台所の女たちへ 公演情報 台所の女たちへ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★★★

    二つの世代から浮かぶ女性が生きる質感
    強かな仕掛けをもった戯曲だと思います。

    また、それを空間に広げる役者さんたちの、それぞれの力量にも惚れ惚れ。
    女性が歩む時間を内と外から眺める立体感があって、ガッツリと魅入りました。

    ネタバレBOX

    二つの世代の女性たちの物語。舞台の枠組みをタイトに作らず、観る側をすっとお通夜の夜に導くと、台所の、多分久しぶりに顔を合わせたであろう親戚やその家にかかわりのある女性たちの会話や所作がとてもナチュラルに観る側に積み上がっていく。最初は登場人物の関係も良く分からないのですが、むしろそのことが葬式の肌触りを醸し出したりもして、急ぐことなく、ところどころに笑いが差し入れられつつ、一歩ずつ舞台にその家の物語が解かれていく。
    親の世代の姉妹関係がまず示され、そこに交わる会話から親子の関係が訪れ、その家に関わる人物たちのことも解けていく。座敷から時折聞こえてくる弔問客たちの笑い声を聞きながら、台所でもちょっとした昔話が始まる。一方で従姉妹たちの会話などもあり、親の世代が歩んできた過去や、従姉妹たちがそれぞれが抱える今もそれらの中にさりげなく差し入れられて。
    やがて登場する妾的な女性とその娘も含めて親子の風貌や性格のリンクがとても上手く作られていて、必ずしも一心同体という感じでもないし親子の間での確執や反発なども当然のことくにあるのだけれど、でも言葉や所作などから垣間見える性格の端々に血のつながりを感じさせる仕掛けがが絶妙に織り入れられていて、観る側にロールの印象がきちんと繋がりとして残る。そのことが、思い出話が回想シーンへと歩みを進め、娘のロールを担っていた役者達がそれぞれの親を演じる時、観る側に刻み込まれたその重なりが女性たちの生きる感触への常ならぬ広がりへと変わっていきます。

    下手に設えられた葬式の案内がくるりと廻り、親たちを演じていた役者達が舞台の両脇に控えるなか、娘を演じていた役者達によって先代の葬式の日の記憶が解かれていく。姉妹間のトイレの順番に始まって前半に紡ぎいれられた幾つものエピソードが伏線として鮮やかに機能する。冒頭の時間を生きる女性たちを肌触りをそのままに、同じようなビビッドな時間が生まれ、さらには、舞台周りの、そこから時を歩んだ女性たちの自らの時間への回顧や感慨なども差し入れられる。

    圧巻だったのは、跡継ぎの男子ができなかった正妻と子供を作る様に頼まれた女性が話し合うシーン。舞台上の修羅場の密度に息を呑み、そこにあるキャラクターが醸し出す色に見入ってしまうのですが、周りの女性たちの視座がそこに重なると、そこに女性たちの歩みの感覚が生まれて。舞台上の今に塗りこめられたことも時を隔てて解かれて、そこには
    女性たちが歩む今とその先への視座と歩んだ先から彼女たちのその日々を眺める視座の織りなす俯瞰が訪れる。世代を超えて、女性たちが人生の歩むこと中での普遍が物語の顛末にその肌触りとして編まれて、登場人物が抱く今がその普遍と共に観る側に歩み入り置かれていくのです。

    観終わって、青年座の女優達が精緻に編むキャラクターが本当にしなやかに舞台を支えていたことに思い当たって。登場人物のどの個性もその感触が滅失することなくくっきりと残っているし、加えて血のつながりを単なるミミックではなく根底にあるキャラクターの色や性格の端々を様々な深さで合わせていく力にも驚嘆。それも、役者達がロールの折り合いをつけているというのではなく、そのありようを研ぎ攻める中で束ねられていくような感じがあって心捉われる。

    ただ一人登場する男には女性たちとは異なるトーンでの存在感がとても良く作り込まれていて。そのありように、男って所詮女性が抱く強さには勝てないよなぁという、感慨までがのこったことでした。
  • 満足度★★★★

    ベテランと若手の競演が見事です
    通夜の台所を舞台にしたコメディ。

    青年座創立60周年記念公演ということで、俳優さんの企画による3つの公演がうたれたAct3Dという企画の三作目。
    劇団ONEOR8の田村孝裕さんを作・演出に迎え、ベテラン女優、若手女優に、唯一の男優、山崎秀樹さんを加えた、入り込みやすいコメディ作品に仕上がっています。

