山の声-ある登山者の追想 公演情報 山の声-ある登山者の追想」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.4
1-9件 / 9件中
  • 満足度★★★★

    迫真の演技
    戦前の装備も乏しい時代というのも、厳しい自然と対峙する姿を一層険しいものに際立たせていて、それでも山に愛着を持って挑戦し続けるという姿に心を打たれた。冬山をしかも酷寒の槍ヶ岳を実際に体験しているような、そんな迫真の演技が素晴らしかった。

  • 満足度★★★★★

    森田祐吏、渾身の演技。
    森田さん、何度も見せて頂いているのですが、自分的にはベストのパフォーマンスかと。どんなラストが待っているのかと、一緒に登っている感じでした。そして...全く想定していなかったエンディングがまた素晴らしい。娯楽が少なかった時代だからこそ、あんな『登山観』みたいなものがあったんでしょうか?山への憧れ、山への畏敬。そして、まだ見ぬエベレスト...。しかし、同時代感がないにも関わらず、迫ってくる共感・感動。何なのでしょう?今年のアワードにすら考えています。残り少ないステージ、ぜひお見逃しないように。とにかく、名作!これは間違いない!

  • 満足度★★★★★

    稜線が見えた!
    同じ単独行を常とする二人ではあってもその対照がくっきりと際立つ個性と演出。目標を定める才能や環境に恵まれず目標を“こさえた”者に共通する居心地の悪さを抱え込んだ二人の“引け目”を感じたのは自分がそのような者であるからなのか。嬉しさと不安が謙虚と臆病を刹那に押し込めあるべきおのれを置いてきぼりにしてしまう、魔の刻がやっぱり訪れてしまったその感じが実に示唆に富む。山並みもくっきりと、平地にして冬山の美しさと厳しさを存分に味わえるとても良い時間だった。

  • 満足度★★★★

    濃密な…
    極限状態における濃密な会話劇。登場人物が、二人であるからごまかしが出来ない緊張・緊迫感が観客(自分)の感性を刺激する。
    さて、主役になるのは、大正から昭和初期に活躍した登山家…加藤文太郎の登攀記録である。

    ネタバレBOX

    山行歴ン十年になる。まず学生時代の友人との2人山行、その友人の大病以降は単独行、そして現在は地元の山岳会に所属する。自分には、山の魅力が十分伝わり、臨場感あふれる好公演であった。

    街中で感じられない開放感、自然との一体感は素晴らしい。四季折々、そして登山ルートを変えれば、同じ山でも全然違う顔をみせる。
    しかし、その背中合わせに自然の厳しさがあることを認識しておかなければならない。本公演でも、単独行では考えられない慢心さを訴える。相方がいれば油断と安易な依頼心が生じ、それが命取りになることもある。

    それでも現在、中高年を中心に登山人口が増えているという。街中にいれば、この芝居のような極寒は避けられるだろう。それでも日常から脱して山に向かう...そこには理屈では説明できない魅力があるからだ。

    さて命をかけても成し遂げたい、自分の足で歩かなければ到達できない山頂を目指して...。人間の本能か、何かを成し遂げたいという思いの一形態がそこにあるのかもしれない。

    この山行公演(80分)を一緒させていただき、色々な山の姿・形が見えるようで楽しかった。また人間が持っている心のあり様が、山の(気象)変化と同じように、いつ・どのように変わるのか考えさせられた。

    二人の役者は、見事に稜線を描き、極寒も観せ感じさせてくれた。その額には大粒の汗が...本当に熱演でした。

    次回公演も楽しみにしております。

  • 満足度★★★★

    チャレンジ・・・
    アドベンチャーでも、チャレンジャーでもない私でも、
    雄大な自然を目の当たりにすると感動する。

    そんな自然を相手に、己の目標に向かってチャレンジし、もがき、苦しみ、
    そして達成したとき、何ともいえない“もの”を感じるのだろう。

    そして、更なる達成感を求めてまたチャレンジし、成功する。
    成功を重ねることにより驕りをもつ。

    “驕り”は判断を狂わせる。

    そして、チャレンジには必ずリスクが伴う。

    “山”での失敗は、“死”に直結することがあるだろう。

    それでも、チャレンジするのか・・・。

  • 満足度★★★★

    濃密な空間
    以前、ラジオドラマで聞いたことのあったので、ライブの公演を楽しみにしていましたが、想像以上の面白さでした。
    圧倒的な台詞から立ち上がる、孤高の人の過酷な冬季登頂の臨場感に胸が苦しくなった。演劇の脚本というより、小説のリーディングの趣。背後から聞こえてくる吹雪も面白い効果でした!


