今まで見逃してきたことが悔やまれてならない。

    安保法案はもちろん、昨今の日本の状況に少しでも問題意識を持っている人に強くおすすめしたい、必見の作品。秀逸な作品なので恐らく再演されるのではないだろうか、しかし、それで見るのでは遅い。これは、安保法案が可決されてしまった「今」の思考で見て感じることに意義のある作品。

    「現代」劇は数多くあるが、これは中でも現代の「今」に焦点を絞っている。

    物語は、安保法案が可決された当日、ある年老いた父親が自殺することから始まる。「父親は何故自ら死を選んだのか?」遺された息子達、家族が対話を繰り広げるという家族劇だ。

    舞台セットは、超スーパーリアリズム。生活感のある台所と和室の居間がドキュメンタリーかと思うくらいに完全に再現されている。場面は、日本家屋内での通夜の夜と翌朝。繰り広げられるのは対話のみ。全くもって地味な地味すぎる芝居である。では何がそこまで素晴らしい作品なのか? それは終始繰り広げられる「対話」であり「議論」である。あの国会では全く成立しなかった「議論」がここにはある。

    これは家族劇の体裁をとっているが、作者が描きたいのは決して家族ではない。この一家族は、現在の日本社会の縮図として描かれている。主役はいない。作者は誰にも肩入れしていない。いや、或いは、登場人物全ての言葉に肩入れしているのか。

    ネタバレBOX

    立場・発言・思想の異なる登場人物一人一人。観劇する側の立場・発言・思想によって、どの登場人物に親近感を持つか思い入れは異なることだろう。一種のリトマス試験紙のような。

    あなたは、このうちの誰の苛立ちにシンパシーを感じるか? どこの言葉に突き動かされるのか? あなたはこれから何を考えるか? 作者からの問いかけの連続。

    「利口な者は、沈黙する」「自主規制し我慢することが美徳」「協調性は大事だ」・・・そんなことを思っているのか、もの言わぬ平和主義者、事なかれ主義者。

    サイレントマジョリティの心理を鋭くえぐるカタストロフィがこの容赦ないディベート劇の終盤には待ち受けている。

    涙がこぼれた。このような社会を作ってきた社会の一員なのだ私は。固唾をのんで見守る客席で静かに泣いた。
  • 満足度★★★

    容赦なく切りつける鋭さ
    安保関連法案が参院で強行採決された後にこれを見たので、尋常でないライブ感があった。平和と外交問題を研究してきた父、そして三人の兄弟。日本人の一人一人に今の世の中を作ってきた責任がある。黙っているだけでは、協調性があるだけでは、責任を逃れることはできないのだ、と。

    父親と三人の息子たちの言葉が、観る者にも、そしておそらく演じる者にも容赦なく切りつけるような鋭さを持って降り注ぐ。これがこの舞台のストレートな良さなのだが、毎日を何となく安住する方に、楽に生きようとしていることを自覚している私(たち)も血を流さざるを得ない。

    突っ込みどころ満載の舞台ではあるが、さすがに中津留章仁さんの書き下ろしである。客席にも覚悟を突きつけているような気がした。

    ネタバレBOX

    突っ込みどころ満載、と言ったのは、まあ、自殺をした父親のお通夜の席で「誰が父親の死に責任があるのか」と怒鳴り合う兄弟がいるのか、という点など。まあ、普通ではなかなかあり得ないシチュエーションなのです。だが、これも家族の一つの姿であり、特にこうした戦争と平和に関する大いなる議論を行うことが、この分野で力を尽くしてきた学者である父への供養だ、ということなのでしょうが。

    (以下は余談)
    記者クラブ所属の記者が特定の政治家となれ合って、その政治家の不祥事を握りつぶす方向に動く。かつてなら、そういうこともあったかもしれないが、ジャーナリズムうんぬん以前の話。政府べったりの新聞だって、今どきそんな記者はいないと思います。
    安倍首相とお友だちの経済人が会長になったNHKを皮肉ったところもありますが、そこで出てくる「現場の記者はきちんとした仕事をしようとしている」という趣旨の話は正しいと思う。
  • 満足度★★★★★

