満足度★★
美しい二人椀久
歌舞伎をあまり踊り主体で観に行くことは稀ですが、夜の部のお目当ては、染五郎さんと菊之助さんが二人で踊る「二人椀久」で、これを観たさに出かけました。
お二人とも、お母様譲りの端正な顔立ちでいらっっしゃるので、薄暗い幻想的な舞台に、幽玄美を放たれた舞踊で、心酔しました。
「一條大蔵譚」の方は、染五郎さん初役ですし、今までのどの大蔵卿より、阿呆の作りに、まだ工夫が必要な感じを受けました。
場転の時間の長さも、今までで一番。スタッフの仕事ぶりに、素人感が見えました。
それにしても、3階席、ヨーロッパからのお客様が多く、私の前に座られた男性が、完全に前のめりでご覧になっていて、舞台が全く見えず、どうしたものかと思案していたら、遅刻のお客様を案内して客席誘導の女性が通られたので、帰り道を押しとどめ、身振りで、懇願したら、即、外国語の絵入りの前のめリ禁止ボードを提示して、忠告して下さったので、助かりました。
機転の利く案内嬢に感謝!
終演時刻が、7時台で、遠方に帰られる、年配のお客様にはいいかもしれませんが、それなら、チケット代は、もう少し、安くしてもいいのではと感じます。
いつもより、演目が少ないのに、代金が一緒というのには、少し、不満が残りました。
満足度★★
昼の部鑑賞
100分程度の中編2本立てで、どちらも恋絡みで悲しい結末を迎える女を描いた作品でした。
『妹背山婦女庭訓 三笠山御殿』
恋慕っていた男を追って来たところ、他の女と結婚することを知って嫉妬に狂う女の物語でした。
長い作品の一部分なので人物関係やストーリーが分かり辛く感じましたが、義太夫や舞踊や立ち回り等、様々な要素が盛り込まれたバラエティーに富んだ内容で楽しめました。官女達がいびる場面でコミカルな雰囲気の中に冷酷さが増して行くのが印象的でした。
『暗闇の丑松』
義母や兄貴分夫婦の欲によって無惨な状況に陥る夫婦を描いた物語でした。
台詞が現代語に近く、舞台美術も立体的で、明暗のレンジが広い照明や録音の効果音を用いたりと古典的な作品に比べるとかなり分かり易い作品でした。
独特の台詞回しや見栄、ケレン味のある演出等、歌舞伎の様式性を感じさせる要素が用いられていなくて、普通の時代劇のように見え、ストーリーや演技は悪くないものの、あまり興味を持てませんでした。
満足度★★★★
松緑の丑松は発展途上
本当は、大好きな長谷川伸の「暗闇の丑松」観たさに行ったのですが、観終えてみれば、菊之助のお三輪の方が満足感高い印象でした。
昼の部は、丸本物の「三笠山御殿」と世話物の「暗闇の丑松」の2狂言立て。
間に40分の幕間があるだけで、日頃、いろいろなジャンルの演劇を見慣れている観客には、むしろ良いかもしれませんが、今までの歌舞伎公演の幕間形態に慣れた年配の方には、トイレタイムとして不適当では?とやや心配になりました。
お三輪の菊之助と、お米の梅枝が、共に、女形としての風格と所作において、各段の成長ぶりだったのが嬉しくなりました。
松緑の丑松は、初役だし、まだ体に落ちていない感があります。台詞の言い回しとかはかなり努力されたなと感じますが、長谷川伸の女性感が色濃く出ているこの演目の台詞の読みが甘いと感じました。
更に上演を重ねて、役を自分のものにして頂ける日を心待ちしたいと思います。(お父様の辰之助さんの丑松には戦慄が走った記憶がありますので)
満足度★★★
夜の部、やけに短い
4時半開演で終演7時15分頃、休憩40分なので正味2時間。ちょっと短すぎるだろ、いくらなんでも。若手中心なので、見るなる昼の部がおススメ。特に「暗闇の丑松」の梅枝がいい。難しい薄幸の女の役をよくがんばった。お姫様も町娘もできそうなお得な顔立ちでこれからが楽しみ。(梅枝が死んだ後の)風呂屋の裏側の場面が、江戸の庶民の生活が垣間見えて面白い。