粛々と運針 公演情報 粛々と運針」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-4件 / 4件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2026/04/12 (日) 13:00

    座席1階

    宿ったかもしれない命、消えていくことを決断した命。2つの家族の物語が融合していく見事な会話劇だった。極めて緻密に練られたと思われる脚本、そして構成。8年前の初演というこの舞台は、いまも輝いている。

    3度目の上演で、台本をチェックして練り直し、これまでとは趣きの違う演出がなされたという。自分は今回が初見だが、生と死をクロスさせる2人の女性を階段で上がる高い位置に置き、時計の針を進める踊り場とした舞台装置は見事だった。

    物語は母親が命に関わる病で入院した二人の息子、子どもは作らないという前提で家を新築した夫婦の会話が交互になされる形で進行する。その中で、それぞれが置かれた立場、胸の中にしまい込んでいた思いが少しずつ明らかにされる。同時進行だから、物語の進行のスピード、セリフの分量などをかなり綿密に考えて組み立てたことが伝わってくる。

    横山劇の特徴である、世相をうまく捉えた群像劇が今作では映えた。親密な間柄であっても、血を分けた兄弟でも、実際に言葉に出さないと相手には通じないし、思いを受け取ることはできない。それは言葉をまだ持たない生まれようとする命にも、これまで懸命に生きてきた命にとっても同じである。リアリティが涙を誘う、秀作と言ってよい。
    これが当代人気劇作家の原点かな、とも思った。三鷹まで遠征しても絶対に損はない。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2026/04/11 (土) 13:00

    なんという台詞劇だろう。芝居を観ていることを一瞬忘れる。
    よその家族をのぞき見しているような変な緊張感。
    登場人物全員に共感してしまう。
    理解してもらえないもどかしさに息苦しさを覚える。
    脚本と演出、役者陣のすばらしさに圧倒された95分。

    ネタバレBOX

    舞台中央奥が、高い山のようになっており、左右から階段で頂上へ登る。
    子どものような娘と年配の女性が、その頂上でちくちくと運針を続けながら
    時折話をする。「昔住んでいた桜のある町の話」など…。

    手前には天井からシルバーの大きなリングが吊り下げられ、
    これがゆっくり下へ降りてきて、その輪の中へ二人が 入ってくる。
    これが最初の家族。
    子どもを持たない約束で結婚した夫婦が、ある日「妊娠したかもしれない」という
    妻の一言から大揺れに揺れる。
    2人暮らし用に自分の好みを詰め込んだ一軒家を建てたばかり、
    課長代理としてさらなる高みを目指す妻に出産の選択肢は無い。
    宿った命を育てて、後悔しないようにしようと言い出す夫。

    この二人が輪の中から外へ出て小さな椅子に座ると
    もう一つの家族、兄と弟が輪の中へ入ってくる。
    すい臓がんを患う母を見舞った兄弟は、病室で見知らぬ紳士を紹介され戸惑う。
    高校時代のコンビニバイトをそのまま続けて40歳になった独身の兄。
    就職、結婚して別に住む弟。
    このままならあと数か月、手術すれば2~3年は持つかもしれないという状況の母は
    「尊厳死」を望んでいると言って兄弟を驚かせる…。

    交互に輪の中へ入って話し合う両家族は、意見の相違から次第にヒートアップしてくる。
    そのころになると、観客である私の思っていることを、舞台で全員が代弁している
    という妙な満足感を覚えて不思議な感覚にとらわれた。
    相反する意見をぶつけ合う二人の、どちらにも深く共感しているのはなぜだ?
    「産むのは私だ!」
    「僕が仕事を辞めても構わない」

    「母さんには生きていて欲しい!」
    「兄貴は親父にそっくりだ、自分のことしか考えてない!」

    そして2つの家族は突然クロスする。
    見ず知らずの2家族は、自分たちの問題を話し合いつつ、よその問題にも口を出す。
    唐突なのに全く違和感が無いことに驚く。
    この時の台詞、タイミング、方向、普遍性、思わず涙がこぼれた。