    田村孝裕さんの脚本作品は、2013年に公開された、市井昌秀監督、星野源、夏帆主演の映画、「箱入り息子の恋」を拝見したくらい(しかもあれは共同脚本でしたかね?)で、舞台作品を見るのは初めてでした。
    「箱入り息子の恋」と同様に、シチュエーションとセリフで笑いを取るスタイルで、芝居にはすっと入り込めます。

    ベテラン女優と若手女優の競演作品ですが、ベテラン陣の力の抜けた芝居がとても安心して見られます。

    マニアックな見所は、回想シーンの修羅場で、柱の側で話の成り行きを見守る、小百合役の尾美美詞さんの、人の不幸を喜ぶ底意地の悪い表情と、片岡富枝さんを凌駕する女の捨てっぷりでしょうか(笑)

    ネタバレBOX

    美代役の久松夕子さんが、最高に良いですね。
    儀之介の亡霊?とのやりとりでの「めんどくせえ」の一言は、圧巻でした(笑)
    久松さんの演じる美代は、ある意味ステレオタイプの演技かもしれませんが、一挙手一投足が美代を体現していて、それだけに、観る者はいつしか美代という人の一途な愛情と強かさを植えつけられてしまう。
    だからこそ、ラストシーンでは、舞台にはいない美代がひとり居間で泣き濡れている姿を思い浮かべて、深い感動を覚えるのだと思います。
  • 満足度★★★★

    結構多彩な登場人物がいるので理解が大変
    ・・・かしら?

    でも個性的で楽しく親しめるキャラクターが笑わせてくれた約2時間

    それにしても上演中に友人と話すのはマナー違反だよ隣のお兄さん、
    前かがみになるのもね~。

    ネタバレBOX

    なんか祖父の葬式を思い出しました。舞台は大きな屋敷(残された二人には広すぎて来月には引き払う)らしいお台所をセットにして中央の長方形のテーブル中心に奥が水周りで、勝手口があります。

    逞しい女性たちの現在と過去が上手に舞台上で表現されてて面白かった(^^) 井戸端会議風なつくりです

    おもちゃにされる故人も、幽霊役と過去編での生身役が登場して(現在編では若いときのカッコで現れてるという設定です)器の小さい、いじられキャラが笑いを誘ってくれてました。

    今では姉妹という言い方も兄弟って言っても誰も注意はしなくなりましたが、結構お年な御婦人がそーゆー台詞使いすると違和感を感じてしまったデス。
    (客層は男女比も年齢差もバラバラに思えました)

    二村儀之介 葬儀 通夜 ’14年八月二十一日
                 告別式    八月二十二日

    二村儀一  葬儀 通夜 ’74年八月三十一日
                 告別式    九月一日

    の上記二つを’14年の話中心で過去を語り、過去話では青年座の真骨頂(^^)真ん中での演技に左右に配された椅子から、現代の自分らが過去に突っ込んだりする面白さであります。

    トイレに行くタイミングが同じな姉妹(恵美子(姉)小百合(妹)トイレットペーパーが無くなって交換する伏線があったり)とか、出来が良くて行動の情けない実母に舌打ちする娘とか(すいません舌打ちする気持ちは良く分かります(^_^;)リアルな人間関係と登場人物設定の細かさは評価高いであります。
    (ミサンガギャグの再利用とかも巧みです(^。^)

    開演前の前説は5分前か舞台下手から父母息子役の3人の今年入った新人さんが注意諸説伝えてました(開演前のBGMはお経でした・・(^^;)

    二村で一族経営していたが世襲を女系になったことで辞めて人手に渡したそうです(お手伝いさんの入ってる大きなお屋敷です)

    寿司マサさんで頼んだ寿司が足りなくなって追加をスーパーの寿司の詰め替えでシノグとか。リアルだったな(^^) 飲み物とかもリアルに出してました。
    着物とかの和装も皆さん決まってました。

    二村儀之介=頭のさわやかな、亡くなった当人。スキップができない3代目。
    美代=二村儀之介の妻、亡き夫の若い姿の幽霊と会話する。子供が望めない体となった過去を持つ。
    玉枝=長女
    次女=恵美子(数珠とパワーストーンを間違える天然さん、それも健康ではなく安産のヤツで、これがまた上手に妊婦に渡るんです(^^)
    三女=小百合
    文(あや)=恵美子の一人娘
    千里=クッキングスクール(スタジオ)経営している×イチ
    絵里花=妊娠してるが、どうも不倫らしい??
    大石=ヘルパーさん、母幸子は愛人だった。
    木下京子=二村儀之介の2号さん、源氏名はマーガレット(^^)世襲を重んじた二村儀一(祖父)より、妊娠で500万・男児出産で1000万を提示されて出産を決意したが、生まれたのは娘=留里であった。(この事があって世襲に拘る父の姿みて会社を人手に渡すコト決めたと儀之介) 豪快なキャラで娘には実の父は隕石に当たって死んだと言ってた=当然娘は信じてなかったと

