青い童話と黒い音楽 公演情報 青い童話と黒い音楽」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★

    ふたりの先生のお話
    19:30観劇。
    刺さるセリフはあったものの、揺さぶられることなく冷静に見守ってしまった。冒頭の口上で壁を作られて、そのままラストまで引きずったような。
    舞台の床が面白かった!お話によって見え方が違って、お気に入りです。
    どっちも、仁科先生と宮沢賢治先生っていう、先生のお話、だったのかな。

  • 満足度★★★★

    青と黒
    激烈かつ繊細な2本立て。苦しさもありますが、光が綺麗で優しさも希望もありました。「夜鷹無限上昇」は音野暁さんが突き抜けてましたね。「深海のカンパネルラ」はオリジナルに比べ遊びの部分が無くなって観やすくなってました。

  • 満足度★★★

    賢治の世界ってこう見せられるんだ
    宮沢賢治の「よだかの星」「銀河鉄道の夜」をモチーフにした、
    『夜鷹無限上昇』『深海のカンパネルラ』の2作品から成る本編。

    賢治の物語世界を、こう換骨奪胎することができるんだ、って
    新鮮に感じました。特に2つ目の物語。美しかったです。

    ネタバレBOX

    第1話『夜鷹無限上昇』

    かつて一世を風靡したものの、その後5年も作品を発表できず
    「一発屋」としてほぼ音楽家人生を絶たれた作家の下を、新聞
    記者が訪れる。彼女に、その音楽家が自身の半生を物語る話。

    ある時、意識の中でだけ聴くことができた「本当の音楽」。それを
    譜面に書き起こすも、自分がかつて得た至高の音楽体験の
    わずかも伝えられないことに苦悩する男。

    作品が自分の意図に反して世間で高く評価され、仕事としての
    音楽の話が舞い込む中で、さらに彼が耳にした「本当の音楽」と
    それ以外の「音楽でない音楽」との差はどんどん開いていく。

    ストイックに「本当の音楽」を追い求めるうちに、周囲と衝突し続け
    仕事も、友人も、家族も、そしていつしか、自分の中で聴こえていた
    「本当の音楽」でさえも失ってしまった音楽家。その再生の話、ですね。

    一点、気になったのは、この音楽家は自身の「本当の音楽」を生み出す、
    それを完璧な形で聴かせることに全生涯を捧げてきたわけですよね。

    新聞記者が強引に「他人に分かって欲しい、伝えたい」ことを目的に
    していたんじゃないんですか! って言い切っていたけど、芸術家って
    もっとエゴイズムの塊みたいな人たちじゃないの? 自分の理想の
    ものを追求したいと望むような。実際に、この音楽家もそうだったし。
    だから、そういう話の持って行き方に、かなり違和感を感じました。

    だからかな、最後、先生と自分が耳にした「本当の音楽」。それを
    いつか文章で表現したい! って、主人公の元新聞記者(物語を
    語る現在はフリーライターとして活躍しているそうです)が言っても
    なんかいい話にもってっちゃってるね感が最後までぬぐえなかったのが
    非常に残念でした。


    第2話『深海のカンパネルラ B&B version』

    大切な友人を失った女の子がその事実を受け止めきれず、
    自身と友人を「銀河鉄道の夜」に出てくるジョバンニと
    カンパネルラに見立てた世界に逃避し続けるという作品。

    友人との永遠の別れ。それは劇中で進行する「銀河鉄道の
    夜」が、最終駅、「サウザンクロス」に到着するとき。その訪れを
    主人公は手にしていた本を閉じることで、強引に引き延ばすも
    物語はいつも同じ着地点に至る。それはそうですよね、そういう
    お話なのですから。やがて、彼女は、二人で歩んだ思い出と
    一緒に友人との別れを選択します…。

    後ろのスクリーンに映し出された星空。それが真に迫っていて
    まるで本当に銀河鉄道に乗ってサウザンクロスを目指して
    いるのかと思ってしまうほどです。演出良かったなぁ。

    観ていて、人生って、「いくつもあるさよならを数え続けること。そして
    やがて自分が誰かにとってのさよならの一部になること」なのかな、
    と思いました。だとすると、さよならの数が増えれば、それだけ成長
    していく、ということなのかな。

    宮沢賢治をモチーフにしたと思しき人物が、「人生は、苦しみ、絶望
    すること。それを繰り返すこと。そして、また立ち上がること」と独白
    していたけど、なんか実際に本人が口にしそうな言葉だと感じました。
    あの終わり方の「銀河鉄道の夜」について、カンパネルラと再び幸せに
    暮らしましたとか、ジョバンニはカンパネルラのことをすっかり忘れて
    暮らしましたとか書ければよかったけど、それは無理だった、と
    心底残念そうに言う場面も味があってたまんなかったです。


    最後で、賢治モチーフの男が「そういう人に私はなりたい。
    …なりたかった」と言い残したのが、自分にとっては人間っぽくて
    すごくいい言葉でした。独立しているような、2話の話を最後に
    「人生の形」を語ることで自然につなげた、その手腕も見事でした。
  • 満足度★★★★★

    やはりいい
    『深海のカンパネルラ ~B&B version~』はオリジナルよりも良かったと思いました。

    ネタバレBOX

    『夜鷹無限上昇』  完璧主義者の作曲家の、いったん浮かびかけた理想の曲がどうしても作れないもどかしさを描いた話。

    最初の、女性記者が気持ちばかりが焦って上手く観客に説明できないというシーンは逆に浮いていて、ぶりっ子やドジっ子振りをわざわざ強調することもなかろうにとイライラさせられました。格好もオスカルみたいで変でした。