    それを山の上から見下ろすふたり。
    「あんなに話し合ってくれてよかった」という意味のことをつぶやく女性…。
    そうなんだね、多分正しい結論なんてない。
    たとえ最後まで相容れなくても、とことん話し合えばいいのだ。
    人は何を選択しても、どこかで(もし別の選択をしていたら…)と考える。
    それでもさんざん考え、沢山話して決めたことを受け容れていく。
    ちくちくと小さな作業を積み重ねながらきめたことを受け容れていく。

    タイトルが忘れられなくて初めて観た舞台。
    人間の湿り気のある可笑しさみたいなものを思い出して、今また泣きそうになる。
    素晴らしい作品をありがとうございました。


  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    幾何学的なデザイン。ステージと客席はシームレス。大きな円形の輪っかが天井から吊り下げられている。バックには左右から登る階段と中央の谷間、その上に白く長いシーツが被さってM字を描いている。開演すると円形の輪っかが斜めに降りて来る。階段を登って鄭󠄀梨花(チョン・リファ)さんと林英世さんが左右に腰を下ろし、白い布を手に取り縫い物を始める。チクタクチクタクと。運針=並縫い。輪っかの下りた中央がステージ。その外では椅子に座って出番まで待っている役者達。

    中山義紘(よしひろ)氏と佐々木ヤス子さん夫婦の物語。オカマを掘られて首にコルセットを着けている中山義紘氏。夢だった一軒家を建てローン返済の為にもバリバリ働く佐々木ヤス子さんは課長代理38歳。家の周囲で子猫の声がする。猫を見付けたい。中山義紘氏は小動物が苦手で見付けた所でどうするの?と口論になる。変な空気。佐々木ヤス子さんはある相談をする。

    花戸祐介氏、鈴鹿通儀氏兄弟の実家。家を出て結婚もしている弟と40過ぎても高校出てずっとコンビニのバイトを続けているだけの兄。母親が膵臓癌で入院、手術が必要。本人は尊厳死を望むと言う。それに肯定的な弟と絶対に許せない兄の口論。

    三組の会話が並行して語られる。
    佐々木ヤス子さんは38歳設定にしては若すぎる。井上貴子と福田麻貴をフュージョンさせたような感じ。凄く魅力的な女優。
    中山義紘氏は村野武範の若い頃みたい。

    テーマは「生と死と自分と他人」。ずっと自分のことも含め考え続けてしまうような舞台。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    運針の手を止め、林英世さんが鄭󠄀梨花さんに話すのは実家の川沿いに立つ桜並木の思い出。春に満開の桜が咲き誇り桃色の花びらが風に舞って飛ぶ様。川に降り落ちる花びらを筏に乗り法被を着た職員が笊で掬う風物詩。今では桜の樹は全て切り倒され川にはフェンス。当時の面影の欠片もない。個人的にはこのエピソードが一番好き。

    花戸祐介氏が母親に孫の顔を見せてあげたいからと弟に子作りを求める。その論理に無理があってイマイチのれない。(作品展開上の都合みたいで)。

    佐々木ヤス子さんの抗弁が光る。世間的に「正しい」とされていることは果たして「正しい」のか?観客が求めるのは所謂「正しさ」のハッピーエンド。それで安心する。だがそれは思考放棄した所謂「正しさ」、現実とは繋がらない。嘘じゃなく本当が欲しいんだ。

    生きている人間の世界外にいる存在がチクタクと時間を縫って進めていく。どんな答が出ようが出まいが時間だけは過ぎていく。100%の正解なんて何処にも見付からないまま、小さな選択を繰り返して生きていく。それが正しかったのか間違っていたのかさえもう誰にも解らない。

    まだ産まれてもいない鄭󠄀梨花さんの存在が微笑ましい。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2026/04/09 (木) 19:30

    95分。休憩なし。

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