  • 満足度★★★★★

    深く自然に分け行った者の世界

     大正時代、未だ日本では登山技術も殆ど知られておらず、特にロッククライミングの技術等は、大学山岳部のボンボンだけが習得できるような時代の在野のサラリーマン登山家2人の話だ。

    ネタバレBOX

    在野NO1と目される登山家と彼に憧れて山に見入られ、どんどん難しい条件の山にのめり込み、チャレンジして基本的には単独で登っていた二人は、終にパーティーを組む。無論、それは互いの実力を認めあってのことであったが、互いの遠慮や見栄が、正確な判断を狂わせ帰らぬ者の仲間に加わる迄の過程を描く。
     何故、山に登るのか? この問いは、彼ら自身の切実な問いでもある。そしてそれは、生きていることを確認する為、また、神々の住まう荘厳な世界を垣間見るためだったように思われれる。もとより、筆者自身、山も海も好きで良く出掛けた。然し、自分の山の技術も装備も沢や縦走が基本でロッククライミングなどは、初心者の域を出ない。まして、冬山へのチャレンジなどおこがましくて語れたレベルではないが、それでも、夏、オーバーハングしているような岩を登ってゆく時、目前に生えた苔の緑の鮮烈な印象は、忘れることができないし、それこそ、生きている色だと深く魂に沁み入る思いはした。
     海に関しては、プロになる為の学校を出ている関係で航海経験がある。北の海で嵐の中を航行し、船体が木の葉のように突き上げられては、十数メートルも落下し、その度ベッドに叩きつけられたこと。鼠が残っていたので船は沈まないと安心はしたものの、ビルジキールがギシギシと音を立てて歪み、船体がバラバラになる前兆のように思われたことなど、自然の前で人間の力などいかほどでもないという事実を嫌と言うほど知らされた。だが、南方に向かって航海している時、普段、三角波の立っている太平洋が、ベヨネーズ礁に入った途端、油を流したようなべた凪になり、釣れる魚種も変わって不気味さを増した。この辺りは明神礁も近く海底火山帯がいくつもあるので周囲より深度が浅い。深さは3000メートル強程か。ベヨネーズを越え、小笠原を目指して航行している時、新月の晩があった。その夜、自分はワッチ(ウオッチの方が、正確な発音に近いが現場の発音はワッチである)をしていたが、余りに美しい星空に見入られてデッキの先端に立った。海と空の境界が曖昧である。空の領域には、満天の星海には無数の夜光虫、この時自分の感じたものは、宇宙の只中を唯一人航行している自分であった。
     こんなことを思い出させてくれる作品。
  • 満足度★★★★

    まさに冬山のような作品でした
    山編観劇。
    山で感じる孤独感、達成感、ひととの軋轢。実は街中と何も変わらないのかもしれないけど、ひとつひとつが壮絶に浮かび上がり、我が身に切り込んできました。
    さながら雪崩のようなせりふの奔流を見事に御した役者お二人にも拍手。

    また北川さんの言葉に、いつも作品への興味をかきたてられます。

  • 満足度★★★★★

    気づいたら山にいた
    ネタバレBOXにて

    ネタバレBOX

    開演後しばらくは、割とふつうの会話劇なのかな、と思っていましたが、気づいたら冬山の中にいました。気づいたら遭難していました。
    カーテンコールで役者二人がお辞儀をした瞬間、自分が初夏の王子にいることに気づきました。

    雪山で遭難といえばこれ、というくらい落ちはありふれたものかもしれませんが、そこに至るまでが秀逸。「孤独」という言葉では表現できない、恐ろしさ、悲しさ、苦しさが身に迫ってきます。

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