    理想の曲について突きつめていくと、生涯一曲しか発表できないことになってしまいます。そこまで行かなくても、完璧を求めると、どこで完成の区切りをつけるかについてもやっとの思いで決断するのでしょうね。完璧主義者は大変です。

    完璧主義振りが増大し、最後は作曲家の慟哭一人芝居のようになってしまいましたが、夜鷹が無限に上昇するイメージで理想の曲が作れるといいですね、のたれ死ぬ前に。

    最初、役者さんが歩く度に床に敷き詰められた白い紙が剥がれ、ちゃちっぽいなと思いましたが、楽譜などをイメージしたもので、最後は星を映しながら撒き散らかしました。その後どうするのかなと思いましたが、そのままの状態で上手く後半につながっていきました。

    『深海のカンパネルラ ~B&B version~』  45分程の短編ということもあって、銀河鉄道の夜の都合のいいところだけを読んで宮沢と旅をする空想に何度か耽りながらも、早めに宮沢の死を深海が認めたことで全体がスッキリしました。

    と言うか、そもそも宮沢が死んだことを深海は自覚していて、そのため車掌さんはお医者さんではなく、治療みたいな部分も必要なく、やたら引っ張ることもありませんでした。

    それでも、とつとつと二人で会話するシーンには、親友と別れるつらさが存分に伝わって来て涙しました。
  • 満足度★★★★

    ほんとうの音楽
    脚本「空想組曲」のほさかよう、演出「こゆび侍」の成島秀和による2本立て。
    空のもっと高みへと垂直に昇り続け、ついに燃え尽きた作曲家の人生と
    どうしても死んだ親友と離れたくない少女の受容と再生の旅。
    どちらも宮沢賢治のストイックさを映すようなキャラクターが登場する。
    カンパネルラとジョバンニの別れのシーン、絶妙な間がどうしようもなく泣かせる。映像と照明がセンス良く繊細で印象的。

    ネタバレBOX

    「夜鷹無限上昇」

    若い女性記者が、過去に一度だけ売れた作曲家に取材を申し込む。
    彼は、理想を求めるあまり「こんなのは音楽ではない」と
    自分の仕事も成長のプロセスも否定してもう5年も作品を発表していない。
    その結果、家族も仕事も友人も失って孤独な人生を送っていた…。

    「作曲家は曲を作るのではなく、自分に聴こえた“本当の音楽”を楽譜に再現するのだ」
    と言う作曲家の極端なまでのストイックさが宮沢賢治の生き方に重なる。
    作曲家役の音野暁さん(熱演!)の苦悩ぶりが深く辛そうで、
    「ゲージュツカって大変なのね」と距離を感じてしまいそうになるところを
    女性記者の存在が上手くつないでくれるところがいい。

    ただ冒頭、回想して話し始める彼女が「あーごめんなさい!」を連発しながら
    “話が自己チューでまとまらない”キャラを前面に出すのが少々うるさく感じられた。
    平凡な女性が、ラスト「君には(本当の音楽は)わからない!」と言われた時に
    「わかりませんよ!だからわかりたいんです!」と叫ぶ、
    その瞬間、彼女の人間としての成長が鮮やかに伝わる。
    その素直な情熱が作曲家を変え、彼を救うことになる。

    アクティングスペース一面に敷き詰められた白い紙が、
    最初歩くたびにかさこそして気になったが、
    やがてその紙が楽譜の書き損じになると、途端に生気を帯びて見えた。
    芸術も人の価値観も、「わかるかどうか」が重要なのではない。
    「わかろうとすること」それこそが、芸術家の孤独を癒すただひとつのものだ。

    「深海のカンパネルラ~B&B version~」

    親友を水の事故で亡くした少女は、「銀河鉄道の夜」をくり返し読み
    妄想をふくらませることで、この1年を過ごしてきた。
    親友は星が好きで、少女は海が好きだった。
    星の名前と深海魚の名前、二人が互いの趣味を理解し共有していく様が楽しい。
    やがて少女は亡くなった親友と向き合うのだが
    この時の会話の間が絶妙で、泣かずに済むと思っていたのにボロ泣きした。
    カンパネルラ役の船越ミユキさん、きりっとした表情で少年っぽさが素敵。
    死んだことを責める少女にぼそっと「ごめん」と答えるところとか
    繊細な台詞がとてもよかった。
    短い出番ながら牧座内音楽さんの車掌がとても印象的。
    もっと台詞が聞きたいと思った。

    宮沢賢治に激似の先生(澤口渉)が言う
    「人生は、理想を求めて、破れて、絶望して、また理想を求める、いろいろあるんだ」
    という意味の台詞が心に沁みる。
    「そういう者に、私はなりたい…、なりたかった」という最後の台詞が秀逸。
    賢治もまた理想を求めて絶望して死んだのだ。

    2作とも映像の使い方、照明の美しさが強く印象に残る。
    改めて、繰り返しかたちを変えて継がれていく作品の魅力を感じた舞台だった。
  • 満足度★★★★

    観るものの心を捉える独自の物語観が描かれた作品
     本当の音楽を極限的に追い求め続けた者の姿の苦悩を描いた「夜鷹無限上昇」、星と深海の世界をうまく呼応させて描いた「深海のカンパネルラ」共に宮沢賢治の原作をモチーフにしながらも作者ならではの、観るものの心を強く惹きつける独自の物語観が形成されていました。演出面も脚本のイメージをうまく膨らませるような工夫が凝らされており、中でも、第一話と第二話のなめらかな接続や陰影の使い方の冴えが際立っていた印象を受けました。役者の方々も、がっぷりとこの作品に取り組んできたことがひしひしと伝わってくるなかなかよい演技をされていたと思います。

    ネタバレBOX

     次は、「マリー・ボドニック」の中井さんの作品ということで、またどのように趣向のかわった作品をみせていただけるのか、今からとても楽しみです。

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