終電車脱線す 公演情報 終電車脱線す」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
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  • 満足度★★★

    極限状況って分かってる?
     一部、Wキャスト。Aチームを拝見。椎名 麟三の作品だが、時代設定は敗戦から2年後の1947年ということになる。山間で土砂崩れ等も起こる程の雨の後、鉄橋の手前でたった1両だけ稼働していた終電車車両が脱線事故を起こしてしまった。

    ネタバレBOX

     鉄橋もいつ落ちるか分からない程、老朽化しているのみならず、つい2年前迄続いた戦争で補修もままならず、ガタが来ている。運転手は救助を呼ぼうと鉄橋を渡り掛けたが、鉄橋の泣く音を聴いて直ぐ引き返して来た。ちょっと前、夜間では無かったのに、次の駅迄、鉄橋を歩いて行こうとした鉄道関係の職員が濁流に呑まれていた。
     だが、乗車していた客は、矢張り様々である。どういう訳か、金も無いハズの浮浪児、何故だか分からぬが、矢鱈身勝手な癖に直ぐパニックに陥る40歳の女。カフェで知り合い意気投合して、そのまま温泉旅行へ出掛けた浮気者同士のカップル、鍛冶職人、魚の行商で生計を立てる中年女。そして老人。
     だが、この作品を良い舞台い仕立て上げるのは、並大抵のことではない。上演時間は、50~60分位の短い作品であるから、個々の役に、一々、性格設定を伏線等を用いてつけることも難しいし、ただ単に類型化したのでは、芝居としての面白さに欠けることになる。従って、個々の人物達の社会的位置を上手く対置して、其々の差異や特性を際立たせ、且つ対置された諸個人の相互関係をダイナミックに干渉させて、そこに起こるハレーションや様々な関係性の綾を紡いで行く他無かろうが、今回、今作の演出をした人は、自分自身で人間の限界状況を実体験した経験が無いのだろう。若手の役者陣は無論のことだろう。従って、演技に必要な間の取り方にリアリティーが無い。演出家が、そこを分かっていればもう少し工夫ができたハズであるが。この面子で、今作を良い舞台にするには、チト荷が重かったか。
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    全員、『劇団俳協』の「準劇団員」だという。
    組織でいうところの「副社長」や「次長」のような肩書きだろうが、「劇団員」自体が大した地位のない名称であるから「平」を掘った「凹社員」だ。


    実質「ショー・ケース」である。50分間の上演時間は高校演劇の地区大会において目安とされる1時間より短い。
    青年座にも指摘できようが、研修生公演は脚本の選別が 「狂い」に矮小化する傾向があり、「感情表現至上主義」になってしまっている。
    演技がそうだ。明らかに身体観と台詞が磁石のS極とN極のごとく「分離」している。
    なぜ、研修生公演において、いわゆる「わざとらしい」に迎合する傾向があるのだろうか。こうした疑問を抱かせた脚本(ほん)が『終電車脱線す』だ。作・椎名麟三は1911年生まれ。安部公房と同列に並べられる「昭和の巨魁」であるが、そんな名小説家だろうが 関係ない。


    「狂い」の連鎖反応は「ストレス」だった。終戦後2年間経た日本という「情報」が 物質的、精神的に破産した「私たち」を伝えたかったのかもしれない。手塚治虫の終戦漫画の目的だ。
    だがしかし、「狂い」を出したところで そこに「個人史」はない。足りない。
    役者の演技も表層で、「脚本」(ほん)の綻び とともにリアリティが欠如していた。要するに、「密室劇」の濃密空間に災害時の人間心理が織り出す「狂い」ではなく、社会情勢からの「狂い」に演出をシフトしたことが、決定打になったのでは。確かに「孤児」(みなしご、少年役を女性が演じる)は 後者の リアリズムだったのだろう。
    しかし、どうも この常態化した「狂い」を「戯曲的だねえ」とは評価できないのである。








  • 満足度★★★★

    命の危険を感じるまで
    予想もしない事故に遭遇した時の認識が変わっていく様子が面白い!
    こういう状況では自分勝手な行動はろくなことがない。
    上演時間50分と短いのが残念。観る側としては90分ぐらいの作品にしてほしかった。

    ネタバレBOX

    1947年、第二世界大戦の敗戦から2年後の話。
    ある高山線の終電車が山くずれのため脱線し、乗客5人と2人の乗務員が深夜の山中にほおり出されてしまった。最寄りの駅までは5kmしかも陸橋を渡らねばならぬ。橋の下は土砂崩れの為、濁流である。仕方なく焚火をはじめ救助を待つことになる。大きな事故になれば自分が取材され有名人になれると思っている浮浪児、事故が報道されバレると困るW不倫のカップル、仕入れた鯛が届けられなくなり金銭的な問題をなげく女商人、評判のうどんを食べたいと思っている老人などなど、最初のうちは自分都合のことばかり嘆く。それが1〜2時間経ると自分の置かれている状況を理解し始め、身の危険を感じ始める。
  • 満足度★★★★

    面白い…それなのに無料だ
    準劇団員公演…椎名麟三:作「終電車脱線す」は、見応えあった。
    毎回、準劇団員公演は素晴らしく見逃せない。(Bチーム)

    さて芝居の時代背景は、終戦から2年後の物資不足の頃である。
    老朽化した終電車が山林で脱線し、乗っていた客と乗務員の心理状態…極限状況に直面した時の物語である。
    人間の弱さ、脆さ、欲望、狂気が垣間見える作品である。
    ただ少し気になることが…。

    この秀逸な公演が”無料“というのだから驚きだ。(上演時間50分)

    ネタバレBOX

    乗客は、会社員(既婚)、ダンサー(人妻)、女小商人、男工員、老人、中年女、浮浪児(女)と乗務員2名の9名が、夜の山林で救助を待つがなかなか来ない。焦り、不安、恐怖で段々と精神が苛まれ…。人間のエゴが見えてくる。
    人間ドラマであると同時に、戦後日本の姿を描いた社会ドラマでもある、と思う。極限状態における車掌の「全ては戦争が悪いんだ」という叫びは、当時の日本の混乱世相を現しているようだ。

    さて、気になったのは次の2点である。
    人間性が見えてくるのが早すぎる気がする。脱線から1時間経過した時から異変が見えてくるが、そんなに人間の心は敏感なのだろうか?

    また、小商人が生きている姿をラストシーンに再登場させる必要があったのか。この描写の意味が気になった。

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