死んだらさすがに愛しく思え 公演情報 死んだらさすがに愛しく思え」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★★★

    笑いながら凍り付く
    多くの血が流れても乾ききった荒野が、笑いの下に広がる。

    ネタバレBOX

    シリアルキラー川島の母が登場する冒頭のシーン。
    これはかなりキツいぞ、と思いつつも「MCRだしね、こんぐらいは」と観ていたが、伊達香苗さん演じる母がスカートをたくし上げ、息子の川島にそれを見せつけ、叫ぶシーンでは笑顔が凍り付いた。

    伊達香苗さんが、ダメなほうの人になり切っているのだ。
    その母性溢れる容姿とは別のベクトルへくっきりと切り替わっていた。

    この母から育てられた川島が、そうなっていくのには理解できる母とのシーンだ。
    しかし、母がそうだったからと言って、彼がそうなったのは母の責任とは言えない。
    彼の性格を形作っているのは、母からの影響が大きいとしても、それだけでは語ることはできない。
    実のところ、本当の理由がまったくわからないのが、彼の行動なのではないか。

    川島は「人を殺すことに快楽を感じているのか」と、問い掛けてみる。
    彼の相棒となった奥田は、明らかにキチガイの殺人者である。
    酷い方法で、人を殺すことに快楽を覚えている。
    しかし、川島はそうには見えない。

    彼の佇まいには、荒野が見える。
    何もない荒野が広がっているのだ。

    わずかに、彼を「お父さん」と呼び、彼が「天使」と言う奥田の妹・飛鳥と、川島が殺すことのではない男・堀が、彼の荒野に生えている貧弱な植物である。

    川島の荒野は、乾ききっている。
    彼は、血によってそれを潤すのだが、荒野は広すぎて、何十人殺しても潤うことはなく、乾き切ったままだ。
    彼は、それでも血を欲しがり、命を奪う。
    これは快楽ではないだろう。
    川島自身が命果てるまで、癒えることのない、虚しい行為だ。

    そういう虚しさを感じることは、誰にでもあるかもしれない。
    川島ほどその「渇き」が酷くないにせよ。
    もちろん殺人へ結び付くことはないにせよ。
    つまり、川島の荒野までの距離は果てしなく遠いようで、すぐ裏手にあるのかもしれない。
    そうした恐さをも描いているのではないか。

    この作品の面白さは、シリアルキラー川島のことを夢に見ている有川という男がいる点だ。
    有川は、クズらしい。
    クズの有川と川島の距離感が、私たち観客と川島という存在の距離感に等しいのではないかとも思った。
    この設定が、「なんか酷い殺人鬼いるねー」の話から、少しだけこちらに近づいてきた感があるのだ。

    それは、「夢」のようだけど、「リアル」である。
    自分にそれが近づいている感覚がある。
    クズであっても、人は殺さないという確信めいたものが有川にはある。
    しかし、夢が近づいてくることで、その境目が曖昧になってくる恐さがあるのだ。
    有川はクズなりにそれをヒシヒシと感じているから、恐いのだ。
    自分の内なる荒野がそこにあるのに気が付いているからだ。

    いつものごとく、全体的に笑いが多く散りばめながらも、今回は特にゾクゾクするような気持ち悪さがあった。
    MCR、さすが。
    作・演の櫻井智也さんさすが(本人の、あの台詞回しも好きなんだよね)。

    川島を演じた川島潤哉さんが、何かが抜けきったような佇まいが荒野を感じさせた。
    そこをやりすぎると、単なる演技になってしまうから。
    母を演じた伊達香苗さんは、本当に恐い。見事な醜悪ぶりだ。
    ただ、叫ぶ台詞が聞き取り辛いのが難点。

    川島の相棒・奥田を演じた奥田洋平さんは、川島と明らかに違う狂った男を演じていた。
    川島の天使・飛鳥を演じた後藤飛鳥さんは、インノセントな感じで、宗教をも感じさせ、静かにどこか狂っているような佇まいがいい。

    どの舞台でも、抜群の突っ込みを見せる堀さんは、突っ込みはもちろんあるが、川島への苛立ちが感情的にほとばしることで、川島との対比を見せ、さらに堀さんが持つ人間的な世界が、川島の唯一のこちら側との窓に見せてくれた。
    有川を演じた有川マコトさんには、あまり多くを語らせないが、さぞクズな人なんだな、と思わせる。
    施設の人たちの気持ち悪さも、いい。
  • 満足度★★★★★