    ひと悶着あって騒動が落ち着いた最後、気丈に明るかった奥様が、旦那が残していた漢字クイズの録音テープ聞いて泣いてると話してて、暗転録音の音声が続いてフェードアウトして終劇となります。
  • 満足度★★★★

    ウェルメイドな葬儀コメディ
    ある会社の三代目社長だった男が死に、三人の姉妹や奥さんをはじめ、男にゆかりの深い女たちが通夜の晩の台所で男の秘密を暴露し合う、会話主体の割合オーソドックスな葬儀コメディ。

    ただ、緻密な脚本と凝った演出、そして青年座の大御所女優たちによる絶妙な掛け合いが多大なる相乗効果を生んで、引き込む、引き込む!

    これまで観てこなかったタイプのお芝居でしたが、最後まで飽きることなく楽しめました。

    ネタバレBOX

    舞台となるのは、フタムラ製作所という会社を営んできた二村家の台所。
    三代にわたって続いた会社は男が授からずに世襲が絶えて人手にわたり、二村家本家では最後の社長を務めた三代目・儀之介の通夜が今まさに行われている。
    そんな通夜の晩に儀之介の妻や三人の姉妹、その娘たち、さらには儀之助の愛人とその娘までが入れ替わり立ち替わり台所にやって来ては儀之助の、ひいては二村家の思い出話に花を咲かせ、それぞれが知っている、儀之介や家の秘密を暴露。
    けして軽くはないそれらの秘密を豪快に笑い飛ばしながらざっくばらんに家の歴史を語っていく老妻や老三姉妹の姿を見ていたら、なんだかすがすがしい気分に…。
    そして、女傑たちを演じる青年座の大御所女優たちの貫録あふれる演技に魅せられた。


    同じ台所を舞台に二代目社長の葬儀エピソードも描かれるところが本作の面白味。そこで若き日の三代目が妻と愛人の板挟みにあって往生するくだりには大いに笑わせていただきました♪

  • 満足度★★★★

    カラッとした笑い
    最近では少ない、カラッと笑える作品でした。
    かなり年季の入った女優さんたちの演技が、なんとも言えず味わい深く、人間味あふれていて良かったです。
    お葬式で発覚する色々な事実。
    ドロドロした人間模様になりがちな内容なのですが、さらっと気持ちよく流してあり、言葉は悪いかもしれませんが爽快でした。
    役者さんたちは2役を演じ分けたり大変だったと思いますが、傍で見る立場の私たちとしては、次々に起こっていることが滑稽であり、ありうることであり、しみじみすることであり、楽しませて頂けました。
    ラストのテープの演出では、じ~んとなりました。

  • 満足度★★★★★

    新しい試みで青年座のポテンシャルの高さを感じさせてくれたAct3D企画公演
     ONEOR8の田村さんの描く作品世界と青年座の持ち味がとてもよくマッチングしていて、今回の企画連続公演の中で最も青年座らしい約2時間の公演でした。この作品を観ながら、田村さんの作・演出で以前他で拝見したレディースクリニックが舞台の「おしるし」という作品につながるところもあるかなと思ったりもしました。
     また、今回の三者三様のおもしろいAct3D企画公演を通して観て、各作品の作・演出をセットで外部の同じ方が行っている新しい試みやAct.1からAct.2、Act.3へとよく考えられた演目順序、そのレパートリーの広さなども含め、新しい風を入れたいというこの企画の目的は大いに達せられたのではないでしょうか。

    ネタバレBOX

     二代目の葬儀のときに起こった出来事の回想シーンでは、三代目の姉妹とその関係者等の娘たちがそれぞれの母親の役を演じており、娘役の俳優さん達の今と昔の演じ分けや取り囲んで配置された母親たちがあたかもその場面を見ながら昔話をしているような構図が実によくできていました。
     青年座さんのそのカラーを活かした作品はとてもすばらしいのだが新しいスタイルのものや翻訳ものはどうかなという思い込みというか偏見のようなものがあったのですが、このAct3D企画公演を拝見してかなりそれが払拭されたような気がしました。
     また、新しい風を入れようという試みとしては、他では、例えば、今年の俳優座の公演「七人の墓友」などはとてもうまくいっていたと思います。

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