なぜ ヘカベ 公演情報 なぜ ヘカベ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.8
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★★

    徹底的不幸を喜ぶいたずらな神々
    ヘカベ役の辻さん、渾身の演技は胸を打つ!
    演出、美術、照明が一体となり、観客を惹きつける。
    不思議な世界に誘われました!

    ネタバレBOX

    6体の神々がトロイの王妃から奴隷、雌犬になるヘカベをいじめまくる。
  • 満足度★★★★★

    喜劇
    踊る阿呆に見る阿呆

    ネタバレBOX

    神々のわがままで執拗な欲望が、神々によって演じさせられる人間にとってはとことん悲惨な事象に繋がるという話で、人間の悲劇は神々には単なる喜劇の一場面に過ぎないということでした。

    トロイアとギリシアの戦争でヘカベは19人の息子を失いましたが、ゼウスの妻ヘラの欲求によって芝居は続き、他国に逃がしていた末の息子も、ギリシアに攻め込まれるのを恐れたその国の王によって殺されてしまいます。さらにここで終わらず、ヘラの欲望は続き、ヘカベの娘も、まだ子供がいたんかいと思いましたが、今は亡きアキレスと結婚すると言って死者の国に旅立ってしまいました。

    人間の悲劇が大好物の神々でしたが、そういう意味ではアポロンの膨張によって人間は30億年後には確実に滅びるでしょう。そのときには神々も滅ぶでしょうが。恐らくそこまで待つ必要はないと思います。

    戦争が終わらない現代を示唆した話かと身構えて観始めましたが、純粋な喜劇として楽しめました。人間がシミュレーションゲームで散々なことをしているのと同じでした。
  • 満足度★★★★★

    感動
    「なぜ ヘカベ」という問いに対する答は、人それぞれ感じ方によって違うかも知れませんが、ヘカベの物語を通して、ギリシアの悲劇がまさに目の前に繰り広げられているかに感じました。劇団の俳優全員が出演しているとのこと、言葉を失うほどの迫力でした。とても感動しました。

  • 満足度★★★★★

    やはり”風”の公演は素晴らしい!
    浅学の悲しさ…ヘカベを知らなかった。正確には思い出せなかった。高校の世界史の授業の課題図書「イーリアス」に登場する王妃の名前だということ。このトロイ戦争を題材にした本には有名な戦士が多く登場する。当時は、軍記ものとして読んだ記憶がある。それにも関わらず、悠久のロマンを感じてしまう。やはり、シュリーマンの古代遺跡発掘の印象が強い。

    さて、戦記の目線になるが、物語の時代背景のようなものは分かる。しかし本公演に描かれた戦争という愚かな行為…それを現代と繋げて考えるという視点から描いた芝居は、素晴らしいの一言である。

    物語の史実原形のようなものが、脚本になっていると思える。よって卓越した演出について書かせていただく。

    ネタバレBOX

    この公演タイトル「なぜ ヘカベ」ていう“問い”の言葉がついているのか。ここに、演出家・江原早哉香 氏の強かな計算があるように感じた。この芝居は、劇中劇のような構成になっている。古代と現代は、神々の世界時間からすれば、火を付けて吹き消すまでのほんの僅かな間であろう。

    この虚構にして現実の二元性...神々による人間を舞台にした一種の虚構と、長いと思われた物語は、旅人が休んだほんの一晩で語られたという現実。この展開は雑然と混沌とした中で人間の悲しいまでの”生”への執着が垣間見える。神々の神聖さと人間の醜悪さが均衡と不均衡のように描かれ、演技としては役者の肉体の緊張に中に陶酔するような色気が観て取れる。
    そして、この禍々しい夢物語は色褪せることなく、旅人の脳裏へ...さぁ出発しよう!

    本当に素晴らしい公演でした。
    次回も大いに期待しております。
  • 満足度★★★★

    宿命の酷薄
     トロイの王妃、ヘカベは、アガメムノンらの軍との戦いで、オデュッセウスの知略に終に敗戦を迎えた。ヘクトールを始め、19人の息子を失くし、夫を殺され、国と民を失ったヘカベは、宿命を弄ぶ神々を分析する。

    ネタバレBOX

     ゼウスとヘラの前には、その親としてオケアノスとテーチュスが、その前にはウラノスとガイアが、そしてその前には、カオスとエロスがと辿ってゆくのだが、これは論理的におかしい。なぜならば、カオスは、総てを含む渾沌と考えられるから、エロスもカオスに含まれるハズであり、カオスは単性生殖をすると考えられるからである。カオスの定義が正しければ、この親を辿ってゆくことによって辿りつく筈だった“愛”というコンセプトそのものが、出てくる余地を失うから、彼女の問いは滑稽そのもの、愚かそのものとなるのであり、それ故にこそ、苦しまなければならなかった、という解が成立する。
     上記の推測が正しいとすれば、愛という概念が間違って抽出されてしまった点に、作家のキリスト教的思い込みがあったと見た方が良さそうである。この点を指摘する者が、誰も居なかったとすると、如何であろうか? 
     まあ、こんな理屈を捏ねなければ楽しめる舞台である。主演の辻 由美子さんの演技が良いし、神々、コロスの使い方も面白い。

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