    とにかくも観るべし!
    遂に来るとこまで来ちゃったな~…ってのが印象です。

    ”今”を表現する能力にかけてはピカイチだし、その真摯な意見にはいつも問題提起を含み、観る者に突き付けられるものも鋭く、そして大きい。

    しかし、今回は、一方的に作者の想いが訴えられる。しかも妥協や意識的に用意される曖昧さは拒絶されている。

    温かみを排したこの語り口が今のこの国を想う時の作者の怒りなのだろう。

    でも、ちょっと待って欲しい。
    今回の作品には観る者への”愛”というか”語り掛け”が敢えて取り除かれている。
    観た者は徹頭徹尾否定の対象にならざるを得ない。
    勿論、その論ずるところは正論なのかもしれない。
    だが、同時に、作者に問いたい。
    貴方はどうしようと思っているのか?と。

    今後も妥協はして欲しくないし、この劇団の作品は避けられない魅力を持っている。
    だけれど、ここまで来てしまった語り口は、同時に、ある種アジテートともいうべき帰着点を提示する必要が生じるのではないかと思う。

    その辺の、呑気な演劇評論家が褒めそやすのとは全く違う視点を観客に問うている責任もまたそこには存在せざるを得ないのだと思う。

    ネタバレBOX

    全く優しくない結末を用意したものだ。
    個人的には賛同する。
    でも、だからどうしようというのかという点で頭を抱える。

    今までのトラッシュならば、今回のラストシーンの前で終わっていた筈。
    一歩踏み出した今回は、賛否が分かれると思う。

    先ずは、否定されることを肝に銘じて観に行く覚悟が必要だ。
  • 満足度★★★★

    人の数だけ、意見がある。
    日本が抱える問題を、家族という単位の中で、見事に見せてくれたと思います。
    のめりこむように舞台を観ました。

    ネタバレBOX

    ラストが衝撃的でした。
    私は亡くなった父親は、次男の中に自分の一面を見たのではないかと思いました。私もそうですが、子どもの嫌だなと思う部分が一番自分と似ているところで、観察していると鏡のように自分が映るんです。
    いままで気がつかなかった自分を、彼の中に見た・・・・そう思いたいです。
  • 満足度★★★★★

    時流への抵抗
    現代社会にある政治的諸問題を舞台にぶちまけて、ごった煮にしたような作品。それで幕の内弁当で終わらない腕力が凄い。

    手放しで評価できない部分もあるけれど(詳しくはネタバレに)、
    表現者として「問わなければいけないこと」を問うている姿勢に感服。

    ネタバレBOX

    そもそも観客を想定する表現において「作品は作者から自立できるのか」という前提問題がある。つまり、作品は作者が観客に発する問いかけなのか、それとも作者からは自立した世界の提示なのかという問題。別の言い方をすれば、作品は作者に支配されるものかどうか。

    私個人は、作品は作者から切り離された自立した世界像の提示でありながら、その全体が同時に作者の問いになっている状態が望ましいと思っている。またその問いは決してメッセージであってはいけない。それではツマラナイとも思っている。

    この『そぞろの民』は、その辺りがどっちつかずだという印象。
    だが全否定できない部分もある。具体的に見ていく。

    まず気になったのは、現代の政治の問題点を登場人物に解説的に語らせている点。説明的で劇作術としてはうまいとは言えないけれど、複雑な政治問題を前提状況さえ知らない観客に提示するにはこういう方法をとるしかなかったのかもしれない。それに、良かれ悪しかれ、学者とその息子や関係者たちというインテリたちが中心の物語のため、固い話もギリギリで不自然とまでは言えない形にはなっている。ただ学者の父の教え子が今日のジャーナリズムの状況に無知すぎるのは、劇を語りやすくするためにそいう設定にしたのではないかと思えてならなかった。

    そのようにどうしても作者がこの作品を支配しているという印象はぬぐえない。すると、逆に、作者の認識または描写が甘い点が、妙に目立ってしまう。作者があまり意識されない作品ならば「そういう認識の登場人物なんだ」で済ませられるところが、登場人物の言葉は作者の言葉だと思えてしまうために、「その認識または描写は甘いでしょ」と作者に対して反発をもってしまう。

