公演情報
「東京ブギウギと鈴木大拙」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
名取事務所が下北沢のB1や「劇」小を出て、芸劇Wのステージに歴史劇にそぐわしい大型の装置を組んだ「鹿鳴館異聞」、今回も本多劇場にて、やはり歴史の時間の重みを体現する装置が組まれ、一つの家族の物語を堪能した。
戦中戦後に掛けて禅宗を広めた大家である鈴木大拙の血の繋がらない息子アラン(通称)が「東京ブギウギ」の作詞者であった事実、大拙を崇める者にとってこの息子は無き存在としたい不肖の息子である事、登場人物は大拙とアナンの他は長年当家に仕えた女中、アナンの従姉妹にあたる女性、大拙の友で著者の翻訳版などで尽力した斎藤某と、実在の人物5名という最少の構成。スポットは息子アナン。遊戯空間が今年上演した三遊亭圓朝の歴史に埋もれた不肖の息子の話が、重なった。混血児アナンはその熱情で自由を愛し、欲した人物として造形されるが、望んで得られないものを追い求めて行く人生の切なさがどこか滲んでいる。三度の結婚と離婚を経て、世間や縁者からも姿を消した彼と、作者は接点がありつつ結ばれる事のなかったかの従姉妹と、大拙が亡くなった後のある命日に墓前で出逢わせる。純粋さを失わず行動的な彼女の人物像は観客にこの劇にいつしか安心の軸を与えているが、その彼女を見てアナンはつくづく実感したように言う。こんな自分だが一つだけ良いことをした。それは、君を不幸にしなかった事だ、と。ネガティブそのものの言葉が、彼の本心からの喜びの言葉として心に残る。そこには仏教的な、あるいは宗教的な達観、世界に対して価値あるものでありたい根源的な願望(永遠への憧憬)がひっそりと織り込まれている。
実演鑑賞
満足度★★★★★
名取事務所様の作品が大好きで、今回も大きな期待を寄せて伺いました。まず舞台のセットが精巧に作られていてお見事でした。
「東京ブギウギ」の陽気なエネルギーと
鈴木大拙の「禅」という「静」が対極の要素が見事に交差していました。アランの複雑な生い立ちと父との確執など、登場人物の葛藤を割り切れない人間ドラマとして真っ直ぐ描くからこそ、観客の心に深い余韻が残るのだと感じます。
名取事務所作品はわかりやすい答えを提示せず、重厚な人間描写を通じて問いを投げてくれる点がとても良かったです。動と静が響き合い、終演後も色々話しながら思考が深る素晴らしい演劇体験でした。
.
実演鑑賞
満足度★★★★★
今まで鈴木大拙の事を知らなかったが、出演者が5名なので分かりやすく個々の人柄も出ていたのですんなりと観劇することが出来た。
すれ違いの家族関係だったが奥様がもう少し長生きしていたら大拙とアランの関係も変わったのではと。
大拙役の鷲巣さん、写真で見る大拙と同じ姿でびっくりでした。
民乃役の森尾さんの歌声が素晴らしくもっと聞いていたかったなぁ。
実演鑑賞
満足度★★★★
いつもながら、まずセットが無駄なく美しい。この親子についての知識を持たず、教養番組を見たような贅沢感。世界的に影響を与えた父の存在から息子がこのような生き方を歩むことになった確執に、なぜか親近感を持てた。彼らが生きた時代があの頃でなかったら、東京ブギウギは生まれていたのかしら。
実演鑑賞
満足度★★★★
山田奨治氏が2015年発表した著作と鈴木大拙の米国滞在中に記した英文日記を参考資料として堤春恵さんが書き上げた戯曲。2021年の初演が小劇場B1、今回の本多劇場はちょっと広すぎる気も。
素晴らしい脚本。驚く程、金の掛かった美術。遠近感を付ける為にパースがかった窓が上下に移動して邸宅の一室を表現。左右のアーチ型窓も下りてくる。
コロニアル・スタイル(植民地様式)とは欧州諸国が植民地に祖国の様式で建物を建てたことが語源。明治時代、外国人居留地で幾つも建てられ日本の建築に大きな影響を与えた。シンメトリーな外観と大きなベランダ、アーチ型の玄関ポーチ等が特徴。
昭和13年(1938年)、京都・大谷大学で教授として働く鈴木大拙(鷲巣照織〈てるお〉氏)68歳の三階建ての屋敷。大拙の信奉者である鎌倉の古美術商・斉藤利助(吉野悠我氏)が製本化された『禅と日本文化』英文初版の書籍を届けに来訪。応対するのは住み込みの女中である“おこの”(新井純さん)。アメリカ人妻のビアトリス(もしくはベアトリス)は体調不良で東京の聖路加国際病院に入院中。息子の同志社大学生・鈴木アラン(西山聖了氏)。また早逝した甥の一家を養っていた大拙は甥の遺児の独りである鈴木民乃(森尾舞さん)を住まわせていた。
鷲巣照織氏の歩き方が禅僧のようで味がある。口の悪い新井純さんは最高、MVPか。西山聖了氏が「Get Out and Get Under the Moon」をミュージカル映画のように歌い踊り始めるシーンの演出が冴える。そこに日本語歌詞「月光価千金」でユニゾンを被せる森尾舞さん。これぞ!というシーン。西山聖了氏のキャラは伊勢谷友介や中居正広の悪戯っ子っぽさも感じた。
素晴らしい作品、この水準の作品をもっと観たい。
実演鑑賞
満足度★★★★★
すばらしかったです。鈴木大拙のことはスティーブ・ジョブズ絡みで知っていたのですが、その息子さんのアレンについて知るいい機会となりました。父親と息子の確執がよく描かれていました。私も父親かつ息子ということもありすごく響くものがありました。ただ、私は実子でありアレンのように養子ではないのでアレンの気持ちの100万分の1もわかってないでしょうけど。ステージも演出も演技も最高でした。