エリカな人々 -この愛らしい、恥さらしな世代へ- 公演情報 エリカな人々 -この愛らしい、恥さらしな世代へ-」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★★

    身近に…
    神保町のエリカは昔から知っていたので 懐かしかったです。
    粗い部分もありましたが、私の経験や周囲の人達に重なり その隙間も埋まり、返って身近なものになりました。
    リピートするとまた違う感覚でしょう。

  • 満足度★★★★

    泣きました
    高校の同級生の通夜で、久しぶりに顔を合わす懐かしい顔。
    彼は卒業後、何をしていたのか、なんで亡くなったのか。
    話が進むに連れ、明かされていく真相。
    実在する喫茶店を舞台に、自力のある役者陣が、安定の演技でストーリーを底上げています。
    一人ひとりにしっかりとキャラクターを付け、無駄のないストーリー展で最後まで飽きずに観ることができました。
    笑いあり、涙あり、急展開ありのあっという間の1時間40分でした。

  • 満足度★★★★★

    15年後の今・・・。
    エリカという思い出深い喫茶店を舞台です。
    高校時代に松坂率いる横浜高校から練習試合を申し込まれ、そこで投げあったエースの通夜に行く前に集まった当時の野球部員たちが昔と今の思いをぶつけ合います。
    神保町に実際にある喫茶店エリカを再現した舞台セットは素晴らしく、そこで演じられれるものが風景の一部に感じます。キャストも個性的で魅力的です。

    ネタバレBOX

    スライダーは松坂以上だったというエースを試合中不慮の事故でケガをさせ、野球が出来ない身体にしてしまった。そんな過去を引きずった通夜で本音をぶつけ合います。
    死体のない通夜に元部員たちは自殺かと疑う。
    実は、小学校教員として赴任した地で東日本大震災に遭い3年行方不明のままであることが明かされる。エースの妻が気持ちに踏ん切りをつける為のものだった。妻の眼前、あと一歩で安全な場所にたどり着くところで津波に飲まれたのは、高校時代のケガの後遺症で杖を突く生活強いられた為であった。

    因みに、エリカとは花の名でその花言葉は「孤独」です。
  • 満足度★★★★★

    すばらしい
    非常に単純な内容の設定であるが、とても深く面白かった。
    高校時代の同級生の死により、みんな集まって、死んだ仲間の真相を明らかにしながら、人間模様が展開していくが、本当に1つ1つが細かく描写され、ゆとりある演技に圧巻された。
    観ていて、自分自身中にひきこまれるような感じを受けた。
    是非、何度みても面白く良い作品だとおもいました。

  • 満足度★★★★

    エースに会いたい
    「エースが死んだ」という知らせを受け、15年ぶりに高校球児たちが集まる。
    音信不通だったエースのその後、棺桶の無い通夜、噴き出す不満。
    謎が明らかになる終盤、登場しないエースの顔が浮かんで来るような秀作。
    達者な役者陣の台詞が素晴らしく、台詞のほとんど無い藤井びんさんがまた良い。
    喪主である妻の言葉に、かつての球児たちと一緒に私も泣いていた。
    なぜあのエースが死ななければならなかったのかと。

    ネタバレBOX

    劇場に入ってまず、雰囲気ある珈琲店のセットに目を奪われた。
    つやつやしたテーブルと椅子、ステンドグラスの窓、柔らかい照明、
    カウンターのしつらえやメニューに至るまで、そこに身を置きたくなる空間があった。
    作者のこの空間への愛情とこだわりがあふれるようなセットだ。

    高校時代、あの松坂から練習試合の申し込みを受けるほどの実力校は
    絶対的なエースを誇っていた。
    ところがある試合中の偶発事故でエースは致命的な怪我を負い、
    結局それが元で野球を辞めて転校して行った。
    その後の足取りを誰も知らないまま15年が経ったある日
    突然エースの死が知らされて、当時のメンバーが集まることになった。
    高校時代、大人の空間として彼らが憧れた場所、珈琲「エリカ」に現われた面々は
    平静を装いながらもそれぞれが屈託を抱えている。
    先輩への批判、捺子を巡る攻防、夫への疑惑、そしてエリカでのあの事件…。
    エースの死の謎を前に、しまい込んでいた思いがふきこぼれ始める…。

    「久しぶり~」と言いながら腹の内に別の思いを秘めている人々の
    “何かある”表情が徐々に変化していく様が秀逸。
    展開に無理がなく、理由を見つけて難しいことから逃げたい人間の心理が極めて自然だ。
    体育会系に限らず、誰もが覚える自己肯定と言い訳に思わず笑ってしまう。
    しかしそこに、逃げもせず、誰も恨まずに去って行った者がひとりいるとなると
    話は少し違ってくる。
    まして一番傷付き人生さえ狂ってしまったその彼が、
    唐突に消えてしまったとあれば尚更。
    この15年間、側でエースを見てきた妻の言葉に泣かずにはいられなかった。
    その事実の前で、ちっぽけなプライドや自己肯定など何の意味があるだろう。

