三月花形歌舞伎 公演情報 松竹「三月花形歌舞伎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    松緑の丑松は発展途上
    本当は、大好きな長谷川伸の「暗闇の丑松」観たさに行ったのですが、観終えてみれば、菊之助のお三輪の方が満足感高い印象でした。

    昼の部は、丸本物の「三笠山御殿」と世話物の「暗闇の丑松」の2狂言立て。
    間に40分の幕間があるだけで、日頃、いろいろなジャンルの演劇を見慣れている観客には、むしろ良いかもしれませんが、今までの歌舞伎公演の幕間形態に慣れた年配の方には、トイレタイムとして不適当では?とやや心配になりました。

    お三輪の菊之助と、お米の梅枝が、共に、女形としての風格と所作において、各段の成長ぶりだったのが嬉しくなりました。

    松緑の丑松は、初役だし、まだ体に落ちていない感があります。台詞の言い回しとかはかなり努力されたなと感じますが、長谷川伸の女性感が色濃く出ているこの演目の台詞の読みが甘いと感じました。

    更に上演を重ねて、役を自分のものにして頂ける日を心待ちしたいと思います。(お父様の辰之助さんの丑松には戦慄が走った記憶がありますので)

    ネタバレBOX

    「妹背山婦女庭訓」は、子供の頃、父から「ロミオとジュリエット」みたいな話だよと教わり、大変興味を持って観劇したものの、やはり、高校生の頃までは、あまり面白いと感じられない演目でした。

    中年以降、ようやく、この作品の魅力に気づき始めた気がしています。

    この「三笠山御殿」の場は、求女に片思いするお三輪という町娘が主人公なので、中心のストーリーとはやや逸れた展開ですが、今回、気づいたのは、この場面、歌舞伎狂言には珍しく、普段なら脇役に過ぎない官女達のしどころが多いんですね。
    今までずいぶん拝見した場ですが、今回の官女は粒ぞろいだった気がして、時代ものには珍しく、退屈せずに観られました。

    「暗闇の丑松」は、現代にも通じるような、親切な人だと信頼していた人間に騙され、悲劇へと突き進む男女の悲哀がテーマの芝居。
    でも、この芝居、台詞をよく聞きとると、作者のトラウマにも似た女性感が主軸にあることがわかります。
    何人も殺人を犯す丑松ですが、観客に見える場所で殺されるのは、四郎兵衛の女房お今だけ。このお今を殺す時の丑松の台詞が大変重要です。
    その慟哭にも似た深い丑松の叫びが、松緑の台詞からは伝わらなかったのが残念です。やはり、仁左衛門や勘三郎の丑松にはまだまだ距離があるようです。

    新歌舞伎だけに、現代的な舞台装置の工夫が、楽しめる舞台ですが、冒頭の、向の家の噂話の会話が聞き取れないのは残念でした。

    この演目、時代ものを得意とされる、小劇場演出家にも是非チャレンジして頂きたい演目です。

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    2013/03/08 23:24

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