満足度★★★★★
ずしっと
さすがやってくれる。時代を客観的にとらえていて、批判するわけではなく中立の立ち位置で描かれている。今の時代は悪い方向に向かっているのではないかと漠然とした不安な気持ちにさせられた。
蛇足だが、少し狭い劇場かと案じたが、トラムや座・高円寺より空気が濃縮されているようで劇場選びはよかったと思う。
満足度★★★★★
中身の濃い2時間半の力作
やっと実現したTRASHMASTERSの初観劇は、強いメッセージを持った中身の濃い2時間半の力作だった。
細部までリアルに作り込まれた舞台セットと暗示的な導入部、会話は次第に白熱していき、ついにはさながら言葉の格闘技へ、そして衝撃の結末、と最後まで引き付けられっぱなしだった。役者の皆さんの力量も素晴らしく、長丁場の公演の終盤とは思えないエネルギーも見せていただいたことに心から拍手を送りたい。
また、安保関連法案が成立するこの時期にジャストヒットするように計画し準備を進めてきたところにも作者と劇団の強い情熱を感じた。
満足度★★★★★
小宇宙と大宇宙
家族の話をしてたかと思うといつの間にか社会の話になり、そのまた逆の時もあり、こんなにハードな通夜と次の日の朝、私には耐えられないだろうなあ。それにしても、ストーリーがあまりにもタイムリー過ぎて、リアリティー半端ない。
満足度★★★★★
初見。素晴らしい濃密な2時間半
初見。素晴らしい濃密な2時間半だった。ひたすら食い入るように観劇した。何より脚本が凄まじく良い。しかも役者も隙のない演技派が揃っている。
何故私はこのような作家、このような劇団を今まで未見だったのだろう? 本日の観劇の興奮とともに、今まで見逃してきたことが悔やまれてならない。
安保法案はもちろん、昨今の日本の状況に少しでも問題意識を持っている人に強くおすすめしたい、必見の作品。秀逸な作品なので恐らく再演されるのではないだろうか、しかし、それで見るのでは遅い。これは、安保法案が可決されてしまった「今」の思考で見て感じることに意義のある作品。
「現代」劇は数多くあるが、これは中でも現代の「今」に焦点を絞っている。
物語は、安保法案が可決された当日、ある年老いた父親が自殺することから始まる。「父親は何故自ら死を選んだのか?」遺された息子達、家族が対話を繰り広げるという家族劇だ。
舞台セットは、超スーパーリアリズム。生活感のある台所と和室の居間がドキュメンタリーかと思うくらいに完全に再現されている。場面は、日本家屋内での通夜の夜と翌朝。繰り広げられるのは対話のみ。全くもって地味な地味すぎる芝居である。では何がそこまで素晴らしい作品なのか? それは終始繰り広げられる「対話」であり「議論」である。あの国会では全く成立しなかった「議論」がここにはある。
これは家族劇の体裁をとっているが、作者が描きたいのは決して家族ではない。この一家族は、現在の日本社会の縮図として描かれている。主役はいない。作者は誰にも肩入れしていない。いや、或いは、登場人物全ての言葉に肩入れしているのか。
満足度★★★
容赦なく切りつける鋭さ
安保関連法案が参院で強行採決された後にこれを見たので、尋常でないライブ感があった。平和と外交問題を研究してきた父、そして三人の兄弟。日本人の一人一人に今の世の中を作ってきた責任がある。黙っているだけでは、協調性があるだけでは、責任を逃れることはできないのだ、と。
父親と三人の息子たちの言葉が、観る者にも、そしておそらく演じる者にも容赦なく切りつけるような鋭さを持って降り注ぐ。これがこの舞台のストレートな良さなのだが、毎日を何となく安住する方に、楽に生きようとしていることを自覚している私(たち)も血を流さざるを得ない。
突っ込みどころ満載の舞台ではあるが、さすがに中津留章仁さんの書き下ろしである。客席にも覚悟を突きつけているような気がした。
満足度★★★★★
とにかくも観るべし!
遂に来るとこまで来ちゃったな~…ってのが印象です。
”今”を表現する能力にかけてはピカイチだし、その真摯な意見にはいつも問題提起を含み、観る者に突き付けられるものも鋭く、そして大きい。
しかし、今回は、一方的に作者の想いが訴えられる。しかも妥協や意識的に用意される曖昧さは拒絶されている。
温かみを排したこの語り口が今のこの国を想う時の作者の怒りなのだろう。
でも、ちょっと待って欲しい。
今回の作品には観る者への”愛”というか”語り掛け”が敢えて取り除かれている。
観た者は徹頭徹尾否定の対象にならざるを得ない。
勿論、その論ずるところは正論なのかもしれない。
だが、同時に、作者に問いたい。
貴方はどうしようと思っているのか?と。
今後も妥協はして欲しくないし、この劇団の作品は避けられない魅力を持っている。
だけれど、ここまで来てしまった語り口は、同時に、ある種アジテートともいうべき帰着点を提示する必要が生じるのではないかと思う。
その辺の、呑気な演劇評論家が褒めそやすのとは全く違う視点を観客に問うている責任もまたそこには存在せざるを得ないのだと思う。
満足度★★★★★
時流への抵抗
現代社会にある政治的諸問題を舞台にぶちまけて、ごった煮にしたような作品。それで幕の内弁当で終わらない腕力が凄い。
手放しで評価できない部分もあるけれど(詳しくはネタバレに)、
表現者として「問わなければいけないこと」を問うている姿勢に感服。