    白い紙VS色とりどりの金平糖
    オープニングの強烈さったらなかった。
    伊達香苗さんの素晴らしいクソ母親ぶりに嫌悪感全開。
    その後の主人公と刑事のやり取りにがつんとやられた。
    「白い紙」VS「色とりどりの金平糖」、これがその後のすべてを物語っている。

    ネタバレBOX

    川島(川島潤哉)の母親(伊達香苗)は売春婦である。
    自宅で客を取るのを平気で小学生の息子に見せ、時には仕事を手伝わせたりしていた。
    大人になった川島が、彼女と暮らしたいから家を出ると告げた時(彼女が告げた)、
    高笑いしながら「お前は一生あたしの奴隷なんだ」と言われ、ついに母親を手にかける。
    そこから川島の新しい人生が始まった。
    相棒の奥田(奥田洋平)とその妹飛鳥(後藤飛鳥)と3人で旅を続けている。
    奥田と川島はそれぞれ人を殺すのが楽しくて行く先々で連続殺人を重ねる。
    飛鳥はそんな川島を「何をしてもいいからずっと一緒にいる」と言い、二人は恋人同士だ。
    だがある町で3人は櫻井刑事(櫻井智也)と小川刑事(おがわじゅんや)と出会い、
    奥田は平然と、刑事を挑発するような発言をする…。

    当日パンフに、作者がかつて傾倒した「ヘンリー・リー・ルーカス」という殺人者のことを
    ベースにした作品だとある。
    マスコミや世間の人々が、“その原因”を探るのが大好きな“連続殺人鬼”が主人公だ。
    登場する2人の殺人者の性格が対照的だ。
    川島は母親から虐待に近い扱いを受けて育ち、根底に人間不信と憎しみ・蔑みがある。
    コミュニケーションの手段を持たず、自分と意見を異にする人間は殺すことしか知らない。
    奥田はどちらかと言うと“快楽殺人者”か。
    殺すことが楽しくて、常にきっかけを探しては殺したいと思っている。
    奥田が刑事を挑発するような不敵な発言をするところ、
    不気味にねちっこくて異常者っぽい目つきなど素晴らしかった。
    川島も奥田も、最初は強い憎しみから始まったのだろうと思わせるが
    この二人のキャラがくっきりしていて大変面白い。

    「お前にとって人間って何だ?」と問う櫻井刑事に対して川島はこう答える。
    「白い紙だ。そういう刑事さんにとって人間って何だ?」問われて刑事は答える。
    「色とりどりの金平糖だ」
    実際はギャグの連打の合間に交わされる会話なのだが
    作品を貫く価値観の対峙を端的に表している。

    殺人鬼の陰湿なストーリーかと思っていると、
    突然有川(有川マコト)と澤(澤唯)の夢と重なったりして笑いは満載。
    相変わらず熱く語る、友人の堀(堀靖明)のほっぺぶるぶるさせるところなんか最高!
    ベースの陰湿さをシュールな展開で一気に転がすバランスが素晴らしい。

    川島が堀を殺さなかったのは、ただ一人”川島に期待してくれる”人間だからだ。
    こんな自分を「大丈夫だ、きっとできる」と愚かなまでに信じてくれているからだ。
    心のどこかで自分もそう信じたいと思っていただろう。

    マドンナ後藤飛鳥さんが、今回は自然で天然キャラがとてもはまっていた。
    いずれ殺されるのを見通していたかのようなまなざしが印象的だった。
    ラストシーン、唯一の“殺したくなかった人間”飛鳥に向かって
    手を伸ばそうとするかのような川島のてのひらが、息苦しくなるほど孤独で哀しい。
  • 満足度★★★★

    漫画家トリオが出るかどうかは内緒/約110分
    いつも通りギャグ満載だが、あまり笑う気になれないくらい今回のは重かった。
    なのにそこまで胸にズシンとこなかったのは、重いバックボーンを背負っているある意味で気の毒な主人公が一点だけ我々と大きく違って、感情移入しづらかったせいか?

    ネタバレBOX

    でも、二つの時空が交り合って展開するややこしいストーリーは堪能。
    混乱を楽しみました。
  • 満足度★★★★★

    対照的で面白い
    暗い内容に、笑いが、対照的なことなのに同居している。
    その対照的なところが面白い。

    そしていつものMCRらしさも存分にあり、楽しく観れました。

  • 満足度★★★★

    今回は...
    MCR結構行ってますが、自分的にですが、何だか好みの回とそうでない回がある気がしました。

  • 満足度★★★

    白ジャージ
    久々に白ジャージの人観たわ。結婚生活うまくいってんのかな。
    とりあえず、マイケル・ルーカーより川島君の方が芝居うまいね。

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