東京ブギウギと鈴木大拙 公演情報 名取事務所「東京ブギウギと鈴木大拙」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    名取事務所が下北沢のB1や「劇」小を出て、芸劇Wのステージに歴史劇にそぐわしい大型の装置を組んだ「鹿鳴館異聞」、今回も本多劇場にて、やはり歴史の時間の重みを体現する装置が組まれ、一つの家族の物語を堪能した。
    戦中戦後に掛けて禅宗を広めた大家である鈴木大拙の血の繋がらない息子アラン(通称)が「東京ブギウギ」の作詞者であった事実、大拙を崇める者にとってこの息子は無き存在としたい不肖の息子である事、登場人物は大拙とアナンの他は長年当家に仕えた女中、アナンの従姉妹にあたる女性、大拙の友で著者の翻訳版などで尽力した斎藤某と、実在の人物5名という最少の構成。スポットは息子アナン。遊戯空間が今年上演した三遊亭圓朝の歴史に埋もれた不肖の息子の話が、重なった。混血児アナンはその熱情で自由を愛し、欲した人物として造形されるが、望んで得られないものを追い求めて行く人生の切なさがどこか滲んでいる。三度の結婚と離婚を経て、世間や縁者からも姿を消した彼と、作者は接点がありつつ結ばれる事のなかったかの従姉妹と、大拙が亡くなった後のある命日に墓前で出逢わせる。純粋さを失わず行動的な彼女の人物像は観客にこの劇にいつしか安心の軸を与えているが、その彼女を見てアナンはつくづく実感したように言う。こんな自分だが一つだけ良いことをした。それは、君を不幸にしなかった事だ、と。ネガティブそのものの言葉が、彼の本心からの喜びの言葉として心に残る。そこには仏教的な、あるいは宗教的な達観、世界に対して価値あるものでありたい根源的な願望(永遠への憧憬)がひっそりと織り込まれている。

    0

    2026/08/30 12:58

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大