    具体的に私が気になったのは、韓国や中国の立場の描写。「日本は韓国や中国に賠償金も払い、謝罪も続けているのに、許してもらえない。その理由は教育の問題もあるが、被害を受けた傷がいつまでも癒えないからではないか。」というようなやり取りが長兄と三男の恋人との間でなされるが、それだけで終わってしまう。そもそも日本は両国に「賠償金」という形では賠償をしていない。経済援助や技術援助の形をとった賠償。(勿論、そこには韓国側も中国側も経済的メリットを優先した背景があり、日本側も謝罪という形をとらずに問題を解消したかったことや日本企業のメリットも考慮した結果、両者の思惑が釣りあっての合意ということだが。)謝罪についても表面的なものが多く、村山談話など心からの謝罪もあったものの、少なくとも現政権などは謝罪の気持ちはない。そのような背景を「賠償金も払って、謝っているのに、、、」でまとめられてしまうと、どうも居心地が悪い。これが自立した作品世界で展開しているのならば、日本人一般はそう思っている人が事実多いのだから、そういう認識の登場人物なのねで済まされるのだが。

    もう一点はラストのオチ。これは否定的に私が語ってきた部分が突き抜けて良い効果になっていた、と私には思えた。

    自分の意見を他人にぶつけながら、ある部分では暴力的であり、もう一方ではうまく世渡りをしている長兄(武器を売る企業に勤める)。自分の意見を曲げずに会社を辞めた(自分が開発したレーザーが武器に転用されることに反対して)三男。次男は、新聞社に勤めながらも協調性を一番の是として生きている。
    三人の父は、沖縄出身の学者。老年で施設に入っていたが、そこを抜け出して家に帰り自殺した。その自殺の原因を探るため、三兄弟はそれぞれへのそれまでの不満も含めて気持ちをぶつけ合う。最終的には、父がノートに書いた紙きれが出てきて(施設の人がこんなことを書くべきではないと、父から破り取ったもの)、最大の理由かと思われるものが示される。実際にそれが父の自殺の原因かは断定できないが、それを読んだ次男は絶望する。もっとも父に尽してきたと自身でも思い、周りからもそう思われていた次男が頻繁に見舞いにくることが、何より父には負担だったというのだ。次男の良さだと本人も周りも思っていた協調性をこそ、父は快く思っていなかった。ここには父の学者としての思想が重ねられている。協調性をこそ是とし、常に日和見的であろうとする日本人の在り方への批判が。

    同時にこれは作者の日本への批評でもある。更に、父の本音を知り、今まで信じていた価値観が崩壊した次男の姿を、戦争を信じて突き進みながらすべての価値観がひっくり返ってしまった敗戦時の日本国民の状況とも重ねている。

    ここまでならば、作品を使って作者が暗にメッセージを発しているということで終わる。

    作品では、更に、この次男は父と同じ場所でその夜自殺する。もはや作品を使って暗にメッセージを発しているというレベルではない。もっと露骨な作者の叫び。このまま行ったらみずから自分を殺すことになるぞというような。

    不思議なのは、メッセージを超えて作者の悲痛な叫びのようになったラストシーンこそが、もっともメッセージ的ではない演劇性をも有していたということ。この点はうまく説明できない。役者の力が大きいのだと思う。

    オールラストの次男の妻と長男の眼がとても印象に残っている。

    役者さんは皆よかったが、特に長男役の髙橋洋介さんの威厳たっぷりの演技がよかった。

    蛇足1:物語内で自殺して死んだはずの次男:星野卓誠さんが、カーテンコールで出てきて挨拶している姿はとても不思議な感じがした。

    蛇足2:沖縄という問題が重ねられているのも良かったが、その中で、学者の父の教え子が沖縄問題を語った後に、叔父が「沖縄のことを本土の人間に語ってほしくなかった」ということを問う部分がとても印象に残っている。それは、一方で琉球人が虐げられ続けてきた時間の重みを感じられる反面、そこに生じてしまう排他性も同時に感じられたからだ。この言葉の意味の両義性がとても凄いと思った。

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