    “しがない”がスーツ着ているみたいなお宮の松さん、
    台詞のタイミングと間が素晴らしく、会話の妙を堪能した。
    高校時代からイケイケだった捺子を演じた山口芙未子さん、
    フェイスブックに写真を載せたがりの現在が相変わらずな感じで、
    それがまた中身の空ろさを見せて上手い。
    ほとんど台詞の無いマスターを演じた藤井びんさん、
    味わいのある目線で、沈黙をそれと感じさせない演技が素晴らしい。
    主宰で作・演出の矢島弘一さん、前説とチョイ役で登場されたが
    口跡と声が魅力的で、この方の芝居をちゃんと観てみたいと思った。

    エースはいつもエースだったのだ。
    野球を辞めた後もエースだったし、葬儀が終わった今も燦然と輝くエースである。
    「エリカ」は神保町に実在する珈琲店だそうだが、
    その店名の由来である花言葉がひと言つぶやかれるラストが良かった。
    誰も皆「エリカな人々」だったのだ、そしてエースもまた。
  • 満足度★★★★

    この国の体育会
     エリカと聞いて、ひょっとしたら、と思っていたら、矢張り神保町の喫茶、“エリカ”のことであった。自分は、小学校時代から古本屋街に通い、当時、隆盛だった「いもや」でてんぷら定食を食べ、古本屋の臭いを嗅ぎ、時に上野に足を延ばして美術館や科学技術館に通う生意気なガキ時代を過ごして以来、何度も神保町時代を過ごしている。編集者時代は無論のこと、ライターとして仕事をしていた時代、フランス語を学びに行っていた時期等々、様々な時期、縁のある町なので、もしや、と思ったのだ。小屋で配られたリーフレットに目を通すと、然り、あのエリカであった。確かに朝6時には開店していると。徹夜仕事開けに飲む珈琲はまた格別。暖かいストーブの焚かれたカウンター席に腰掛けて、余り話さないマスターの温和な表情を見ながら飲む珈琲は至福の時である。実は、弟さんが近くで矢張り喫茶店のマスターをなさっているので、自分は、両方の店に出入りしていた。
     ところで、実在のエリカとこの物語は無関係である。エリカの作りは舞台上のものと違うし、窓から外を走る人の姿が見える作りにはなっていない。興味のある方は神保町界隈をうろついて実際のエリカを発見なさるとよろしい。雰囲気のある良い店である。(念のため付け加えておく)

    ネタバレBOX

     本題に入ろう。高校球児の話である。基本的には15年後、松坂が、エースの噂を聞いて練習試合を申し込んで来、2年の時にはプロのスカウトが来るほどの大器、将来を嘱望されたエースを抱えた球児が溜まる、ちょっと大人びた神聖な世界、それが喫茶・エリカであった。練習試合の中で、エースは、味方の選手がフライを取りに来た際、突っ込んできた選手と衝突、大怪我を負うが、その選手に負担をかけまいと当日、動けず怪我も酷いものであったのだが、無理を押して翌日には、選手達の溜まり場であったエリカの窓から、自分のランニング姿が見えるように走り、医者にも行かなかった。結果、後遺症で野球は止めざるを得ず、学校も転校、皆と合わなくなって15年が過ぎた。15年後、エースと付き合っていた緑子は、彼の転校にも付き合い、その後結婚もしていたが高校時代の野球部部員に連絡をつけて来た。彼が亡くなったというのである。通夜の席でも詳細は語られない。集まった関係者は、自分達の置かれた現状を愚痴ったり、近況を知らせ合ったりして時を過ごすが、運動部の常として、先輩・後輩関係は、この国の特殊性を露骨に表して面白い。
     さて、当初露骨には、表されなかった、この国の人間関係の作り方の綻びや矛盾が、この狭い範囲の人間関係内の浮気問題や、香典の額の多寡、エースを球界から去らせることになった事故への各々の位置、対人関係に於ける人気・不人気等々の差から綻びを見せて行く。その果てに見えてきたものは、このような曖昧化が齎す結果であり、責任者の不在であり、それを誤魔化す為に行われる儀式であるが、儀式を行わなければ、八分に会ったであろう、この社会の歪な特徴である。
     エースは大津波に攫われて行方不明になっていた。後遺症で杖をつき、片足は殆ど麻痺していて神経も充分機能しないような状態であった。彼は、妻の目の前数メートルで津波に呑まれていったのだが、野球部の誰をも怨んでいなかった。それを含めて残された妻は、野球部の面々を呪っていたのである。
      

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