三月花形歌舞伎 公演情報 三月花形歌舞伎」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 2.8
1-4件 / 4件中
  • 満足度★★

    美しい二人椀久
    歌舞伎をあまり踊り主体で観に行くことは稀ですが、夜の部のお目当ては、染五郎さんと菊之助さんが二人で踊る「二人椀久」で、これを観たさに出かけました。

    お二人とも、お母様譲りの端正な顔立ちでいらっっしゃるので、薄暗い幻想的な舞台に、幽玄美を放たれた舞踊で、心酔しました。

    「一條大蔵譚」の方は、染五郎さん初役ですし、今までのどの大蔵卿より、阿呆の作りに、まだ工夫が必要な感じを受けました。
    場転の時間の長さも、今までで一番。スタッフの仕事ぶりに、素人感が見えました。

    それにしても、3階席、ヨーロッパからのお客様が多く、私の前に座られた男性が、完全に前のめりでご覧になっていて、舞台が全く見えず、どうしたものかと思案していたら、遅刻のお客様を案内して客席誘導の女性が通られたので、帰り道を押しとどめ、身振りで、懇願したら、即、外国語の絵入りの前のめリ禁止ボードを提示して、忠告して下さったので、助かりました。
    機転の利く案内嬢に感謝!

    終演時刻が、7時台で、遠方に帰られる、年配のお客様にはいいかもしれませんが、それなら、チケット代は、もう少し、安くしてもいいのではと感じます。
    いつもより、演目が少ないのに、代金が一緒というのには、少し、不満が残りました。

    ネタバレBOX

    とにもかくにも、染五郎さんが、何の後遺症もない様子で、舞台に立たれていたことに安堵しました。

    「一條大蔵譚」は、勘三郎さん、吉右衛門さん、仁左衛門さん他、たくさんの大蔵卿をこれまで拝見していますが、染五郎さん、初役ということもあり、まだ阿呆を演じる場面に硬さが見えました。ここがスムーズな役作りでないため、本心を表す場面との相違が客席を沸かすまでに至らず、残念でした。
    お京の壱太郎、鳴瀬の吉弥が手堅い演技。松録の鬼次郎は、他の役作りでお忙しかったとは思うものの、もう少し、気持ちも入れた演技をして頂きたかったと思います。

    「二人椀久」は、母が、私の息子達に踊らせたいと常々言っていた演目なので、余計、お二人の幽玄な舞が心に沁みました。

    大向こうからの掛け声が、ほとんど「高麗屋!」ばかりで、7回に一度ぐらい「音羽屋!」と聞こえました。まあ、主役は染五郎さんですけど、菊之助さんが主で踊る時まで、「高麗屋!」と掛るのは、違和感がありました。
  • 満足度★★

    昼の部鑑賞
    100分程度の中編2本立てで、どちらも恋絡みで悲しい結末を迎える女を描いた作品でした。

    『妹背山婦女庭訓 三笠山御殿』
    恋慕っていた男を追って来たところ、他の女と結婚することを知って嫉妬に狂う女の物語でした。
    長い作品の一部分なので人物関係やストーリーが分かり辛く感じましたが、義太夫や舞踊や立ち回り等、様々な要素が盛り込まれたバラエティーに富んだ内容で楽しめました。官女達がいびる場面でコミカルな雰囲気の中に冷酷さが増して行くのが印象的でした。

    『暗闇の丑松』
    義母や兄貴分夫婦の欲によって無惨な状況に陥る夫婦を描いた物語でした。
    台詞が現代語に近く、舞台美術も立体的で、明暗のレンジが広い照明や録音の効果音を用いたりと古典的な作品に比べるとかなり分かり易い作品でした。
    独特の台詞回しや見栄、ケレン味のある演出等、歌舞伎の様式性を感じさせる要素が用いられていなくて、普通の時代劇のように見え、ストーリーや演技は悪くないものの、あまり興味を持てませんでした。

  • 満足度★★★★

    松緑の丑松は発展途上
    本当は、大好きな長谷川伸の「暗闇の丑松」観たさに行ったのですが、観終えてみれば、菊之助のお三輪の方が満足感高い印象でした。

    昼の部は、丸本物の「三笠山御殿」と世話物の「暗闇の丑松」の2狂言立て。
    間に40分の幕間があるだけで、日頃、いろいろなジャンルの演劇を見慣れている観客には、むしろ良いかもしれませんが、今までの歌舞伎公演の幕間形態に慣れた年配の方には、トイレタイムとして不適当では?とやや心配になりました。

    お三輪の菊之助と、お米の梅枝が、共に、女形としての風格と所作において、各段の成長ぶりだったのが嬉しくなりました。

    松緑の丑松は、初役だし、まだ体に落ちていない感があります。台詞の言い回しとかはかなり努力されたなと感じますが、長谷川伸の女性感が色濃く出ているこの演目の台詞の読みが甘いと感じました。

    更に上演を重ねて、役を自分のものにして頂ける日を心待ちしたいと思います。(お父様の辰之助さんの丑松には戦慄が走った記憶がありますので)

    ネタバレBOX

    「妹背山婦女庭訓」は、子供の頃、父から「ロミオとジュリエット」みたいな話だよと教わり、大変興味を持って観劇したものの、やはり、高校生の頃までは、あまり面白いと感じられない演目でした。

    中年以降、ようやく、この作品の魅力に気づき始めた気がしています。

    この「三笠山御殿」の場は、求女に片思いするお三輪という町娘が主人公なので、中心のストーリーとはやや逸れた展開ですが、今回、気づいたのは、この場面、歌舞伎狂言には珍しく、普段なら脇役に過ぎない官女達のしどころが多いんですね。
    今までずいぶん拝見した場ですが、今回の官女は粒ぞろいだった気がして、時代ものには珍しく、退屈せずに観られました。

    「暗闇の丑松」は、現代にも通じるような、親切な人だと信頼していた人間に騙され、悲劇へと突き進む男女の悲哀がテーマの芝居。
    でも、この芝居、台詞をよく聞きとると、作者のトラウマにも似た女性感が主軸にあることがわかります。
    何人も殺人を犯す丑松ですが、観客に見える場所で殺されるのは、四郎兵衛の女房お今だけ。このお今を殺す時の丑松の台詞が大変重要です。
    その慟哭にも似た深い丑松の叫びが、松緑の台詞からは伝わらなかったのが残念です。やはり、仁左衛門や勘三郎の丑松にはまだまだ距離があるようです。

    新歌舞伎だけに、現代的な舞台装置の工夫が、楽しめる舞台ですが、冒頭の、向の家の噂話の会話が聞き取れないのは残念でした。

    この演目、時代ものを得意とされる、小劇場演出家にも是非チャレンジして頂きたい演目です。
  • 満足度★★★

    夜の部、やけに短い
    4時半開演で終演7時15分頃、休憩40分なので正味2時間。ちょっと短すぎるだろ、いくらなんでも。若手中心なので、見るなる昼の部がおススメ。特に「暗闇の丑松」の梅枝がいい。難しい薄幸の女の役をよくがんばった。お姫様も町娘もできそうなお得な顔立ちでこれからが楽しみ。(梅枝が死んだ後の)風呂屋の裏側の場面が、江戸の庶民の生活が垣間見えて面白い。

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