青い童話と黒い音楽 公演情報 ロデオ★座★ヘヴン「青い童話と黒い音楽」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    ほんとうの音楽
    脚本「空想組曲」のほさかよう、演出「こゆび侍」の成島秀和による2本立て。
    空のもっと高みへと垂直に昇り続け、ついに燃え尽きた作曲家の人生と
    どうしても死んだ親友と離れたくない少女の受容と再生の旅。
    どちらも宮沢賢治のストイックさを映すようなキャラクターが登場する。
    カンパネルラとジョバンニの別れのシーン、絶妙な間がどうしようもなく泣かせる。映像と照明がセンス良く繊細で印象的。

    ネタバレBOX

    「夜鷹無限上昇」

    若い女性記者が、過去に一度だけ売れた作曲家に取材を申し込む。
    彼は、理想を求めるあまり「こんなのは音楽ではない」と
    自分の仕事も成長のプロセスも否定してもう5年も作品を発表していない。
    その結果、家族も仕事も友人も失って孤独な人生を送っていた…。

    「作曲家は曲を作るのではなく、自分に聴こえた“本当の音楽”を楽譜に再現するのだ」
    と言う作曲家の極端なまでのストイックさが宮沢賢治の生き方に重なる。
    作曲家役の音野暁さん(熱演!)の苦悩ぶりが深く辛そうで、
    「ゲージュツカって大変なのね」と距離を感じてしまいそうになるところを
    女性記者の存在が上手くつないでくれるところがいい。

    ただ冒頭、回想して話し始める彼女が「あーごめんなさい!」を連発しながら
    “話が自己チューでまとまらない”キャラを前面に出すのが少々うるさく感じられた。
    平凡な女性が、ラスト「君には(本当の音楽は)わからない!」と言われた時に
    「わかりませんよ!だからわかりたいんです!」と叫ぶ、
    その瞬間、彼女の人間としての成長が鮮やかに伝わる。
    その素直な情熱が作曲家を変え、彼を救うことになる。

    アクティングスペース一面に敷き詰められた白い紙が、
    最初歩くたびにかさこそして気になったが、
    やがてその紙が楽譜の書き損じになると、途端に生気を帯びて見えた。
    芸術も人の価値観も、「わかるかどうか」が重要なのではない。
    「わかろうとすること」それこそが、芸術家の孤独を癒すただひとつのものだ。

    「深海のカンパネルラ~B&B version~」

    親友を水の事故で亡くした少女は、「銀河鉄道の夜」をくり返し読み
    妄想をふくらませることで、この1年を過ごしてきた。
    親友は星が好きで、少女は海が好きだった。
    星の名前と深海魚の名前、二人が互いの趣味を理解し共有していく様が楽しい。
    やがて少女は亡くなった親友と向き合うのだが
    この時の会話の間が絶妙で、泣かずに済むと思っていたのにボロ泣きした。
    カンパネルラ役の船越ミユキさん、きりっとした表情で少年っぽさが素敵。
    死んだことを責める少女にぼそっと「ごめん」と答えるところとか
    繊細な台詞がとてもよかった。
    短い出番ながら牧座内音楽さんの車掌がとても印象的。
    もっと台詞が聞きたいと思った。

    宮沢賢治に激似の先生(澤口渉)が言う
    「人生は、理想を求めて、破れて、絶望して、また理想を求める、いろいろあるんだ」
    という意味の台詞が心に沁みる。
    「そういう者に、私はなりたい…、なりたかった」という最後の台詞が秀逸。
    賢治もまた理想を求めて絶望して死んだのだ。

    2作とも映像の使い方、照明の美しさが強く印象に残る。
    改めて、繰り返しかたちを変えて継がれていく作品の魅力を感じた舞台だった。

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    2013/11/22 23:34

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